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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【最終章】天界叛逆篇
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【最終章】天界叛逆篇Ⅵーreturnー

 慧留と屍はセラフィム騎士団団長であるローグヴェルトと交戦していた。

 慧留と屍の二人掛かりにローグヴェルトは互角の戦いを繰り広げていた。

 だが、ローグヴェルトも今のままでは分が悪いと判断し、ついに【第二解放(エンゲルアルビオン)】を発動した。


「【第二解放(エンゲルアルビオン)】」


 ローグヴェルトの身体が虹色の光に包まれた。

 慧留と屍はローグヴェルトの【第二解放(エンゲルアルビオン)】によって発生した突風から身を守っていた。

 やがて、ローグヴェルトの【第二解放(エンゲルアルビオン)】の菅田が露になった。


「!?」


 ローグヴェルトの背中に虹色の一対の翼が生えており、左手には黒色の籠手が着いており、大剣は一回り小さくなってはいたがそれでも巨大であった。

 更に後ろには巨大な玉座があった。


「【終焉の神剣(ハルヴァン・ヴェルト)】」


 ローグヴェルトの霊圧は今までとは比べ物にならなかった。


「!?」

「なんつー霊圧だ!?」


 これがセラフィム騎士団団長の【第二解放(エンゲルアルビオン)】。

 この霊圧は蒼と比肩するか…或いはそれ以上なのでは無いかと感じる程であった。

 慧留と屍は一瞬怯むがローグヴェルトに接近した。


「【万物斥界(アプレイトス)】」


 ローグヴェルトは大剣を慧留と屍に向けた。

 すると、慧留と屍は後方へと吹き飛ばされた。


「うわっ!?」

「ぐっ!?」


 辺りのビルまでも一瞬で吹き飛んだ。


「何だ!?今のは…!?」


 屍がそう言った。


「衝撃波…じゃあ無さそうだったね」


 そう、衝撃波とは何か違う感じがしたのだ。


「終いだ、【一引反転(アンクラフト)】」


 ローグヴェルトは屍に大剣を向けた。

 すると、屍の身体がローグヴェルトに引き寄せられていた。


「なっ!?」

「!?」


 屍は咄嗟に地面から鎖を錬成し、近くの電柱に引っ掛けた。


「無駄だ」


 ローグヴェルトがそう言うと屍はジリジリとローグヴェルトの大剣に近付いていた。

 このままではローグヴェルトの大剣に屍は串刺しにされる。


「はぁ!」


 慧留がローグヴェルトの後ろを取り、攻撃を仕掛けた。


「【万物斥界(アプレイトス)】!」

「きゃ!?」


 慧留と屍は吹き飛ばされた。

 しかし、屍は何とかローグヴェルトに串刺しにされる事は免れた。

 慧留は屍の元へと駆け寄った。


「屍、大丈夫!?」

「ああ、何とかな…」

「ローグの能力って…もしかして…」

「ああ、あいつの能力はあらゆるものを弾いたり引き寄せたりする能力…要するに引力と斥力を扱う能力だな…」


 そう、屍と慧留が吹き飛ばされたのはローグヴェルトが放った斥力によるモノだ。

 屍があの大剣に引き寄せられたのは引力によるモノだ。

 だが、引力と斥力の力を同時に扱う事は出来ない様だ。


「大した奴等だ…この一瞬で俺の能力に気が付くとはな…まあ、気が付いた所で無駄だ」


 ローグヴェルトがそう言った。

 確かにローグヴェルトの能力は物理法則を無視した力だ。

 ローグヴェルトの力の前では触れる事すら出来ない。


「【万物斥界(アプレイトス)】」


 ローグヴェルトは斥力の斬撃を放った。

 屍と慧留は上へ飛んで回避した。


「【黒閃光(オスキュラスレーゼル)】!」


 慧留はローグヴェルトに黒い閃光を放った。

 ローグヴェルトは黒い閃光を回避した。

 更に屍はローグヴェルトに近付いてローグヴェルトの身体に触れようとした。


「【万物斥界(アプレイトス)】」


 屍と慧留は同時に吹き飛ばされた。

 しかし、屍も慧留も立ち上がり、今度は別々の場所から攻撃を仕掛けた。

 慧留は錫杖で攻撃したが屍はローグヴェルトの後ろを取った。


「【万物斥界(アプレイトス)】」


 ローグヴェルトは斥力で屍を吹き飛ばした。

 更に続いてローグヴェルトは慧留も斥力で吹き飛ばした。

 ローグヴェルトが【第二解放(エンゲルアルビオン)】を使用してからローグヴェルトは一歩も動いていなかった。


「どうやら…あいつの引力と斥力の力は基本的には一ヶ所しか使えないみたいだな。もし全方位の斥力の力を使えば十秒ほどのインターバルが発生する」

「よく分析している。このまま戦えばまずい事になるかもしれんな」


 ローグヴェルトは霊圧を溜め始めた。


「これは…」

「【冥界創造(プラエテート)】!」

「無駄だ、貴様程度の力では俺の斥力を改変する事は出来ない」

「その前に押し潰す!【千本黒魔劍(グラディオス・デル・ミールレ)】!」


 慧留は過去改変の力と『魔歌(マーニア)』の力で無数の黒い剣を出現させた。

 そして、それを全てローグヴェルトにぶつけた。


「無駄だ、【万物斥界(アプレイトス)】」


 ローグヴェルトは今までにない巨大な斥力の力を使った。

 すると、周囲の建造物は愚か、半径数キロもの物体が一瞬で吹き飛ばされた。





 周囲の建造物は跡形も無く吹き飛んでおり、あるのは荒野だけであった。

 ローグヴェルトの近くに慧留と屍はいなかった。

 ローグヴェルトは光速で慧留と屍のいる場所まで移動した。

 ローグヴェルトが辿り着いたのは場所には無惨にもローグヴェルトの能力によりバラバラにされた建物があった。

 慧留はその建物の下敷きになっており、屍は建物の壁にあった鉄パイプが脇腹に突き刺さっていた。


「うっ…」


 慧留はあまりの激痛により目を覚ました。

 しかし、建物の下敷きに下半身が完全に潰れており、動く事すら出来なかった。


「う…」


 屍も鉄パイプに身体が突き刺さっていた為、ロクに動く事が出来なかった。

 更に慧留も屍も内蔵がズタズタになっており、重症であった。


「どうやら、ここまでの様だな、エル、天草屍」

「くそ…」


 屍は鉄パイプから身体を離そうとするが力が入らない。

 すると、ローグヴェルトが屍に大剣向けた。

 すると、屍がローグヴェルトの大剣に引き寄せられた。


「がはっ!?」


 鉄パイプが強引に取り除かれた事により屍は口から血を吐いた。

 そして、屍の身体がローグヴェルトの大剣に吸い寄せられていく。


「止めて!!!!!」


 慧留は叫んだ。しかし、ローグヴェルトの大剣は無情にも屍の心臓を貫いた。


「がはっ!?」


 ローグヴェルトは屍を地面に落とした。


「屍ええええええええええーーーーーー!!!!」


 慧留は叫んだ。

 しかし、無情にも屍の返事は無かった。


「今度はお前だ…エル…その体では最早何も出来ないだろうが…」


 ローグヴェルトはそう言って大剣を慧留に向けた。

 すると、慧留の身体と近くにあった鉄の棒が動いた。


「がっ!?」


 慧留は無理矢理身体を引き抜かれ、慧留は吐血した。


「ぐはっ!?」


 引力の力で慧留と鉄の棒を引き寄せ、その鉄の棒が慧留の心臓に突き刺さった。

 慧留はその衝撃で確実に死んだ。


「………」


 ローグヴェルトは【第二解放(エンゲルアルビオン)】を解除し、そしてこの場から消えた。

 それからしばらくして雨が降り始めた。





「何だ!?これは!?」


 一夜は壊れた建造物を見て驚愕していた。

 しかも、屍と慧留が倒れていた。


「湊君!至急この二人を運ぶんだ!」

「分かりました!」


「うっ…苗木…」

「屍!大丈夫かい?」

「ああ…どうにか…心臓の傷を錬金術で塞ぐ事には成功した…脇腹は…がはっ…無理だったが…」


 屍は重症であった。

 内蔵がズタズタにされていたのは勿論、脇腹の損傷が特に酷かった。


「月影は…」

「月影さんは無事です!ただ…下半身が潰れてます…」

「息は…あるか…心臓は…無事か?」

「心臓?大丈夫ですよ。無事です。ただ、殴打された様な形跡があるよ」

「そうか…どうやら…【時崩(トキクズシ)】には成功した様だな…」


 屍は慧留がローグヴェルトによって鉄の棒に新造を貫かれる直前、【時崩(トキクズシ)】で鉄の棒の時間を止め、慧留の心臓を貫かれる前に止めたのだ。

 ローグヴェルトはその事に気付かずに慧留を仕留めたと思っていた様だ。


「速く…病院に…」

「ここはもう戦場だ…そう簡単に見つけられるモノでも無い…だがどうにかしてこの二人を保たせないと!それから…蒼達を呼び戻す!」


 一夜がそう言って屍を運び、湊は慧留を運んだ。






「くそ!?」


 蒼はミルフィーユと未だに戦い続けていた。

 蒼もミルフィーユもお互いに互角に渡り合っていた。

 お互いにダメージは与えているのだがいずれも決定力には欠けていた。


「どうしたの?これで終わり?」

「うるせぇ!」

「う~ん、心ここにあらずって感じだね」

「知ったような事を…」

「いつか君に教えたよね?剣を交えれば相手の気持ちが少しは分かるって」


 ミルフィーユの言葉を蒼もかつてロキにも言った事がある。

 蒼のあの言葉はミルフィーユの受け売りだったわけだ。


「そうだな…アンタはただ戦いを楽しみたいだけってのが何か分かるよ」

「まぁ、実際そうなんだけどさ…本気を出せない相手を倒しても楽しく無い訳よ。全力の殺し合い、闘争こそが真の快楽を産み出す事が出来る。正直、今の君とはそこまで戦いたくないわね」

「言ってくれるじゃねぇの?」


 実際、ミルフィーユの言っている事はあながち的外れでは無かった。

 蒼は十二支連合帝国にいる仲間達を心配していた。

 ここが本当に襲われていたという事は十二支連合帝国も襲われている可能性が高かった。

 仲間の心配をして戦いに集中出来なくなる事はミルフィーユにとっては望んではいない。


「アオチー…」


 美浪を担いで澪はミルフィーユと蒼の戦っている戦場の近くに来ていた。

 美浪は蒼の所に行く道中で倒れていたのでそのまま運んだ。

 全身の骨が折れており重症だったので放置しておくのは不味いと判断したのだ。

 蒼とミルフィーユの戦いを静観していた澪だが突然通信が入った。

 ミルフィーユはスマホを取り出し、連絡に出た。


「なえきん、どうしたの?」

『蒼を戻って欲しいんだ!十二支連合帝国は…はっきり行って今、壊滅状態だ!』

「!? なんだって!?」

『慧留ちゃんも屍も重症なんだ。しかも敵の幹部はまだピンピンしてる…蒼の力が必要なんだ!』

「こっちも相当ヤバイよ?ミットンやられちゃってるし他の皆も戦闘中だしアオチーも今戦ってるんだよ?」

『!? 本当に…USWは陥落させられていたんだね…だがこっちもヤバイんだよ。何せ、こっちにはルミナスとローグヴェルトがいる』

「ルミナス陛下とセラフィム騎士団長が!?」


 ミルフィーユと戦闘中だった蒼は近くにいた澪と一夜の会話が聞こえた。


「澪さん!どういう事だ!?ルミナスが何だって!?」

「ルミナスとセラフィム騎士団団長が十二支連合帝国に来てる!」


 澪は蒼の質問に端的に答えた。


「まさか…俺達を引き離すのが…戦力の分散が狙いか!?それで…お前らはUSWを…て事は本命は十二支連合帝国!?」

「そう言う事。フローフル、君達はルミナスの術中に嵌まったんだよ」


 ミルフィーユが真実を伝えると蒼は歯軋りをした。


「どうする?このまま戦いを中断する?それとも続ける?私はどっちでもいいんだけど?」


 ミルフィーユは今の蒼とあまり戦う気は無さそうであった。

 ならば、ここはミルフィーユの言葉に甘える以外の選択肢は無い。


「悪いな…俺は十二支連合帝国に帰る!」

「そ、ならいってらっしゃい」


 ミルフィーユはあっさりと蒼の十二支連合帝国行きを許した。

 蒼は澪の元へとやって来た。


「うわっ!?アオチーいいの?」

「ああ、大丈夫だ。俺を十二支連合帝国に送ってくれ」

「う…うん!」


 蒼がそう言うと澪は蒼に転送魔法を使い、十二支連合帝国へ転送した。


「終わった?」

「随分とあっさり行かせたんですね?」

「いやだって、本気を出さない相手と戦ってもつまらないしね。弟子の気持ちを汲んで上げただけだよ」

「その慈悲の心があるならあたしも見逃して欲しいんですけど」

「それは駄目だね、君は形はどうあれ私とフローフルの戦いを中断させたのは事実。フローフルの代わりにあなたが私の暇潰しに付き合うのが道理ってものじゃない?」


 蒼を十二支連合帝国に転送したはいいが、その後の事を考えていなかった。

 澪は今にでも逃げ出したかった。

 ミルフィーユ…彼女はとんでもなく強い。

 蒼はこんな奴を相手に今まで互角に戦っていたのだ。

 澪はミルフィーユにどう足掻いても勝てない事は何となく分かっていた。

 ここは逃げるのが一番賢い選択なのかもしれないがミルフィーユはそれを許さないだろう。


「そんな道理は知らないね」

「君は知らなくても私の道理がそうだからね…ねぇ?私と…遊びましょ?」


 ミルフィーユはそう言って澪に竜巻をぶつけてきた。

 澪はその攻撃をどうにか回避した。

 しかし、突風の破壊力が強過ぎて、ミルフィーユの身体は切り刻まれていた。


「なっ!?」


 澪は血を流していた。


ーこんなのと渡り合ってたんだね…アオチー。まともじゃないねどうも


 澪は立ち上がり、ミルフィーユに向かっていった。





「そんな…」


 プロテアの能力により縛られていた黒宮がそう呟いた。

 黒宮は厳陣の霊力をリンクさせ、常に感じていた。

 だが、その厳陣の霊力が全く感じなくなっていた。

 それは…つまり…


「厳陣!!!!!」


 黒宮は大声で叫んだ。






 ルミナスは十二支連合帝国の花園神社にいた。

 ここでルミナスは『世界宮殿(パルテノス)』へと行くための扉を開き、そして、それが済んだので厳陣の前に現れ、【第二解放(エンゲルアルビオン)】を発動し、厳陣の身体を真っ二つに切り裂いたのであった。

 厳陣の身体は左肩から右脇腹まで斬られ、そこから身体が分断した。

 厳陣は血を吐きながら上半身が落下した。

 雨は更に強まっていた。

 まるで…誰かが泣いている様であった。

 ルミナスが雨雲を眺めているとローグヴェルトが戻ってきた。


「ローグヴェルト…天草屍とエル・マクガヴェインは?」

「はい、片付けて参りました」

「御苦労。こっちも終わった所よ」


 ローグヴェルトは倒れた厳陣を見た。

 ルミナスは厳陣に近付いた。


「あなたは…指導者として甘過ぎるのよ…あなたのその甘さが…そもそもの失敗。まぁ、だからこそ仲間が多く集まったとも言えなくはないけれど…」


 ルミナスはまだ、【第二解放(エンゲルアルビオン)】を解いてはいなかった。

 厳陣の右手がルミナスの足を掴んだ。

 しかし、ルミナスは一瞬で右手の長剣で厳陣の右手を切り落とした。


「しぶといわね…やっぱり…粉々に消しておいた方が良さそうね…」


 ルミナスはそう言うと手から光が出現した。


「この十二支連合帝国は…三年前に一度は壊滅しかけたのに…ここまでよく持ち直したモノよ。それだけじゃあないわ、それ以降も幾度と無くこの国は窮地に立たされた。それなのにここまで国力を維持出来たのは間違いなく…あなたの手腕あってこそだった…けど…もうそれも終わりよ…あなたの掲げる理想は下らない空想でしか無いわ」


 ルミナスの手の光が段々と強くなっていった。


「あなたは良くやったわ…もう、休みなさい。あなたの夢はとっくに死んでるのよ。【極楽鳥花(ごくらくちょうか)】」


 ルミナスの手から無数の白い鳥が出現し、厳陣の身体を木っ端微塵にした。

 厳陣は完全に死んだ。


「ローグヴェルト…常森厳陣は死んだわ。この事をこの国にいる者達全員に伝えるわ」

「畏まりました」

「霊呪法第三百二番!【拡散集音(かくさんしゅうおん)】!」


 ルミナスは霊呪法を発動した。

 この霊呪法は敵味方問わずに念話で情報を伝える事が出来る。


『聞け!十二支連合帝国の兵士達よ!常森厳陣は死んだわ!私が討ち取った!故に!降伏しろ!』


 絶望が拡散された。







「そんな…常森総帥が…」


 湊は勿論、一夜も驚愕していた。

 慧留と屍は十二支連合帝国の衛生兵により、治療されていた。

 しかし、病院は全て潰されており、野外で治療している状態だ。

 しかし、傷が余りにも深く、特に慧留は下半身が完全に潰れている為、歩く事はほぼ不可能であるとの事だ。

 慧留は時間回帰を使用して傷を治す事が出来るのだがそれは自分に対して使う事が出来ない。

 慧留のあれ程の重症を治す事が出来るのは恐らく、神聖ローマのアポロぐらいだろう。

 だが、アポロは神聖ローマの者であり、いくら蒼の友と言っても協力してくれる保証は無いし、何より連絡手段が無い。


「くそ…ここまでか…」


 神聖ローマの兵が十二支連合帝国に降伏勧告を促した。

 十二支連合帝国は大将を失ってしまった。

 十二支連合帝国の者達からすれば降伏するしか無かった。

 争いは徐々に沈静化していった。

 しかし、それは十二支連合帝国の圧倒的敗北を意味していた。

 ヘレトーアも同じように攻め込まれていたらしく、ルバートは早々に降伏したのでそこまでの被害にはならなかった様だ。

 ルバートととてヘレトーアを従える神官だ。

 バカではなく、前の大戦で疲弊した状態で無理に戦っていたら最悪十二支連合帝国やUSWと同じか或いはそれ以上に凄惨な状態になっていただろう。

 つまり、これで、名実ともに神聖ローマが他の四大帝国を制圧し、事実上世界を征服した…という事になる。

 だが、ルミナスにとってはこの世界征服すら前段階…つまり準備に過ぎないのだ。

 ルミナスの真の目的はその先にある。

 世界を一つにし、そしてこの世界の人々を完全に支配する。

 それがルミナスの目的なのだ。






「十二支連合帝国の魔道警察官が降伏し始めました」

「そうでしょうね、大将がいない兵隊など烏合の衆よ」


 ルミナスはそう呟いた。

 悲願は近い。

 『世界宮殿(パルテノス)』を掌握してしまえば…きっと振り向いてくれる筈なのだから。

 ルミナスはそう思っていた。

 欲しいモノを手に入れたいのならば、自分自身で掴み取るしかないのだ。

 それが例え、相手の気持ちを無視する事になったとしても。


「さぁ…扉が開くわ…」


 ルミナスがそう言うとUSW、神聖ローマ、ヘレトーア、そしてここ、十二支連合帝国から光の柱が出現した。


「これが…扉の光…」






「何だ!?この光は!?」

「まさか…ルミナスの目的が達成されたというの!?」


 インベルとアポロは空を眺めていた。

 天使城(セラフィム・ヴァール)から光が出現していた。

 フランとエクレアもその光を眺めていた。

 更に城の小部屋から一人の少女が出てきた。

 ボサボサ頭のピンク色の長い髪に不健康な程の白い肌に黄色い瞳、ボロボロの白い服を着ている少女だった。

 彼女の名はジェラート・ファイ・ローマカイザー。神聖ローマの第二皇女であり、悪魔と天使の混血であるデモンエンジェルである。


「始めたんだね…ルミナス」


 ジェラートはそう呟いた。

 ジェラートは今回の計画の事は知っていたが大して興味が無かったので傍観していた。

 流石に自体が動き出したのでのんびり構えてはいられなくなったが。


「は~、ルミナス…いや…この世界は…実に面倒臭いね~」





 ヘレトーアにも光が放たれていた。

 ジェジェとワッフルも空を眺めており、牢屋に閉じ込められているルバートも空から景色を眺めていた。

 神聖ローマに降伏した事により、ルバートは捕らえられ、牢屋に入れられていた。

 赤黒い短い髪に瞳、吸血鬼を思わせる中性的な女性であった。


「とうとう…時代が変わろうとしてるのか~」


 ルバートは本来なら戦争にあっさりと降伏する様な人物では無い。

 魔の道を極める研究者気質の人間だ。

 しかし、今はヘレトーアの事実上の統制者だ。

 統制者無くしては国は簡単に崩れ去る事をルバートは知っていた。

 だからこそ、ルバートは自身の役目を優先し、被害を最小限に食い止めたのだ。


「僕、意外と職業意識高いかも」


 ルバートはそう呟いた。






 USWにも光が放たれていた。


「ルミナスがやった様ね…」


 ミルフィーユは【第二解放(エンゲルアルビオン)】を解除してアルダールの元へと向かった。

 澪はミルフィーユにこっ酷くやられた。

 澪は傷だらけの状態で倒れていた。


「うっ…」


 だが幸いにも命は取られなかった様だ。

 ミルフィーユは相手を殺す事にはあまり興味が無いのだ。

 ミルフィーユがあまり殺す事に徹底していない人物で助かったといった所か。


「はぁ…つくづく…悪運強いな~、あたしは」


 この悪運を死んでいった親友、遥にも分けてあげたかった。





「随分と苦戦してるね~、アルダール」


 ミルフィーユがアルダールの元へやって来た。


「ミルフィーユ!ようやくか!ならばさっさとこいつらを…」

「いや、引くよ」

「なっ!?何を言っている!?こいつらを殺すのが我々の任務だった筈だ!」

「いや、私達の任務は足止めだよ。何勝手に命令変えてんのよ」

「ここで殺しておくに越した事は無いだろう!?」

「無闇に殺す必要は無いでしょう…目的は達成されたんだよ?これ以上は無意味だよ。それに…彼女なんかはもう限界みたいだし」


 ルミナスはプロテアを見てそう言った。


「君、もうろくに眼見えないんじゃない?」


 ミルフィーユの言っている事は当たっている。

 プロテアの視力は相当落ちており、最早裸眼ではまともに景色を見る事すら出来ない。


「USWに力を誇示するのには成功したし…事実上、神聖ローマが世界統一をした事になる…それで十分でしょう?それに…人がいないのに世界統一をしても…意味無いんじゃない?」


 ミルフィーユが言う事も尤もであった。

 人を殺しまくって世界統一をしてもその統べる民がいなければ意味がない。


「それでも…邪魔になる者は排除すべきだ…」

「アルダール…私は天使親衛隊(フィーア・エンデ)であなたは一般の騎士団員でしかない。私の方が上の立場だという事を、忘れないで頂戴」

「くっ!?………まぁ、いいだろう。ただし、次に歯向かえば容赦はしない」

「良かったね君達、命拾いしたね」


 アルダールは【第二解放(エンゲルアルビオン)】を解除し、ミルフィーユと共にどこかへ消えていった。


「うっ!?」


 プロテアはそのまま倒れた。

 プロテアが倒れた瞬間、黒宮と『七魔王(セブン・ドゥクス)』を縛っていた鉄の拘束具が解けた。

 プロテアの術が解けたのだ。


「プロテア君!」

「おいおい…これやべぇだろ…」

「ふー、取り合えず、彼女の処置が先だ」






「これで…ようやく『世界宮殿(パルテノス)』へと行ける訳ですね」

「ええ、ここまで来るのにどれ程の時を待ったか…」


 ルミナスが負ける事など有り得ない。

 ルミナスこそがこの世界の救世主だ。

 ローグヴェルトは生き返ってこの世界を巡ったがこの世界に希望が無い事を思い知らされた。

 この世界の資源は有限であり、足りなければ奪い合い、醜い争いか繰り広げられていた。

 それはどの国でも同じであり、四大帝国はその犠牲を踏み台にしているに過ぎなかった。

 ローグヴェルトはそれを知って絶望した。

 ローグヴェルトの求める平和など無いのだ。


「雨は止まず…この世界は慟哭し続ける…この世界の犠牲も悲しみも…全てが雨によって洗い流される…そしてそれが全て…私の世界を創る為の礎となる」


 ルミナスがそう言った瞬間、ルミナスの真上に爆発が起こった。


「あれは…」





 蒼は十二支連合帝国へ到着した。

 ここでは雨が降っていた。

 蒼はすぐに一夜達の元へと向かった。


「蒼!?」

「一夜…」


 蒼は辺りを見回した。

 すると、屍と慧留がいた。

 二人とも重症を負っていた。


「蒼……私は…友達を止められなかった…多くの人達がこの戦いで死んで…私は…何も出来なかった…」


 慧留は涙を…悔しい気持ちを堪えながら蒼に言った。

 友を…仲間を…救う事が出来なかった慧留は自身の無力さを呪った。


「蒼、君はずっと…色々なモノを背負ってた…そして…また…背負わせる事になってしまった…私は…今は…君に謝る事しか出来ない…」


 慧留は傷だらけであった。

 本来なら話す事すら出来ないししない方がいいのだろう。

 だが、それでも慧留は話す事を止めなかった。

 蒼はこれから戦場へ行く、ルミナスと戦いに行く、ならば、慧留は蒼に言っておきたい事があるのだ。


「蒼…お願い…この国を…世界を守って……!」


 蒼は慧留の言葉を聞き、真っ直ぐに前を向き、そして去っていった。

 蒼は何も言わずに慧留の前から消えた。


ーそれでいいんだよ…蒼…


「後は…任せたよ…」


 慧留はそのまま気を失った。




 ルミナスとローグヴェルトはさっきの爆発は蒼の光速移動によるモノである事に気が付いていた。

 派手な登場だ。あれだけ派手なら気が付くなという方が無理な話だ。

 ルミナスはどこか嬉しそうな顔をしていたがローグヴェルトは面倒な事になったと言いたげな顔をしていた。


「どうやら…来たようね…」

「フローフル…思ったより到着が速かったですね…どうします?」

「今は『世界宮殿(パルテノス)』が優先よ。フローフルは後回しにするわ。このまま神聖ローマに撤退するわ」


 ルミナスはそう言ってここから去ろうとする。

 ローグヴェルトもそれに続いていった。


「!?」


 しかし、ルミナスとローグヴェルトの撤退は避けられた。

 何故ならば、ルミナスの目の前に水色の刀が落ちて来たからだ。

 この刀は見覚えがある。蒼のエンゲリアス、【氷水天皇(ザドキエル)】だ。

 この刀がルミナスの眼前に落ちて来たという事は…蒼は既にこの場所へ来ているという事だ。


「来たわね…フローフル…」


 ルミナスがそう言うと蒼はルミナスの前にやって来た。

 ローグヴェルトはルミナスの後ろに立っていた。

 蒼は自身の刀を取り、そしてルミナスの前に立った。

 蒼とルミナスが今、激突する。






To be continued

 かなり絶望的状況になってますね。どうなるんですかねこれ。ついに、ローグヴェルトの力の一端が明らかになりました。ローグヴェルトは慧留の因縁の相手です。しかし、今回は慧留の完全敗北を喫しました。リベンジなるか見所ですね。

 そしてついに、次回、蒼とルミナスが激突します!これからどうなって行くのかお楽しみに!それでは!

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