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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第二章】四大帝国会議篇
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【第二章】四大帝国会議篇Ⅳー混戦ー

 蒼と屍たちは阿修羅との戦闘で苦戦を強いられていた。一方、トウキョウ裁判所では、ローグヴェルトとスープレイガが阿部と戦っていた。

「そろそろぉ、四大帝国会議が始まった頃だねぇ」

 阿修羅はそう呟いた。

 蒼と澪は阿修羅を前に戦闘態勢に入っていた。

 他の者たちは『混獣ダイダラボッチ』の足止めをしていた。そして、屍の手で『混獣ダイダラボッチ』を元の姿に戻していた。

「これは非常にマズいぃ…ここまで劣勢になるとはぁ、私もぉ本気を出さなくてはいけませんなぁ」

 阿修羅はそう言って監獄を動かした。すると、出てきたのはアイアンメイデンだった。

 アイアンメイデンとは拷問器具の一つで棘がある、人型の拷問器具だ。中が空洞になっておりそこは人間を入れるスペースだ。

 罪人はこのアイアンメイデンの空洞に入れられ、空洞の中に内奏されている棘に貫かれる。恐ろしい道具である。

「アレに入れられたら終わりだな…」

 蒼は冷や汗を流しながらそう言った。

「行くうよ~」

 阿修羅はアイアンメイデンの形を変形させ、澪の真後ろに移動させ、その瞬間元のアイアンメイデンの形に戻り澪を閉じ込めた。

「澪さん!」

 蒼が叫ぶ。すると、澪は力尽くでアイアンメイデンをこじ開けた。しかし、身体中から血が流れていた。

「ちょっと油断しちゃった。【流星神速スタードライブ】」

 澪はアイアンメイデンから抜け出し、光速で阿修羅に接近した。しかし、阿修羅の前に岩の壁が出来、攻撃を防がれた。

 蒼の【氷水天皇ザドキエル】で岩壁を凍らせ砕いたが、今度はギロチンが出現した。

 蒼は身体をロープで縛られた。

「しまっ!」

 蒼の真上からギロチンが落ちてきた。蒼は【氷水天皇ザドキエル】で辛うじて迎え撃つが防ぎきれず、身体を切り裂かれた。

「ぐわっ!」

 澪が阿修羅に攻撃を仕掛けるが今度は鋼鉄の壁が発生し、この鋼鉄の壁により行く手を阻まれた。

「霊呪法第四七八番【鬼殺オーガキリングし】」

 澪が霊呪法を放った。すると、無数の真空波が発生したが鋼鉄の壁はかなり硬く、防がれてしまった。

「うわー硬った」

 澪が驚愕の声を漏らした。

「鉄なら炎だ!霊呪法第五六八番【炎帝えんてい】!」

 蒼が霊呪法を唱えるとオレンジ色の炎が発生し鉄の壁をドロドロに溶かした。

「やるねぇ…ならぁ…仕方ない…本当は使いたくなかったが…奥の手だ」

 阿修羅は突然倒れこんだ。そして、監獄が縮小し始めた。

「まさか…監獄と一体化して俺たちを押し潰す気か!?」

 蒼は阿修羅の企みに気付いた。

『ふふっ…そぉのぉ通りだよぉ、まぁ、最も私の肉体だけは死なぬがね」

 阿修羅がそう言うと阿修羅の身体の周りに壁が現れ、阿修羅の身体を守っていた。

「…監獄長室はどこか分かるかい?澪君?」

 一夜が突然聞いてきた。

「!そう言うことね~!分かった、探すよ!霊呪法第五番【綴電子音つづりでんしおん】!」

 澪の周りから弱い電力が発生した。すると、湊の真上に電気が反応した。

「あそこに、電気の反応があるよ~」

「皆、僕の身体を頼むよ!」

 一夜がそう言うと一夜の身体から電撃が流れ、突然意識を失った。

「湊!防御系の結界を張って頂戴!」

 遥が湊に指示をすると湊は防御の結界を張った。

「【鋼縁結界こうえんけっかい】!」

 すると、監獄の縮小は止まった。しかし、これは時間稼ぎである。

「一応、結界は張ったけど、多分五分くらいしか持たない」

 湊がそう言うと蒼は歯を食いしばった。

「頼んだぞ…一夜」

 蒼は祈った。


 一夜は電子空間に入り込んだ。一夜の固有能力で一夜は電子端末の中に入り込める。

 今一夜のいる電子空間は今まで見てきた蒼の世界では無かった。

 本来の電子空間は青色の世界なのだが、この監獄内の電子空間は真っ赤な薄気味悪い世界だった。

「さてと、いた」

 一夜は阿修羅の霊体を見つけた。

「何!?」

 阿修羅は必至で逃げる。五分間逃げ続ければ阿修羅の勝ちである。しかし、『混獣ダイダラボッチ』を元に戻さなくてはならないので一刻の猶予も無い。

「逃がさないよ!」

 一夜は一瞬で阿修羅の前に回り込んだ。一夜は電子空間内だと移動速度が通常の何倍もの速力を出せる。正確には身体を電子化させて超高速移動を可能にするのだ。

「ひっ!」

 阿修羅はかなりビビっていた。阿修羅の霊体自体はそこまで強い力を持っていないのだ。

 乗り移る相手がいない霊体はただのザコだ。

「これで終わりだよ。飛び切りきついのをあげるよ。霊呪法第六〇〇番【雷皇放流弾らいこうほうりゅうだん】」

 一夜は巨大な雷の砲撃を浴びせた。【雷皇放流弾らいこうほうりゅうだん】は電気が流れてる場所なら避雷針の如く電気が伝わる。つまり、この電子空間全域に雷が流れた。

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 阿修羅は魂を細かく分けてこの監獄に憑かせていた。しかし、こうなってはどうしようもない。

 鮎らの霊体は全て霧散した。


 監獄の縮小が完全に止まり、蒼たちは結界を解いていた。そして、やがて監獄の形が完全に元に戻った。

 一夜は目を覚ました。

「お疲れさん、一夜」

 蒼がそう言うと一夜は「ああ」と答えた。

 阿修羅は身体をビクンビクンと震わせながら気絶していた。

「死んではいないはずだよ」

 一夜がそう言うと『混獣ダイダラボッチ』の大群が出てきた。

「僕がさっきこの監獄を操作し、この監獄にいる全ての『混獣ダイダラボッチ』を呼び寄せた。元に戻すんだろ?」

 一夜がそう言うと蒼たち生徒会と屍たち「アザミの花」が頷いた。

 そして、蒼たちは『混獣ダイダラボッチ』と交戦を開始した。



 トウキョウ裁判所では現在、四大帝国会議が行われていた。

 四大帝国の代表は用意された円卓の席に座っていた。そして、その真上には傍聴席があり、多くの人間や魔族がこの会議を見ていた。勿論外国の人間も多数来ていた。

 一宮高校の教職員である、四宮舞も傍聴席から会議を見ていた。舞以外に一宮高校の教職員は四人ほど忍ばせている。閻魔たちがこの四大帝国会議で仕掛けるのは確実なのでその動向を見張っていたのだ。

 四大帝国会議は基本的には議題を挙げてそれについて討論するという普通の会議と同じ形式だが、毎年、この四国で議題にあげることと言えば領土問題と税金のことくらいであった。

 他の問題は別の会議でもできる。

 しかし、今回の議題は十二支連合帝国政府が不正な犯罪行為を行っていたこと、そして、魔族の過剰なる迫害などが問題となり、この会議が今回開かれたのである。

「今回の議題は十二支連合帝国政府が犯罪行為を行っていた事、そして、過剰なる魔族に対して迫害、及び大量虐殺した件についてです」

 司会の男がそう答えた。司会役はハーバ-ド・パーソナル、ヘレトーア帝国出身の国務大臣の女性であった。

「これについてはどういう了見ですかな?閻魔総帥、我々は五十年前魔族の力を利用し、大規模な戦争を起こした、それは悲惨な事であったのですぞ?さらに、あの時、魔族が思わぬ抵抗を見せたことにより、当時の四大帝国は手痛い打撃を受けた。これにより、魔族と人間、領主族共に大きな痛手を負った。これを繰り返さないために魔族協定が締結されたのですぞ?」

 タブラスはそう言った。そう、五十年前の戦争は戦いの途中で全ての国の魔族が人間に反旗を翻した。これにとり、戦争は更に泥沼化し、もはや共倒れしか道が無かった。

 これを阻止するために当時の神聖ローマ連邦大帝国の皇帝が魔族条約を提案。そして、それに皆が賛同し、戦争は終わりを迎えた。

 戦争を終えたばかりの当時の人間は魔族に対する反感が強かったが、次第に受け入れられていった。しかし、それでも、どこの国でも差別や迫害は存在していた。

 今となっては大分払拭されていたのだ。十二支連合帝国以外は。

「その通りです。我々は魔族と共に生きることでこの五十年間、劇的に技術が進化した!魔族はいわゆる我々の社会に貢献している、恩人なのです!それを貴様ら十二支連合帝国は条約違反を犯し、魔族を迫害し挙句の果てには殺害まで起こし、不正な犯罪行為にまで及んでいる!これは一体どういう了見だ!」

 デミウルゴスはそう言った。魔族と共生を試みるようになって五十年、技術は劇的に進歩した。

 魔術や科学の発展、効率の良いエネルギーの利用法など、魔族によって得られたものは大変に多いのだ。 特にヘレトーア帝国は魔族の恩恵を強く受けている国であり、信仰の対象にしているほどだ。

「我々は…魔族を迫害している訳では無い…躾けているんですよ。言うことを聞かない奴は殺すしかないでしょう…それに、我々が不正な犯罪行為をしている犯罪がどこにあるのでしょうか?証拠は?」

 閻魔が余裕そうな顔をで言ったがそれはローグヴェルトによってあっさり否定されることになる。

「あなたは魔族を合成して怪物を作ると言う、非人道的且つ、凶悪な犯罪を行っていましたね。しかも、これはれっきとした条約違反です。これがその証拠です」

 ローグヴェルトは小型ディスプレイを円卓の中心に置き、その瞬間映像が流れた。

「一年ほど前、私の部下を忍ばせておいたんですよ。あなたに気付かれないようにね、今はもう、我が国にその者は帰還していますがね」

「…!」

 閻魔は少し驚いた表情をしていた。何故なら神聖ローマ連邦大帝国からスパイが忍び込んでいたことに全く気付かなかったからだ。

 しかも、映像の内容は本物であり実際に魔族を使って実験を行っていた。

「これはかなり惨いことをしていますよね…この国の情報端末…例えば一宮高校のサーバーを使えば一発でバレるでしょうね」

 今度は阿部が驚愕の表情を浮かべた。それもそうだ、何故かこの男は一宮高校の事まで知っていたのだから。

「…これは誤解ですよ…私たちは常により良い世界を目指している、多少の犠牲は仕方がないでしょう?」

 閻魔がそう言うとローグヴェルトは即座に批判した。

「それは違いますね、閻魔総帥。確かに犠牲は付き物ですが…必要な犠牲とそうでない犠牲があります。あなたのこれは明らかに必要のない犠牲だ。そもそも、何でこんな魔族のキメラを作ろうとしたのですか?もしかして、この時の為に準備をしていたとか…」

 ローグヴェルトがそう言うと閻魔と阿部は驚愕の表情を浮かべた。何故なら彼らにこの作戦の事がほぼ筒抜けだったということになるからだ。

 さらに追い打ちをかけるが如く今度はスープレイガが口を開けた。

「あ~、その事なんすけど…家の国も四大帝国会議の数日前に十二支連合帝国がこの場を利用して俺たちを殺す計画をしてることは知ってますよ?てか、間抜けだなあんたら、あんだけの事をしでかして、こっちがなんも警戒しねぇ訳ねーじゃん。でもまぁ、まさか本当に攻め込んでくるとは思わなかったぜ?けど、かつては「神風の日本」なんて呼ばれてたらしいからな~」

 USWも情報を入手していたようだ。

「もういい、やれ」

 閻魔がそう言うと魔道警察官が一斉に攻め込んできた。

「何だこれは!?」

 デミウルゴスとアントは驚きの声を漏らした。ヘレトーア帝国は情報を掴んでいなかったらしい。

「ボロ出すの速すぎだろ…全く政府がこれじゃあ十二支連合帝国の行く先が心配だな」

 スープレイガがそう言うとローグヴェルトも同意した。

「全くですね」

「ほざけ!貴様ら天使と悪魔の分際で私の神経を逆撫でしよってからに!」

 閻魔は完全に取り乱していた。

「その「天使と悪魔の分際」にあんたはしてやられた訳だ」

 スープレイガは嘲笑うかのようにそう言った。

「阿部!」

「かしこまりました」

 閻魔が阿部の名を呼ぶと阿部は返事をした。

「私がお相手しましょう。【加具土命カグツチ】」

 阿部は神器を解放した。神器は槍の神器だった。

「効いたこともない神器ですね…まさか、最近作った新型か…」

 ローグヴェルトがそう言うと阿部は驚いていた。

「流石ですね…その通りですよ」

 阿部はそう言ってローグヴェルトとスープレイガに神器を向けた。



 蒼たちはあの後、『混獣ダイダラボッチ』を全て退け、屍によって『混獣ダイダラボッチ』たちは元に戻った。佐藤は意識が戻ら無かったので、そのまま置いて行った。

 そして、残りの「アザミの花」のメンバーも全員救出した。蒼たちはすぐにトウキョウ裁判所へ向かっていた。ここからトウキョウ裁判所は走りで二時間ほど掛かる。

「それにしても、みんな無事でほっとしたぞ。監獄が縮小されてたから犠牲者が出てると思ったが…」

 蒼がそう言うと一夜がそれについて説明を始めた。

「縮小されたのが僕たちのいる周囲だけだったんだよ。だから、皆無事だった」

「まさか…あなたたちに助けられるなんてね…不思議だわ」

「全くだぜ…」

「けっ…」

「………む」

 雛澤、暗城、鉤爪、銀の順にそう言った。

 彼らもまた元「アザミの花」のメンバーであり、幹部だった者たちだ。

「で?この先どうするんだ?」

 西森が一夜に問いかけた。

「ああ、とにかく、閻魔の目的を止めることを最優先だ」

 一夜がそう答えると湖がさらに一夜に質問をしてきた。

「他の四大帝国はどうするの?」

「それは、「向こう側の者」が何とかしてくれるはずだ」

 一夜がそう答えると湖は訝し気な顔をした。西森も湖も「アザミの花」の幹部である。

「まぁ、急ぐには越したことねぇな!」

 蒼がそう言うと一夜は蒼と慧留に警告をした。

「蒼、慧留ちゃん、君たちは神聖ローマ連邦大帝国の人間だ。なるべく、彼らには接触しないようにしてくれ」

「分かってます」

 一夜がそう言うと慧留が答えた。彼らは自国を逃亡した身であり、この十二支連合帝国にいる事を隠しているのだ。神聖ローマの者と接触するのは避けたいところであった。

「あいつらの兵力がどれほどか分からないけど…こりゃ、きつい戦いになりそうだね~」

「そうね…皆、気を引き締めていきましょう!」

 澪が言うと遥も同意して、皆を鼓舞した。

「う~、怖い怖い…」

「あんまりそういうこと言わないでくださいよ…湊さん」

「俺は慎重なんだよ!」

 美浪が湊に注意するとすぐさま湊は言い返した。

「やっと派手に暴れられる…」

「気を引き締めろとさっき言われたばかりだろ!」

「分かってるよ…相変わらず神経質な奴だ…」

「お前が雑すぎるんだ!」

 赤島と兎咬のやり取りを見ていた狂が「相変わらず仲いいね」と呟いた。

「速く急がないとね」

「ああ、あそこにも大量の『混獣ダイダラボッチ』がいるはずだ。そいつらを元に戻す!」

 薊がそう言うと屍も同意した。

 そして、蒼たちはトウキョウ裁判所へ向かった。



「ふー。思ったよりめんどくさいな、こりゃあ」

 スープレイガがそう言うと阿部はスープレイガに炎の槍を突き立てた。

「はっ!」

 スープレイガは跳躍で攻撃を躱し、そのまま素手で光弾を放ったが当たる前に燃え散った。

 阿部の新型神器【加具土命カグツチ】は阿部の周囲に黒い炎が纏われており、攻撃が当たる前に燃え散ってしまう。

「行くぞ!」

 阿部は【加具土命カグツチ】で攻撃を仕掛けた。しかし、スープレイガは難なく攻撃を躱した。

「ふ~。ここで「悪魔」を使う気は無いんだけどな…」

 スープレイガはそう呟いていると、今度はローグヴェルトが動き出した。

「ハッ!」

 ローグヴェルトは阿部に掴みかかった。

「馬鹿め!貴様の腕が燃え散るぞ!」

 阿部がそう言うがローグヴェルトの腕は燃えずに阿部を捕らえた。

「何!?」

 阿部は驚きの声を漏らした。そして、ローグヴェルトはそのまま阿部をブン投げた。

「はああ!」

「グハッ!」

 阿部は苦悶の声を漏らしたが、再び立ち上がった。

「はっ…流石『セラフィム騎士団』の団長様だ」

 スープレイガはそう呟いた。スープレイガがローグヴェルトと同じような戦い方をしたら、片腕が犠牲になっていただろう。

 ローグヴェルトの高い神力が伺える。

「さてっと…これで終わらせましょうか…」

 -馬鹿な…私が…魔族ごときに…負ける?

 阿部はローグヴェルトを見上げていた。圧倒的な力の差を痛感してしまったのだ。しかも、ローグヴェルトはまるで本気を出していない。それは阿部でも分かった。分かってしまったのだ。

「?失礼…はっ…陛下…え?今すぐ戻れと…かしこまりました」

 ローグヴェルトは頭を押さえながらそう呟いた。恐らく念話をしていたのだろう。

 念話とはその名の通り、自身から霊力を介して相手まで情報を伝える術である。しかし、ローグヴェルトの話の内容からして、神聖ローマ連邦大帝国からの念話らしかった。

 ここから神聖ローマはかなり離れている。それを一瞬で通信するとは相手は相当な使い手であることを物語っていた。

「命拾いしましたね。とは言え、寿命がほんの少し、伸びただけですが…どうせあなたたちに未来はありません」

 ローグヴェルトはそう阿部に告げ、撤退した。恐らく自国に戻ったのだろう。

「く…命拾いした…終始舐められたのは癪だが、今はどうでもいい。奴だけなら勝機はある!」

 阿部がそう言うとスープレイガは頭を掻いていた。

「はぁ~。舐められたもんだ…確かにアイツみてぇに素手でてめぇを屠るのは無理だが…【悪魔ソロモン】を使えばてめぇを殺れるぜ…」

 スープレイガがそう言うと武器を取り出した。普通のサーベルであった。

「【悪魔ソロモン】…それがそうか…」

 阿部はそう呟いた。阿部は「悪魔」を知っている。

「じゃあ、行くぜ…」

 阿部は身構えた。


 舞は閻魔を追っていた。閻魔はあの後逃亡をしていた。「奥の手」を使うために。

「待て!」

 舞は追いかけるが閻魔は【瞬天歩しゅんてんぽ】で逃げ続けていた。閻魔の【瞬天歩しゅんてんぽ】の速度はかなりのものであった。

「あともう少しだ」

 閻魔がそう言うと舞の前に鉄でできた壁が出現し、舞の行く手を阻んだ。

「くっ!」

 舞は足を止め、言霊を唱えだした。

「【地獄より現れよ…業火の炎よ、天を焦がせ、煉獄よ!】」

 周囲から炎が発生し、鉄の壁を溶かしていった。

 言霊とはその名の通り言葉に魂を込め、口にしたことを具現化する力である。具現化できる範囲は能力者の力によって決まるが、舞が放っている言霊はかなりの力がある。

 やがて、炎によって鋼鉄の壁は完全に解けた。

「よし!」

 舞が進もうとすると、そこには閻魔が立ち塞がっていた。

「準備は整った…私が相手をしよう」

 閻魔が巨大なハンマーを構えた。恐らく、新型の神器だ。

「ようやく戦う気になったか…」

 舞はそのまま戦闘態勢に入った。

「【高天原タカマノハラ】」

 閻魔は神器を解放した。すると、ハンマーが倍ほど巨大化した。

 そのまま二人は戦闘を開始した。



「ぐわああ!」

 阿部はスープレイガの力に圧倒されていた。

「おいおい、まだ【悪魔解放ディアブロ・アーテル】を使ってねぇってのに…つまんねぇな。【悪魔(ソロモン)】を出した瞬間にこれかよ…」

 スープレイガは刀を収めた。

「どういうつもりだ?」

 阿部が問いかけるとすぐに答えた。

「帰るんだよ…総帥連れてよ…四大帝国会議はもう終いだ。この事はUSWに報告する。てめぇら覚悟しとけよ…」

 スープレイガはそう言って、タブラスを連れてここから立ち去った。阿部の力の底が知れて、スープレイガは戦う気が完全に失せたのだ。

 タブラスはスープレイガの近くで待機していたのだ。

「帰りますよ」

「う…うむ」

 阿部は怒りに燃えた。ローグヴェルトにもやられ、スープレイガにもあっさりやられた。阿部のプライドはズタズタにされていた。

「クソが…」

 阿部は歯を食いしばった。ここで下手に出れば一瞬でやられてしまうことが分かったからだ。

 そして、スープレイガとタブラスは姿を消した。


 スープレイガはそのまま、トウキョウ裁判所の外に出ていた。そこにはスープレイガと同じ、「アンタレス」の仲間がいた。

「リーダー、御覧の通りです。帰りましょう」

 スープレイガがそう言うとリーダーと呼ばれていた男はこう答えた。

「ああ、総帥の身柄は預かろう。だが、お前にはやってもらいたいことがある」

「やってもらいたいこと?」

「例の者がここに向かっている。その者の力を見極めて欲しい。だから、お前はここで待機だ」

 リーダーがそう言うとスープレイガはニヤリと笑い、「分かりました」とだけ言い、トウキョウ裁判所に待機した。

「リーダーは見てるだけですか?」

「ああ、見るだけだ」

 スープレイガがそう言うとリーダーはそう答えた。


「もうすぐよ!」

 遥がそう言うと蒼は目を光らせた。

「あそこか!」

 そして、蒼たち生徒会と屍たち「アザミの花」はトウキョウ裁判所に到着した。

「待ってたぜ…天使」

 そこには蒼たちの知らない男が立っていた。スープレイガだ。

「てめぇは何者だ」

 蒼が聞くとスープレイガは答えた。

「俺はUSW特殊暗殺部隊「アンタレス」のスープレイガだ」

「何かとうせんぼしてるみたいだけど…どけよ」

「断る。俺と戦え」

 スープレイガがそう言うと蒼はスープレイガに向かっていった。

「【氷水天皇ザドキエル】!」

 蒼が「天使」を解放する。すると、スープレイガは刀でで受け止めた。

「行くぜ!」

 スープレイガは刀を振るった。

「くっ!この違和感…それは…ただの刀じゃねぇな」

「よく気付いたな!こいつは【悪魔ソロモン】だ」

 スープレイガがそう言うと蒼は驚きの表情を浮かべた。

「そいつが!?」

 刃と刃がぶつかり合う、力はほとんど互角であった。

「皆は先に行け!」

 蒼がそう言うと慧留以外は先に向かった。

「私は残るよ!」

 慧留はそう言って残り、蒼はそのままスープレイガとの戦闘を続けた。

「喰らいやがれ!」

 スープレイガは刀を大振りし、衝撃波を放った。蒼はその衝撃波に吹き飛ばされてしまった。

「ぐっ!」

「そんなもんか?」

 スープレイガは構わず向かってくる。

「一気に肩を付ける!【第二解放エンゲルアルビオン】!」

 蒼は天使の二段階目の解放である、【第二解放エンゲルアルビオン】を使った。瞳は両目とも青く、白い衣を身に纏い、髪は白髪になっており、そして、右肩に氷の翼が生えていた。

「【アルカディアの氷菓】!」

「ほう…それが【第二解放エンゲルアルビオン】か。実際に見るのは初めてだな…どれ?拝見させてもらおうか!」

 スープレイガはそのまま蒼に向かっていった。刀と刀が再びぶつかり合った。しかし、今回は圧倒的に蒼が押していた。

「何!?」

 スープレイガは驚きの声を漏らした。

「【氷神滅却エイス・ディオス・ラディーレン】!」

 蒼の翼から吹雪が発生し、更に氷の華がスープレイガを一斉に攻撃した。さらに、吹雪によって刀の威力も増大していた。

「おおおおおおおおおおお!」

「くっ!?」

 余りの蒼の強さにスープレイガは完全に凍結した。しかし、スープレイガは氷を粉砕した。

「はぁ、はぁ…」

 スープレイガはかなり息を切らしていた。身体中に切り傷が出来ていた。さらに、蒼の発生させた吹雪により、空気が凍結していた為、かなり息切れを起こしていた。

「こいつを喰らってまだ立てるのかよ…頑丈な奴だ」

「へへっ…嬉しいぜ…ここまで強いとは…いいぜ…本気を出してやるよ…今度はこっちの…ターンだぜ!」

 スープレイガは刀を構えた。そして、蒼はすぐに警戒態勢を取った。蒼は直感で理解した。何かが起こると…

「スープレイガ!そこまでだ!…引き上げだ」

 突然、ヘリの中から声がした。そして、中から一人の男性が現れた。真っ黒な瞳と髪が特徴で若々しい容姿をした青年であった。

「チッ…これからがいいとこだったってのによ…」

 スープレイガが舌打ちしながらそう言うとすぐにヘリに戻って行った。

「おい!どこに行くんだよ!」

「ウルせーよ!帰るんだよ…USWにな」

 スープレイガがそう言うと蒼は顔を歪ませながら叫んだ。

「ふざけんな!お前から仕掛けたんだろうが!逃げんじゃねぇ!」

「はぁ、分かってねぇな…命拾いしたのはお前の方だぜ。確かにお前の「天使」は強ぇ。だがな…それでも、俺の「本気の俺」は倒せねぇ…」

 スープレイガがそう言うと蒼は驚愕の表情を浮かべた。

「ああ、俺の名前…覚えとけよ…今度もし戦うことになったら、真っ先にてめぇを殺してやる。俺の名は…スープレイガ・レオンジャックだ。じゃ、あばよ」

「待て!」

 スープレイガは蒼の制止を無視し、ヘリに乗り込んだ。そして、そのままヘリは空を飛んでいった。

「蒼!すごい傷だよ!」

 慧留がそう言う。確かに蒼の身体は傷だらけだった。蒼は直接スープレイガにダメージをもらっていない。にも関わらず、全身には大量の傷があった。刃を交えたその衝撃波だけで蒼を切り裂いていたのだ。

 あのまま戦っていたら、蒼は負けていたかもしれない。

 慧留はそのまま、蒼の傷の手当てを始めた。


 リーダーとスープレイガはヘリから蒼と慧留を眺めていた。

「やはり…か…なるほど、「あのお方」が言ったとおりだ」

 リーダーはそう答えた。

「見たいもんは見れたんすか…リーダー」

 スープレイガはそう聞いた。

「ああ…予想外の収穫だった。次会う時が楽しみだ。」

 すると、リーダーは満足げにそう答えた。

 スープレイガはニヤリと嗤った。蒼との戦いも近いうちに起こると確信したからだ。そして、スープレイガは地上にいる蒼を見ながら、眼を輝かせていた。

「俺の獲物だ…」


 阿部はあの後、この会議に来場していた魔族たちを殺していた。あの戦いから数十分程だが殺した魔族は軽く二十は超える。

 阿部はこの国の事実上のナンバーツーだ。間違っても弱くはない。ローグヴェルトとスープレイガははっきり言って別次元の強さだった。正直、相手が余りにも悪かった。

「ははは!ここにいる魔族どもは皆殺しだあ!」

 阿部はそう言い放った。

 一宮高校の教職員もどうにか戦えているが、敵の数が多すぎる。敵は魔道警察全軍と数千体の『混獣ダイダラボッチ』だ。戦力としては相当なものであった。

 戦況は現在、圧倒的に十二支連合帝国が勝っているが、神聖ローマのローグヴェルトとUSWのスープレイガとタブラスは自国に撤退。ヘレトーアの二人もいつの間にか逃亡しいた。

 しかし、この四大帝国会議は多数の魔族が傍聴しており、その数は数万人と言われている〈これは魔族だけであり、人間は含まれていない。含まれていたら総数は数十万人にも上る〉。これらの魔族の民間人を殺せば見せしめとしては十分である。

 魔族と人間では霊力の質が違うため少し、霊力を感じ取るだけで魔族と人間の区別をつけることが出来る。阿部は魔族のみを殺していた。

「ぐげぇ」「ごばぁ」「ぐふっ」

 魔族たちの断末魔があちこちに響いていた。

「ふふふ…はははははは!!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!魔族共!てめぇらは生きてる価値もねぇゴミクズ共だ!ははははは!!!」

 阿部はそう言い放った。その瞬間ー

「な!?」

 阿部は声を上げた。いきなり後ろから攻撃されたのだ。光の弾が阿部の頭を通った。阿部はそれをすかさず躱した。

「何者だ!?」

 阿部がそう質問するとすぐに相手は答えた。

「何者?んなもん決まってんだろ?」

 赤島がそう答えると屍は更にそれに続けて言い放った。

「テロリスト様だよ」

「聞こえ悪いよ~、シカ君。ここはかっこよく、「解放軍だ!」とかでいいのに~」

「そんなことはどうでもいいでしょ!」

 澪がそう言うと遥が突っ込みを入れた。

「私たち…影薄かったし、挽回しましょうね!湊さん!」

「俺は薄くてもいんだけどね~」

 美浪がそう言うと湊は反論した。そもそも、湊は目立ちたい訳じゃないし、むしろ目立ちたくないし…

「さぁ、開戦だよ!第二ラウンドといこうじゃあないか。皆、準備はいいね?行くよ!」

 一夜が高らかにそう言い放ったのだった。


 To Be continued

はい、そろそろ、四大帝国会議篇も終わりに近づいていますね~。今回は様々なキャラクターが活躍しました!さて、この先どうなる事やら…またお会いしましょう!

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