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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第十章】道化狂乱篇
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【第十章】道化狂乱篇ⅩⅩⅠーfutureー

 ここは第一部隊。ここではイワンが突如やって来た。

 ウルオッサの部隊はイワンによって壊滅したと言う。

 ここ、第一部隊は既にほぼ壊滅状態であった。

 アリアナ・サンタマザーの自爆によりここの部隊は最も被害を受けており、殆どの兵士が倒れていた。

 残っているのは赤島、兎神、薊、くる、ドラコニキル、黒宮だけであった。


「さて…最悪のタイミングで来てしまった訳ですが…どうします?」

「ふー、取り合えず彼の能力を把握しないと話にならないね」

「ここは俺達が先に戦う」


 赤島と兎神が前へ立った。


「ですが…」

「相手の能力が分からねぇ以上、全員で攻め込むのは危険だ」

「まぁ、そういう事ですよ」

「ふっ…貴様らが束になろうが無かろうが…余が貴様ら如きに負ける事など…天地がひっくり返ったとしてもありはしないのだ」

「大した自信だな」

「そうか…貴様らは余の階級を知らんのか」


 そう言ってイワンが右手の掌を見せた。

 そこに書かれていたのは2の数字だった。


「プラネット・サーカス第二の席暴王イワン・ライグル」


 イワンはそう言って薙刀を取り出した。

 そして、その薙刀が二つに分断され巨大な鋏の様な形状に変化した。


「仕込み鋏…」

「貴様らは選択を誤った…余の能力を分析する為に敢えて束にならずに掛かろうとしたのが過ちだ。まぁ、どちらにせよ…結果は変わらんがな」


 イワンはそう言って赤島と兎神に接近した。


「【天照大御神(アマテラスオオミカミ)】!」

「【須佐之男尊(スサノオノミコト)】!」


 赤島は炎の太刀を握り、兎神は霊力で出来た盾と剣を持っていた。


「ほぉう?それが神器か…まぁ、余には関係無いがな」


 イワンはそう言って二人切り裂こうとした。

 赤島と兎神は攻撃を回避した。だがー


「「!?」」


 赤島と兎神の右肩が切り裂かれていた。


「余がこの鋏を振るうだけで相手を切れるのだ!」

「何だと!?」


 兎神が驚いていた。


「【業火ノ太刀(ゴウカノタチ)】!」


 赤島はイワンに向かって切り裂いた。

 しかし、イワンが鋏を振るっただけで赤島の攻撃が虚空へと向かっていた。


「何!?」

「【世界変化(フトゥールム・タグエル)】」


 兎神は盾でガードした。

 兎神のこの盾は【八咫鏡(ヤタノカガミ)】と呼ばれる全ての属性攻撃を無効化する絶対防御の盾だ。

 しかしー


「何!?」

「全ての行動が余にとっては無駄なのだ」


 兎神の脇腹が切り裂かれていた。


「【天羽々斬(アメノハバキリ)】!」


 兎神がイワンを切ろうとする。

 だが、イワンは攻撃を鋏で防御し、鋏を兎神に落とし、再び肩を切り裂いた。


「ぐっ!?」

「おりやああああああ!!!!」


 赤島はイワンに斬りかかるも易々と回避されてしまう。


「…どう思います?ドラコニキルさん…」

「あれは恐らく闇属性…もっと言うと概念系統の能力だな…厄介だな…」

「それは間違い無いでしょうね。問題は何を変化させてるかです」

「見た限り有力なのは空間だが…もし空間に作用するなら能力が発動した時に僅かでも空間に歪みが出来る筈だ。それが無いとしたら…」

「時間…でしょうね…」


 そう、報告によればイワンは事象を操る能力である事は予測していた。

 だが、見た限り空間を操る能力ではない。

 空間を操るのであれば空間に穴が開く、あるいは移動する時に穴が出来るモノだ。

 だが、イワンの能力にそんな形跡は無い。


「見たところ、操る時間の範囲は限定されてます。そこを狙い撃ちするしか無いでしょうね」

「時間とはいってもどの能力かは分からないぞ」

「そうですね…止めてる…いや、そんな感じじゃなかった」

「速めるにしてもタイミングが変則的過ぎる。赤島や兎神が減速してる様子も無い」


 恐らく黒宮とドラコニキルが挙げた能力とはまた別の能力だろう。


ー黒宮大志…ドゥームプロモ・ドラコニキル…厄介だな…奴等に余の能力が解明されかねない。


 イワンは早急に決着を着けようと考えていた。


「余所見してんじゃねーよ!!!」


 赤島が思いっきり太刀をイワンに振るった。


ーこの距離なら外しようもねぇ!


「仕方無いか」


 イワンがそう言うと赤島は驚愕していた。何故ならー


「なっ!?一体…どうなって…」


 イワンの鋏が無くなっていた。否、()()()()()()()()()()()()()()()()()


「余の【世界変化(フトゥールム・タグエル)】は無敵よ」


 イワンはそう言って赤島に刺さっている鋏を引き抜き、更に赤島の左腕を切り取った。


「ぐあああああああああああああああ!!!!」

「赤島ああああああ!!!!」


 兎神は叫びながらイワンに斬りかかった。


「気を付けろ…そこには罠があるぞ」


 イワンがそう言って鋏を地面に突くと兎神の下から黒い針が出現し、兎神を貫いた。


「なっ!?」

「貴様のその盾…確かに触れれば全て弾き返されるだろうが…触れなければどうという事は無い」

「くっ!?」

「余所見してんじゃねー!!!!」

「!?」


 赤島が炎の太刀でイワンに斬りかかった。

 しかし、イワンは既に赤島のうしろを取っていた。


「「「「「「!?」」」」」」


 一同は驚愕した。

 まるで…時間が飛んだかの様であった。


「驚いたな…心蔵と左腕を切り取った筈なんだが…」

「焼いて…塞いだ!」

「成る程…肉を断って骨を断つという訳か…だが…無駄な事だ」


 イワンがそう言って鋏を地面に突いた。

 すると、赤島の炎が全て消えていた。


「なっ!?」

「流石にその太刀の炎までは消せぬが…周囲の炎を消すなど造作もない」

「英明!」

「ひでちゃん!」


 薊とくるがイワンへと近付くが見えない何かに吹き飛ばされてしまった。


「何!?これ…」

「【伊弉冉舞姫(イザナミノマイヒメ)】!」


 薊は傘の神器を取り出し、そこから針を放った。

 イワンは回避しきれず針が一本だけ当たった。

 イワンはそのまま倒れた。


「!?これは…毒針か…」

「ただの毒針じゃないわ。あなたの血液自体の致死量を下げたのよ」

「ふ…無駄だ」


 イワンは鋏を再び地面に突いた。

 すると、すぐに立ち上がった。


「なっ!?」

「時が経てば毒はいずれ消え去る」


 イワンはそう言って赤島に斬りかかろうとする。止めを刺すつもりだ。


「黒宮大志!」

「分かってます!」


 ドラコニキルと黒宮は赤島を救出しようとしたがまたしても見えない何かに阻まれた。


「くそっ!?」

「どうなってる!?」


 黒宮とドラコニキルは前へ進もうとするも間に合わない。


「これで…終わりだ」


「「「止めろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」


 薊と兎神とくるが叫んだ。

 その瞬間にイワンは赤島の右肩から胴体までバッサリと切り裂き、赤島の身体が裂けた。


「赤島ああああああああああああああああああああああああ!!!!」


 兎神が叫んだ。


「いや…いや…ひでちゃん…」

「嘘…」


 くると薊も絶望した顔をしていた。

 兎神はイワンに攻撃を仕掛けたがイワンは容易く兎神の背後を取り、左手足を切り落とした。


「くそ…」


 兎神はそのまま倒れた。


「あの…能力は…」

「ああ、間違い無いだろうな…奴の能力は…月影慧留とは真逆の能力だ…」

「ほう…余の能力に気が付いたか」

「お前の能力は…未来改変だな」

「ふ…そう言う事だ」

「「!?」」

「………」


 ドラコニキルがイワンの能力を言い当てた。

 そう、彼の能力は未来を改変する能力だ。

 未来を改変する事で有り得ない事を現実にする事が出来る。


「だが…貴様の未来改変は限定的の様だな。かなりの誓約も多い。どうやら一撃で相手を完全に戦闘不能には出来ないみたいだしな」

「だから何だと言うのだ?未来を改変する力だぞ?この力の前では全て無敵だ」

「………」


 ドラコニキルは黙り込んだ。

 確かに能力が分かった位ではどうしようも無かった。

 未来改変…予想はしていたが相当厄介な能力だ。

 だが、このまま手をこまねいている訳には行かない。

 これ以上は無駄な犠牲を生むだけだ。


「怒り狂え、【黒龍魔王(サタン)】」


 ドラコニキルが【悪魔解放(ディアブル・アーテル)】を発動した。

 全身白い服で覆われており、服の中心には巨大な十字架があった。

 手足は両方黒ずんでおり、頭には龍の骨を被っていた。

 瞳は赤くなっており、背中には龍の翼を模した翼が生えていた。

 ドラコニキルは右手から長剣を作り出した。

 ドラコニキル唯一にして最強の矛、【ペンドラゴン】だ。


「はぁ!」

「貴様如きの炎で…!?」


 イワンは地面に鋏を突いたのにドラコニキルの黒い炎の長剣は消せなかった。

 イワンはドラコニキルの攻撃を回避しきれず右肩を斬れた。

 右肩の黒炎は未来改変により消した。


「どういう事だ?」

「俺の炎は概念にも影響を及ぼす。貴様の能力も例外では無かった様だな」

「貴様のその黒炎…闇属性と火属性の霊魔結合か!?」


 イワンが離れようとするも黒宮の影がイワンに攻撃を仕掛けた。

 この攻撃はイワンは未来改変により回避した。


「どういう事です?何故、ドラコニキルさんだけの攻撃が…」

「俺の黒炎は闇属性と火属性の霊魔結合だ。火属性に闇属性を混ぜる事で闇属性特有の概念系統の能力に対応出来る様になる」

「そういう事ですか…ならば…今のイワンに対抗出来るのは…」

「俺の能力だけだ」


 ドラコニキルの黒炎は火属性と闇属性の霊魔結合によるものである。

 闇属性は概念系統の能力が多く、黒炎は概念の能力を破る事が出来る炎なのだ。

 かつて、ドラコニキルの黒炎は蒼の【ワルプルギスの夜】の時間操作をも破った事もある程強力な炎である。


「では…何としてもあなたの力を彼に当てないとですね」


ー厄介だな…まさか、黒炎を操る者がいるとは


 イワンは思わぬ天敵と遭遇してしまっていた。

 イワンの未来改変は闇属性を付加した霊魔結合に弱いという弱点が存在する。

 イワンは顔色が変わっていた。

 今のイワンは相手を舐めきっていたイワンではない。


「どうやら…全力で挑まねば貴様らには勝てぬ様だな」


 イワンはドラコニキルに接近した。






「やれやれ…まさか『童話人(グリム)』が七人も敗れるなんてね…(T0T)これは予想外だ(;o;)」


 ロキがそう呟いた。


「はぁ~、それにしても…マーリンがやられちゃうなんてね…こうなってしまったら僕が一人で敵陣に突っ込まなくてはならないね…(´д`|||)」


 当初はマーリンと共にルミナスを落としに行こうと考えていたのだがこうなっては一人でやるしかなくなってしまった。


「随分と余裕ね。戦闘中に余所見なんて」

「だって君、僕に攻撃を一ヒットもさせてないよ?(* ̄∇ ̄*)」

「くっ!?」


 ロキの言う通りであった。

 現在、ロキはフォルテと交戦しているのだが、ロキは全ての霊術、魔術をすり抜ける能力により、フォルテの攻撃が全く当たらないのだ。


「僕は無傷、君はボロボロ…( ̄ー ̄)。どうにか僕の攻撃を凌いではいるけど…もう限界近いんじゃない?(^o^;)」


 フォルテはロキの攻撃でかなり傷を負っていた。

 しかし、フォルテはまだ諦めてはいなかった。


「絶対に…負けない…!」






「随分と…用心深く観察してるんだな」


 そんな声が聞こえた。


「ああ、君か?ガルディア。君から来るなんて珍しい」

「まぁ、現世があんな状況だからな」


 ここは『世界宮殿(パルテノス)』。

 ここには管理者であるアスディアとパルテミシア十二神の一人であるガルディアがいた。


「イシュガルも大変だろうね~」

「もし、四大帝国が破れれば奴等プラネット・サーカスがここへ来るのも時間の問題だな」

「まぁ…ルミナスとフローフルがいる以上、四大帝国側に負けは無いとは思うけどね」

「…前から気になっていたが…ルミナスとはそれ程までに強いのか?」

「強いよ?」

「ロキよりも…か…」

「ロキ…本当なら僕が始末を着けるのが筋ってものなんだけどね~」

「全くだな。現世の奴等が気の毒だ」


 ガルディアが現世を覗きながらそう言った。


「君、ここ最近頻繁にここに来るけど、冥界は大丈夫なのかい?」

「問題ないからここへ来てる」

「そうかい…ガルディアはどう思う?今のこの状況」

「元はと言えばこうなったのは貴様のせいだと思ってる」

「いやそうじゃなくて…だからどっちが勝つかなって事を聞いてるんだよ」

「どうでもいい」

「相変わらず冷たいね…」

「だが…オーディンが復活すれば…俺達もここで手をこまねいている訳には行かないだろう」

「そうだね~、けどまぁ、それなら大丈夫だよ。手は打ってる」

「相変わらず分かった様な口を」

「分かるさ…」


 アスディアが笑みを浮かべてそう言った。


「まぁいい。俺は戻る」


 そう言ってアスディアはどこかへ消えていった。


「聞こえるかい?フローフル?もう、オーディンの復活は止められない…オーディンは人間が作り出した負の遺産…だけど…それは元はと言えば僕が悪いのさ…悪いけど…フローフルにはその尻拭いをして貰うよ」


 アスディアがそう呟いた。







「貴様らはここで死ぬ…」

「それはどうですかね!?」


 黒宮が影を使ってイワンに攻撃を仕掛けた。

 しかし、イワンは軽々と黒宮の攻撃を回避する。


「こっちだ」


 黒宮の後ろに既に回り込んでおり、イワンは黒宮を鋏で切り裂いた。


「くっ!?【身代わりの影(スキア・シルト)】!」


 黒宮はイワンの影を操作し、イワンの前に立たせた。


「下らん!」


 イワンは影を切り裂いた。

 すると、自身の身体が切り裂かれた。


「!?これは…成る程…そういう事か」


 イワンはそう言って地面に鋏を突き刺し、【身代わりの影(スキア・シルト)】を消した。


ーくっ!?未来改変であらゆる力を消されてしまう!


「この世界に永遠など無い。時が経てばいずれは消え去るのみだ」


 イワンが黒宮を切り裂こうとする。


「!?」


 イワンが途中で動きを止めた。


「何だ!?これは!?」


 イワンはいつの間にか霊力の牢獄に閉じ込められていた。


「幻術か…」


 これはくるの仕業だろう。

 くるの神器、【月読尊(ツクヨミノミコト)】は月輪から放たれた光を見る事で相手を幻術に嵌める。

 イワンの能力は未来改変。しかし、幻術は未来改変の対象外である為、自力で幻術を解除しなければならない。


「厄介だな」


 イワンは霊圧で幻術世界から脱出した。


「くっ!?」

「幻術に掛けた事は誉めてやるがこの程度の幻術では余は簡単に解除出来る!」

「くるの掛けた幻術が!?」

「だが、奴に幻術はある程度有効なのは分かった。でかしたぞ、御登くる」


 ドラコニキルがくるにそう言ってイワンへと突っ込んで行った。

 薊も黒宮と共に攻めており、三人掛かりで攻め込む。


「無駄だ!【世界変化(フトゥールム・タグエル)】!」


 イワンは未来を改変し、霊力で作った黒い鋏で薊と黒宮を貫いた。

 ドラコニキルはイワンの作った黒い鋏を焼き払った。


「まずは貴様だ女」


 イワンはそう言って薊に攻撃を仕掛けた。

 しかし、黒宮がイワンの動きを先読みし、攻撃を防いだ。


「くっ…」

「動きを先読み出来れば…防ぎきれますよ!」


 黒宮はそう言ってイワンを吹き飛ばした。

 しかし、イワンはすぐに立ち上がった。


「ふ…ふふふ…仮にもアンタレスのリーダーと常森厳陣の右腕…というわけか…そう簡単には殺せない…という訳か…」


 イワンは愉快そうな顔をしていた。


「何がおかしいの!?」

「ならば…全力で貴様らを叩き潰すまでだ!」


 イワンはそう言って鋏を自分の方へと向けた。


「行くぞ…【死の鋏(デス・シャフォル)】」


 イワンは自分の首を鋏で切り落とした。


「「「「!?」」」」


 ドラコニキル達は驚愕した。

 一見、自殺した様に見えるがそうではない。

 イワンの霊圧がどんどん高まっていた。

 更にイワンの身体が膨張していた。


「何だ!?あれは…」


 黒宮が驚愕していた。

 やがてイワンの身体は黒ずんでいき、黒い液体で身体が包まれた。


「なっ!?」


 現れたのは黒い化け物であった。

 その姿はまるで死神の様であった。


「何…あれ…?」


 くるがそう呟いた。

 無理もない、あんな得体の知れないモノを恐れるなという方が無理である。

 一体何がどうなってるかは分からない、だが一つ言えるのは…


「イワンが更に厄介になった…て事ですね」

「ふー、面倒だな…」


 イワンは巨大になった赤黒い鋏を持ち、攻撃を仕掛けた。

 イワンは黒宮を切り裂いた。


「くっ!?」


 黒宮の右手足が切り飛ばされた。

 だが、黒宮は吸血鬼であり、超速再生能力がある。


「無駄だ…」

「!?」


 黒宮の左手足は再生しない…所か徐々に腐敗し始めていた。


「この世界に…不死など存在しない…この鋏で切った者の時間を急速に速めて未来へと回帰させる」


 黒宮は立ち上がろうとしたが立てなかった。

 黒宮はほぼ戦闘不能であった。


「不死である…という安心が貴様の隙だ、黒宮大志。さて…次は…」


 イワンは黒宮に止めを指そうとする。

 しかし、ドラコニキルがイワンの後ろを取り、斬りかかった。


「無駄だ…」


 イワンはドラコニキルの攻撃を回避し、更にドラコニキルに斬りかかった。

 ドラコニキルはイワンの巨大な鋏を受け流すが軌道が読み辛く、防ぐだけで精一杯であった。


「そこだ!」


 イワンはドラコニキルの左肩を切り裂いた。

 ドラコニキルの身体が腐敗し始め、左手が腐り始めていた。


「くっ!?」


 ドラコニキルは左肩ごと【ペンドラゴン】で切り裂き、切り落とした。

 そして、黒炎で焼いて止血した。


「いい判断だな」

「それはどうも」

「だがただの延命処置に過ぎない」


 イワンがドラコニキルに攻撃を仕掛ける。


「!?」


 ドラコニキルはイワンの後ろに薊がいる事に気が付いた。

 薊はイワンの後ろから攻撃しようとするがー


「見えている」


 イワンは薊の攻撃をあっさりと回避した。


「!?」

「成る程…気配を消すのは巧い。だが相手が悪かったな」


 薊はイワンの鋏で身体を切り裂かれた。


「くっ!?」


 薊はそのまま倒れた。

 だが、イワンはそのまま止めを指そうとする。


「これで…終わりだ!」

「蛇姫さん!」


 薊はそのままイワンに殺された…と思われた。


「!?」


 イワンの攻撃から兎神が薊を守った。


「審…矢…」

「お前を…死なせる…訳には行かない…屍さんが…悲しむ…」

「そうか…ならば貴様から死ね」


 イワンはそう言って兎神を真っ二つに切り裂いた。

 そして、兎神の身体は腐り落ち、消えていった。


「次は貴様…!?」


 イワンは脇腹に激痛を感じた。

 ドラコニキルがイワンの脇腹を貫いていた。


「燃え尽きろ!【黒炎天魔剣(イグニルム・グラディウス)】!」

「くっ!?」


 イワンは身体をずらしてドラコニキルの技が発動する前に脱出した。


「蛇姫薊!」


 ドラコニキルは薊の斬られた場所に黒炎を放ち、薊の傷を焼き、イワンの腐敗の力の進行を止めた。

 薊は既に気を失っていた。


「後は貴様ともう一人の小娘だけだな…まぁ、あの小娘は大した事は無い…まずは貴様からだ…ドゥームプロモ・ドラコニキル」


 ドラコニキルが与えた脇腹の黒炎が消えていた。

 恐らく未来改変で消し去ったのだろう。

 ドラコニキルがイワンの未来改変に対抗出来るという事は逆もまた然りという事だ。


「参ったな…どうも…俺は仲間が死んだからといって怒りを爆発させるタイプでも無いのにな…」

「ふっ…いきなり何を言うのかと思えば…下らん…」

「そうだな…アンタからしたら下らないかもしれないな…」

「この世は勝利が全て…勝つことこそが美徳よ。勝者は…常に一人。仲間を作って戦うなど弱者のする事だ」

「確かに…アンタの言う事も一理ある。けど…弱者だから何だ?ならば…何故人は魔族と対等以上なんだ?」

「何?」

「アンタも知ってるだろ?人間には俺達の様に牙も爪も無ければ…魔力や霊力だって弱い。にも関わらず何故俺達魔族と対等以上に渡り合えた?」

「それは奴等が賢しいからだろ…」

「違うな…奴等が弱者だからだ」

「何を言い出すかと思えば…」

「弱者には弱者の戦い方があるのさ」

「ならば…それを見せて貰おうか…この余の圧倒的力の前で…どうやって貴様が余を殺すのかをな」


 イワンの霊圧が上昇していた。

 さっきのでまだ全力では無かった様だ。

 ドラコニキルは気が滅入りそうになった。


「やれやれ…ここからが本当の戦い…という訳か」






 ルミナスは天使城(セラフィム・ヴァール)の外で月を眺めていた。


「時は満ちてきた…」


 ルミナスはそう呟いた。


「陛下」

「ローグヴェルト」

「オーディンの覚醒が間もなく始まろうとしています」

「やはりそう…動き始めるのね…」


 ルミナスは笑いながらそう呟いた。

 ルミナスは最初から分かっていた。

 オーディン復活を止める事など出来はしないという事を。

 ロキがこの戦争を始めた時点でこちらは負けていたのだ。

 オーディン覚醒に必要なのは大量の魔族や人間の魂でこの戦争はそれを徴収する為の戦争であった。

 そして、戦争はロキの思惑通り、拮抗していた…いや、拮抗してしまっていた。

 これにより、死者が増え、オーディンの生け贄が増える結果となった。

 そう、四大帝国にとってこの戦争はただの負け戦だったのだ。

 だがー


「四大帝国は負けるけど…神聖ローマに負けは無い…」


 ルミナスははっきりとそう言った。

 そう、ルミナスがいる限り、神聖ローマが堕ちる事は無い。

 全てはルミナスの計画通りに事が運んでいた。

 全てはルミナスの一つの願いの為…ルミナスはこの時の為に今まで生きてきた。


「陛下…それでは…」

「ええ、ロキは後少ししたらここへ来るでしょうね…その前に…私が向かうわ」

「そういう事ですか…」

「ええ、もう他の皆には話を通しているわ」

「いよいよ…総大将の出陣…という訳ですか」

「ローグヴェルト、あなたが私の代理よ」

「恐れ多いですが…承りました」

「あなたに任せるわ」

「了解しました」


 ルミナスは月光を見ながらその長い白髪を靡かせていた。

 ルミナスは別に月光を見る事が好きな訳では無かった。

 だが、フローフルは…蒼は…月光を見る事を好んでいた。

 どうも、本人曰く月光を見ると心が落ち着くとの事だ。

 まぁ、ルミナスは蒼の気持ちはあまり分からなかったが。


「ルミナス陛下…ご武運を」

「ええ」


 ローグヴェルトはルミナスの前から消えた。

 ルミナスは前を向き、瞳を閉じた。

 そして…ルミナスは色々な事を思い出していた。

 ルミナスは今までのローマカイザーの皇帝全ての記憶を保有している。

 だが、ルミナスはルミナスだ。今までのローマカイザーの皇帝達の事などどうでもよいのだ。

 あくまで自身の願いの為にローマカイザー達の記憶を利用するに過ぎない。

 ルミナスは自身の願いの為ならば世界が壊れようが構いはしない。

 それだけの狂気をルミナスは孕んでいる。

 しかし、それ故にルミナスは誰よりも純粋な人物でもある。

 何よりも誰よりも純粋で…誰よりも真っ白な人物…それがルミナスだ。

 ルミナスはやがて眼を開いてその真っ黒い眼でこの世界の行く末を見据えていた。

 例え…この世界そのものを犠牲にしたとしても…ルミナスは自身の願いの為に全てを捧げる。

 その足掛かりとしてルミナスはロキを殺すのだ。

 全てを手に入れる為に。






To be continued

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