表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【最終章】天界叛逆篇
158/196

【最終章】天界叛逆篇Ⅱーrevolutionー

 ここは天使城の外であり、セラフィム騎士団が全員集まっていた。

 今は夜中であり、ルミナスは彼等に命令をしていた。


「時は満ちたわ。これから、ヘレトーア、USW、十二支連合帝国へ侵攻を開始するわ」

「「!?」」


 ルミナスの言葉にアポロとインベルは驚いていた。

 しかし、他の騎士団員はさして驚いてはいなかった。


「どういう事だよ!?」


 赤い髪に瞳が特徴の青年、インベルがそう言った。


「そう言えば、貴様らは不在だったな。第四次世界大戦前に既に決定されていた事だ」

「聞いてないわね…あなた達、このタイミングになるまで私達に隠してたとしか思えないわね」


 灰色の髪に瞳と眼鏡が特徴の青年、アルダールがインベルとアポロに軽く説明をした。

 しかし、アポロはそんなアルダールに難癖を付けた。


「私情は挟むな。皇帝の命令は絶対だ」


 金色の長い髪と瞳が特徴の女性、フランが二人を諫めた。


「くっ…」

「……」


 インベルもアポロも一度はセラフィム騎士団を…神聖ローマを裏切っている身だ。

 あまり信用されていないのはある意味当然だ。


「四大帝国は手を組み、共に戦った…なのにあなたはまた私利私欲の為に…!」

「口を慎みなさい、アポロ。これは命令よ。皇帝の命令は絶対よ」


 白髪の長い髪に真っ黒の瞳が特徴の女性がそう言った。

 彼女はルミナス・アークキエル・ローマカイザー。

 この神聖ローマの皇帝であり、蒼の義姉である。

 これ以上突っ掛かればインベルとアポロの立場が悪くなる一方だ。

 インベルもアポロも黙り込み、ルミナスは話を戻した。


「では、話を戻すわね。まずはここ、神聖ローマを守護する人員を言うわ。インベル、アポロ、エクレア、フランの四人はこの神聖ローマの守護よ」

「「「「了解」」」」


 四人はそう言った。

 ただ、ルミナスを気に入らないアポロは物凄く嫌そうだったが。


「次にヘレトーアにはジェジェ、ワッフルの二人で行きなさい」

「「了解」」


 銀髪のツンツン頭に瞳、無精髭を生やした男、ジェジェと緑色の髪に両眼が隠れている不気味な少年、ワッフルが頷いた。


「USWにはミルフィーユ、アルダール、ノヴェルト、クラッカー、ジェリーで行きなさい」

「分かりました~」


 オレンジ色の髪と瞳の女性のミルフィーユが適当な感じで返事をした。


「畏まりました」


 アルダールも頷いた。


「「了解しました」」


 黒髪に隻眼が特徴のノヴェルト・デルル、銀髪の長い髪に赤い瞳の妖艶な雰囲気が特徴のクラッカー・アルサーが了解した。


「そして…ローグヴェルト、私、ジェリーで十二支連合帝国へ攻め込むわ」

「ジェラートは連れていかないのかしら?」

「彼女は絶対に動かないわ。それに…あの子を無理に動かすのは骨が折れるわ…まぁ、今はこれで十分よ」

「畏まりました」

「了解しました」


 ルミナスの言葉に黒色の長い髪にオリーブ色の瞳の男、ローグヴェルトと褐色の肌に白い髪が特徴の男、ジェリー・トムソンが了解した。

 アポロが言っていたジェラートとはローマカイザーの第二皇女であり、ルミナスの妹に当たるのだが彼女は気紛れな性格の上、セラフィム騎士団員でも無いのでルミナスには彼女に命令を下す権限がない。

 まぁ、彼女とルミナスの利害は一致しているのでいずれは協力はして貰うが今回は必要ない。


「現在、戦争によってどの国も疲弊して、弱っているわ。ここを突くのが最も最善よ」


 ルミナスは淡々とそう言った。

 あの第四次世界大戦で他の三国はかなりの戦力を失っていた。

 神聖ローマはそれに対して兵力を温存していたのだ。

 いくら神聖ローマでも他の三国が万全の戦力の状態で挑めば確実に負ける。良くても相討ちになっていただろう。

 だが、今回の疲弊しきっている他の三国を叩けば余力を残してー


「『世界宮殿(パルテノス)』へと行ける…」


 今回の作戦はヘレトーア、USW、十二支連合帝国を落とし、そこから『世界宮殿(パルテノス)』への扉を開く事だ。

 そして『世界宮殿(パルテノス)』を守護しているパルテミシア十二神を倒し、世界を征服する。


「とうとう…世界を一つにする時が来たのよ」


 そう、『世界宮殿(パルテノス)』を支配すればこの世界を征服したも同義だ。

 この世界はそもそも『世界宮殿(パルテノス)』により産み出された。

 人が造り出した装置、『世界宮殿(パルテノス)』により、この世界には空想とされていた生き物…魔族が誕生した。

 やがて人も『世界宮殿(パルテノス)』の影響で特異な力に目覚める事となった。

 それが霊呪法であり、アラルガンド・セクラムがそれを最初に発現したとされる。

 この世界は全て『世界宮殿(パルテノス)』の手の上で転がっているオモチャ箱に過ぎない。


「この作戦が成功すれば、争いも憎しみ合いも蟠りも無くなるわ。愛だけの世界、平和だけの世界、勝者だけの世界が手に入るわ」

「そんな都合良く行けばいいけどね」

「相変わらず、私に対していつも否定的ね、アポロ」

「当然よ、私はあなたが嫌いなんだから」

「私を嫌おうが嫌わまいが…あなたは私に従うしかない」

「………」


 アポロは歯軋りをした。


「フローフルに関してはどうしましょうか?十二支連合帝国にはそれ以外にも厄介な奴等がいますが…」

「その為に同時に三国を攻めるのよ。彼等は必ず餌に引っ掛かってくれるわ」


 ルミナスは淡々とそう言った。


「そういうことですか」


 アルダールはルミナスの意図が分かった様で納得した。


「十二支連合帝国には六人の特記戦力がいるわ。彼等六人が揃っている状態はほぼ無敵と言ってもいい。けど、バラせば大した事は無いわ」


 ルミナスが言っている十二支連合帝国の特記戦力とは蒼、慧留、プロテア、一夜、屍、美浪の六人の事だ。

 彼等には共通する点があり、全員、時間に関する能力を使う事が出来るという事だ。

 蒼は時間の巻き戻し以外の能力を一通り扱え、特に時間停止を得意としている。

 慧留は時間の巻き戻しと過去改変を扱う事が出来る。

 屍は物質の時を操る事が出来る。

 一夜は平行世界の時間を見る事が出来る。

 美浪は時間を飛ばす事が出来る。

 そしてプロテアは時間の加速と減速を扱い、更にそれを応用して過去や未来へと移動する事が出来る。

 彼等無くしては第四次世界大戦は更に犠牲者が出ていただろう。


「彼等には感謝してるわ。お陰で…我々の世界は守られた」


 ルミナスはそう言って右手を上げた。


「それでは…散!」


 ルミナスがそう言うと騎士団達はそれぞれの場所へと行った。






「本当なのかよ?それ…」

「うん…USWはあっという間に…神聖ローマに落とされた…」

「やったのは誰だ?」

「ドラコニキルは…風を使う女の人にやられたよ…スープレイガは他の任務中で確かいなかったと思うけど…アルビレーヌもウルオッサもやられちゃったんだぞ…」

「USWはほぼ壊滅…て事かよ。時神、USWをやった奴に心当たりは?」

「恐らく…ミルフィだな…」

「ミルフィーユかい?」

「ああ、ドラコニキルを倒せる程の風使いつったらあいつしかいねぇ…他には?」

「灰色の髪をした眼鏡を掛けた青年もいたぞ…」

「アルダールか…今USWは戦争で疲弊しきっている…そんな中であいつら二人を中心に攻め込まれたら…そりゃ勝てねぇな…」


 突然、一夜の家に押し掛けてきたラナエルが蒼達にUSWが…ネオワシントンが神聖ローマに占拠された事を伝えにやって来た。

 話によると正面から攻めてきた様で闇魔殿(オプスデラカストラ)を瞬く間に壊滅させた様だ。


「他にも兵隊がいて…千近くの兵がいたと思うぞ…」

「ちっ…あいつら前の戦争で兵力温存してやがったからか…」


 蒼は舌打ちをしながらそう言った。


「で?どうするんだい?」

「んなもん決まってんだろ、行くぜ、USWに」

「けど、ミルフィーユと言えば君の師匠だろ?大丈夫なのかい?」

「あいつが敵だってんなら戦うしかねぇさ。それに…あいつは手加減して勝てる様な奴じゃねーしな」


 それに、ミルフィーユはあのドラコニキルを倒したのだ。

 これはもう…USWが壊滅したのとほぼ同義だ。


「もしかしたら…この国も攻めてくるんじゃ…それに…ヘレトーアも…」


 慧留がそう言った。

 確かにUSWが壊滅した今、ここやヘレトーアが攻め込まれる可能性もあった。


「そうだね…なら、何人かここに残ろう」

「じゃあ、誰が行くんだ?」


 屍が一夜に訪ねた。


「そうだね…取り合えず二つに分けよう。蒼、プロテア、美浪君でUSWに、屍、慧留ちゃん、僕がここに残る…でどうだい?」

「三人だけで大丈夫なのかよ?」


 屍がそう言うと窓から人がやって来た。


「面白そうな話をしていますね」


 やって来たのは黒宮であった。

 黒宮だけではない、澪もいた。


「黒宮さん、澪さんも!」


 美浪が二人の名を読んだ。


「『黒門(ニゲル・ゲート)』の魔力を察知したんで何かあったのかと思って来たんですけど…相当ヤバそうですね…」


 黒宮がそう言った。


「あたし達もアオチー達と同行するよ。それで安全でしょ?」

「そうだね、それに、常森君には空間転移がある」

「まぁ、USWはちょっと遠いから時間は掛かるけど…大丈夫だよ」

「うっし!じゃあ、速く行こうぜ!プロテア、美浪、澪さん、黒宮さん!」

「ええ」

「はい!」

「はいはい~」

「はい…」


 澪が空間転移の魔法陣を作っていた。


「蒼、気を付けてね」

「ああ、分かってるよ!」

「気を付けるぞ、蒼!」


 慧留とラナエルが蒼に声を掛けていると魔法陣を澪は書き終えていた。


「よし…じゃあ、転移に移るよ」


 澪は転送魔法を発動した。

 蒼、プロテア、美浪、澪、黒宮の五人は転送魔法により姿が掻き消えた。


「年明けそうそう…厄介な事になったね…」

「そう…ですね…」

「まぁ、つべこべ言ってもしょうがねぇ!俺達でここを守るぜ!」

「まだここが攻め込まれると決まった訳じゃないよ」

「USWがやられたんだ、ここも攻め込まれる可能性が高いだろ」


 屍の言う事も一理あった。

 戦争を終えてからこうやって狙うなどというまどろっこしい事は中々しないだろう。

 そんかまどろっこしい手を使ったという事は神聖ローマは十二支連合帝国、USW、ヘレトーアを纏めて相手にする気だったと考えるのが妥当だろう。

 ここも攻め込まれる可能性が極めて高かった。


「そうだね…と、検索結果が出た………これは…ヤバイね…」


 一夜はそう呟いた。

 一夜はパソコンを媒介に神聖ローマの過去を検索していた。

 一夜はあれから【電子人の眼(でんしびとのめ)】を更に細かく扱える様になり、過去の記録もみれる様になっていた。

 一夜は自分の思念を電子化してこの世界そのものにアクセス出来る様になったのだ。

 そこで神聖ローマの過去を調べたのだ。


「どうやら、神聖ローマは分散して四大帝国の他の三国を潰しに掛かってる。ここもすぐに来るよ。神聖ローマの地理的に一番近いUSWが真っ先にやられたみたいだ」

「ならこの事をすぐに常森総帥に報告しないと!ラナエルも付いてきてくれ」

「分かったぞ!」

「そうだね、報告には僕が行くよ。君達はここで待機していてくれ」

「分かった」

「気を付けてね、一夜さん!」


 一夜とラナエルは外に出て、厳陣のいる四神天城(シシンテンジョウ)へと向かった。


「それにしてもあいつら…何が目的だ…」


 屍はそう呟いた。

 その一方で慧留はある事を思い出していた。

 かつて、蒼達がUSWに乗り込み、慧留と蒼が戦い、その戦いに決着が着いた後、ルミナスが立体映像(ホログラム)としてやって来たのだ。

 その時、ルミナスは慧留にこう言った。「あなたなら私のやりたい事を先にやってくれると思った」と。

 つまり、ルミナスの目的は『世界宮殿(パルテノス)』であると予測出来る。

 しかし、目的が『世界宮殿(パルテノス)』なら、何故わざわざ四大帝国の他の三国を攻め落とす必要があるのか。


「おい、月影!」

「!?」

「大丈夫か?何かボーッとしてたけど」

「うん、大丈夫だよ」


 慧留が何かを隠している事は屍から見れば明白であったが今は一々それに言及している時間は無い。

 慧留はどうやらルミナスの目的の事を考えてボーッとしていた様だ。


「ったく…また…戦いが始まんのかよ…」

「そう…だね…」


 いつの世も戦いだ。

 何が目的であろうとそれは同じである。


「あいつらは…多くの犠牲で勝ち取った平和を…すぐに壊しやがった…」


 屍は怒りの形相でそう言った。

 屍は前の大戦で…仲間を失った。

 だからこそ、その仲間達の犠牲によって作られた平和を簡単に踏み潰した神聖ローマを屍は許す事が出来なかった。


「そうだね…神聖ローマは…許せないよ…」


 慧留がそう言った瞬間、大きな地響きが起こった。


「!?」

「まさか…!?」


 慧留と屍は窓の外を見た。

 四神天城(シシンテンジョウ)の辺りから煙が巻き起こっていた。

 慧留と屍はすぐに四神天城(シシンテンジョウ)へと向かった。





「常森総帥!」

「君は、苗木君、どうしたんだい?」

「ご報告があります!」


 四神天城(シシンテンジョウ)へ着いた一夜とラナエルは厳陣に神聖ローマが時期にこの国に攻めてくる事、USWが壊滅したという事を話した。


「何という事だ…」

「それって本当なんですか!?苗木さん!」

「ああ、残念ながら本当だよ、湊君」


 鈍色の髪で前髪を右寄りに寄せており、黒い瞳を持つ青年がそう言った。

 彼は董河湊、蒼達の友人であり、今は厳陣の下で働いている。


「じゃあ…ヘレトーアも…今頃…攻め込まれてるだろうね…神聖ローマからはここ十二支連合帝国が一番遠い。だから他の二国より攻められるのが遅いんだろうね」

「すぐに魔道警察官を集める。湊君、頼む」

「分かりました!」


 湊はそう言って式神を外へばら蒔いた。


『魔道警察官の皆さん!至急、四神天城(シシンテンジョウ)へ集まって下さい!』


 湊の式神から発した音声は魔道警察官にしか聞こえない。

 早速、近くにいた魔道警察官達が四神天城(シシンテンジョウ)へと集まっていた。


「さて…私も外へ行くか」


 そう言って厳陣は四神天城(シシンテンジョウ)の外へ出た。

 一夜も湊も厳陣に続いた。

 流石この十二支連合帝国の魔道警察官は優秀であり、十分足らずでかなりの人数が集まっていた。

 その中には屍の仲間である蛇姫薊と御登狂がいた。


「突然の呼び出し…何かあったのかしら?」

「どうだろう?」


 紫色のセミロングの髪に蛇の様な眼をした少女、薊がこの緊急召集に違和感を抱いていた。

 一方で黒髪のツインテールが特徴の小柄な少女、くるは薊よりは間の抜けた感じだった。

 厳陣の隣には一夜と湊、ラナエルがいた。


「緊急召集に集まって貰って感謝する。突然だが、神聖ローマがこの国に攻めてくる」


『!?』


 厳陣のその発言で薊とくるは愚か、他の魔道警察官も震撼していた。

 無理もない、戦争が終わったと思ったら突然また別の国に攻め込まれるなんて言われたら動揺するのは当たり前だ。

 それに相手は四大帝国最強と謳われているあの神聖ローマだ。


「どうやら、神聖ローマは戦争で疲弊したこの時を狙って仕掛けて来たようだ。セラフィム騎士団は分散していて同時に三国を回っている様だ。だが…この国には苗木一夜の話によると神聖ローマの皇帝ルミナス・アークキエル・ローマカイザーとセラフィム騎士団団長ローグヴェルト・マクガヴェインと一人の騎士団員を中心に千近くの兵で攻めて来る様だ。更にUSWも奴等によって壊滅させられたとここにいるUSWの少女が言っていた」


 厳陣の言葉を聞き、更に魔道警察官達は震撼した。

 よりにもよって皇帝自らがこの国に進行するなんて。


「ちょちょ…想像以上にヤバくない?」

「そうね…こればっかりは…予想外ね…」


 くるも薊もかなり動揺していた。

 更にUSWも壊滅させられたと言っている。


「恐らく、ヘレトーアも今頃攻め込まれている。よって、これより、各隊戦闘配備へ入る!」

「あの…本当に神聖ローマは攻めて来るのでしょうか…?戦闘で疲弊しているのは向こうも同じじゃなあ…」


 魔道警察官の一人がそう言った。


「神聖ローマは他の三国と比べて戦争による被害が少ない。恐らく、この時の為に兵力を温存していたと思われる」

「そんな…」


 魔道警察官が絶望の声を漏らした。


「不味いね…」


 一夜がそう呟いた。

 確かにこのままで士気の低い状態で攻撃されれば十二支連合帝国はあっという間に落とされてしまうだろう。


「神聖ローマはこの戦いで世界を征服するつもりだ。もし、そうなってしまえば明日はない!私はそれを止めたい!どうか…力を貸してくれ!」


 厳陣がそう言うとどうにか魔道警察官達は士気を取り戻す事は出来た様だ。


「どうにか…一瞬で全滅…という事態は免れた様だね」


「いえ、あなた達は全滅するわ」


「「「「!?」」」」

「上だ!」


 一人の魔道警察官が上空に指を指した。

 そこにいたのは白い軍服に白い髪、真っ黒の瞳を持つ女性だった。

 間違いない、神聖ローマ現皇帝、ルミナスだ。


「本当に…来やがった…」

「嘘…でしょ…!?」

「うぁ…」


 魔道警察官達が動揺していた。

 ルミナスは厳陣の前に降りた。


「お久し振りです、常森総帥」

「ああ、久し振りだ、ルミナス陛下。見たところ、あなたのその体は立体映像(ホログラム)ですね」

「ええ、私は今、この国に向かっています。時期に…ここへ到着する予定です」

「わざわざ立体映像(ホログラム)を寄越した理由は何だ?」

「降伏して欲しいんですよ。もし降伏してくれれば…ここにいる人達に誰一人危害を加えない事を約束しましょう。世界を一つにする…その為にはなるべく死んで欲しくは無いですからね」

「USWを占拠しておいてよく言うな…」

「彼等にも降伏勧告はしましたよ…それを従わなかったのは彼等です」

「我々を舐めるな!貴様らは最早、四大帝国ではない!ただのテロリストだ!」

「テロリストとは…随分な物言いですね。私は一応、神聖ローマの内乱を治めたんですがね…」

「武力を以てこの世界を統一する貴様らを…テロリストと呼ばずに何と呼ぶ!?」

「ふふふ…何を良い子ぶってるんですか…この世界を変えてきたのは…いつだってテロ行為を行う異端児じゃないですか…形はどうあろうとね…それは…歴史が…四大帝国が…証明してきた事じゃないですか」


 ルミナスの言うと通りだ。

 歴史は勝者によって都合よく塗り替えられる。

 そして、歴史を作ってきたのは勝者であり、その勝者達は何の例外もなくその時代とは価値観が解離している異端児達なのだ。


「人を殺す事こそ美徳と言われた時代もあった…支配する事が当たり前の時代があった…本来生き物とは闘争する生き物よ…なのに人だけは…その闘争から逃げ、安寧という堕落に身を浸そうとしている…」

「だから…闘争の世界を創ろうと?やっている事がロキと同じだな」

「それは少し違いますね…何も私は平和を否定してる訳ではありません。むしろ…平和を創る為に…武力を以て世界を統一しようと言うのです」

「それこそテロリストの考えだな」

「人も魔族も…そこまで賢い生き物では無い。だからこうやって…分からない者には調教する必要があるわ。そうすれば…誰も私に歯向かえる者はいなくなる」

「ただの独裁だね…それは」


 ルミナスの主張に一夜は皮肉を言った。


「ならば、そういうあなた達は何が出来たと言うのかしら?あなた達十二支連合帝国はつい最近まで魔族に対する迫害が激しかった…魔族条約を結んでいたにも関わらず…今でもその爪痕は大きく残っているわ…私なら…それらを取り除く事が出来る」

「戯れ言をペラペラと…」

「戯れ言とは酷いわね…常森総帥…なら、あなたに何が出来たんですか?あなたのやっている事が正しいと?本気でそんな事を言うのですか?それこそ、あなたのエゴイズムですよ」

「確かに我々のやって来た政策が全て正しいとは言わない。だが、だからと言って貴様らがここを攻める理由にはならない!」

「なら…降伏はしないと?」

「当たり前だ!貴様の好きにはさせん!」


 厳陣がそう言い、ルミナスは辺りを見回した。

 皆、ルミナスに恐れを抱いていたのは明らかであった。

 しかし、諦めた顔をしている者はいなかった。


「哀れね…常森総帥の洗脳ね…」

「違う!我々は常森総帥だけの為では無い!この国の為に戦うのだ!」

「そ…そうだ!」


 魔道警察官達はルミナスの言葉を否定した。


「あら?そうなの?まぁ、降伏しない時点で愚か極まり無いけどね…」

「貴様らの好きにはさせん!」

「さて?それはどうかしらね?あなた達は…今すぐに降伏をしなかった事を…後悔する事になるわ…」


 ルミナスはそう言い残して消えていった。


「………」


 その瞬間、四神天城(シシンテンジョウ)が爆発した。


「!?」


 厳陣は後ろを見た。

 四神天城(シシンテンジョウ)は炎を上げて燃え盛っていた。


「行け、兵士(ゾルダート)達よ」


 燃え盛る四神天城(シシンテンジョウ)の上から褐色の銀髪の男が兵士を呼び寄せた。

 無数の光の扉が出現し、そこから無数の白装束の兵士がやって来た。

 男はそのままどこかへと消えていった。

 魔道警察官達は戦いを始めた。


「苗木君はルミナスのいる場所を調べてくれ!湊君は敵襲が来た事を全国の魔道警察官達と報告とトウキョウの一般人達に避難勧告を!」

「もうやってますよ!」

「分かりました!」


 一夜はスマホを媒介にルミナスの位置を調べた。

 更に湊は式神で十二支連合帝国全国に神聖ローマからの敵襲が来た事を知らせた。


「見つけました!ルミナスのいる場所はここから来た十キロ先です!」

「分かった…二人は住民に安全な場所へ避難させつつ君達も安全な場所へ!」

「「分かりました!」」


 一夜と湊はここから離れていった。


「さて…ルミナス…貴様を倒せば…全てが終わる!」


 厳陣はそう言ってルミナスの元へと向かった。





「さて…」


 ルミナスは四神天城(シシンテンジョウ)から数十キロ離れた場所にいた。

 ここは花園神社、十二支連合帝国に古くからある神社の一つだ。

 ルミナスはここで一人腰掛けていた。


「陛下」

「ローグヴェルト…あなたは月影慧留と天草屍の相手をしなさい。どうやら、彼等は二手に別れた様だから」

「畏まりました」


 ローグヴェルトはルミナスの命に従い、慧留と屍のいる場所へと向かった。


「良い景色ね…そろそろ…日が登りそうね…ねぇ?ジェリー」

「はい、そうですね…」


 ジェリー・トムソン。彼はセラフィム騎士団に入る前は神聖ローマの有名な反乱軍である『エギル』のリーダーであった。

 彼はルミナスに反乱していたのに今はルミナスの手足となっている。

 【白王眼(アスプロ・ロウユ)】…ルミナスが…いや、厳密にはルミナスの二世代前の皇帝である八代皇帝、シャイン・アークキエル・ローマカイザーの能力であり、セラフィム騎士団以外の全ての人間、魔族の精神を破壊し、己の手足として従わせる事が出来る。

 ルミナスは三年前、この力を使って反乱軍全ての人間と魔族を洗脳した。

 シャインは何故、この力を使って内乱を治める事が出来なかったのかというとこの力がエリシアに知られ、エリシアに秘密裏に殺されたからだ。

 それにシャインは眼の力は強力ではあったが、武術の才能は皆無であり、霊力も高い方では無かったので眼の力が通じない者もいたのだ。

 更にこの眼は酷使すると失明するリスクがあり、安易には使えないのだ。

 ルミナスは歴代のローマカイザー全ての記憶を受け継いでおり、歴代ローマカイザーが使っていたローマカイザーの霊術も扱う事が出来る。

 これは初代ローマカイザーであるヤハヴェが扱う力、【継承(エアーブン)】によるモノだ。

 ロキの眼を奪ったあの力【強奪(シュティールン)】は二代目ローマカイザーであるライトが使っていた力だ。

 一応、ルミナスは全てのローマカイザーの霊術を扱えるが使い勝手に差があるのであまり使わない術も存在する。


「ジェリー、あなたの力を使う時が来たわね…」

「はい、畏まりました。【魔天使(タプリス)】」


 ジェリーのエンゲリアスは紙だ。

 ジェリーの周囲に紙が散布していた。


「ジェリー、これは重要な仕事よ。失敗は許されないわ」

「分かりました」


 ジェリーには思考が無かった。

 上述の様にジェリーはルミナスにより人格を破壊されている。

 洗脳とは訳が違う。言うなれば今のジェリーは魂を持たない傀儡そのものだ。

 そう、ジェリーは既に死んでいるのだ。

 ジェリーだけではない、元反乱軍であるクラッカーやノヴェルトも例外では無く彼等も既に死んでいる。

 ローマカイザーの皇帝は記憶を受け継ぐ事は可能だが能力を引き継ぐのは稀だ。

 能力を引き継いでも精々一つか二つだ。

 しかし、ルミナスの場合は全てのローマカイザーの霊術を引き継いでいる。

 ルミナスが歴代全皇帝の中でも最強と謳われている理由の一つだ。


「さぁ…あなたの力を見せなさい…ジェリー…」

「畏まりました…【第二解放(エンゲルアルビオン)】」


 ジェリーの紙が一斉にジェリーの身体に突き刺さった。

 ジェリーの身体が分解し、そのまま消え、再び再構成された。


「あなたの活躍期待しているわ」


 ルミナスは嗤いながらそう言った。





To be continued

 最終章の敵は神聖ローマです。実は最初から最後の敵は神聖ローマにすると決めていました。神聖ローマが他の四大帝国に侵攻したというのが今回の大まかな展開でした。蒼達はUSWに行き、ドラコニキル達救出に向かいました。最終章に入って早々急展開となりました。前回までのほのぼのとした空気が嘘の様ですね(笑)

 次回から本格的な戦闘が始まります。蒼達の最後の戦いを見守って下さい。それでは!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ