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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【最終章】天界叛逆篇
161/196

【最終章】天界叛逆篇Ⅴーdeath of the endー

「申し訳…ございません…ルミナス様…」


 ルミナスは厳陣に倒され、下半身を消し飛ばされ、上半身のみになっていた。

 そんなルミナスだが何故か申し訳無さそうにずっと謝っていた。


ー!?何を言っているのだ…こいつは…この女は敵の大将だ…大将が誰に謝る!?


「役目を…果たせませんでした…ルミナス様…」


 ルミナスはまだ謝っていた。


「何を言っているのだ!?貴様は!?」


 すると、花園神社が爆発した。


「!?」


 厳陣は驚愕し、神社の方を振り向いた。

 いつの間にかもう一人のルミナスがおり、上半身のみになったルミナスの前にいた。


「御苦労様」


 もう一人のルミナスがそう言った。

 そして、ルミナスは更に言葉を続けた。


「ジェリー・トムソン。貴方のその能力は見事だったわ」


 すると、倒れていたルミナスの姿が変わっていた。

 銀色の髪に褐色の肌をしていた男であった。


「私めを…誉めてくれるのですか?光…栄…」


 ジェリーはそのまま生き絶えた。

 その瞬間、ルミナスは霊呪法でジェリーの五体を粉々に消し飛ばした。


「どう…いう…」


 厳陣は訳が分からず困惑していた。


「見ての通りよ。あなたは今まで私の影武者と戦っていたのよ」

「なっ!?」


 つまり、今まで厳陣はルミナスの偽物と戦わされていたという事になる。


「彼のエンゲリアスは【魔天使(タブリス)】と言って紙を操るエンゲリアスなのだけど…彼の第二解放(エンゲルアルビオン)、【偽りの影武者(シャッテン・クリガー)】は自身を紙媒体に分解し、指定した対象の能力は勿論、人格、癖、思考まで全てコピー出来るわ。勿論、所詮はコピーだから劣化にしかならないけど…こうやって影武者として使うには最適と言う訳よ」


 ジェリーはルミナスに化けて足止めをしていたという事になる。


「私を足止めしてまで何をしていた!?」

「『世界宮殿(パルテノス)』の扉を開いていた」

「!?」

「その為の足止めよ…」

「つまり…残るはUSWとヘレトーアだけ…という事か!?」

「いえ、ヘレトーアとUSWは既に開錠しているわ。USWに至っては三年前からね」

「!?まさか…途中開錠をするだけなら…鍵が三つ揃って無くてもいいのか!?」

「その通りよ」


 USWは三年前から既に扉を開いていたという事は蒼達が慧留を奪還しに行ったあの時だろう。

 そして、ヘレトーアは恐らく、前のヘレトーア大戦の時だ。

 あの時既に扉を開いていたという事になる。

 神聖ローマは…最早言うまでも無い。


「あなたは十三人いる私のセラフィム騎士団の一人を倒したに過ぎない…あなたのやった事は全て無駄なのよ」

「貴様…!」


 厳陣は再び【熱殺日蝕(スーリア・ラーフ)】を使用し、ルミナスに攻撃を仕掛けた。

 しかし、ルミナスは回避する気配が無かった。


「良いわ、来なさい。無駄だという事を分からせて上げるわ」


 ルミナスは回避をしなかった。

 厳陣はルミナスを切り裂いた。

 ルミナスの右腕が吹き飛んだ。

 しかし、ルミナスの右腕は瞬く間に再生した。


「なっ!?」

「これはローマカイザーの霊術の一つ…三代目皇帝ルクスが使っていた【無限再生(エンデ・ヒール)】…どんな傷を負っても一瞬で回復出来るのよ」

「バカな…!?」


 それだけではない。

 本物のルミナスはさっきの偽物のルミナスとは霊圧硬度もまるで違っていた。

 偽物のルミナスは一撃で下半身を吹き飛ばせたのに本物のルミナスは右腕を持っていっただけだ。

 しかもその右腕は一瞬で再生した。


「私はね初代から九代目までのローマカイザーの霊術を全て扱う事が出来るのよ。まぁ、私のこの力は絶対にコピー出来ないけどね。ジェリーもこの力はコピー出来なかった様だしね」

「くっ…」

「無駄だと分かったかしら?貴方の言葉をそのまま返すわ。私の軍門に下れば…その命、助けて上げるのも吝かでは無いわ」

「ふざけるな!」

「言うと思ったわ」


 そう言ってルミナスは厳陣の攻撃を回避した。


「雨が降ってるというのに…貴方の力は燃え上がっている…素晴らしい力ね…その力に敬意を表して私も本気で戦うわ…【第二解放(エンゲルアルビオン)】」

「!?」


 ルミナスの長剣が消え、それがルミナスの翼となった。

 ルミナスの背中には四対の翼が生えており、頭には王冠が付いていた。

 それ以外では外見に変化は無かった。シンプルな【第二解放(エンゲルアルビオン)】だ。

 しかし、霊圧は段違いに跳ね上がっており、はっきり言って次元が違う。

 これが…神聖ローマで最年少で皇帝となり、歴代最強と謳われているルミナス・アークキエル・ローマカイザーの真の力である。


「【裁きの白天翼(さばきのはくてんよく)】」


 ルミナスは右手を掲げた。

 すると、翼から光が出現し、その光がルミナスの手に収束していく。

 それが白く長い長剣となった。


「【破滅の王剣(ネメア・デーゲン)】」


 ルミナスは厳陣を切り裂いた。





 ここはUSW、美浪とクラッカーが戦っていたのだが結果的にクラッカーが勝利し、美浪に止めを指そうとした所、何者かの攻撃でクラッカーの右足を切り落とされていたのだ。

 美浪は空中を見上げた。


「何者だ!?」

「何者だぁ?俺様だよ!」

「スー…プレイガ…さん…」


 そこにいたのは金髪のリーゼントに瞳、ヤンキー風の見た目が特徴の青年であった。

 彼の名はスープレイガ・レオンジャック。

 USWの悪魔であり、アンタレスの幹部『七魔王(セブン・ドゥクス)』の一人だ。

 しかし、スープレイガはここに来るまでに戦闘があったのか服がボロボロになっていた。


「お前は確か…時神の仲間だったな…情けねぇやられかたしてんな…」


 スープレイガは地上に降りた。


「こいつら…神聖ローマだな…何でこんな面白そうな事をやってんのか…まぁ、今はどうでもいいわ…取り合えず…てめぇら全員ここで終わらせてやるぜ!」


 スープレイガは光の刃をクラッカーに放った。


「くっ!?」


 どうやら、クラッカーにはかなり効いている様だ。


「こいつ…吸血鬼なのに霊力を纏ってんのか?何なんだこいつ…」

「よく分からへんけど…改造天使って言ってました」

「改造天使だぁ?ハッ!神聖ローマもキナ臭い実験してんじゃねーの!」


 どうやら、天使に改造されても元が吸血鬼である以上、光に弱いのは変わってない様だ。


「さっさと終わらせる!煌々と照らせ!【黄金汪魔(ルシファー)】!!」


 スープレイガは【悪魔解放(ディアブル・アーテル)】を発動した。

 身体中には金色の鎧が纏われており、四肢には鋭い鋭利な刃物の様な鋭い爪が生えており、頭には金色の王冠の様なモノがついていた。

 髪は地面に着く程の長さになっていた。


「【光刃刀(ルクスラミーネ)】!」


 スープレイガは更にクラッカーの左足を切り落とした。


「ぐっ!?」

「新技だ…見せてやる…【光魔王刃刀(ルシファーズ・ルクシリア)】!」


 スープレイガは両手から巨大な光の刀を出現させ、光の刀が十本まで増え、その刃がクラッカーの身体全身に貫かれた。


「ぐあああああああああああああああああああ!!!!」


 身体全身を貫かれた後、切り裂かれ、巨体であったクラッカーの身体は粉々になった。


「凄い…」

「この程度かよ…」


 スープレイガは【悪魔解放(ディアブル・アーテル)】を解除し、元の姿に戻った。

 クラッカーも粉々になった五体が集まり、元のクラッカーに戻った。

 クラッカーの身体は傷だらけであり、とても戦える様な状態では無かった。


「終わりだな…おい女、お前が来てるって事は時神も来てんのか?」

「え?あっ…確かに来てますけど…」

「!? あいつはどこだ!?」

「えっと…多分あれです」


 美浪は遠くに指を指した。

 そこには風と氷が渦巻いていた。


「確かに…間違い無さそうだな…つか…誰か戦ってるのか?」

「そんな事より、スープレイガさんはドラコニキルさん達を助けに行って下さい!」

「あ?ドラコニキル?あいつがそんな簡単にやられる訳無いだろ?」


 スープレイガはこのUSWに神聖ローマが攻めてきた事以外は全く状況を判断していなかった様だ。

 美浪は今、このネオワシントンで起こっている事を詳しくスープレイガに説明した。


「ドラコニキルがそんな簡単に…それにアルビレーヌにウルオッサまで…」

「蒼と戦いたいのは分かりますけど今はそんな事をしてる場合じゃ…」

「わーってるよ。今はドラコニキル達を助けるのが先だ」

「………」

「何だよ?」

「いや、思ったより素直だなって」

「まぁ、こればっかりはな。USWが無くなっちまったらどこで時神をぶっ潰すんだよ」

「あー、そういう事ですか…」


 スープレイガはそう言ってここから去っていった。


「くっ…」

「!?」


 クラッカーが立ち上がった。

 歩く度に血が吹き出し、限界なのは明白であった。


「私は…負けない…ルミナス様の為に…」


 普通じゃない…これは…異常である。

 ここまで一人の対象にに盲信するのは明らかにおかしい。

 クラッカーは終始、瞳に光りは無く、まるで死んでいる様であった。

 今のこの状況もまるで痛みを感じていない様である。


「何で…そこまで…」


 美浪には分からなかった。


「ルミナス様の為にルミナス様の為にルミナス様の為にルミナス様の為にルミナス様の為にルミナス様の為にルミナス様の為にルミナス様の為にルミナス様の為にルミナス様の為にルミナス様の為にルミナス様の為にルミナス様の為にルミナス様の為にルミナス様の為にルミナス様の為にルミナス様の為に為為為為為為為為為為為為為為為為為為為為為為為為為為為為為為為…………」


 クラッカーは壊れた人形の様にそう言いながら力尽きた様に倒れた。

 そして、身体が灰化して粉々になって消えていった。

 クラッカーは話に聞く限り真祖クラスの吸血鬼だ。

 真祖というと黒宮の様な吸血鬼なのだがほぼ不老不死であり、殺すのは非常に困難とされる。

 そのクラッカーが灰化して消えた…という事は考えられるとしたら改造天使とやらがクラッカーの身体を蝕んでいた可能性が高い。

 本来吸血鬼にとって天使の因子を入れるのは毒になる筈だ。

 逆もまた然りで天使にとっても悪魔は毒になる。

 吸血鬼は悪魔の近縁種である。

 クラッカーのあの様子は尋常では無かった。

 ルミナスは恐らく相手を洗脳する何らかの術を使える。

 ルミナス…一夜の言った通り、得体の知れない人物である様だ。

 それに…クラッカーはとてつもなく強かった。

 これがセラフィム騎士団の力。だとするとー


「ヤバイよ…これ…」






 澪とノヴェルトは戦闘を繰り広げていた。

 しかし、実力は互角と言った所であった。


ーノヴェルト…確かこいつ…神聖ローマの反乱軍だった筈なのに…ルミナスに対してここまで忠誠心があるのはおかしいね…


 澪は神聖ローマの反乱軍の事はある程度知っていた。

 反乱軍はローマカイザーによって不当な目に合わされている者達が殆どであり、本来ならルミナスを恨んでいる筈だ。

 なのに、ノヴェルトにそれが一切無い。

 いや、それ所か感情が消し飛ばされている様な感覚だ。

 いずれにせよ、奇妙な感覚である事には変わり無い。


「ルミナスに洗脳でもされたのかな?」

「洗脳ではない。俺は生まれ変わったのだ」

「どうや…まともじゃあないねこれは」


 澪はそう呟いた。

 まぁ、今のノヴェルトがどう見てもまともじゃないのは見ていて明白なのだが。


「【主天使(キュリオス)】」


 ノヴェルトはコンバットナイフを取り出した。

 恐らくあれがノヴェルトのエンゲリアスだ。

 更にノヴェルトは姿が消えた。


「これは…まさか景色と同化してるのかな?」


 澪はそう呟いた。

 ノヴェルトの専売特許は暗殺だ。

 彼はこうやって景色と同化し、霊圧も消す事で相手を殺してきた。


「まるでカメレオンだね…面倒だ。【星隕石雨(メテオレイン)】!」


 澪は空から無数の隕石を落とした。


「!?」

「これならその保護色の能力も意味無いね」


 ノヴェルトは澪の攻撃を全て回避したが景色が隕石の落下により変化したのでノヴェルトの姿が見えた。


「【流星神速(スタードライブ)】」


 ノヴェルトの眼前に既に光速で移動した澪がいた。


「【義憤女神審判(ネメシスシーツリヒター)】」


 ノヴェルトは澪の光の攻撃をまともに受けた。


「くっ…」


 ノヴェルトはそのまま吹き飛ばされた。


「やったかな?」


 澪は土煙を見つめた。

 すぐにノヴェルトは出てきた。

 全身が傷だらけであった。


「【第二解放(エンゲルアルビオン)】」


 ノヴェルトは『第一解放(アインスエンゲル)』では澪には歯が立たないと判断した。

 まぁ、あの攻撃を回避しても保護色の能力を見抜かれている以上あの手この手で澪はノヴェルトの能力を破ってくるだろう。

 そうなれば不利になるのはノヴェルトの方だ。

 なのでここでノヴェルトは【第二解放(エンゲルアルビオン)】を発動した。


「【無色彩の景色(アクロマ・ディエ・ランドシャフト)】」


 ノヴェルトが完全に姿が消えた。

無色彩の景色(アクロマ・ディエランドシャフト)】の能力は最初の擬態能力のより拡張した能力だ。

 景色と自身を完全に感応し、自然と一体化する能力だ。

 澪のいる地面が突然動き出し、澪を捕らえた。


「!?」


 澪は【流星神速(スタードライブ)】で逃げ切るが今度は蜃気楼が出現し、方向感覚を狂わされる。

 更に突風が発生し、澪の身体を切り刻んだ。


「くっ!?」


 自然と完全に一体化している為、ノヴェルト本体を狙い様が無い。


「これは…ちょっとヤバイね…」


 澪はかなり焦った顔をしていた。

 まさか自然と同化するだけでなくその力を行使出来るとはかなりふざけた能力だ。

 自然とは概念であり、概念である以上、攻撃のしようがない。

 左を見ながら右を見ろと言っている様なモノだ。


「自然と同化して一つとなる…これぞ最強の戦術だ」

「そうだね~。こんだけ都合のいい能力なんだ…なんか弱点とか無いわけ?」

「それを素直に教えると思うのか?」

「それもそうか…ならもう一つ聞いてもいいかな?」

「何だ?」

「君って元反乱軍でしょ?ルミナスは敵なんじゃないの?何で彼女に味方するのさ?」

「言っただろう。俺は彼女に破れ…そして生まれ変わったのだ」

「うん、君のその説明が意味不明(イミフ)だから聞いてるんですけど?」


 澪の質問に答える義理は無いと言いたげにノヴェルトは砂嵐を使って攻撃した。

 澪はどうにか回避するがやはりノヴェルトの手数は圧倒的であり、徐々に押され始めていた。


「くっ!?【星光輝(スターレイ)】」


 澪は光のレーザーを放ったがやはりノヴェルトには全くダメージが無かった。


「自然と同化している俺にそんな攻撃は効かない!」


 砂と風の二重攻撃で澪の身体は切り刻まれた。


「くっ!?」


 澪は【流星神速(スタードライブ)】で辛くもノヴェルトの攻撃から逃げた。


ーさて…あの能力は厄介だぞ…少なくとも自然と同化中は攻撃が一切通らない。


 澪は冷静にノヴェルトの能力の分析をした。

 今のところノヴェルトは砂嵐と風の突風の攻撃しかしていない。

 恐らく、彼の【第二解放(エンゲルアルビオン)】は地形によって扱える能力が変化するのだ。

 氷の地形なら氷を使う事が出来るし、マグマや火山などなら炎の力を扱う事が出来るのだろう。

 あくまで攻撃に使えるのはその地形由来の攻撃だけの様だ。

 だが、生物が自然と同化するには相当な霊力を消耗する筈だし、あまり長い間は自然と同化出来ない筈だ。

 長時間自然と同化を続ければ自然と生物の境界が無くなってしまい二度と元に戻れなくなる。

 自然と一体化するには相応の危険性(リスク)がある筈だ。

 澪は眼を使って観察した。

 澪の眼は【星眼(シュテルンアオゲ)】と呼ばれる眼であり霊力の流れを見る事が出来、更には観察眼に優れている。

 この眼で一応、ノヴェルトの位置を特定出来るのだが、さっきからノヴェルトのいる位置に何度も攻撃を仕掛けたが全く当たらなかった。

 恐らく、自然と一体化してる影響で攻撃がすり抜けてしまうのだろう。


「?」


 澪はある事に気が付いた。

 それはノヴェルトの霊力の流れが微妙に変化している事に。


「そこか…」


 ノヴェルトは澪の位置を特定し、突風を発生させた。

 澪は攻撃を回避し、ノヴェルトに攻撃を仕掛けた。


「【星混沌旋風(スター・カオスストリーム)】!」


 ノヴェルト澪の攻撃を回避した。

 しかし、澪はノヴェルトが()()()()()タイミングを狙って蹴りを入れた。


「くっ!?」


 ノヴェルトはまた自然と一体化した。


「やっぱり、流動的に自然との一体化と分離を繰り返してる…そのタイミングを見極めれればどうにか倒せる!」

「ちぃ!」


 澪はノヴェルトが実体化する霊力の流れはさっきので把握した。

 後はタイミングを合わせるだけだ。

 ノヴェルトも焦ったのか澪をすぐに殺そうと躍起になっていた。

 しかし、澪はノヴェルトの攻撃を回避し、実体化するタイミングを狙った。


「【九頭竜黒縛(くずりゅうこくばく)】!」


 澪は霊呪法でノヴェルトの身体を縛り上げた。

 黒い霊力の杭がノヴェルトを縛っていた。


「くっ!?くそ…」

「君の力…厄介だったよ。けど…これで終わり…【彗雲流星群(スター・ゲイストブラスター)】!!!」


 澪は上、真ん中、下に二つづつからエネルギー弾を発射した。


「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


 ノヴェルトは澪の攻撃を直撃した。

 その瞬間、ノヴェルトの【第二解放(エンゲルアルビオン)】は解除され、周囲の景色も元の夜の砂漠に戻った。

 澪は地面に落下したノヴェルトに近付いた。


「あ…ぐっ…」

「これで…あたしの勝ちだね」

「あ…あ…ぐっ!?」


 ノヴェルトは頭を抱えた。

 何やら頭痛に襲われている様だった。


「!?」

「そ…そうだ…俺は…あの…眼…で…!?」

「眼?」

「くっ…ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


 ノヴェルトは頭痛に悶え苦しんでいた。


「ど…どうなってるの?」


 澪は展開に着いていけず混乱していた。


「ぐっ…貴様…ルミナスの…眼に…気を…つけろ…奴の…瞳は…全てを…奪…………」


 ノヴェルトはそのまま生き絶えた。


「眼…?まさか…瞳術?道理で…」


 瞳術とはその名の通り、眼から発動する術である。

 眼は魔力や霊力の影響を受けやすい部位であり、例えば慧留は【悪魔解放(ディアブル・アーテル)】を使用する時に瞳の色が変化しているし蒼も霊力によって眼の色が変化する事があった。

 プロテアもこの戦争を終えてから左眼が変化していたので恐らく瞳術の力が開花したのだろう。

 ルミナスの瞳術は恐らく精神干渉系の術だ。それも非常に強力な術だ。

 ノヴェルトは恐らく、その術でルミナスに洗脳されてしまったのだ。

 澪がそんな事を考えていると遠くから突風が巻き起こった。


「…考えるのは後にした方が良さそうだね…」


 澪は蒼達のいる場所へと向かった。






「長い…意外と踏ん張るね…」


 アルダールは本を読みながらそう言っていた。

 アルダールの【第二解放(エンゲルアルビオン)】、【愚者の本棚(ビブリオテック・アルマハト)】により、黒宮とプロテアは能力を封じられた上にアルダールが作り出した剣を使って殺し合いをさせられていた。

 アルダールの【第二解放(エンゲルアルビオン)】は【全智天使(ラティエル)】によって解析した能力を封じ込め、尚且つ【全智天使(ラティエル)】の本で書いた内容を現実にする事が出来る能力だ。

 アルダールの能力により黒宮とプロテアは剣で戦っていた。


「くっ…」


 黒宮は不死である以上、負ける事は無いがプロテアは違う。

 このままではプロテアがやられてしまうだろう。

 黒宮がプロテアを斬った。

 すると、プロテアの眼帯が斬れて外れた。


「ん?」


 アルダールはプロテアの左眼を珍しそうに見ていた。


「何だ?その眼は?珍しい眼だね」


 アルダールがそう言うとプロテアは何かに気が付いた様な顔をした。

 プロテアは左眼を閉じた。すると、左眼から血が出てきた。


「!?」

「【鉄神剣眼(アインハイス)】!!!」


 プロテアは左眼を開いた。その瞬間、黒宮の周囲に無数の鉄の剣が出現した。


「【鉄万化眼(アインマナト)】!!!」


 鉄の剣が形を変え、拘束具へと姿を変え、黒宮の身体を地面に張り付けた。


「これは…」

「少しの間、それで辛抱しなさい」


 プロテアはそう言ってアルダールの方へ向いた。


「バカな…!貴様の力は全て封印した筈…!」

「残念だったわね、研究不足よ」

「くっ!?その左目の術…瞳術か!?」


 アルダールはプロテアの左眼を見て珍しがっていた。

 それはつまり、プロテアの眼の力が解析されていない事を意味する。

 解析されていない能力であれば能力を使用出来るとアルダールは言っていた。


「能力を解説する時は慎重にした方がいいわよ。こうして…突破口を作られかねない」

「くっ!?」

「【鉄神剣眼(アインハイス)】!」


 アルダールの周囲に無数の鉄の剣が出現した。


「くっ!?」


 アルダールは【第二解放(エンゲルアルビオン)】を解除し、プロテアの攻撃を回避した。


「うっ!?」


 プロテアは左眼を抑えた。

 その瞬間、アルダールを狙っていた鉄が消え去った。

 アルダールはこの隙を逃さなかった。


「【全智天使(ラティエル)】!」


 アルダールはプロテアの瞳術の解析を行った。

 解析を行って再び【第二解放(エンゲルアルビオン)】を発動させればアルダールの勝利だ。


「何!?閲覧…出来ないだと!?」


 プロテアの能力は閲覧出来なかった。

 全知全能のエンゲリアスである【全智天使(ラティエル)】が閲覧出来ない様な能力…そんな能力が…


「くっ!?」


 プロテアは先程から黒宮の攻撃を受けており、かなりのダメージを受けていた。


「危なかった…もう少し対処が速ければ…やられていたのは私だったな…」


 アルダールはプロテアを処理しようとした。

 アルダールでも解析不能の力という事はあの力は間違いなくパルテミシア十二神の力である。

 弱っている今のプロテアを処理するのが最適だ。


「【鉄魔王剣(ハディード・セイフ)】!」

「!?」


 アルダールはプロテアの剣を回避した。

 だが、かなりギリギリだった。


「あなた、確か接近戦は苦手でしょう?流石に今の状況でも能力の使えないあなたに負けるなんて有り得ないわ」

「………どうやら…その様だな」


 アルダールの戦闘力の低さがここに来て足を引っ張ってしまっている。

 だが、プロテアのあの瞳術は彼女自身にも相当な負担がある上に黒宮との同士討ちでかなり消耗している。

 黒宮もプロテアの瞳術で動けなくなっている。

 ここは何もせず膠着してる方が懸命だ。


「へっ…隙だらけだぜ?」

「!?」


 アルダールの後ろに回り込んでいたスープレイガがアルダールを蹴り飛ばした。

 アルダールは能力を出す暇も無かった。


「スープレイガ…」

「プロテアに黒宮か……て…本当に磔にされてやがる…情けねぇ…」


 スープレイガはそう言って磔にされていたドラコニキルとアルビレーヌ、ウルオッサを助け出した。


「おい、しっかりしろ」

「スープレイガ…か…正直、今までで一番、貴様がいて良かったと思ったぞ」

「どういう事だゴラ?」


 ドラコニキルの言葉にスープレイガはキレ気味にそう言った。

 アルビレーヌもウルオッサも意識を取り戻した様だ。


「助かったわ…レイ…あなたが別の任務に出てて助かったわ」

「そうだね~、今回ばかりは感謝だね今回ばかりは」

「お前らあまり調子こいてると埋めるぞ?」


 ウルオッサの態度にスープレイガはキレそうであった。


「くっ…」


 アルダールが立ち上がった。

 身体はかなりボロボロになっていた。


「本気で蹴り飛ばしたとはいえ…あれは喰らいすぎだろ…お前、弱ぇな…」

「生憎…戦闘力は低いモノでね…【第二解放(エンゲルアルビオン)】!」


 アルダールが再び第二解放を発動した。


「『七魔王(セブン・ドゥクス)』の能力は解析済みだ!貴様らの能力など…」


 再びスープレイガはアルダールを殴り飛ばした。


「能力封じられても素手でてめぇをやれるんだよ」


 スープレイガは当たり前の様にそう言った。


「くっ…」

「意外に頑丈だな」

「ふ…私には私のやり方があるのでね」


 アルダールは本に「スープレイガ、ウルオッサ、アルビレーヌ、プロテアかま殺し合う」と書いた。

 すると、スープレイガ、ウルオッサ、アルビレーヌ、プロテアが戦いを始めた。


「【鉄神剣眼(アインハイス)】、【鉄万化眼(アインマナト)】!」


 スープレイガ、ウルオッサ、ドラコニキルの三人はプロテアが造り出した鉄の拘束具で拘束した。


「何だ!?こりゃあ!?」

「くっ…また拘束されたか…」

「どうなってるの!?」

「詳しく説明して~」


 『七魔王(セブン・ドゥクス)』の面々は訳が分からないといった様子だ。


「うっ!?」


 プロテアは両眼を抑えた。

 かなり眼の負担が大きい様だ。

 プロテアは再び眼を開けた。すると、視界がかなりぼやけており、まともに景色すら見えない状態だった。


ー視界が!?


 恐れていた事が現実となった。

 プロテアの眼はもう限界だ。


「奴の能力は…解析した能力を封じ込め、更に彼の本に文章を書くとその内容が現実になります!プロテアさんがあなた達を拘束しなかったら、今頃あの本に書かれていた通り、殺し合いになってましたよ!」

「なら何でプロテアは普通に能力を使えるの?」


 アルビレーヌは黒宮に質問した。


「それは私にも分かりませんが…どうも彼は、プロテアさんの能力は封じ込める事が出来ない様です!」

「ふー、それで黒宮大志も俺達と仲良く拘束されている訳か」


 ドラコニキルが冷静に状況を分析した。


「そういう事です!」

「じゃあこのままあいつを倒せばいいじゃん」

「プロテアさんは消耗してます」

「…らしいな…見たところ、あの瞳術は眼の負担がヤバそうだ」


 スープレイガはプロテアのあの眼が相当、危険性(リスク)の高い代物だという事を分かっていた。


「くっ!?」


 プロテアは眼を擦ったが視界が回復する気配が無かった。


「どうやら…貴様も限界の様だな」


 アルダールはそう言った。

 だが、アルダールも身体を動かすだけでもやっとだ。

 今はミルフィーユと蒼の戦いにカタが着くまではこのまま何もしない方がいいだろう。

 まさか、ここまで苦戦を強いられるとはアルダール自身思っても見なかった。

 敵の能力は全て解析しきったつもりだったがどうやら甘かった様だ。


「くっそ!アルダールの奴、このまま時間稼ぎをするつもりだぞ!?」

「とは言ってもどうしようもなくない?」

「ウルオッサ!?お前やる気あんのか!?」

「無いで~す」

「てめぇ…」


 スープレイガはウルオッサの言いように腹が立っていた。

 とは言え、ウルオッサ自身、怠惰な性格なので仕方が無いような気もするが。


「はぁ…はぁ…」


 プロテアは限界だった。

 恐らく、もう【鉄神剣眼(アインハイス)】は使えないだろう。

 だが、アルダールはプロテアの視力が低下している事に気が付いていないのがまだ幸いだった。

 アルダールも相当なダメージを受けている。

 このままお互いに動かない方が賢明と言えるだろう。


「くっ!?ミルフィーユの奴め…さっさと終わらせろ…!」


 アルダールはミルフィーユがダラダラと蒼と戦っている事に苛立ちを覚えていた。

 ミルフィーユはいつもそうだ。

 命令よりもまず、戦いを楽しむ事を優先する。

 相手がずっと戦う事を待ち望んでいた蒼であるから尚更そうなのだろう。

 しかし、アルダールにとっては命令や役割を遂行するのが優先の為、ミルフィーユとはウマが合わず、よく衝突もしていた。

 この二人の相性の悪さはセラフィム騎士団随一だろう。

 だがそれでもアルダールは今、ミルフィーユの助けを待つしか無いのだ。

 アルダールとプロテアの長い膠着が続いた。






To be continued

 はい、色々な所で局面が動いてます。今回はついにルミナスが本格的に戦いを始めました。ぶっちゃけ強くし過ぎたかなって個人的に思います。平たく言えばルミナスの能力はどんな攻撃も受け付けず、逆に自分の攻撃は当たれば必殺というね…しかもそれだけじゃなく、色々な術も使えるという正に小学生が考えそうな無敵キャラになっちゃいました(笑)

 この後の展開はいずれお届けしますのでそれまでしばしお待ちを。それでは!

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