【第十章】道化狂乱篇ⅩⅩⅦーPIERROT2ー
ルミナスとロキは剣を交えていた。
ロキはビームサーベルを、ルミナスは白い長剣で戦っていた。
ルミナスとロキの剣術は今のところ互角であった。
ルミナスは天剣と呼ばれる程に剣の才に恵まれているのだがそのルミナスと互角に渡り合うロキはかなりの強者である事を意味している。
「ふぅ…やっぱり強いね…」
「全く本気を出してない癖によく言うわね」
「それは君もだろ?【第二解放】所か【第一解放】すら使わないなんて…」
そう、ルミナスはエンゲリアスを未解放のまま戦っていたのだ。
一方、ロキはロキで空間切断能力を一切使っていなかった。
つまり、両者共に全く本気を出していないのだ。
「確かに…このまま何もしなかったら…拉致が開かないわね…」
ルミナスはそう言ってロキに斬りかかった。
ロキはビームサーベルでどうにか攻撃を防いだ。
ルミナスはロキの顔面に長剣の切っ先を向けた。
「【白滅天使】」
「!?」
ロキはルミナスの狙いを知り、攻撃を回避した。
どうにか左眼を守り抜き、ルミナスの攻撃はロキには当たらずすり抜けた。
「やれやれ…君のエンゲリアスの真の恐ろしさはその奇襲性だったね…危なかったよ…」
「やっぱり…そう簡単には殺らせてはくれないわね…」
「全く…君のその刀は蛇みたいだね(((^^;)」
「それはどうも」
「【闇を誘う大穴】」
「!?」
ルミナスは【瞬天歩】でロキから離れ、ロキの後ろを取った。
「流石に対応が速いね!【万物破壊】!」
無数の黒い輪っかが飛んできた。
「【五重虚神】」
ルミナスは五重に霊力の盾を展開した。
しかし、黒い輪っかに当たった瞬間、異空間に飛ばされた。
ルミナスは残りの黒い輪っかの攻撃を全て回避した。
「無駄無駄ぁ!(≧▽≦)」
ロキは黒い輪っかを無数に飛ばした。
「【白滅天使】」
ルミナスはロキの左眼にピンポイントで狙いを定め剣を伸ばした。
ロキは咄嗟に反応し、左眼を透明化させた。
「【縛十光輪】」
ルミナスがロキに指差すとロキの周囲から光の輪が出現し、ロキを縛った。
「しまっ!?」
ロキの透明化は空間操作の一種であり、左眼で自分の身体を異空間に移動させる事ですり抜けている様に見えるだけだ。
しかし、左眼を異空間へ移動させている間は他の身体を透明化させる事は出来ないという欠点が存在する。
「くそ…抜け出せない…!」
「私の【縛十光輪】はそう簡単には抜け出せない」
「くっ!?」
左眼の力が発動させられない。
発動させた瞬間、ロキの左眼は【白滅天使】により潰される。
「天に在りては願わくは比翼の鳥、地に在りては願わくは連理の枝、天は長く地は久しくも時在りて尽く、この恨みは綿々として尽くるの期無からん」
ルミナスは詠唱を始めた。
これは恐らく、霊呪法の詠唱だ。
「何の霊呪法かしらんが撃たせるか」
ロキは必死で脱出しようとする。
だが…遅い。
「霊呪法第九百九十九番【比翼連理】!」
ルミナスは白い霊力の砲撃を放った。
そして、ロキはその砲撃を受け、爆発した。
「随分と呆気ないわね」
「そうかな?」
「!?」
ルミナスの後ろには既にロキがおり、ロキはルミナスの身体をビームサーベルで切り裂いた。
「うっ!?」
「今のが?最強の霊呪法???こっちこそ呆れる…なんだあれは?見かけ倒しも良いところだ!あんなもの…避けるに値しないね!」
ロキがそう言って更にルミナスに斬りかかろうとする。
しかし、ルミナスは瞬天歩で距離を取った。
更に【白滅天使】でロキの左眼目掛けて攻撃した。
しかし、ロキはルミナスの狙いなどお見通しの為、ルミナスの攻撃をズラした。
更にロキはルミナスとの距離を空間操作で詰め、ルミナスの眼前に迫った。
「【絶死切断】!」
ルミナスは長剣を盾にしたが一瞬で刀身が異空間に飲み込まれた。
しかし、ルミナスはその一瞬の隙を見て、ロキの攻撃を回避した。
「折れちゃったね、エンゲリアス。まぁ、けど君にとっては意味無いのか」
「そう言う事よ、【白滅天使】」
ルミナスは自身のエンゲリアスの名を呼ぶと折れた長剣はすぐに元の大きさに戻っていた。
「まるで生き物みたいだね…その剣」
「エンゲリアスは生きてるからね…」
「武器に命が?下らないね((φ( ̄ー ̄ )」
「下らないも何も本当の事よ」
「そうか……ん?」
ロキが付けたルミナスの傷は既に再生されていた。
「僕が苦労して付けた傷をそう簡単に治されるなんて…どういう原理かな?」
「あなたのお仲間…エスデスと似たようなモノよ」
「光属性を極めればそういう事も出来るのか…参ったね(^_^)」
光属性は形に生命を与える属性であり、回復などは光属性に当たる。
光属性を極めれば自身の身体を再生させる事は可能だ。
現に、エスデスやパルテミシア十二神のリーダーであるアスディアも可能なのだ。
しかし、それが可能な者はそうはいない。
「天に飛び立つ恋慕の鳥、極楽へ至り、群れを成せ、霊呪法第九百九十六番【極楽鳥花】」
ルミナスは両手から極楽鳥花の花を咲かせ、その花が無数の白い鳥へと変化した。
その鳥達がロキに襲い掛かる。
「【万物破壊】!」
ロキは無数の黒い輪っかを放った。
その輪っか当たった白い鳥達は異空間へと吸い込まれていった。
「………」
「哀れだね、空を飛んでもすぐに打ち落とされる!」
「確かにそうね…けど…鳥達は飛び続ける…それが…本能だからよ!」
「本能だと?(・_・)」
いつの間にか白い鳥達はロキの黒い輪っかを潜り抜け、ロキに突撃していた。
ロキは時空間へと逃げた。
しかしー
「!?(((^^;)(((((゜゜;)」
ロキは身体を爆発させてそのまま倒れた。
ロキは訳が分からないと言った言った様子であった。
「なっ!?」
「あなたの異空間は一つよ。だから異空間に逃げても私が発動させた無数の鳥達の攻撃に当たるわ」
ロキは相手に異空間に引きずり込む時も自身が異空間に逃げる時も同じ空間を使っているのだ。
ルミナスの無数の攻撃をロキは異空間へ飛ばし、更にそんな状態でロキは異空間へと逃げた為、異空間に飛ばされていたルミナスの霊呪法がロキに命中したのだ。
「あなたのその能力は確かに強力だし無敵にも見えるわ。けど…弱点も多い。だからこそ、あなたは自身の能力の全貌を知られる事を怖れた…そして…怖れた結果になってるわ」
確かにロキは誰かに自身の能力の全貌をバレるのを怖れた。
しかし、ルミナスはロキの能力を知ってからそこまで時間は経ってない筈だ。
それにも関わらずロキの能力を逆利用したり、破って見せたりしていた。
これはルミナスの戦闘力が図抜けているのは勿論の事だがその力を生かす明晰な頭脳を持っているからこそである。
ロキはルミナスが強い事は知っていた。
だが、いくら能力がバレているからといってここまで圧倒されるとは流石に予想していなかった。
「これは…少々不味いね…(((^^;)」
ロキはかなりの焦りを見せていた。
全てにおいてルミナスがロキを圧倒していた。
「だが…僕にはまだ奥の手が…」
「悪いけど…その奥の手とやらは使えないわ…タイムリミットよ」
「タイムリミット?」
ロキはルミナスの言葉の意味が分からなかった。
しかし、ルミナスの言葉の意味がすぐに分かる事になる。
ロキの身体が突然光出したのだ。
「!?」
更に空も暗くなり、星空が出現していた。
「何だ!?これは…」
「あなたは言ったわね…回避するに値しないと…見かけ倒しだと…本当にそうかどうか…思い知らせてあげるわ」
「まさか…これは…!?」
「そう、さっきあなたに打ち込んだ霊呪法…【比翼連理】よ」
「!?」
「この霊呪法は時間差で発動する霊呪法でね…そして…この霊呪法の能力は特殊なのよ」
「特殊?」
「まぁ、見れば分かるわ」
そう言ってルミナスは剣を掲げた。
「何を…する気だ…」
「【比翼連理第一章・連理の枝】」
ロキの身体から霊力で出来た枝が左右に出現し、まるで抱き合うかのようにその二つの樹木は絡み付いた。
「くっ!?」
ロキは異空間へと脱出しようとするが能力が発動しなかった。
「なっ!?どうなって…」
「この霊呪法に囚われたら最後、どんな方法を使っても抜け出せないわ…この攻撃が命中した時点で私の勝ちは決まってたのよ」
「そんな…そんな馬鹿な事があるか!」
ロキは二つの樹木に依然絡み付かれたままだ。
「酒欲に溺れた夫は処刑され、妻も死に、お互い別々の墓に埋められた…しかし、二人の墓場から樹木が生え、抱き合う様に絡み付く…これが連理の枝よ。続いての演目は…【比翼連理第二章・比翼の鳥】」
「これは…霊力を吸われて…」
ロキは大量の霊力を霊力の樹木により吸い取られていた。
更にその霊力が形を成し、単眼隻翼の鳥が生まれた。
「比翼の鳥…単眼、隻翼の…雄と雌が番井で寄り添わなければ飛べない出来損ないの生き物よ…だけれど…雄と雌とで共に飛ぶその姿は何よりも美しく空を羽ばたく…【比翼連理第三章・連理の枝羽ばたく比翼の鳥】」
単眼隻翼の鳥はやがて番井を見つけ、空へと羽ばたいた。
二つの顔お互いに合わせて飛ぶその姿はとても美しかった。
比翼の鳥は莫大な霊圧を纏っており、ロキは恐ろしさのあまり震え上がっていた。
これ程恐怖したのは生まれて初めての事だった。
「そして…比翼の鳥は世界へと…大空へと旅立ちやがて…自身の苗床である連理の枝へと還る…【比翼連理最終章・廻リ還ル比翼連理】」
比翼の鳥はロキに絡み付いている連理の枝目掛けて突進してきた。
空から落ちるその比翼の鳥は美しくも恐ろしかった。
「こんな…こんな…事が…」
「皮肉ね…ロキ…あなたは人間を弄んでいた…けど…あなたはその人間の作り出した力に敗北するのよ」
ルミナスはロキに対して皮肉を言った。
「くっ…くっそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
ロキは絶叫した。
その瞬間、比翼の鳥は連理の枝と交わり、大爆発を起こした。
「くそが!」
蒼はオーディンの攻撃をどうにか凌いでいたがオーディンはまだまだ余力を残していた。
それどころか徐々に霊圧が高まっている始末だ。
このままでは蒼がじり貧になって負けてしまうだろう。
蒼はさっきからロキの身体を破壊しているものの、破壊した先から修復していた。
どうやら自己修復機能もある様で生半可な攻撃ではすぐに修復されてしまう。
「こうなったら…」
蒼は極大の一撃で全てを決める事にした。
連続での使用は不可が掛かるが仕方無い。
蒼は黒刀を弓の形に変えた。
その瞬間ー
「お待たせ、蒼」
「慧留…」
空間移動で慧留達がやって来た。
「皆も…」
「アオチー、結構ボロボロだね~」
「澪さん…」
「ここからは私達も戦うよ!」
慧留は気合いを入れてそう言った。
「それにしても…慧留とこうして話すのは久し振りな気がするな…」
「…それは気のせいじゃないかな?」
「そうかもな…」
「というより!今回私も蒼も全然出番無かったよね?一応、私達が主人公なんだよね!?」
「あのさぁ…お前何意味の分からん事を言ってるんだ?」
慧留の唐突なメタ発言に蒼は正直付いていけなかった。
「フローフル、生きてたんだね」
「ジェラート、ミルフィーユもいたのか」
「バカ弟子が楽しそうに戦っているのに…私が腰掛けている筈も無いだろ?」
「楽しそうにしてねぇ!」
蒼は的外れなミルフィーユの発言を否定した。
ミルフィーユやジェラートだけでなく、フランやエクレアもいた。
「腰が重かったセラフィム騎士団もようやく動き出したって事かよ?」
「まぁ、そういう事だね~。まぁ、ルミナスが何を企んでるかは知らないけど…ぜ~んぶ計算通りなんじゃないの?」
「………どうなんだろうな」
ジェラートの言葉を軽く流す蒼だがこのタイミングでセラフィム騎士団が動き出したという事はもう、終わりが近いという事だ。
このオーディンさえ止めてしまえば…
「おおおおおお…」
オーディンは口を開けた。
すると、オーディンの口から小さな人形が沢山出てきた。
「分裂体ね…そうこなくてはね…」
「うっわ…面倒臭そう…」
ミルフィーユが楽しそうな反面、ジェラートはとても嫌そうにしていた。
「さぁ!行くぞ!」
フランがそう言うと蒼以外の兵士達がオーディンへ向かって突撃した。
「さっさと終わらせるよ~」
澪は空から隕石を出現させ、敵を倒していった。
「【黒魔剣】!」
慧留は左手に黒い剣を顕現させ、敵を薙ぎ倒していった。
セラフィム騎士団達もそれぞれエンゲリアスを解放して応戦していた。
徐々にオーディンの作り出した分裂体が消えていった。
「すげぇ…」
蒼はそう声を漏らした。
「はははははははは!!!」
ミルフィーユは笑いながら人形を切り刻んでいた。
「相変わらず野蛮ね…ミルフィは」
エクレアは無数の鎖で人形達を縛ってグチャグチャにしていた。
「よっと…」
ジェラートは弓矢で狙撃して人形を倒していた。
「はぁ!」
フランはエンゲリアスを解放せずに敵を斬り倒していた。
セラフィム騎士団の中でも彼女等は天使親衛隊と呼ばれており、セラフィム騎士団屈指の実力者達なのだ。
もっとも、ジェラートは親衛隊所かセラフィム騎士団ですら無いのだが神聖ローマの第二皇女の実力者だ。
今のところ、こちらがオーディンを圧倒していた。
「グルルルルル…」
オーディンは静かに生還していた。
ここで…蒼は一つの引っ掛かりを覚えた。
確かに…オーディンはとんでもなく強い。
少し攻撃しただけで周囲の地形を変える所か数十キロ先にある山すら粉々にする程だ。
だが、オーディンは今、活動がかなり緩やかであった。
オーディンは尽きる事の無い無限の霊力を保有している。
霊力が底を突いているとは思えなかったしむしろ霊圧は上がっている。
それなのにオーディンの動きは緩慢で鈍い。
自己修復能力があるとはいえ、オーディンは封印をする事が不可能な訳ではない。
実際、古代人達によってオーディンは封印され、封印を解く為に大量の人や魔族の魂を生け贄にしたくらいだ。
あれだけの霊力があればここら一帯にいる者達を軽々と吹き飛ばせる筈だし分裂体を造る必要など無い筈なのだ。
「一体…どうなってる?」
蒼は少し考えたが何も思い付かない。
蒼がボーッとしている内にミルフィーユがオーディンに攻撃をしていた。
「【風騎士皇】!」
ミルフィーユの剣から突風が出現し、オーディンを吹き飛ばした。
更にエクレアが紫色の無数の鎖でオーディンを縛り上げた。
「【呪縛紫鎖】」
鎖に縛られてようやくオーディンは動き出し、砲撃を放った。
オーディンの砲撃により、エクレアの鎖は引き千切られた。
「厄介ね…」
しかし、エクレアの鎖はすぐに繋ぎ合わせて元に戻っていた。
エクレアのエンゲリアスである【呪縛紫鎖】はエクレアの霊力により繋がっており、エクレアが霊圧を込めるだけで鎖は回復する。
「霊力の保有量ヤバ過ぎでしょ…これが人工物なんて…こんなん造り出す古代人ヤバ過ぎ」
「おい、ジェラート語彙力」
「それにしても…確かに霊圧は凄まじい…力も強い…けど動きは愚鈍だしとても世界を何度も滅ぼせる程の力があるとは思えないわね。まぁ、いずれにしてもこのまま放っておくわけにはいかないらすぐに封印した方がいいけどね」
「えー、倒すんじゃ無くて封印するの~?」
エクレアの提案にミルフィーユが物凄く嫌そうな顔をしていた。
「自己修復能力がある以上殺すのは難しいわ。こいつを完全に殺すには彼の霊力を尽きさせるしか無いけどこのオーディンの霊力は無限に湧き出てる…封印するか木っ端微塵にするしか無いけど…これを木っ端微塵に出来る者はこの中には誰もいないわ」
エクレアが淡々と解説した。
確かにエクレアの言う通り、封印した方が安全なのは確かだ。
このオーディンにはかなりの耐久力がある。
幸い、動きが愚鈍なので対処は楽な方ではあるが。
「じゃあ、封印の準備すんの?」
「そうだな、こいつの分裂体も全て倒したし早速封印術を使おう」
フランがそう言って封印術の準備を始めた。
これだけの質量のモノを封印するのだ。
それなりに術式に時間が掛かる上に大量の霊力が必要だろう。
そんな事を考えているとオーディンが再び動き出した。
「さてと…じゃあ、私達はこいつの足止めをしますか」
「さっきまでの落胆が嘘みたいだねー」
「戦える事には代わり無いからね!」
フランが術式を準備している間、他の者達で戦う流れらしい。
フランは一応、封印術をいくつか支えるがそこまで得意では無かった筈だ。
「あたしも手伝いますよ?」
「感謝する、常森澪」
蒼はフランの手伝いをしようと思ったが澪の方がこういうのは得意なのでそちらに任せた方がいいだろう。
ならばオーディンの足止めに加勢しよう…と思ったのだが他のメンバーだけで十分間に合っており、下手に蒼が手を出すと邪魔になりそうですらあった。
蒼はこの光景を見ながらこう呟いた。
「これ、俺必要無くね?」
ルミナスは爆発を眺めていた。
最強の霊呪法、【比翼連理】が発動し、ロキはその餌食となった。
爆発は凄まじく、未だに炎が燃え盛っている。
ルミナス自身、この霊呪法を使うのは初めてであり、ぶっつけ本番であった。
この霊呪法は発動に時間が掛かるし相手に初撃を当てなければ発動しない。
しかし、発動すればほぼ確実に敵を仕留められる。
かつて、天使大戦を人間の勝利に導いたのがこの力だと言う。
「しぶといわね…」
爆風の中からボロボロになったロキが現れた。
服は焼け爛れており、身体の所々が焼け切れていた。
更に霊力の大半を持っていかれており、霊圧もかなり弱まっていた。
「はぁ…はぁ…うっ!?」
ロキは肩膝を付き、やがて両手両膝を地に付けた。
「【強奪】」
ルミナスは【白滅天使】を伸ばしてロキの左眼を貫き、そのままロキの左眼を抉り取った。
「ぐあっ!?」
更にロキの右眼もさっきと同じ様に【白滅天使】で抉り取った。
「がはっ!?」
ロキは完全に光を失った。
「ふふふ…これで…これで揃ったわ!」
ルミナスはロキの両眼をくっつけた。
すると、ロキの両眼が形を変え、鍵の様な形状へと変化した。
「なっ!?僕の眼に何をした!?」
ロキはそう叫んだ。
「何、あなたの眼をあるべき姿へと戻しただけよ。『シュトラール』…いえ、『万物の古鍵』と言った方がいいかしら?」
「僕の眼が…『万物の古鍵』…だと!?」
「あなたはこの事実を知らなかった様ね。『万物の古鍵』は全てで三つあるけどそれぞれ固有の力を持ってるわ。神聖ローマに封印されていた『万物の古鍵』にはあらゆるモノを造り出す…想像の力…ヴイングスゴルデクスもこの『万物の古鍵』を元に作られたわ。二つ目が十二支連合帝国で封印されていた『古鍵』は時間を司るわ。月影慧留があの『古鍵』で『世界宮殿』の過去を見る事が出来、更に本来の力に目覚めたのものはその力によるモノ…そして…あなたの両眼の『古鍵』は…空間を司る…あなたの空間操作も『古鍵』の力なのよ」
「!?」
「時間、空間、創造…この三つの『古鍵』を揃える事で…『世界宮殿』へと初めて行く事が出来るわ。もっとも、アスディアの半身でもあるあなたは『古鍵』が無くても『世界宮殿』に行く事が出来たみたいだけど…あなたの能力は両眼があるから初めて発動するわ。つまり、今のあなたは何も出来ない」
ルミナスの狙いは最初からロキの両眼だったのだ。
ロキの両眼を奪う事で『古鍵』を全て揃えて『世界宮殿』へと行くつもりだったのだ。
ルミナスがセラフィム騎士団の兵力を温存していたのもそれが理由だ。
「君の目的は…」
「パルテミシア十二神抹殺…そして私が『世界宮殿』の管理者となる。それが私の目的よ」
「要するに…世界征服か…」
「あなたの言葉で言えば…そうなるのかしらね?」
「そうなれば…他の三国も黙っていないんじゃない?」
「あなたさっき言ったでしょ?『世界宮殿』があれば何でも出来るって」
「そう言う事か…ふふふふ…ははははははははははははははははははははは!!!!」
ロキは自嘲する様に嗤った。
「………」
「ルミナス…世界を征服して…その先をどうするつもりだい?」
「あなたには関係無いわ」
「もしかして…フローフル絡み…だったり?」
「!」
「ふふふ…眼が見えなくても何となく図星だという事は分かるよ…ふふふ…フローフル…面白いなぁ…」
「話は終わりよ。あなたはもう…用済みよ」
ルミナスはロキに止めを指す為に剣をロキに振り上げた。
しかし、ロキのいる地面に異変が起こった。
地面か人形のゴーレムが出現した。
そのゴーレムがルミナスの剣を防いだ。
「!?」
「ふふ…僕の能力は何も空間操作だけじゃあない。生命体をこうして創る事も出来るんだよ?イシュガルドの一件の事を忘れていたのかい?」
「それがどうしたって言うのかしら?あなたの死がほんの少し先送りになっただけよ!」
ルミナスはロキに斬りかかった。
しかし、ロキの身体が歪み始めた。
そして、ロキの姿は完全に消えた。
「空間操作…バカな…!」
ルミナスは考えを巡らせた。
「!? まさか…」
ルミナスはロキのやった事を推理した。
恐らく…
「予め…マーキングしてたのか…」
そう、ロキは恐らくオーディンの身体の一部に空間移動のマーキングを施していた。
異空間を通して空間移動する時、マーキングをしていれば予備動作無しで瞬時に移動出来る。
ロキはそれを使ったのだ。
「成る程ね…だとするとロキの狙いは…少し…不味いわね」
ルミナスは珍しく表情を強張らせていた。
「さぁ、封印するぞ!」
オーディンはエクレアの鎖により縛られていた。
これから封印術に入る所だ。
そんな時にオーディンの背中から空間の歪みが出現した。
「あれは!?」
「ロキ…」
「ボロボロだね~」
「恐らく、ルミナス陛下がやったのだろう。そして命からがら逃げ延びたという訳だ」
「あの状態だと何も出来ないわ…両眼も潰されているし」
フラン達はボロボロのロキに構わず封印術を続けた。
ロキも同時に封印出来て一石二鳥だ。
「!?」
しかし、蒼はロキが何かをしようとしている事に気が付いた。
ロキはオーディンの身体に触れた。
「ついに…完全体になる時が来たのだ!!!」
ロキがそう叫んだ。
蒼は胸騒ぎを覚え、
「皆!オーディンから離れろ!」
蒼がそう言った瞬間、オーディンから莫大な霊圧が漏れ出し、近くにいた者達は吹き飛ばされた。
「うわっ!?」
「くっ!?」
慧留とジェラートとミルフィーユはすぐに蒼の元へと戻ってきた。
「蒼!一体どういう事!?」
「ロキは最初からこれを狙ってたんだよ!」
「狙ってた?」
「ああ、ロキは…オーディンと融合するつもりだ!」
「融合…あー、成る程…オーディンって融合神獣なんだね~」
「融合魔獣?何ですかそれは?」
「融合神獣ってのは融合して初めて真価を発揮する神獣の事だよ。千年前も恐らく、オーディンと融合した人間が世界を破壊したんだろうぜ。おかしいと思ったんだ。あまりにも力を扱えて無さすぎたからな」
融合神獣はその大き過ぎる力により力を制御出来ずに単体で力を発揮出来ない。
その為に人柱を使うのだがオーディン程の神獣を制御するのはそう簡単では無いだろう。
というより、制御不能だったから人間達が封印したのだろう。
決して人間達は戒めでオーディンを封印した訳では無かった。
古代人がオーディンを封印した本当の理由は誰もオーディンの力を制御出来なかったからだ。
だが一つ気掛かりなのはロキはオーディンが融合神獣である事は知っていた筈だ。
現に今、ロキとオーディンは融合している。
なのに何故、オーディンが復活した瞬間にロキはオーディンと融合しなかったのか。
いや、しなかったというより、恐らく出来ない理由があったのだろう。
だが、何らかの理由で融合の条件が整い、今、ロキはオーディンと融合を始めたのだろう。
「蒼!これヤバイよ!霊圧がどんどん膨れ上がってる!」
「このままじゃ弾け飛ぶんじゃない?」
「流石にそこまでバカじゃないでしょ彼は?」
「残念ながらミルフィの言う通りだな。あいつはふざけた奴だが奴の実力は本物だ」
ロキはオーディンに取り込まれて暴走するなんてヘマをするとは思えない。
ロキはオーディンを制御出来ると確信があったからこそ、オーディンと融合したのだろう。
霊圧はロキとオーディンの霊圧が解け合っており、上昇する一方だ。
「融合し掛けてる今がチャンスなんじゃ…」
「それは止めた方がいいわね。霊圧の濃度が凄すぎて押し潰される」
慧留が攻撃を提案したがミルフィーユがそれを止めた。
この濃密な霊圧に迂闊に突っ込めば確かに無事でいられる保証は無いからだ。
徐々にオーディンの身体がロキに吸い込まれ、小型化していった。
やがて、オーディンを取り込んだロキは黒色の球体へと形を変えた。
「まるで繭だな」
「そう…だね…」
「霊圧が安定してきてる…来るよ!」
ジェラートがそう言うと球体にヒビが入った。
To be continued




