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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第二章】四大帝国会議篇
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【第二章】四大帝国会議篇Ⅲー合流ー

 蒼たちは屍を助けるべく、トウキョウ魔道警察署へ向かった。一方、四宮舞たちはトウキョウ裁判所にて、四大帝国会議が開かれるの待っていた。

 十二支連合帝国はチームを二つに分かれていた。

 まず一つ目が四大帝国会議に行くチームだ。全魔道警察官と多くの政府の人間を忍ばせていた。

 二つ目のチームはトウキョウ魔道警察署に配置している。そして、数百体の『混獣ダイダラボッチ』に監視させていた。無論、一つ目のチームにも『混獣ダイダラボッチ』を裏で連れている。しかも、その数は数千体以上だ。

 トウキョウ魔道警察署には多くの犯罪者がいる。手薄になってしまえばその犯罪者たちが逃亡する恐れがある為、最小限の人数を残している。

 十二支連合帝国総帥の閻魔弦地えんまげんちと魔道警察庁長官の阿部徹あべとおるは四大帝国会議に行っていた。

 そして、魔道警察署監獄長である阿修羅餓鬼あしゅらがきは魔道警察署に待機していた。

 今日はその四大帝国会議であるのと同時に「アザミの花」の処刑の執行日だ。

 閻魔はトウキョウ裁判所へ車で向かっていた。

「さて、いよいよだな…」

 閻魔はそう言った。閻魔の見た目は四〇代前半と言った所か。若々しさと厳格さを併せ持った男であった。

「ええ、我々の悲願が果たされます。これで全ての魔族の力を我が物に」

 閻魔の隣にいた阿部がそう言った。阿部の外見年齢は五〇と言った所か、厳格さは持っている者の、閻魔と比べて、若干小物な感じがする男であった。

 阿部は「アザミの花」との決戦の佐藤を除いた唯一の生存者であった。しかし、彼はあの時、船で作戦の指示を担当していた為、直接な戦闘はあの時はしていない。

「さて、行こうか」

 閻魔がそう言うとトウキョウ裁判所が目の前に見えていた。



「さてっと…ここがトウキョウ警察署か」

 湊がそう言った。今いるメンバーは時神蒼ときがみあおがいる生徒会一行と元「アザミの花」のメンバー蛇姫薊へびひめあざみと魔道警察官の佐藤慎司さとうしんじである。

 蒼たち一宮高校は奇しくも十二支連合帝国と同様、四大帝国会議に行くものとトウキョウ魔道警察署に行く、二つのチームに分かれていた。

 前者の方は四宮舞しのみやまい率いる一宮高校の教職員が向かっている。そして、トウキョウ魔道警察署には生徒会一行と薊と佐藤で向かっていた。

「で?どうゆう風に突撃すりゃいんすか?佐藤刑事?」

 蒼が佐藤に質問する。

「取り敢えず、正面から行くのは得策では無い。なら、裏口からだが…うっ!」

 佐藤が突然頭を抱えた。

「どうしたんですか?佐藤さん?」

 一夜が聞くが佐藤は「大丈夫だ、問題ない」と言った。一夜はすぐに大丈夫じゃないと思ったが、このままでは話が進まない。

「こっちだ」

 そう言って佐藤が道を案内しだした。


「時間だ…行くぞ!」

 天草屍あまくさしかばねがそう言うと赤島英明あかじまひであき兎咬審矢とかみしんや御登狂みとくるは頷き、牢屋を開けた処刑執人を殴り飛ばした。

「なっ!?貴様ら!」

 執行人が武器を振るが屍が処刑人を全員気絶させた。

「俺の手にかかればこんなもんだ。三日は目を覚まさねぇ」

 屍がそう言うと赤島が「相変わらず容赦ねぇ」と言うが兎咬が「殺さないだけ手加減している」と言った。

「屍、速く行こう」

 狂がそう言うと屍は「ああ」と言って刑務所の牢屋を脱走した。

 四人は走り出し、他の「アザミの花」のメンバーを探していた。

 しかし、『混獣ダイダラボッチ』に行く手を阻まれてしまった。

「こいつは…『混獣ダイダラボッチ』!?」

 赤島が叫んだ。

「そうか…こいつが…実際に見るのは初めてだな。だが、俺なら!」

 屍は走り出し、両手を重ね、『混獣ダイダラボッチ』の身体に触れた。

「元に戻れ!」

 屍はそう言って錬金術を発動させた。すると、『混獣ダイダラボッチ』の身体が五等分になり、魔族たちは元の姿に戻った。

 そう、『混獣ダイダラボッチ』は数多の生きた魔族を混ぜて作ったものなのだ。そして、『混獣ダイダラボッチ』の作り方が奇しくも成り立ちが錬金術と似たものを用いていたのだ。

 屍は『混獣ダイダラボッチ』見たのは初めてだったが、それについて調べていたので、解除法は知っていた。

「魔族を生体兵器に使う…卑劣な奴らだ…」

 屍は吐き捨てるようにそう言った。

 屍たちは倒れてる魔族たちを置いて先に進んでいった。

 本当は助けてやりたいがそれは彼ら自身で何とかするしかない。屍たちには時間が無いのである。

 再び、『混獣ダイダラボッチ』が現れた。今度は三体いる。

「審矢と英明は右側を押さえろ!くるは幻術で左側を足止め!真ん中の奴は俺が元に戻す!」

 屍は三人に指示を与えた。

「おおおおおおおおお!」

 赤島は身体を発熱させて身体能力を増幅させた。この力は赤島が本来持っている力だ。

 赤島は『混獣ダイダラボッチ』を抑え込んだ。

「ふっ!」

 兎咬は霊力の手を発生させ赤島と共に『混獣ダイダラボッチ』を抑え込んだ。

「【常闇トコヤミイザナイ】」

 狂は『混獣ダイダラボッチ』に幻術を掛けた。幻術に掛かった『混獣ダイダラボッチ』は闇に引きずり降ろされる幻を見ていた。『混獣ダイダラボッチ』はそのまま動きを止めた。

 狂は悪夢を見せる妖怪であり、神器が無くともそれなりに強力な幻術を掛けることが出来る。

 しかし、狂の今の幻術は普通の魔族や人間だったらショック死するほどの力なのだが、動きを止めることしか出来ないのは『混獣ダイダラボッチ』の力が強い証拠だ。

「行くぞ!元に戻れ!」

 屍は錬金術で一体目の『混獣ダイダラボッチ』を元に戻した。三人程の魔族が倒れていた。

「ボス!次はこっちを!」

 兎咬がそう言うと屍は赤島と兎咬の方へと向かい、再び、『混獣ダイダラボッチ』を錬金術で元に戻した。

「今度は女子供か…」

 兎咬が苦悶の表情をしながらそう言った。

「ひでぇな…」

 赤島は吐き捨てるように言い放った。

「屍!お願い!」

 狂が言うと屍は狂が足止めしていた『混獣ダイダラボッチ』も錬金術で元に戻した。

「よし…これで取り敢えずは…」

 屍がそう言うと赤島は不気味な気配を感じ取った。

「屍さん!なんかいますぜ!」

「ああ、みたいだな…」

 屍がそう言った瞬間、兎咬が大声を上げた。

「ぐああああ!」

 兎咬は突然倒れた。

「兎咬!」「審矢!」「しんちゃん!」

 赤島と屍、狂が声を上げた。

 兎咬は完全に意識を失っていた。

「そこか!」

 赤島がそう言って虚空を殴りつけた。すると、今まで透明だった身体が実体化した。

「おやおや…隠形で気配を消していたのですがぁ~、やりますねぇえ」

 現れたのはかなり痩せている男だった。しかし、屍たちは彼が何者かを知っていた。

「阿修羅餓鬼!」

 屍はそう言った。そう、彼こそが魔道警察署監獄長、阿修羅餓鬼である。

 かなり痩せ細った外見をしており、肌も不気味なほど白い。眼も若干飛び出ており、頭の所々に十円禿が出来ていた。髪は白い肌とは対照的に黒髪であった。

「ふ~む。これは…面倒なことになりそうだねぇ?」

 阿修羅は呑気そうな声でそう言い放った。


 蒼たちは裏口から牢屋に侵入していた。

「くそ!敵がめちゃくちゃいやがる!侵入が読まれてたのか?」

 蒼がそう言いながら【氷水天皇ザドキエル】を使い、監獄官を凍らせていた。

「とは言え、敵はいつもより少ないね…手薄になってるのは本当みたいだ」

 一夜がそう言うと薊は疑問を浮かべた。

「何で分かるの?」

「僕はこの国の…いや、世界中のあらゆる情報を調べていて、この警察署も調べているからここにいる人数も把握しているのさ」

 一夜は淡々と答えた。

 すると、上から『混獣ダイダラボッチ』が降ってきた。

「うおりゃあああ!」

 美浪が【身体強化フィジカルエンチャント】を使い、『混獣ダイダラボッチ』の巨体を吹き飛ばした。

「慧留以外にあれを元に戻せる人はいないの?」

 遥が一夜に質問する。

「心当たりがある人ならいる。天草屍だ。『混獣ダイダラボッチ』について調べたんだが作るのに錬金術と似た技術を使ってることが分かった。彼なら或いは…」

 一夜がそう言う。

「なら、益々屍を助けねぇとな!」

 蒼がそう言うと一夜は佐藤に尋ねた。

「佐藤さん!監視室はどこですか?そこさえ分かれば…佐藤さん?」

 一夜は佐藤の様子がおかしいことに気が付いた。佐藤の眼は虚ろになっていた。

「まさかこれほどの軍勢を一瞬で倒すとはなぁ、中々やるねぇ」

 佐藤がそう言った。だが、おかしい、佐藤のいつもの話し方ではない。

「誰だい?君は」

 一夜がそう言うと佐藤は答えた。

「私はここの監獄長の阿修羅餓鬼だよ。私はこの監獄にいる時だけ少し特別なんだよ。この監獄そのものが私だ。あっ…ちなみにこの男は何やら余計なことをしていたので私が彼の精神を乗っ取ったぁ。私はぁ自分の霊体を操る能力を使うのだよぉ」

 佐藤に乗っ取った阿修羅がそう答えた。

「そうかよ!」

「おおっと…それ以上動くとこの刑事が死ぬぅよおお」

 蒼が阿修羅に向かっていこうとした瞬間、阿修羅はナイフを自分の首に当てた。

「卑怯よ!」

 遥が叫びながら言い放った。

「卑怯と呼ばれても私はぁ何ともおお。私は勝つことが目的ではなくぅ負けないことが目的だあからねぇえ」

 阿修羅はそう言い放った。この男はかなり卑劣な人物であるようだ。

「さあてと、『混獣ダイダラボッチ』、餌だ」

 阿修羅がそう言うと壁が回転し、そこから数十体の『混獣ダイダラボッチ』が出てきた。

「さぁ、やりなさい」

 『混獣ダイダラボッチ』が蒼たちに襲い掛かる。しかし、佐藤が人質に取られてる以上手が出せない。

 生徒会たちは『混獣ダイダラボッチ』にタコ殴りにされた。

 一撃一撃が強烈であり、かなりの威力であった。

「ぐあああああああ!」「ああああああ!」「ぐふっ!」

 それぞれが叫び声を上げる。

 『混獣ダイダラボッチ』の口からビームが放たれた。そのビームが蒼たちを直撃した。

 蒼を含む生徒会たちはボロボロになっていた。

 思わぬところで敵にいいようにされてしまった。

「さてこれでえ…」

「終わるのはあんたよ」

 阿修羅が勝利宣言をしようとすると後ろから阿修羅の後ろから薊が出てきた。そして、薊は阿修羅が取りついた佐藤の首筋に咬みついた。

 すると、佐藤の身体が倒れこんだ。

「何だ…これは…」

「神経毒よ…このままじゃああなたの精神まで消滅するわよ。私の毒は霊体にも普通に効くから」

 薊がそう言うと阿修羅が驚愕の表情を浮かべた。

「何!?」

「それに、霊体は生身より脆いから先に消えるのはあなたよ」

 薊がそう言うと阿修羅が叫んだ。

「ちいいくしょおおおおおおおおお!」

 阿修羅の霊体は消え去った。

「毒抜かなきゃ」

 そう言って薊は再び佐藤の首筋を咬みつき毒を抜いた。薊は気配を殺すことが出来、殺気を失くして毒を仕込める。暗殺の天才なのだ。

「これで大丈夫よ」

 薊がそう言った瞬間、蒼たちは動き出し、『混獣ダイダラボッチ』の動きを止め、一か所に集めた。

「慧留!」

 蒼が叫ぶと慧留は黒い翼を両翼共広げ両手から黒い波動を放った。

 すると、『混獣ダイダラボッチ』たちの時間が巻き戻り、元の姿に戻った。

「はぁ、はぁ、はぁ」

 慧留がかなり息切れをしていた。さらに、先ほど人質を取られ身動きが取れない状態だったため、慧留も他の者たちと同様かなりダメージを受けていた。

「この子たちも何とかしてやりたいが…時間がない…急ごう」

 一夜がそう言うと蒼たちは頷き一夜について行き、薊は佐藤を担いで一夜たちについて行った。



「ふむ、どうやら私の一部がやられたか」

 阿修羅はそんなことを呟いていた。

 屍と兎咬、狂と赤島は倒れこんでいた。

「私の能力は魂を司る能力だ。そして、この牢獄中には私の魂が巡回してるぅ。この牢獄においてぃ私は無敵なのだよ」

 阿修羅は自身の魂を切り離し乗り移る能力がある。そして、乗り移った対象を制限はあるが変化させることが出来る。

 例えば本来在り得ない場所からトラップを瞬時に仕掛けたり、相手の位置を自由の補足することが可能なのだ。

 屍たちは阿修羅の魂の一部が仕掛けたブービートラップに嵌ってしまい、やられていた。

 屍たちと阿修羅では相性が余りにも悪い。屍は高い格闘スキルと高度な錬金術を持ち、あらゆる状況にまんべんなく対応できるが、その分、阿修羅の様に奇襲やトラップ、地形を利用するタイプの相手とは相性がかなり悪い。

 赤島も接近戦の格闘術が得意な為、相性が悪く、狂も幻術使いで本体は弱い為、相性が悪い。兎咬は先程不意打ちで倒されてしまった。

 つまり、今の屍たちはかなりマズい状況に追い込まれている。

 -クソッ!最悪だ…ここまで不利とは…神器があれば変わったんだろうが…

 屍はそんなことを考えていた。しかし、神器は全て十二支連合帝国が回収してしまっている。

 屍はすぐさま錬金術を使おうとするがその瞬間、地面から岩でできた鎗が飛び出し、屍の両手を貫いた。

「っ痛!」

 屍は悲痛の声を上げた。

 錬金術は発動に時間が掛かる為、その前に手足を潰してしまえば、無力となる。しかし、屍の錬金速度はかなり速い為、それを完封する阿修羅は相当な実力者である。

「私の能力は弱い能力だ。君らのぉ様な強力且つ派手な能力では無いがぁ、力の使いようではぁ、ここまでやれるんだよぉ」

 阿修羅はそう言った。実際、阿修羅の能力はそこまで強力な能力という訳ではない。

 生物の魂を乗っ取るには乗っ取る相手を一時間以上拘束し続けないと乗り移れないし、無機物に魂を取り付かせても形を変形させるだけである。

 しかし、監獄内においてこの能力は絶大な力を発揮する。魂の一部を取り憑かせることで、監獄全体を監視出来るし、監獄の配置を自由に変えられるし、先ほどの様に地面から武器を出現させ、相手を攻撃することも出来る。

 非常に面倒な力であった。

「くそが…」

 屍はそう呟いた。錬金術を完封された以上、屍に打つ手はほぼ無かった。

「これで…終わりだよぉ」

 阿修羅が上機嫌でそう呟いた。


 蒼たちは監獄内を走っていた。しかし、どこに行っても監獄長室が見つからない。

 監獄長室は全ての監獄者のリストがある。そして、この監獄を全て見渡すことが出来るメインパーソナル室でもある。

 つまり、監獄長室を見つければ蒼たちはこの監獄を制圧できる。しかし、一夜の電子地図を見てもこの監獄は地図とは違う構造をしてる為、見つけられずにいた。

「一体…どうなって…」

 一夜が言うと湊は霊呪法を唱えた。

「霊呪法第一五〇番【全体捜索ぺスキス】」

 すると、湊の目の前に地図が出てきた。

「これは…監獄自体が構造を自由に変えてる」

 湊がそう言うと蒼が「どういうことだ?」と湊に聞いてきた。

「この監獄は常に動いてる。道が頻繁に変わるんだよ。恐らく監獄長の仕業だね」

 湊がそう言うと蒼はニヤッと笑った。

「仕組みが分かれば十分だ!要は壁なんか気にせずにガンガン進めってことだろ?」

「湊君、屍さんの場所分かる?」

 慧留が聞くと湊は頷いた。

「うん、調べてみる」

 湊が【全体捜索ぺスキス】で調べる。湊は屍の霊力は特定できないが、屍は錬金術を使う。錬金術は霊力の適性がかなりシビアであり、例外なくかなり独特な霊力を持っている。

「何だろ?これは…」

 湊が声を上げる。

「どないしたんですか?」

 美浪が湊に話しかける。

「ここから真っ直ぐの所に複数の霊波反応があるんだよ…一、二…五体の反応があるよ。後それから、この牢獄全体にも霊波反応もあるから恐らく霊力の力でこの監獄を移動させれるみたいだよ」

 湊がそう言うと蒼は【氷水天皇ザドキエル】を構えた。

「でかした!場所はここから真っ直ぐだな!なら!話が速え!【(第二解放エンゲルアルビオン)】!」

 蒼が【第二解放エンゲルアルビオン】を使った。

「【アルカディアの氷菓】」

 蒼の【第二解放エンゲルアルビオン】は白い衣と右肩のみに生えてる氷の翼が特徴である。

 蒼はそのまま、壁を【氷水天皇ザドキエル】を突き立て、突進しながら進んでいった。

「あたしたちも行きましょう!」

 遥がそう言うと皆は頷き、蒼について行った。


 屍たちは満身創痍であった。他の仲間たちも皆力尽きていた。

 今まさに、阿修羅が屍に止めを刺そうとしていた。

「これで終わりぃだよぉ」

 阿修羅が監獄の壁を縮小させた。彼らを押し潰す気だ。しかしー

「うおりやああああああああああああああ!!」

 その叫び声が聞こえた瞬間、壁が付き破れる音がした。突き破られた壁から冷気が漏れ出していた。

「寒いい」

 阿修羅がそう言うと倒れていた赤島がニヤッと笑った。

「間違いねぇ…この冷気は」

 屍も赤島に同意した。

「ああ、まさか、奴がこの監獄に来るとはな…」

 冷気が消え、姿が露わになった。現れたのは時神蒼だった。


「ふいぃ~。間に合ったみたいだな」

 蒼は安堵の息を吐くと共に【氷水天皇ザドキエル】を構えた。

「何者ぉですかぁ?君は?」

 阿修羅が問いかける。

「時神蒼だ。そいつらを助けに来た」

 蒼が答えると阿修羅がケタケタと笑い出した。

「これは驚いた…君がそうか…」

「俺のこと知ってんのか?」

 蒼が尋ねると阿修羅は答えた。

「ああ、佐藤から情報は得ていたよ。だが、安心したまえ、この情報は私以外知らない。だが、私はぁ、あえて上に伝えてないのだぁ。何故なら、あなたたちはここで死ぬのですから!」

 阿修羅がそう言うと大量の『混獣ダイダラボッチ』が現れた。数は百はくだらなかった。

「なっ…こいつは面倒だ…」

 蒼以外の生徒会メンバーも蒼に追いついた。

「あっ…天草さん」

 美浪がそう言うと屍は美浪を見た。

「君は…あの時の…」

 そして、屍が次に見たのは美浪の隣にいた薊だった。

「屍!」

 薊が屍に駆け寄る。

「良かった…無事だったんだな」

 屍がそう言うと蒼を見た。

「お前には…借りを作りすぎたな…」

 屍がそう言うと蒼は屍のいる場所に振り向いた。

「ああ、全くだ。後でたっぷりと返済させてやる」

 蒼はそう言って再び阿修羅と向かい合った。

「私にぃ勝てるとお思いで?」

 阿修羅が攻撃を仕掛ける。突然地面から岩でできた槍が飛び出してきた。

「奴は…自分の魂を一部取り憑かせて攻撃する!この監獄は奴の魂の破片が散らばっている!この監獄は奴の思い通りに操れる」

 屍は蒼に阿修羅の能力を説明した。

「この監獄事ぶっ壊せば速いがそれをするとここにいる奴ら全員を巻き込む…無暗には攻撃できない訳だ」

 蒼がそう言うと監獄の攻撃だけでなく、『混獣ダイダラボッチ』が攻撃を仕掛けた。

 慧留以外の生徒会のメンバーたちはそれぞれ応戦していた。

 そして、慧留は赤島たちの傷を回復させていた。

「時神、俺の錬金術で『混獣ダイダラボッチ』を元に戻せる。お前は阿修羅を何とかしてくれ!」

「分かったよ」

 -とは言え、俺一人じゃきついぞ…

 蒼も屍同様、この様な小手先を使う相手は得意では無かった。

「行くぞ!」

 蒼は【氷水天皇ザドキエル】を振るう。しかし、氷が逆に蒼に襲い掛かった。

「何!?」

 蒼は氷を直撃した。

「私のぉ能力は自分の魂を無機物有機物関係なく取り憑く能力ぅ。貴様の氷を利用させてもらったぁ。貴様の氷は聞かぬわ!」

 阿修羅はそう言い放った。さらに、数十体の『混獣ダイダラボッチ』が蒼に襲い掛かってきた。

「ぐは!」

 『混獣ダイダラボッチ』の攻撃をまともに受けてしまい、蒼は強烈なダメージを受けた。『混獣ダイダラボッチ』は動きは鈍いが並外れた耐久力と圧倒的な攻撃性能を誇っており、【第二解放エンゲルアルビオン】を使用している蒼でも『混獣ダイダラボッチ』の一撃は重い。

「時神!」

 屍は錬金術を使い、蒼を襲った『混獣ダイダラボッチ』を一体を元の姿に戻したが、数が多すぎる。

「くそ!」

 その時、澪が蒼たちに加勢した。

「澪さん!」

 蒼が言うと澪が自身の状態を説明した。

「ん~。取り敢えず私の周りの奴は動けないようにしたから、シカ君、後処理宜しく」

 澪が先ほど戦っていた『混獣ダイダラボッチ』は確かに拘束されていた。

 屍は「シカ君!?」と言ったが澪と蒼は無視した。

「他の人らも手こずって入るけど、動きを止めるだけならそんなに難くないからなんとかなるでしょ」

 澪がそう言うと蒼は辺りを見回した。確かに手こずっているようだが、皆、『混獣ダイダラボッチ』を足止めを何とかしていた。

「じゃあ、任せたぞ!時神と女!」

 屍がそう言うと澪は嫌そうな顔をした。

「あたし一応、常守澪って名前があるんだけど?」

「任せた!時神、常守!」

 澪がそう言うと屍は投げやりにそう言った。

「じゃあ、やろっか…アオチー」

「その変なあだ名止めてくれませんかね?」

 澪が蒼に呼びかけをした後蒼は嫌そうな顔をしながらそう言った。

「これは…厄介ぃですねぇ」

 阿修羅はおどけた感じにそう言った。



 ここはトウキョウ裁判所、四大帝国会議が開かれる場所である。

「ここがそうじゃな」

 四宮舞がそう言った。黒いゴスロリが特徴の見た目が二十代くらいの女性だった。しかし、彼女は一宮高校の教職員の中で最年長の教職員であり、かなりの手練れの言霊使いでもあった。

 舞はトウキョウ裁判所の傍聴席に座っていた。この場所で四大帝国会議が行われる。

「さて、どうするかの…?」

 舞は下を見下ろしながらそう言った。

「来たぞ…あれはヘレトーア帝国の者だ」

 そんな声が聞こえた。すると、扉から二人の人影が現れた。二人とも男性であった。

 見覚えのある顔であった。彼らはヘレトーア帝国の大臣と副大臣である。

 大臣の名前はデミウルゴス・ペラーゼ。副大臣の名はアント・ミュー。二人ともかなり名の知れた人間であり、セクラム教の人間だ。

 ヘレトーア帝国は信仰心がかなり強い国として有名で国民はどこかしらの宗教についている。セイント教はヘレトーア帝国の中で最もメジャーな宗教の一つである。

デミウルゴスとアントはかなり特徴的な服を着ていた。恐らく宗教服だろう。デミウルゴスは中世の貴族の様な髪型が特徴であり、アントはかなり背の低い男であった。しかし、二人ともかなり若々しい顔立ちだった。

「これまた…大物が来たものじゃ」

 舞はそう呟いた。ヘレトーア帝国の大臣と副大臣と会う機会などほとんどあるまい。彼らは自国の政治だけではなくセイント教の布教活動も行っているのだ。

 十二支連合帝国の人間が彼らに会えることはそうは無いだろう。

 舞がそんなことを考えていると今度はUSWはの者が来た。

 こちらも二人の人影が見えた。前にいるのがタブラス・エント二オン、後ろにいるのがスープレイガ・レオンジャック。

 タブラスはUSWの総帥であり、国の長だ。

 スープレイガはUSW光明庁特殊暗殺部隊『アンタレス』所属の者だ。

 タブラスは人間である。しかし、実際は無能であり、政治の事は他の者に任せっぱなしの所謂、傀儡政治の象徴のような男だ。

 スープレイガーはかなり威圧感があり、金髪が特徴の男であり、男は正真正銘の悪魔である。

 光明庁とはUSWの裁判官の所属する組織の名である。その組織は様々な特殊部隊があるが、中でも『アンタレス』はUSW最強の特殊暗殺部隊なのだ。

「マジか…奴らまで来るとは…これはたまげたのぉ…」

 舞は驚きの声を漏らした。四大帝国会議は確かにその名の通り、四大帝国全員で行う会議の為、それなりのお偉いさんを連れてくるのだが、ここまでの布陣は珍しい。

 そして、ついに神聖ローマ連邦大帝国の者が来た。しかし、こちらは一人だけであった。

 一人の男性が現れた。独特な衣装で身を包んでおり、今いる者たちの中でも最も若々しいのにも関わらず、独特の空気を醸し出していた。

 背中程まである長い黒髪が特徴の男であった。

「何者じゃ?あいつは?」

 舞はそう言った。しかし、舞だけで無く、他の者たちも動揺していた。

 神聖ローマ連邦大帝国が名の知れ渡っていない者をここによこしたからでは無い。その男にはほかの者には無い何とも言えない空気を放っていたからだ。

 舞は直感した。あの男はヤバいと。

「すみません。本当は陛下が出席する予定でしたが…代役で私が来ました。つい先日、『セラフィム騎士団』団長になりました。ローグヴェルト・マクガゥエインです。以後、お見知りおきを」

 ローグヴェルトはそう言った。

 『セラフィム騎士団』、その名に舞は聞き覚えがあった。『セラフィム騎士団』は神聖ローマ連邦大帝国の最強の騎士団であり、この国の最大戦力である。

 構成員は十人程度と少ないが一人一人が一国を消せるほどの力を持っていると言われており、他の騎士団を統率する役割も担っている。

 その騎士団長ともなれば、彼は相当地位の高い人間であるということになる。

 『セラフィム騎士団』の前団長は国の内乱によって亡くなったとの事だったが、新しい団長が就任していたようだ。

「あんな化け物がいるとは…神聖ローマはどうなっておるのじゃ…」

 舞は驚きの声を漏らした。

 そして、最後に十二支連合帝国の者が入場した。出てきたのは十二支連合帝国総帥の閻魔弦地と魔道警察署長官の阿部徹であった。

「いよいよじゃな…」

 舞が傍聴席で下にいる四大帝国の者たちを眺めていた。

『それではこれより、四大帝国会議を開始します!』

 大きな声が響き渡り、四大帝国会議は始まった。


To Be continued

 【第二章】三話投稿しました。はい、ローグヴェルトにスープレイガ…なんか強そうですね…どうなる事やら…【第二章】も折り返しに入りました。後二話ほどで終わります。しかしながらこの話が終わってもまだまだ続きます。

 それではまたお会いしましょう!

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