【最終章】天界叛逆篇Ⅳーdestinyー
慧留と屍は四神天城へと向かっていた。
「あそこに何か…」
しかし、慧留と屍の前に白装束の敵がやって来た。
「この白装束…ローマだな…」
「そうだね…押し通る!」
慧留は紫色の剣を取り出した。
屍は石板を取り出し、そこから骨の形をした槍を作り出した。
「【拒絶王女】!」
慧留と屍は敵を斬り倒していった。
敵の数は多かったが二人の敵では無い。
「あいつら…かなり兵力を温存してたみたいだな…」
「うん…全部この時の為の温存だろうね」
慧留と屍は敵を倒しながら先へと進んでいった。
「そこまでだ…」
慧留と屍を呼び止める声が聞こえた。
やって来たのはー
「ローグ!?」
「久し振り…という訳でも無いか…エル…」
「こいつ…セラフィム騎士団の団長か!?」
「天草屍もか…どうやら、ここに残っているのは天草屍とエル…そして苗木一夜の様だな。フローフル、プロテア、霧宮美浪がUSWへ向かったか…」
「何でてめぇがそんなことを!?」
「兵力の分散は基本中の基本だろ?」
「まさか…」
慧留と屍はまんまとルミナス達に嵌められた事に気が付いた。
どうやら、蒼達の戦力を分散させる事も今回の戦いの目的でもあったらしい。
「貴様らが相手か…少々骨が折れるが…仕方無い…」
ローグヴェルトは剣を抜いた。
「【滅殺虹剣】」
ローグヴェルトの剣が巨大な虹色の大剣に変化した。
「ローグ!お願い…止めて!何で…何で私達が戦わないといけないの!?」
「陛下の命令は絶対だ。この戦いは陛下の為の…世界の為の戦いだ」
「戯れ事を抜かすんじゃねぇ!多くの犠牲を払ってようやく手に入れた平和を壊す事が!世界の為なのかよ!?」
「若いな…我々は貴様らの様な目先だけを見ている訳では無いのだ。その先…大局を見ているのだ。こんな上っ面だけの平和が…本当に平和と言えるのか?」
「何だと?」
「戦争が終わっても、根本的な事は解決しない。貧困、暴力、不平等、妬み…他にも挙げればキリがないが…この世界に争いの火種はどこにでもある。それを全て取り払わない限り、本当の平和など無い!」
ローグヴェルトはそう言った。
そう、戦い、勝てば全て丸く収まるのはゲームの世界だけだ。
この世界は現実だ。人を傷付ければ人に殺される。
戦争が戦争を呼び、争いは争いをひたすらに呼び続ける。
第四次世界大戦も元はと言えばプラネット・サーカスが小国を焚き付ける以前に小国が緊迫した状態であり、それを四大帝国が放置し続けた結果だ。
四大帝国の安寧と平和は小国の犠牲の上で成り立っているのだ。
だが、四大帝国はそれを無視し続け、偽りの平和に身を置いている。
「だから…全てを壊せばそれで良いってのか!?お前らのやってる事はただの独裁だろ!?」
「元テロリストが随分と言うようになったな」
「今はてめぇらが完全にテロリストだがな」
「いや、我々はテロリストではない。そもそもテロリストとは世界を変える事に失敗した者達の事だ。我々は世界の変革に成功する。だから、テロリストではない…陛下はこの世の救世主だ」
テロリストとは言ってしまえば敗北者に付けられる烙印だ。
世界を変えてきたのはいつだって今までの世界を壊してきた者達だ。
「貴様の理屈だと英雄もテロリストだが?」
そう、英雄とて多くの人を殺してそう呼ばれているに過ぎない。
英雄も場所が違えばただの暴君も同じなのだ。
「ローグ…ルミナスが救世主なら教えて。ルミナスは…何をしようとしてるの?」
「そうだな…どうせ貴様等は我々にひれ伏す事になる。だから教えておいてやろう」
ローグヴェルトはそう言って大剣を地面に突き刺した。
「まず、『世界宮殿』へと行くためには何が必要か分かるか?」
「あ?確か…『万物の古鍵』とかいうやつだろ?」
「それだけじゃないよ…扉を開くための重霊地も必要だよ」
「重霊地?何だよそれ…」
「簡単に言えば霊力や魔力の濃度が高い土地の事だよ」
「一度、『万物の古鍵』と融合しただけの事はある。エルも知っていたようだな」
重霊地とは霊力或いは魔力が満たされている場所の事であり、『世界宮殿』の扉が存在する。
「『世界宮殿』へ行くなら君達のローマからでも行ける筈なのに…どうしてわざわざ他の三国を襲う必要があるの!?」
「やはり…その先は知らない様だな…無理もない。これはロキすらも知らなかった事だ」
「?」
「違う…『世界宮殿』へ行くためには四つ全ての重霊地と鍵をリンクさせる必要がある」
「!?」
「それが…目的か…」
「ああ、その為に他の三国を前の戦争で疲弊させ、三国を分散して制圧する事が目的だった。いくら我々でも万全の状態の他の三国に挑むには力不足だったのでな」
「『世界宮殿』に行って…どうするの?」
「世界中の人々をルミナス陛下の軍門に下らせる」
「なっ!?そんな事が…」
「出来る…『世界宮殿』の力ならな」
「『世界宮殿』はただの概念装置の筈…そんな事を」
「『世界宮殿』の本当の力は生物の思念を取り込んで具現化させる事だ。運命を操る能力などそれによって偶発的に生まれた能力に過ぎない」
それだけではない。
パルテミシア十二神も『世界宮殿』の意思によって生まれた。
更にこの世界の魔族や超人的な力の全てが『世界宮殿』によって産み出された産物なのだ。
「この世界を創ったのは他ならぬ人間だ。貴様等も古代の人間によって創られた存在だ」
「何だよ…それ…」
古代人が創った『世界宮殿』…その力により魔族は生まれ、あらゆる魔術、霊術が生まれた。
「パルテミシア十二神を殺し、『世界宮殿』を支配すれば…この世界に存在する全ての生物の意思をコントロール出来る。そう、全てが一つになる」
それがルミナスの目的だ。
全ての人の意思を支配し、争いも蟠りも無くさせる。
それこそが…ルミナスの目的だ。
「そんなの…ただの嘘っぱちじゃない!?」
「嘘でも何でも平和には変わり無い。大人になれ、エル。この世界に希望など無いんだよ」
ローグヴェルトはそう言った。
そう、この世界に希望など無いのだ。
「四大帝国しか見てこなかった貴様等には分からんだろうな。他の小国など地獄絵図そのものだった…世界には痛みで満ちている。絶望しか無いこの世界など価値なんて無い」
「それは違うよ、ローグ」
慧留はローグヴェルトの言葉を否定した。
「そうだな」
屍も慧留の言葉に同意した。
「確かに、私はローグみたいに小国の人達の事は何も知らないよ。けど、ぶつかり合う事はあったんだ。そうして…皆が分かり合っていったんだ」
「それは運が良かっただけだ…現実は違う」
「俺も昔はアンタと同じ事を思ったさ。この世界を何度も地獄だとも感じた事だってある。けどな…そうじゃねぇんだよ」
「何が言いたい?」
「この世界に何も期待せずに諦めてるだけの人に何も得られる筈無いよ。人は何もしない人には何も出来ないしね。けど…前を進み続けていれば必ず救いはあるんだよ」
慧留は見てきた。
この世界に抗った者達、そしてそれにより散っていった者達、それでも懸命に真っ直ぐに生きようとする者達を。
皆、夢を持っていた、希望を持っていた。
止まらずに進み続けていた。
そうして人々は希望を掴んで来た事を。
「その希望も大きな絶望の前には無力だ」
「そうでもねぇよ…現に…こうして俺は…お前の前に立ってる」
屍はかつては国に、世界に仇なすテロリストだった。
だが、蒼と出会い、色々な人々とぶつかり合いながらも共に戦っていき、そして今の屍が在る。
「ローグ…覚えてる?昔、ローグ、学校に行きたいって行ってて…平和になったら一緒に行けたらいいなって言った事…」
「………」
「私ね、学校に行ったよ?ローグが言った通り、面白い所だったよ。色々大変な事もあったけど…私にとっては凄く…かけがえのない時間だった。ローグが…教えてくれたんだよ?私に…希望をくれたんだよ?私が…今、ここにいるのは…ローグがいたからなんだよ?ローグと出会えたから…私は蒼やここにいる屍や皆と友達になれたんだよ?ローグがいないと…私は寂しいよ…」
「俺は過去を切り捨てた…お前の知ってるローグヴェルト・スヴェールはもういない。今お前の前にいるのは…貴様の敵、ローグヴェルト・マクガヴェインだ」
そう、慧留にとって、ローグは英雄だった。
希望だった。慧留にとってはローグが世界の始まりだったのだ。
それなのに…今のローグは変わり果てていた。
希望も夢もない…この世界に絶望しきったかの様な…死んだ様な眼をしていた。
「お前が何を言おうがもう止まらない。俺はこの世界を一つに統一する。そして…陛下がその人物として相応しい」
「私は…あの時のローグの思いは絶対に棄てないよ…」
慧留は錫杖を構えた。
「例え…それを否定するのが今の君でも!」
屍も骨の槍を構えた。
「そうか…ならば…見せてやろう…本当の…真の絶望を…!」
ローグヴェルトは慧留と屍目掛けて突っ込んでいった。
「剣がでかい割りに速いぞ!?」
ローグヴェルトは慧留に大剣を振り上げた。
慧留はローグヴェルトの攻撃を回避した。
すると、周囲の建物が吹き飛んだ。
「なっ!?」
ローグヴェルトは慧留に再び攻撃を仕掛けた。
ー速い!?
慧留にローグヴェルトの攻撃がヒットする前に屍が槍でローグヴェルトの斬撃を抑えた。
しかし、屍はローグヴェルトの攻撃に違和感があった。
ー軽い!?
そう、ローグヴェルトの攻撃がかなり軽いのだ。
とても先程の様にビルを何個も吹き飛ばせる様な攻撃力では無い。
「油断し過ぎだ」
ローグヴェルトがそう言うとローグヴェルトの斬撃が重くなった。
「なっ!?」
「【重軽力】」
ローグヴェルトは屍を吹き飛ばした。
「ぐあっ!?」
「屍!?」
慧留はローグヴェルトに攻撃したがローグヴェルトは攻撃を回避し、慧留を蹴り飛ばした。
「うわっ!?」
二人掛かりだというのにローグヴェルトは慧留と屍を圧倒していた。
「月影…あいつの能力が分かったぞ…」
「え?」
「重さだ。あいつの剣は自在に重さを変化させる事が出来る。移動する時は剣を軽くして攻撃する時は重くする。そうする事で速くて強力な一撃を放てるって訳だ」
「ほう…初撃で俺の能力に気が付いたのか…大した奴だ」
「そういう事…なら…【時黒皇帝】!」
慧留は【悪魔解放】を発動した。
慧留な全身に黒い喪服を纏っており、頭にはベールがついており、背中には骨と漆黒の羽根で出来た翼が生えていた。
更に錫杖は黒紫色に変色しており、瞳の色も紫色に変化していた。
「行くぞ!」
ローグヴェルトは慧留と屍に突っ込んでいった。
「どうする!?」
「こうすればいいんだよ!【冥界創造】!」
慧留は過去改変の力を使った。
「!?」
ローグヴェルトの大剣がいきなり重くなった。
「今だよ!屍!」
「そういう事か!」
屍はローグヴェルトに接近し、ローグヴェルトの身体に触れようとした。
ー不味い!?
ローグヴェルトは屍の攻撃をどうにか回避した。
しかし、回避しきれずに服が破けた上に少し肩に傷が付いた。
屍の能力の一つに触れたモノを粉々にする能力がある。
かすっただけでもこのダメージだ。
喰らっていたら終わりだっただろう。
「成る程な…過去改変で俺の剣を重くしたのか」
慧留は本来ローグヴェルトが軽くするタイミングに過去改変の力で重くした過去を捩じ込み、ローグヴェルトの動きを抑制したのだ。
「どうやら、アンタの能力と月影の能力は相性が悪いみたいだな」
「ああ、どうやらその様だ」
ーならばこれ以上【第一解放】で戦っても無駄だな。
このまま戦ってもローグヴェルトの戦局が不利になる一方だろう。
やはり、慧留の過去改変の能力は相当厄介だ。
それに、慧留自身成長しており、改変出来る対象が増えてきている。
このまま慧留が成長を続ければ本気を出したローグヴェルトですら勝てなくなってしまうかもしれない。
「ならば…ここで一気に叩くか…」
ローグヴェルトは大剣を構えた。
「気を付けて、屍!何か来るよ!」
「そんな事、言われなくても分かってる」
「いや…貴様等がいくら警戒しようと無駄な事だ」
慧留と屍はローグヴェルトが何かする事が分かっていた。
だが、ローグヴェルトはお構い無しに力を使った。
「【第二解放】」
ルミナスは花園神社で一人腰掛けていた。
ここに来る客人を待っていた。
時期にこの戦いは神聖ローマの勝利で終わるだろう。
十二支連合帝国も踏ん張ってはいるがやはり戦争による兵力不足が手痛く、神聖ローマに敵いそうに無い。
ならば、十二支連合帝国の勝利条件はただ一つ、神聖ローマの大将を…つまりルミナスを討ち取るしかない。
「けど…無駄よ…いくら私に挑んでも…誰も私には叶わない」
ルミナスがそう言っていると後ろから落下音がした。
「!?」
「随分と驚いているな、派手な登場で済まない」
「いえいえ…お気になさらず」
「済まないついでに…もう一ついいか?」
「何ですか?」
「貴様をここで討ち取る…ルミナス・アークキエル・ローマカイザー!」
現れたのは十二支連合帝国の大将、常森厳陣であった。
「それは無駄ですよ…貴方では私を倒せない。ローマカイザーには絶対に勝てません。貴方は知っているのでしょう?ローマカイザーがどんな血族かを」
「ローマカイザー…パルテミシア十二神のリーダーであるアスディアが人間と交わり生まれた…神と人の子…ヤハヴェ・ローマカイザー…この世界に誕生した最初の天使であり、全ての天使の源流とされている」
アスディアは今は現世の女性には手を出していないが昔は手を出しまくっており、その時に生まれたのがヤハヴェであった。
このヤハヴェはやがて天使へと魂を昇華させ、この世界の最初の天使となった。
それにより、天使は増え続け、最強の魔族の一角へと上り詰めたのだ。
「その通り…天使とは…神であるアスディアの血族…故に神の血族である私に貴方では勝てない」
「私も一応、イシュガルの血族なのだがね」
「力を授かっただけとでは訳が違う…パルテミシア十二神はそれぞれ…あらゆる魔族を産み出した」
アスディアは天使を産み出した。
ガルディアも人間と交わり、原初の悪魔、アンタレスを産み出した。
イシュガルは特異な人間、イシュガルドの民を作った。
そして、他の九人の神々はその他のあらゆる魔族を作り出す事となった。
パルテミシア十二神とは『世界宮殿』の意思によって作り出された存在であると同時にこの世界の魔族の源流を作り出した神々でもある。
古代人達が『世界宮殿』を創り、『世界宮殿』が神々を創り、神々が魔族を作った。
そして、『世界宮殿』は生物の思念を取り込み続け、魔族を多く創り出し、人間にも特異な力に目覚める様になった。
「やがて、思念を取り込んで具現化させ続けた事で『世界宮殿』は暴走を始めた…それが千年前の混沌戦争のきっかけになった…そして『世界宮殿』はこの世界の調整だけをする物質と化した。運命を操る能力はその副産物でしかない…私なら…『世界宮殿』の力を引き出せる」
「そうやって人々の心を縛って平和を実現する…か…浅はかだな」
「ならば貴方に何が出来たと言うのです?あなたは…友を助ける事も出来なかった」
「確かに…私は友を…四宮君を助ける事が出来なかった…だが…それでも…彼女は生きている!」
「それは生者の慰めですね…それこそ下らない…」
ルミナスは長剣を抜いた。
「私は…貴様のやり方を認めない」
「あなたのやり方では遅すぎる…私の欲しいモノは…手に入らないわ」
日が登り始めた。
「【熱殺日蝕】」
厳陣の右手からボロボロの光の刀が出現した。
「貴方の能力は把握しています…マグマの霊術ですね…それは…」
「ほう…私の【熱殺日蝕】を知っている様だな…」
「貴方のその刀は一見ボロボロの刀だけど貴方の力の中で最も破壊力がある。その刀に触れれば全てが灰塵と帰す。あなたの最強の攻撃術」
厳陣は太陽と月の力を操る事が出来、月の力は幻術といった精神攻撃を主体とし、その拡張版である【月蝕封殺】も相手の能力を完全に封殺する。
一方、太陽の力は自身の身体を活性化させその熱を使い戦う。【熱殺日蝕】はその拡張版だ。
「日の出しか使えない能力の様だけどね」
「貴様が調べ上げたその情報…全てが正しければいいな…」
厳陣はルミナスに攻撃を仕掛けた。
「【縛十光輪】」
ルミナスは厳陣に霊呪法を放った。すると光の輪が出現し、厳陣の動きを止めた。
しかし、厳陣の身体が沸騰し、光の輪が溶けて消えた。
「何!?」
「【炎帝羽衣】…身体全身マグマの力により身体が常に纏われている。私の身体は文字通り太陽を纏っているのと同じだ!悪いが…エンゲリアスを解放する隙も与えん!」
「何を勝ち誇った事を…【白滅天使】!」
ルミナスはエンゲリアスを解放しようとしたが何も起こらなかった。
「なっ!?」
ルミナスはその異変にすぐに気が付いた。
ルミナスのエンゲリアスの刀身が完全に消えていた。
熱によって溶けて無くなっていたのだ。
「だから言っただろう…エンゲリアスを使う隙も与えんと…貴様はこの世界の安寧と秩序を壊さんとする悪党だ…貴様にはその制裁を受けて貰う。【炎帝突柱】!」
ルミナスの周囲からマグマの柱が出現し、ルミナスを飲み込もうとした。
「【瞬天歩】!」
ルミナスはマグマから光速で移動して逃げる。
しかしー
「甘い!」
マグマの柱がルミナスの右手に命中した。
「くっ!?」
ルミナスの右手はエンゲリアスごと消し飛んだ。
「まだだ!まだ…終わってはいない!」
ルミナスは空中を舞い、呪文を唱え出した。
「水流来るは荒波、天空を支配するは雷鳴!水天、雷天、交互に交わりを見せろ!」
ルミナスが詠唱を終えると空が曇り始めた。
「これは…」
「霊呪法第九百九十三番!【水雷花燕】!!!」
ルミナスが霊呪法を唱え終わると巨大な雷の燕と水で出来た燕が厳陣に襲い掛かる。
「はははははははははは!!!完全詠唱の九百番台霊呪法だ!時空を歪める程の霊呪法!!!これで消え去れ!!!」
「やれやれ…何か貴様は勘違いしている様だ」
厳陣がそう言って刀を二羽の燕に振り上げた。
すると、二羽の燕は跡形も無く消え去った。
「ば…ばかな…」
「確かに…霊呪法は強大だ。私に対抗しようと水系の霊呪法を使ったのも妥当な判断だ。だが…私のこの刀は全てを焼き尽くす。それが例え、時空を歪める程の力であっても」
ルミナスの放った霊呪法が弱い訳では無い。
【水雷花燕】は一発撃っただけで都市を一瞬で壊滅させる事が出来る程の破壊力を持っている。
それを一瞬で焼き尽くした厳陣の方がよりチートと言える。
「私の部下は…貴様等の下らん野望のせいで多く死んだ」
「それは必要な犠牲だったのよ!私の部下だって多く死んだ!何かを成し遂げるには犠牲は付き物だ!言い掛かりを付けるのは止めて頂戴!」
「笑止!小童が!貴様の受けた痛みより、何十年も受けてきた我々の痛みの方が強い!」
ルミナスは歴代最年少の皇帝だ。
故に年齢が若く、今年で二十二歳程だ。
対して厳陣はその数倍の年を生きており、ルミナスより遥かに多くの痛みを受けている。
「痛み?それが強いからって何だと言うのよ!」
「痛みを知るからこそ…優しく出来る事もある。貴様の下らん野望もここで全て終わらせる」
「ふざけるな!私の野望はこんな所では終わらない!終わらせない!終わらせてなるものか!」
ルミナスは更に霊呪法を放った。
「【極楽鳥花】!」
ルミナスは無数の白い鳥を放った。
【極楽鳥花】は無数の白い鳥により攻撃し、圧倒的物量で相手を押し潰す。
「無駄だと言ってるだろう」
しかし、厳陣はルミナスの全ての攻撃を消し飛ばした。
圧倒的物量でも厳陣の炎には敵わない。
「くっ!?」
「降伏するのであれば…見逃してやってもいいぞ…ただし、貴様から神聖ローマ皇帝を剥奪させるがな」
冗談では無い。
折角手に入れた皇帝の座をみすみす明け渡すなどそんな事が出来る筈もない。
そもそも、ルミナスは神聖ローマの…世界の救世主だ。
たった一人の総帥を相手に…負けるなど有り得ない。
四大帝国の総帥だろうが関係ない。ルミナスの邪魔をする者は一人残らず潰さなければならないのだ。
常森厳陣に負ければ…どの道ルミナスに未来は無い。
ルミナスはこの世界の頂点に立つ者。
そう、新世界の神なのだ。
「私は…貴様如きに屈っしはしない!私が…私が王女となる!」
「やはり…貴様は外道だな。どうありたいか…その人々の思いを無にする貴様はやはり外道だ!」
「それは敗者の理論よ!世界とは常に!どうありたいかではなく!どうあるべきかについて語らなければならないわ!私は!この世界に在るべき存在!私は選ばれた存在なのよ!」
「貴様のその下らん言葉もそろそろ聞き飽きたな。そろそろ…終いにするか…」
ルミナスは厳陣の言葉にビビり、逃げ出した。
「あまりの恐怖に逃げたか…まぁ、貴様は若い。恐怖を持つ事は賢明な判断だ…だが…」
厳陣はすぐに逃げ出したルミナスを追い掛けた。
ーあれは不味いわ!一旦ここから消えて対策を立てて…それから…
「逃がさん」
「!?」
ルミナスは全速力で逃げたのに厳陣は一瞬で追い付いていた。
厳陣はルミナスを空中から地上へと叩き落とし、ルミナスを再び花園神社まで引き戻した。
「かは…」
ルミナスは咳き込みながら立ち上がった。
「素晴らしい景色だろう…この神社は古来より存在し、人々が築き上げて来たモノだ。ここだけではない、多くの魔族、人間達がこの世界を築き上げ、守ってきた」
そう、この世界を発展させ、変えてきたのはいつだって人や魔族であり、それを今まで守ってきたのも人や魔族なのだ。
ルミナスのやろうとしている事はそんな先人達が造り上げて来たモノを全て無にするのと同義なのだ。
「貴様がこの世界に対して懺悔の心があるのならば…貴様を殺さずに生かしてやる…」
ルミナスはこれ程の屈辱は初めてであった。
敵に何度も情けを掛けられ、挙げ句プライドをズタズタにされ、その上、今、こうして地面に這いつくばっている。
「先人達?何よ…それ…結局歴史なんて!勝者によって塗り固められた自慢話よ!それが何!?下らない!下らないわね!私にとってはそんなモノはただの模造品にしか過ぎない!私の崇高な目的からすればそんなモノ…そんなモノは下らないちっぽけなモノよ!」
「そうか…ならば…ここで貴様を切り捨てるとしよう」
厳陣がそう言うとルミナスは立ち上がり、後ずさった。
「無駄だ」
厳陣の右手の白い刀が光出した。
それはまるでマグマの様に赤い色へと変化した。
「【灰塵溶刀】」
厳陣がルミナスの身体を切り裂いた。
すると、ルミナスの下半身が消失した。
「なっ…」
ルミナスはそのまま静かに倒れた。
その瞬間、ルミナスの頬に水滴が落ちてきた。
雨だ。厳陣の莫大な熱量により、上昇気流を呼び、この地に雨が降ってきたのだ。
雨は止まず、まるでルミナスが泣いている様であった。
倒れるルミナスを厳陣は悲しげに見つめていた。
「う…力…及ばず…か…申……し……訳………ございません…」
「ルミナス様」
To be continued
慧留と屍とローグヴェルトの戦いとルミナスと厳陣の戦いが今回のお話でした。この対戦カードはかなり初期から決めていてようやく実現させれました。最終章は入ったばかりなのですが速くも戦いが激化しています。色々な場所で戦いが始まっていて今まで以上にゴチャゴチャしてますが収拾はつかせます、多分。
ローグヴェルトの戦闘描写はあまり無かったのでようやくガッツリ描けました。ローグヴェルトはちょっとこちらの都合で中々活躍させれなくて…しかし、今回の話はローグヴェルトがキーパーソンとして活躍する…予定です。ローグヴェルトの動向にも注目ですね。
次にルミナス。まさかの結果になりましたね。ルミナスはとにかく強くて今までのルミナスは負け無しで尚且つ余裕で勝ってた事が多かったのでこれは…どうなるんでしょうね?
それでは、次回にお会いしましょう!




