【最終章】天界叛逆篇Ⅰーzeroー
蒼は一人、部屋にいた。
今は十二月の終わりに差し掛かり、明日には年が明ける。
蒼は蒼い瞳と黒い髪が特徴の青年である。
先日、第四次世界大戦が勃発した。
どうにか蒼達の勝利で終わり、戦争も長期化せずに終えれた。
だが、犠牲も多かった。
十万人いた兵士が半分にまで減ってしまっていたのだ。
神聖ローマ以外の兵力は半ば壊滅状態であった。
その爪痕は未だに強く残っており、十二支連合帝国も復興に終われている。
蒼は厚着をして外へと出た。
マンションの階段を降りた。
ここ、苗木日和とは随分と長い付き合いになったと蒼は思っていた。
階段を降りるとそこには五人の人がいた。
「蒼!遅いよ!」
一人は黒髪ロングと黒い瞳の少女がそう言った。
彼女は月影慧留、蒼の住んでいる苗木日和の同居人だ。
「フローフルが遅いのなんていつもの事よ」
銀髪の長い髪に右眼が赤色であり、更に黒色の十字架の紋様のある左眼が特徴の少女がそう言った。
彼女の名はプロテア・イシュガルド、同じく苗木日和の同居人だ。
「プロテア、その左眼結構目立つぞ」
「仕方無いじゃない…自分ではどうにも出来ないのよ」
「じゃあ、これでも着けてろ」
蒼は黒色の眼帯をプロテアに着けた。
「あ…ありがと…」
プロテアは照れながらそう言った。
「お前らここ最近距離感妙に近くないか?」
紺色の髪に瞳で片眼を隠している青年がそう言った。
彼は天草屍、蒼と同じくここ苗木日和の同居人だ。
「そう言うのを突っ込むのは無粋ですよ?屍」
水色のセミロングの髪に瞳を持つ少女がそう言った。
彼女は霧宮美浪。蒼達と同じくここ、苗木日和の同居人だ。
「まぁ、そこら辺を気にする気持ちも分かるけどね?」
アッシュブロンドの髪と瞳に眼鏡が特徴の長身の青年がそう言った。
彼は天草苗木一夜。ここ、苗木日和のオーナーであり、こことは少し離れた家に住んでいる。
「お前らは一体何を言ってんだ?」
「知らないのならそれでいいさ。知らぬが仏…とも言うしね」
一夜が蒼の質問をてきとうにはぐらかした。
「さて、じゃあ、全員揃ったし行こうか」
一夜がそう言うと皆は歩いていった。
蒼達は町の神社に来ていた。
年末年始という事で蒼達は神社に言っていたのだ。
どこもかしこもお祭りで賑わっており、屋台も沢山あった。
「毎年思うけどよくこんな事で浪費が出来るね~」
「一夜さん、空気の読めない発言は止めてください」
「悪かったよ…慧留ちゃん」
一夜が場違いな発言をしていると慧留がそれを注意した。
「どうする?ここで何人かに別れるか?」
「別に別れなくて良くないですか?こんな人の多さだし」
屍が何人かに別れて行動する事を提案したが美浪がそれを拒否した。
「そうだね…うっ!?」
「一夜さん!?」
「済まない…人酔いをしてしまった」
「相変わらず貧弱だなお前は」
「インドアな僕はこういう場所は苦手なんだよ!」
一夜はかなり気持ち悪そうにしていた。
「どっかで休むか?」
「悪いけど僕は休むよ。まぁ、回復したらすぐに合流するよ」
「一夜さんは私が連れていきますね」
美浪は一夜を担いで近くのベンチへと向かった。
「じゃあ、金魚すくいでもするか」
屍はそう言って近くの金魚すくいにいった。
蒼達は屍についていった。
屍は金魚を軽く十匹くらい掬った。
「余裕だな」
「私もやってみる!」
慧留はそう言って金魚すくいをしたが一発で紙が破けてしまった。
「え…!?何で!?」
「こういうのはコツがいるんだよ月影」
プロテアは淡々と金魚を掬った。
「プロテアの奴…中々やるな…」
屍は少し悔しげであった。
今度は蒼の番だ。
「………」
蒼は金魚を掬おうとした。
その時、僅かに蒼の紙が凍り付きー
「て!術は使うな!」
屍は蒼の頭をチョップで叩いた。
「いってー!」
「バカかお前は!術の使用は禁止に決まってんだろ!」
「…そうかよ」
蒼はそう言って破けた掬いをゴミ箱に捨てた。
「一夜さん、金魚すくい凄く上手いんですよ」
「!? 霧宮か…苗木はどうした?」
「先に行ってって言われたから」
「一人で大丈夫かよ?」
「まぁ本人が大丈夫というのだから大丈夫じゃない?」
心配する蒼にプロテアはそう言った。
「今度は射的をするか!」
屍はそう言って射的をしにいった。
「…くそ…調子悪いな今日は…」
屍は射的で景品を一つも取れなかった。
因みにさっき取った金魚達はすぐに店に返した。
慧留も美浪も景品を一つも当てられなかった。
「………」
プロテアは黒色の花の形をした髪飾りを見ていた。
プロテアは静かに狙いを定めて狙うが当てられない。
「プロテア、お前、あの髪飾り欲しいのか?」
蒼はそう言ってプロテアの持っていた銃を持って髪飾り目掛けて弾を放った。
一発で目標に命中した。
「ほらよ」
「ありがと…」
プロテアは嬉しそうに中身を開封して髪飾りを着けた。
「似合ってるよ!プロテア!」
「そう?ありがと」
慧留が率直に感想を言うとプロテアは少し嬉しそうだった。
「時神…お前やるな…」
「そうでもねぇよ…あんなん簡単だ」
「いや…そっちじゃなくてだな…」
「?」
蒼は屍の言葉の意味が分からなかったがあまり気に留めない事にした。
「蒼は射的欲しいの無いの?」
「俺は別に…一回打てたし、もういいよ。それよりたこ焼き食べたい」
「そうだな…たこ焼きでも食うか」
蒼達は近くのたこ焼きの屋台へと向かった。
そこには一夜がいた。
「一夜!?」
「やぁ、蒼。先回りさせて貰ったよ」
一夜は既にたこ焼きを食べていた。
「君達の分も勝っておいたよ」
一夜はそう言って蒼達にたこ焼きを手渡した。
「もう酔いは覚めたの?」
「まぁね」
蒼達はそのままたこ焼きを食べた。
しばらくして六人で屋台を周り、色々な物を勝ったり食したりしていた。
「着物のレンタルやってるみたいだね…」
一夜がそう言うと慧留が興味津々の顔をしていた。
「着物着てみたい!」
「じゃあ来てこいよ。待っててやるから」
蒼がそう言うと慧留は嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ、美浪もプロテアも一緒に行こう!」
「ちょっ!?」
「ええ!?」
慧留はプロテアと美浪を連れて着物屋に入っていった。
「こうして落ち着いて日常を迎えるのは久し振りだな」
「そうだね…つい最近まで戦争があったなんて…嘘みたいだ」
「けど…大勢の仲間も死んだ…それは…事実だ」
屍は手を握り締めてそう言った。
前の第四次世界大戦で屍はまた仲間を失った。
赤島と兎神の二人が死んだのだ。
二人が死んだと知らされた時の屍の心情は察するに余りある。
「それだけ多くの犠牲を払って得た平和だ。何とかして守り抜かねぇとな」
「そうだね」
「ああ」
蒼は未だにルミナスの事を話していなかった。
ロキから聞かされたルミナスの真の狙いを。
今までは復興作業で忙しかったので話すに話せなかったのだ。
この年末年始が終われば、蒼は慧留達にこの事を話すつもりだ。
戦いはーまだ終わってはいないという事を。
「所で…蒼、君、プロテアと随分と距離が近くないかい?」
「そうか?別に普通だぞ?」
「いや、それは俺も思ったな…お前ら…まさか…」
「なっ!?別にそんなんじゃねーよ!」
「そうやって動揺するのが怪しいね~」
「そういう一夜はどうなんだよ!」
「僕?えっ?僕なんかあったっけ?」
「そう言えば、霧宮と苗木、随分と一緒にいる事が多いな」
「そうかい?う~ん?そう言われれば…そうなのかな?」
一夜はイマイチ要領を得ない感じだった。
そう言えば、蒼は彼等とはこう言った会話をした事があまりなかった気がする。
「皆、何の話をしてるの?」
蒼達が話している間に慧留達は着替えを終えていた様だ。
慧留は黒色の着物、プロテアは青い着物、美浪は黄色の着物を着ていた。
慧留が黒い着物を着ていたのはあまり違和感が無かったがいつも黒いゴスロリ衣装の服を着ているプロテアに青色の着物はかなり珍しかった。
美浪も普段は質素な服装をしているので黄色という派手な色の着物を着てるのは珍しいように思えた。
「皆似合ってるよ」
「ああ、似合ってんな」
「そうだな」
一夜、蒼、屍がそう言った。
「御免ね…着るのにちょっと時間が掛かっちゃって」
「いや、そんなに待ってねぇぞ」
「そうだね、むしろ速いと思うけどね」
そんなに時間が経っている訳では無い筈だが。
「私達全員着物着たことなくて…着るのに時間掛かったんですよ~」
「そうかよ」
蒼がそう言って歩き出すと他の五人も歩き出した。
こんな風に穏やかな日を過ごすのは随分と久し振りな気がした。
「綺麗ね…」
プロテアがそう呟いた。
「そうか?」
「ええ、屋台が多くあって、夜の町が賑わっている…とても綺麗よ」
プロテアはこんな明るい夜の町を歩くのは久し振りであった。
プロテアがヘレトーアにいた頃は少なくとも夜にこんな風に遊びに行った事は無かった。
「また、皆で行けるかしらね?」
「行けるさ、たま…皆でな」
プロテアの言葉に蒼は答えた。
そう、きっとそうだ。
また、来年も再来年だって、ずっと、皆でこの祭りに来る事だって出来る。
蒼はそう信じていた。
「着いた、鐘だよ!」
慧留がそう言うと目の前には鐘を鳴らす為に行列が出来ていた。
蒼達はその鐘を鳴らす為に行列へと並んでいった。
「毎年ここにいる数は凄いね…テレビで見た事があるだけだったが、実際こうして見てみると凄いよ…」
「また気分が悪くなったらすぐに言えよ苗木」
「いや…流石に大丈夫だよ………多分…」
「何でそんなに不安そうなの?」
どうも人というのは祭りが好きらしくこういった行事にはすぐに人が集まる。
魔族もそれは例外では無く、人だけでなく多くの魔族もこの祭りに参加していた。
それもそうだ。ロキの話によると全ての魔族は人の思念によって造り出された幻想の生き物だそうなのだから。
蒼はふと、考えた。
もし、『世界宮殿』が破壊されたらどうなるのだろうと。
普通に考えてこの世界が崩壊すると考えるのが普通だ。
しかし、何らかの理由で『世界宮殿』を破壊しなくてはいけなくなった時、蒼はどのような選択をするのか。
そもそも、今のこの魔族と人が混在した歪な世界を作り出した張本人が人類なのだ。
『世界宮殿』はもしかしたら、破壊しなくてはならないモノなのでは無いのか。
蒼はそう考えていた。
もし、『世界宮殿』が破壊されれば、蒼達は今とは変わらぬ生活が出来るだろうか。
「フローフル!」
「!?」
蒼は考え事をしている内に意識が上の空になっていた様だ。
いつの間にかかなり列が進んでいた。
「どうしたの?フローフル?」
「いや、何でもない。ちょっとボーッとしてた」
蒼の言葉が嘘である事はプロテアは何となく分かっていたがそれ以上は言及しなかった。
人には誰だって迂闊に近付かれたく無いことの一つや二つはあるからだ。
「さてと…ようやく鐘が鳴らせそうだね」
一夜がそう言うと確かに鐘は既に眼前にあり、順番が来そうだ。
「じゃあ、俺から鳴らすかな」
そう言って屍が鐘を鳴らした。
鳴らした音は遠くまで響いた。
次に美浪、一夜、慧留の順番で鳴らした。
「次は私ね」
プロテアは鐘を鳴らした。
音は響き渡った。
プロテアは鐘の音を鳴らして不思議な気持ちになった。
今まではイシュガルドの仲間達ともこういった祭りには行った事が無いのでそう感じるのかもしれない。
「最後に俺だな」
蒼はそう言って鐘を鳴らした。
鐘の音は響き渡った。
蒼はこの鐘を鳴らして一つの節目を迎えた気がした。
まぁ、それは大袈裟かもしれないがそう…蒼は感じたのだ。
思えば、これまで蒼には色々な事があった。
神聖ローマで親に捨てられ、それからエリシアに拾われ、インベルやアポロ、ミルフィーユなどの仲間達と出会い、ルミナスともであった。
それからエリシアを助け出す為にルミナスと戦い、破れた蒼は一度蒼の時間が止まった。
しかし、慧留と出会って蒼の止まっていた時間が再び動き出した。
そこから屍達『アザミの花』と戦った。彼等とも随分と長い付き合いになるし屍に至ったは今日までずっと共に戦い続けてる戦友であり蒼にとっては親友と呼べる存在になっていた。
その後十二支連合帝国そのものと戦う事となりそれ以降は常森厳陣と黒宮大志がこの国を統治する様になった。
それからしばらくしてUSWがこの国に攻めて来て、慧留が拉致された。
蒼は仲間達と共に慧留を救出しに行き、そこから最終的には慧留と戦う事になるのだが和解した。
それから三年間何事も無く過ごせていたと思ったら四宮舞が悪魔に乗っ取られ、蒼達はそれを助け出した。
その後、プロテア達イシュガルドがこの国に攻め、蒼達は中間の一人であった音峰遥を失う事となった。
だがそれでもイシュガルド達とはいちおう和解を果たし、蒼達はヘレトーアの浄化作戦を食い止めるべくヘレトーアへと向かい、四大帝国全てを巻き込んだ大規模戦争となった。
それから数日後、パルテミシア十二神の一人であるイシュガルが蒼にプロテアを巡って争う事になった。
蒼はイシュガルを打ち倒し、アスディアからプラネット・サーカスの事を知る。
蒼が自分の過去を話した数日後、蒼は死に、プロテアが蒼を助ける為に何度も時をやり直した。
そして、蒼は無事助け出し、擬流跡土を食い止めた。
だが、跡土の報復で十二支連合帝国が壊滅するという事態に陥った。
その後、プラネット・サーカスの事実上のリーダーであったロキから第四次世界大戦の宣戦布告を受け、戦争が起こった。
この戦争に勝つ事は出来たがあまりにも大きな犠牲を払う事となった。
蒼の仲間達も多く死んでいった。
そう…思えば蒼は今まで幾多の死線を潜り抜けてきた。
仲間達と共に。
蒼は鐘を鳴らした。
鐘の音は響き渡り、まるで世界を揺らしている様であった。
「君達…ここで会うなんて奇遇ですね」
やって来たのは黒髪黒目の執事服に片眼鏡を着けた青年と白髪黒目のオールバックの老人がいた。
黒宮大志と常森厳陣だ。
「常森さん、黒宮さん」
蒼は二人の名を読んだ。
厳陣は十二支連合帝国の総帥であり、黒宮は厳陣の腹心だ。
「私もいるよ!」
厳陣と黒宮の後ろに現れたのは黒髪ロングに一つ括りに赤い瞳が特徴の少女であった。
彼女は常森澪、厳陣の姪であり、蒼達の仲間でもある。
「澪さん!」
「えるるん!久し振りだね~」
澪は慧留に挨拶をした。
「君達も鐘を鳴らしに来たんですね」
「まぁ、そんな所です。あなた達はいいんですか?有名人がこんな所にいて」
「私達は今回呼ばれてここに来てるんですよ」
そう言えば毎年、厳陣と黒宮はここの神社に呼ばれていた気がした。
恐らく総帥の仕事なのだろう。
「私達は用事があるのでな、先に失礼させて貰う。澪、行くぞ」
「分かりました~、叔父様」
「では」
厳陣達はそのまま蒼達から去っていった。
「じゃあ、俺達の用事も済ませるか」
蒼がそう言うと他の五人も蒼に続いて歩き出した。
蒼達は神社でお祈りに着ていた。
「それにしても…ここも人が多いね」
一夜は苦い顔をしながらそう言った。
「つべこべ言わずにさっさと行くぞ」
屍が一夜にそう言った。
「丁度六人並んで行けそうですよ」
美浪がそう言うと皆は蒼、プロテア、慧留、屍、一夜、美浪の順で横に並んだ。
それぞれ両手を合わせてお祈りを始めた。
美浪の願いは只一つだ。
ー皆と…一夜さんと今年も楽しく過ごせます様に
美浪は仲間達と楽しく過ごせればそれでよかった。
そもそも美浪は死ぬ筈だったのだ。
こうしていられるのも奇跡に近いのだ。
だからこそ、美浪は皆と共にいたい…それだけで十分なのだ。
続いて、一夜がお祈りしたのは
ー苗木日和に住んでる人達が安全でいられます様に。
一夜は取り合えず自分が預かっている仲間達の無事を祈った。
一番は退屈しない面白い体験をする事なのだがそれは祈るのでは無く、自分で探すものだと一夜は考えていた。
だから、本当の願いは神になど頼らず自分で掴むと一夜は決意した。
続いて、屍の願いはー
ーもう、仲間が誰も死にませんように
これはあくまでも願掛けだ。
屍は祈るだけでは無く、己自身も強くなると決意した。
もう、これ以上仲間を死なせたくは無いのだ。
屍は今いる仲間達を守りたい。ただ、それだけだ。
続いて、慧留の願いはー
ー魔族と人が…本当の意味で手を取り合える世界になります様に
慧留は何時だって迫害や争いの無い世界を目指している。
それは今でも変わってはいない。
慧留は今まで色々な人や魔族と出会ってきた。
慧留はそんな魔族や人達全てを理解する事は出来なかったのかもしれない。
そもそも、全ての人と魔族が理解し合うのは無理なのかもしれない。
だが、慧留は知った。例え理解は出来なくとも、寄り添う事は出来ると。
そして、それが皆と手を取り合える世界を創る第一歩になる事を。
続いて、プロテアの願いはー
ー死んでいった者達の分まで…幸せになれます様に
プロテアの願いは一見自分の為だけに祈っている様に思える。
だが、そうではない。
プロテアは色々な人々の犠牲の上で生きている。
その人達の分までプロテアは幸せな人生を歩まなければならないのだ。
それがプロテアに出来る唯一の償いなのだ。
プロテアは蒼の事を少しだけ見た。
蒼の願いはー
ー今を大事に生きていけます様に
蒼はプラネット・サーカスの一人であるエスデスとの出会いで一つの答えに辿り着いた。
蒼は今まで仲間の為に戦うという漠然とした理由であった。
蒼自身、自分自身の答えを出せていなかった。
だが、エスデスとの戦いで一つの結論へと導き出した。
それは過去でも未来でもない、『今』を大事に生きていくというモノだ。
今を大切に生きる事が出来れば、過去も未来も輝かしいモノになる筈だから。
蒼は今を感じて、大切に生きていきたいのだ。
それが、蒼のたった一つの願いだ。
だが、その為には強くならなくてはならない。
蒼は強くなる、誰にも負けない位に…そして、これからの戦いに必ず勝つ。
ルミナスを倒す。そうすれば全てが終わる。
蒼達はお祈りを済ませた所で神社を後にした。
蒼達は今、一夜の家に集合している。
今日は一夜の家で六人で年を越そうという話になった。
六人全員、こたつで温もっており、中央に蜜柑を置いていた。
「いや~こたつの中は温かいね~」
「そうですね~、外に出たく無くなります~」
一夜の言葉に慧留が同意した。
「つか、時神はこたつが苦手なイメージがあったけど、平気なんだな」
「確かに寒さには強いけどこたつは別に嫌いじゃないぞ俺は」
蒼は氷の力を使うので屍は蒼がこたつが苦手というイメージがあったのだがどうもそういう訳では無いらしい。
「こたつに入ってると外に出たく無くなるんや~、人をダメにする道具やでこれ」
「確かに…こたつというのは霊術や魔術とは違う見えない力があるのかも知れないわね…」
「いやいやプロテア、それは大袈裟過ぎやで~」
プロテアの言葉に美浪は突っ込みを入れた。
どうも、こたつというのは人をダメにする力があるのだ。
こたつは程よい暖かさを手軽に作り出し、外に出ると寒さが一気に襲い掛かるのだ。
更に入り心地がとても良くこたつから出たく無くなる。
故にこたつは人を閉じ込めてしまう魔物でもあるのだ。
「もう少しで…一年が終わるね…」
「ああ、あっという間だったな…」
「つか、俺達を中震に色々起こり過ぎだ」
「そうね…あなた達、疫病神なんじゃない?」
「いや、疫病神は言い過ぎやしそれ言うとプロテアもやん」
「まぁでも…本当に色々あったよね~」
六人はこれまでにあった事をしんみりとしながら感傷に浸っていた。
色々な事件に巻き込まれたが、どれも印象に残る事ばかりだ。
そう、不思議と…彼等は楽しいと感じていた。
物騒な事件が起こった、戦争が起こった…けど、そんな状況を少しだけ楽しんでいる自分達がいたのだ。
思い返してみれば皆と過ごしたこの時間は楽しいと感じていたのだ。
「で?蒼、ここに皆を集めたのは君だ。何か話す事があるんだろう?」
一夜は蒼に話を振ってきた。
そう、一夜の家でこの日に集まろうと言ったのは蒼だった。
こういう事は大概慧留が言い出しっぺになる事が多いのだが今回は蒼が言い出しっぺだったのだ。
「ああ、まぁな」
蒼は一夜に考えを見抜かれていた。
そう、蒼は今日この日にロキから聞いた神聖ローマの事について話そうと思っていたのだ。
また、新たな戦いが始まるかもしれないという事を、話さなくてはならないのだ。
「で…蒼、話って?」
「ああ、それなんだが…」
蒼が話をしようとした直前、天井から黒い門が出現した。
そして、そこから小さな少女が振ってきた。
「蒼~~~~~!!!!」
その少女は蒼目掛けて落ちてきた。
「がはっ!?」
蒼が少女と頭が激突した瞬間、丁度時計は十二時になり、一年が越された。
「年が明けたね、明けましておめでとう」
「明けましておめでとうございます」
「明けましておめでとう」
「明けましておめでとう」
「明けましておめでとう……て…フローフル!?大丈夫!?」
「お前らいくらなんでも薄情過ぎるだろ…」
プロテア以外は蒼をそっちのけて新年の挨拶をしていた。
いくらなんでもあんまりだと思う。
「冗談だよ、蒼も明けましておめでとう」
「ああ、明けましておめでとう…じゃなくてだな!?」
蒼は一夜に乗せられてうっかり新年の挨拶をしたがそういう問題ではない。
いきなり黒い門が現れて少女が一人落下したのだ。これはただ事ではない。
「今のは『黒門』…だったよな?」
屍がそう言った。
『黒門』とはUSWの者が使用している移動手段の一つであり、異空間を飛び越えて一瞬で長距離を移動出来、瞬時に国から国へ渡る事が可能だ。
しかし、『黒門』はUSWを中心とした場所でしか現段階では使用出来ない為、移動出来る場所は限られているのが現状だ。
「つか…お前、ラナエルじゃねぇか!?」
水色の髪に緑色の瞳、そして背中に目視するのが難しいくらい小さな黒い翼が生えている少女であった。
彼女の名前はラナエル・ミュウ。USW出身の悪魔の少女だ。
現在はUSWのドラコニキルの側近として行動しており、これまでもちょこちょこ蒼と会う事があった。
だが、ラナエルが突然現れる時は大概ヤバイ事がある事の現れでもある。
恐らく、今回も何かあったのだろう。
「よがっだ~。無事にここに着いだ~~!!!!」
ラナエルは泣きながらそう言った。
どうも、今までのラナエルと比べても焦り方が尋常では無かった。
余程の事があったという事だろうか?
「何があったんだよ?」
ラナエルはかなり慌てている様子であった。
というか、いきなりこんな所に現れるなんて余程の事があったに違いない。
「大変なんだぞ…ネオワシントンが…」
ラナエルは泣きながらそう言った。
すると、蒼達は表情を変えた。
どうやら、USWに何かあったようだ。
「詳しく話してくれ」
蒼達の最後の戦いが幕を開けた。
To be continued
ついに最終章突入です。ここまで長かった…。この話は今までの話の集大成となります。蒼達の物語もこの章を以て一端のピリオドを打つ形になります。この最終章ですが前々から大まかな展開は考えてたんですが話が進む内に初期に構想していた内容からかなり変わっています。初期に考えてた展開についてはいずれ(忘れて言わないかも)
今までが戦い続きだったので今回は小休止という事で箸休め的な回になりました。嵐の中の静けさってやつです。これからバトルがどんどん展開されていきます。そして、意外な展開をいくつか用意しています。蒼達の最後の戦いはこれから始まります。どんな結末になろうとも最後まで彼等の結末を見守ってくれたらなと思います。後、自分は終わる終わる詐欺が嫌いなのでこの章で必ず終わらせます。(番外編や後日談はやるかもしれないけど)
それでは、また次回お会いしましょう!




