【第十章】道化狂乱篇ⅩⅩⅥーdeath tree over hevenー
ー溶けていく…解けていく…わたしの…全てが…
エスデスは蒼の極大の一撃を受けた。
身体の全てが溶けてなくなる様な感覚、これが恐らく…死なのだろう。
エスデスはその死を身に染みて感じていた。
「はぁ…はぁ…」
蒼は【χ第二解放】を解いた。
勝負は決した。蒼の…勝ちだ。
エスデスは粉々にはならなかったがダメージ量が既に限界を越えている。
エスデスの身体が徐々に崩れ始めていた。
「植物の寿命は短いです…でも…樹だけは…何百年も生きられる…けど…それももう…終わりです」
エスデスは虚ろな顔でそう言った。
「まさか…こんな子供に負けるなんて…やっぱり…エリシア先生の弟子です…」
「エスデス…」
蒼は崩れ行くエスデスに近付いた。
エスデスの周りには茶色の種が浮いていた。
蒼はその種に触れた。
すると、エスデスの記憶が流れ込んできた。
エスデスの壮絶な記憶を蒼は一気に流れ込んできた。
「エスデス…お前…」
「時神蒼…あなたは…こんな絶望しか無い世界で…あなたはどう向き合うです?わたしは…あなたの答えが知りたいです」
エスデスは蒼に蒼自身の答えを訪ねた。
「お前の痛み…全部は分からねぇ…けど…俺は見てきたんだ…この世界は変われるって事を」
「………」
「俺だってこの世界が地獄だと思ったよ。大切な人を守れず、友を止める事も出来なかった」
蒼はエリシアとルミナスを思い浮かべた。
蒼が救えなかった者達だ。
「慧留と出会って…俺はそれに気が付けたんだ。世界だけじゃない…人も魔族も変われるってな…だから…俺の答えは…」
蒼ははっきりと確かに「答え」を口にした。
「慧留の…あいつの夢の手助けをする。それが俺の答えだ」
「そう…ですか…あなた程の強さを持つ者がそこまで言わせる…月影慧留…彼女とも話がしてみたかったです…」
エスデスの身体は既に半分以上塵となっていた。
「………」
「…あなたの行く末を見届けられないのは…少し残念です…わたしと同じになるのか…それとも…別の道へと進むのか…見てみたかった…けど…今のあなたには…わたしとは違う道へと進む事を予感させてくれる…」
エスデスは蒼の真っ直ぐな瞳を見て、そう思えた。
蒼は不思議な人物だ。そう、エスデスは思わずにはいられない。
そして、この時神蒼を変えた月影慧留…その少女もまた、不思議な力を持っているのだろう。
蒼と慧留、この二人は恐らく、この世界に変革をもたらす存在になるだろう。
「お前の痛み…魂は…俺が受け取った。アンタの事は…絶対に忘れない」
「…そうですか……」
蒼の言葉を聞き、エスデスは笑顔になっていた。
見た目は小さな少女の姿であった為、可憐な笑顔であったが…どこか切ない…そんな笑顔だった。
「最後の敵があなたで良かった…あなたのやり方…見せて貰うです」
エスデスはそう言い残して消えていった。
蒼はエスデスの死を最後まで看取った。
「ああ…見ていてくれ」
蒼は新たな「苗木」に水をかけた。
そう、エスデスが死んだ場所には一つの苗木が生えていた。
ーここは…
エスデスは白い世界へとやって来た。
ここは恐らく…『世界宮殿』だろう。
死後にやってくる…世界のバランサー。
「おい!なーにやってんだよ!」
誰かがそう言ってエスデスの頭を軽く叩いた。
「め…メビウス…」
「ああ、行こうぜ」
メビウスはエスデスの手を握った。
「ごめんです…わたしは…」
「いいんだよ、お前は十分頑張ったさ」
「…!」
「後は…お前や俺の遺志を継いでくれたあいつに任せればいい」
メビウスの言葉にエスデスは涙が出てきた。
「行こうぜ…」
メビウスはエスデスの手を引っ張ってエスデスは笑顔でメビウスと共に歩いていった。
「何たる事!まさか…まさかまさか!プラネット・サーカスが僕だけになるとは!m(。≧Д≦。)mまさか…あのエスデスまでやられるなんてね…」
ロキはそう呟いた。
ロキはエスデスの実力をかなり買っていた。
三番という地位である彼女だが実際は二番のイワンより戦闘力が高く、あのパルテミシア十二神を殺した事もある実力者なのだ。
そのエスデスがやられた。
「時神蒼とは相性が致命的に悪かったとはいえ…それに…どうやら彼女は僕を裏切った様だね(T0T)」
そう、プラネット・サーカスが殺した者、あるいはプラネット・サーカスのメンバーが殺されるとオーディンに魂が行くようになっていたのだがエスデスはそれを振りほど、『世界宮殿』へと行った様だ。
「だがまぁ…いい…。オーディンも復活した事だし…行くか…(ゝω・´★)」
ロキはそのまま異空間へと消えていった。
「!?」
蒼は後ろから気配を感じた。
「誰だ?」
「すぐに僕の気配に気付くなんてね…((φ( ̄ー ̄ )大した奴だ…(((^^;)」
現れたのはロキであった。
「ロキ…」
「少し…話をしないかい?フローフル…いや、時神蒼」
「………」
「なに、ちょっとした世間話だよ(^_^)」
「胡散臭いな」
「これは性分なんだ、許してくれ(*^^*)」
「で?話ってのは何だ?」
蒼がロキに尋ねる。
「今やプラネット・サーカスも僕一人になってしまった。そちらもかなりの戦力を削られたが…まぁ、このままでは負けるのは確実にこちらだろう…まさか、ここまで追い詰められるとは…」
「だからなんだ?降伏して自分の身を守るってか?」
「いんや、予想外ではあったが…想定の範囲内ではあった。けど、誤算が無かった訳ではない。プラネット・サーカスのメンバーにも何人か裏切った奴がいた。クメールとエスデスだ…そしてこの二人には共通点がある」
「共通点?」
「君だよ…時神蒼…二人とも君と戦っている」
「だから何だよ?」
「僕は君に興味があるんだよ…エスデスを、クメールを裏切らせた君にね…」
「クメールの時は確かに俺は居合わせてはいたがあいつを変えたのは慧留だ」
「その月影慧留を変えたのも君だ…だからこそ、僕は君に興味がある」
ロキは嗤いながらそう言った。
その不気味な雰囲気に蒼は気味悪く感じた。
「それでお前は俺に何を話したいんだよ」
「そうだね…初めて君と僕が会った時の事を…覚えているかい?」
「初めて…イシュガルドの戦いの時か?」
「そう…あの時の君には何も感じなかった…たが…今は違う。君からは確かに強い意思を感じる…そして…強いね」
「だからなんだ?」
「もしかしたら…君が…世界の行く末を左右するのかもしれないね」
「何だと?」
「君とルミナス…君達二人が運命の二人…という事さ」
「意外だな…アンタは俺もルミナスも殺そうとしてるのにそういう事を言うんだな」
「ふふふ…僕はあくまでもこの世界を争いだけの世界へと変えたいだけであって世界征服が目的じゃあ無いからね(*^^*)」
「あくまでも傍観者でいたい…て事かよ?」
「そういう事だね」
「こっちからも一ついいか?」
「質問かい?何だい?」
「エスデスの恋人を殺したのは…お前か?」
蒼がそう訪ねるとロキはニヤリと嗤った。
「そうか…君はエスデスの過去を知ったんだね…でも何故僕がやったと?」
「お前はイシュガルド内乱の時も関与してた。それだけじゃねー、お前は色々な事件に関係してるってゼウスから聞いた事がある」
「そう言えば…君はゼウスと会った事があるんだったね…」
「ゼウスの事を知ってるのか?」
「何だ…彼から何も聞いてなかったのかい?」
「どういう事だ」
「はー、ならば答えるよ。僕の名はロキ…それは間違いないよ…けど…カオストリクスタシアというのは僕自身が勝手に名乗っているだけに過ぎないんだよ」
「何が言いたい?」
「君、質問ばっかりだね~(;゜∀゜)。まぁ、いいや。答えるよ…僕の本当の名は…ロキ・ゼウス・パルテミシア…アスディアの…いや…厳密には僕はアスディアから切り取られたいらない部分だよ」
「!?」
蒼はロキの衝撃事実に驚愕した。
だが言われてみれば確かに…言われればロキとアスディアはかなり雰囲気が似ていた。
見た目は全然違うが優男風の見た目であるしどこか胡散臭い感じも出ているし話し方もかなり似ている。
「いい反応だ…けどもっと驚くかと思ったけど…言われてみれば確かに似てるかも…とでも思ったようだね」
「ああ、まぁな。そうか…あいつ…ゼウスの野郎…」
「彼は君には何も話していなかった様だね」
「そんな事は今はどうでもいいんだよ。俺の質問に答えろ」
「そうだね…結論を言えば…半分正解…といった所だね。神聖ローマにエスデスの情報を与えたのは僕さ。プラネット・サーカスは君も知っての通り、最初は慈善事業だった。けど僕とエスデスが手を組んだ事によって今の集団となった」
「ああ、話があまりにも出来過ぎだ」
「思ったより君は感がいいね(  ̄▽ ̄)。そう…全ては僕の計画の内だったという訳さ」
「………」
何となく予測はしていた。
プラネット・サーカスが今の様な組織になってしまった経緯…あまりにも出来過ぎなのだ。
誰かが糸を引いていたと考えるのが普通だろう。
「アスディアは…パルテミシア十二神のリーダーとなった。けどね…パルテミシア十二神の管理者となる為には余計な感情は捨てなければならなかった」
「余計な感情…だと?」
「それは…悪の感情…だよ…僕はアスディアの負の感情の塊なのさ。切り離された事により僕は千年前にこの地上に堕とされた」
「それで?パルテミシア十二神に恨みを持ってるってのか?」
「それは違うね…むしろ感謝してるくらいさ…あの退屈な『世界宮殿』から出してくれたんだから…けど…こうして折角生まれて来たんだもの…好きな事、楽しい事をしたい訳だよ?」
「それがこの戦争って事かよ?」
「いや、この戦争はその足掛かりに過ぎない(^_^)」
「お前のその下らない事の為に…何人もの人や魔族が犠牲になったって事かよ?」
「下らない…か…確かに君達からしたら下らないのかもしれない。けど僕にとってはそうじゃない。それに…騙される方が悪いしね(ー_ー;)」
「一人で勝手にやっとけ!関係無い奴を巻き込むな!」
「一人は退屈でつまらない…だからこの世界を壊そうと思った訳さ。人や魔族はね…平和を求めながらも争いを求めてる。理解し合いたいと願いながらも他人を蹴落としたがる。そんな矛盾した感情を抱えている。だから人や魔族は嘘を吐く。そう、言葉なんてものは誰かを騙し利用する為の道具だ。僕はその言葉という名の武器で今までやってきたに過ぎない。僕のやってる事は他の魔族や人間とはなんら変わらない」
「…………」
正直、蒼はロキの言葉を全く理解出来ない訳ではない。
ロキは誰よりも嘘を吐きながら、誰よりも嘘を嫌っている。
嘘は本当の自分を見えなくする。
誰かを陥れる嘘だろうが誰かを守る為の嘘だろうが見栄を張る為の嘘だろうがそれは変わらない。
ロキは戦争だけの世界を作り、本当の自分をさらけ出させる為にこんな馬鹿な事をやっているのだろう。
人は極限の状態になると嘘は絶対に吐けない。それは、魔族も同じだ。
「お前は…本当の自分が見えてるか?」
「!?」
蒼の言葉でロキは顔を歪めた。
今までのふざけた感じとは違う。
これで蒼の仮説は確信へと変わった。
「成る程…ね…時神蒼…君はそうして他人の考えを理解し、寄り添った…その上で否定してきた…という訳か…それが…君という存在」
「どうやら俺の見解は的外れ…て訳でも無さそうだな」
「ああ、僕は嘘が嫌いだ…誰よりも嘘を吐いてるにも関わらずだ」
「お前は嘘を吐き続ける事で本当の自分が見えなくなっていった」
「そうだね…僕は最早自分がどうしたかったかすら分からないよ…嘘を吐き、この世界を荒し、それを傍観する…それしか楽しみが見出だせなかった」
「嘘の世界を無くして本物だけの世界を創る。それがお前が今やろうとしてる事だろ?」
「そうとも言える…けど、違うとも言えるね(ー_ー;)。全く…どうして人も魔族も揃いも揃って嘘を吐くのかな?」
「それは…何かを求めてるからじゃないのか?」
「嘘は自分を見えなくするのに?」
「ああ。嘘を吐かないと社会は成り立たない…陳腐な言い回しだがな。誰かに同調し、誰かに合わせる…そして社会は回る。人や魔族はペルソナ無しには生きてはいけない」
「だからこそ…本物の世界を創る。嘘の無い世界…それは素晴らしい事だろう?」
「確かに…それはいい世界だろうな…誰も嘘を吐く必要がない…ありのままの自分でいられる…聞こえはいいな。だが…俺は嫌だな…そんな世界」
蒼は見てきた。
今まで抗ってきた人間や魔族達を。
彼等もまた、嘘と残酷な現実に翻弄されていた。
だが、それでも…世界は進んでいるのだ。
「何故?」
「嘘の無い世界は停滞した世界だ。昨日に囚われているに過ぎないんだよ。未来が無いんだ」
「未来は今や昨日より悪くなるかもしれない」
「いいや良くなる。必死に生きる人達は…幸せを求め続けるからだ」
「君は嘘と偽りのこの世界を正しいとでも言うのかい?」
「そうじゃない…本物は…必要だ…けど…それだけじゃダメなんだよ…人も魔族も弱い…本物しか存在しなくなっても本当の自分が見えなくなる」
「どちらも間違っていない…そう言いたいのかい?」
「そうだ…俺はルミナスみたいに国を率いた事もねぇし、慧留みたいに誰かを引っ張っていく力もねぇから…未来の事を考えるのは得意じゃねぇ…お前みたいに嘘が得意な訳でもねぇ…だから俺は…昨日でも明日でも無い…俺は今を大事に生きたいんだ…!今を大事に生きれば…過去も未来も…輝かしいモノになるから」
「今を大事にした所で明日は悪くなるとしても?」
「それでも進み続ける」
ロキは昨日を、ルミナスは明日を、そして…蒼は今日を必死に生きる選択をしていた。
蒼はどれかが間違っている…とは言えなかった。
蒼にだってロキの考えが理解出来ない訳では無いからだ。
蒼もまた、この世界の偽りに翻弄された一人だ。
「ふふふ…やはり…君は面白いな…嘘も真実も受け入れる…と…明日と昨日を大事にする為に今日を必死に生きると…戦う為に生きるのではなく生きる為に戦うと…そう言いたいのかい?」
「それが俺の出した答えだ。その為に…俺はあいつを…慧留を助けるって決めたんだ」
「月影慧留…か…君にそこまで言わせるなんて…月影慧留はそれ程の女なのかい?(((((゜゜;)」
「俺の世界を変えてくれた奴だ」
「成る程…それは面白いね……と…最後に聞くけど…やはり君は僕の邪魔をするのかい?」
「俺はお前の世界を認めない」
「そうか…もう少し話をしたかったが…あまりゆっくり話せない様だ」
ロキがそう言うと巨大な白馬に乗ってここへやって来た者がいた。
彼女は真っ白い髪を靡かせて颯爽とやって来た。
「思ったより…ここに来るのが速かったね(^_^)」
「あなたの空間操作はあくまでも空間操作をするだけ…霊力までは影響を及ぼさない」
「ああ…やはり僕は君にマーキングされてたんだね…(ー_ー;)」
そう、ルミナスはロキが逃げる直前に攻撃し、その瞬間にロキの身体に自身の霊力を付着させていたのだ。
それでロキの居場所を特定し、ここへすぐにやって来たのだ。
距離は相当離れている筈だがルミナスの愛馬であるヴィングスゴルデクスの機動力と速力を以てすればロキの場所にすぐに到着出来るのは当然の事であった。
「ルミナス…君にも戦う前に聞いておきたいな…君はこの戦いの先に何を求めるんだい?」
「あなたに話す事は何もないわね。まぁ、一つ確かなのは私のこれからの世界にはあなたはいない…という事は確かね」
「手厳しいね…僕を殺す気マンマンじゃないか…(ー_ー;)」
「当然よ…これからの計画の為には…あなたを殺さないと進まないからね…」
ー計画!?
蒼はルミナスの計画という言葉に引っ掛かりを覚えた。
ルミナスはやはり何かを企んでいる様だ。
「やれやれ…(ー_ー;)。どうやら、やるしか無いようだ…」
「フローフル、あなたはよくやったわ。下がってなさい」
「ふざけんな…俺も戦う」
蒼はルミナスの言葉を無視してルミナスの隣に立った。
「二対一か…これは分が悪い…(((^^;)。ならば…」
ロキはそう言って空間を歪ませた。
そして、ロキの目の前に巨大な人形が出現した。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
人形は咆哮した。
「まさか…あれが…」
「そう!この機械仕掛けの人形こそがオーディン!またの名をデウス・エクス・マキナ!!!」
身体全てが無機物で構成されており、更にあちこちに歯車が付いていた。
大きさは恐らく、数十メートルはあり、巨大な見た目であり、莫大な霊圧を放っていた。
「これは…予想外の霊圧ね…これがオーディン…」
「さぁ…ルミナス…まずは君からだ…時神蒼…君との会話…少しの間だったけど…楽しかったよ…君は精々ロキと遊んでいてくれ!( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆」
ロキはそう言ってルミナスと向かい合い、戦いを始めた。
オーディンは蒼に踏みつけで攻撃してきた。
「!?」
一撃で大地がひび割れた。
それに、見た目の割りに動きも速かった。
「【黒氷楽園】」
蒼は【χ第二解放】を発動した。
蒼は黒刀でオーディンを軽々とひっくり返した。
「おらああああ!!!!」
しかし、オーディンはすぐに体勢を戻し、口からビームを放った。
蒼はビームを凍らせようとしたがあまりの破壊力に凍らせ切れずにビームを回避した。
すると、オーディンの放ったビームは数キロ先の山を木っ端微塵に破壊した。
凄まじい破壊力である。とても人間が造ったモノとは思えない程の破壊力である。
「何だよ!?こいつは…」
何もかもが桁外れであった。
これが人工神オーディンの力。
蒼はそのあまりにも強大な霊圧により、身体が焼ききれそうになる。
オーディンは本当に、たった一体で世界を滅ぼせる程の力がある様だ。
これが神の力…今まで戦った敵とは明らかに一線を画す。
しかし、今までだってこういう事はあったのだ。
だが、その都度蒼は…蒼達は乗り越えてきたのだ。
蒼はオーディンに刃を向けた。
「第五部隊周辺に強大な霊波反応を探知!これは…今まで感じた事の無い霊圧です…」
「復活してしまったか…」
湊が強大な霊圧に震え上がっている中、ローグヴェルトは冷静に分析した。
ローグヴェルトの言葉に周囲の者達は顔をしかめた。
「さて…どうする?総大将代理?」
一夜がローグヴェルトにそう言った。
「そうだな…オーディンが復活してしまった以上、こちらも出し惜しみをしている余裕は無いな…セラフィム騎士団を投入する」
「ようやくか…」
「とは言え、ここを放置する訳には行かん。向かうのは…ジェラートとフラン、そしてエクレアとミルフィーユだ。残りの騎士団はここの警護だ」
ローグヴェルトの判断はまぁ妥当だろう。
ここには戦えない者やそもそも戦闘タイプでない者が大勢いる。
ここを完全に放棄する訳には行かなかった。
一夜や湊は敵襲なんか来たらあっという間に殺されるし。
「ようやく出番ね…待ちくたびれたわ」
「さてと…行きますか…面倒だけど…」
「はぁ~何で私まで…やっぱりしゃしゃり出るんじゃ無かったな~」
「つべこべ言わずにさっさと行くぞ」
ミルフィーユ、エクレア、ジェラートがそれぞれの言葉を口にするとフランが彼等を誘導した。
「それと…戦える者達も何人か連れていく。相手はオーディンだ…相応の数で望まねばなるまい」
「私達も…行きます」
ローグヴェルトの言葉で現れたのは慧留と美浪、屍、プロテアであった。
「エルは連れていく。だが…他の三人は駄目だ」
「「「!?」」」
「お前達は傷が癒えきっていない。そんな状態で向かっても足手纏いだ。エルも万全とは言えないが…まぁ、他の三人よりはマシだろう」
ローグヴェルトの言う事は最もである。
慧留は戦える状態であるが他の三人はかなり負傷していた。
「それと…残っている兵士を全て連れていく…とは言え…数百人程しかいないがな」
今回の戦争はかなり拮抗した戦争であった。
負傷者の数は計り知れず、死傷者も多い。
現在戦える兵士は数百人程しか残っていない。
「じゃあ、行ってくるよ」
「フローフルを…頼むわ…」
「絶対に死なないでね!」
「時神とちゃんと戻って来い!」
慧留が出発の宣言をすると他の皆はそれぞれ言葉を返した。
「あたしも行くよ~」
慧留の肩に手を置いて澪が言った。
「アオチーもえるるんもちゃんと生きて帰らせるよ」
澪がはっきりとそう言った。
「さて…では常森澪…では兵士達全員を移動させる事は出来るか?」
「出来ない事は無いけど結構時間が掛かるよ」
「分かった。ならやってくれ」
「分かりました~」
澪は空間転移の準備を始めた。
慧留は澪に付いていった。
どことなく、慧留の気合いの入り振りに澪は少し驚いていた。
「えるるん、まさかとは思うけど今まで全く出番無かった事気にしてー」
「気にしてないです何言ってるんですかこの話に入ってから中盤以降全く出番が無かった事なんてこれっぽちも気にしていません」
…どうやらかなり気にしているらしい。
慧留が今回の出番はというと、一番最初にプラネット・サーカスの幹部である『童話人』を倒したのは慧留なのだがそれ以降の慧留は負傷して戦えない状態であった為、しばらく出番が無く、ほぼいらない子状態だった。
「まぁいいや。後はロキを倒してオーディンを何とかすればこの戦争はあたし達の勝利だよ。いよいよ…終わるんだ…この戦争が」
「そう…ですね…」
慧留は端切れ悪くそう言った。
慧留はとてもそうとは思えなかった。
ロキとオーディンを何とかすればこの船倉が終われるとはどうしても思えなかった。
この戦争は何か裏があるのでは無いか…そう思わずにはいられないのだ。
それに、ロキとオーディンを止めるというのも相当難しいモノだ。
ロキはあの悪戯好きの神であり、パルテミシア十二神に匹敵する強さであるしオーディンはそのロキが復活すれば世界を終わらせられると豪語する程の人工神であり、実際途方もない霊圧を放っていた。
「…えるるんも感づいてるみたいだね」
「え?」
「この戦争…何かおかしいんだよ…何て言うか…私達は誰かに意図的に動かされている感じがする…何かあるよ…多分ね…正直、ロキとオーディンを何とかした所で丸く収まる気がしないんだよね」
どうやら澪も慧留と同じ事を考えていた様だ。
「澪さんは…その…」
「取り合えず、その話は後だよ。今はロキとオーディンに集中しないとね」
そう、今はこの戦争の事を考えている余裕など無い。
オーディンとロキが今目の前の一番の脅威である事には変わり無い。
ロキとオーディンを倒さなければそれこそ未来は無い。
その後の事はその時に考えればいい。
「さてと…あたしはここで空間転移の準備をするよ…えるるんもちゃんと準備しておいてね」
澪と慧留は広い部屋へと辿り着いた。
この部屋は天使城の部屋の一つあり、かなりの広さがあった。
この部屋で兵士を全員集めてまとめて空間転移を使う予定だ。
いよいよ大詰め…最終決戦という訳だ。
プラネット・サーカスとの長きに渡る因縁もこれで決着が着くという訳だ。
「分かりました」
慧留はそう頷いた。
ー待っててね…蒼!
慧留と澪は戦いの準備を始めた。
To be continued
エスデスのモデルはジャンヌダルクの死によって狂ってしまったとされるジルドレイです。そして、もう一つのモデルはというかモチーフは六道輪廻です。他のプラネット・サーカスのメンバーの技名が外国語なのにこいつだけバリバリの日本語です。まぁこれはエスデスの趣味です。彼女は日本文化(この世界では十二支連合帝国)が好きという裏設定があるんです(温泉好きというのが実はヒントでした)。蒼の戦う相手という事で相当なチートキャラでした(同じ様な事を毎回言ってる)。てかこの話蒼は活躍しなさ過ぎですね。今回でようやく活躍しました。この戦いは蒼にとって凄く重要な戦いで蒼は一つの答えを見つけました。この答えがこれからの蒼を動かす原動力となります。
永らく謎だったロキの正体が明らかになりました。これ、ずっと前に考えてた事なのでようやく書けたと思いました。ロキとアスディアの関係は察しがついた人にはついたかもしれないです。口調が似てたりどこか胡散臭い感じに描写してましたので。そして、この世界の謎も明らかになりました。これも随分前から決めていた事でようやく回収出来ました。今回は伏線回収のオンパレードでしたので非常に楽しく書けました。
さて、この話も終わりが近付いてきました。最後まで楽しんでくれたら幸いです。それでは!




