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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第十章】道化狂乱篇
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【第十章】道化狂乱篇ⅩⅩーmiller3ー

 マーリンはインベルとアポロと向かい合っていた。


「まさか…マーリンの【無限迷宮(ラビリントス)】が破れる破れるなんてね~」


 マーリンはいじけた様にそう呟いた。


「相手が悪かったわね。あなたのその力は平次元によるもの…わたしの【死滅天使の空間(サリエル・グエム)】は空間を切り裂く」


 マーリンは溜め息を吐いた。


「まぁ、いいです。手の内を全て見せた訳でも無いですしおすし。あまり長引かせるつもりも無いです」


 マーリンはそう言って無数の鏡を出現させた。


「インベル…気を付けなさい」

「言われなくても分かってるよ!」

「ううん、いくら気を付けようと…これを破るのは不可能です」


 マーリンはそう言って鏡をマーリンの右手に収束していき、十字の盾となった。


「【十字無間迷宮(クロウツ・ラビス)】」


 鏡がインベルとアポロを写し出す。

 すると、インベルとアポロは肩膝を着いた。


「なっ!?」

「これは…一体…」

「マーリンのこの十字の鏡は写し出した者の魂を強制的に鏡へと閉じ込める。マーリンの奥の手だよ。とは言え、君達はかなりの霊力量だから流石に一発じゃあ魂を吸いきれなかったか…でも関係無いよ。後十分もすれば魂の吸収も完了する…魂を吸い出されてる君達の力も弱体化する。もう、勝負は着いた」

「面白い事を言うわね、この程度の小細工でやられはしないわ!」


 アポロは空間を切り裂き、マーリンと距離を詰めた。


「【鏡転写(インイカース)】」


 マーリンはアポロの剣を弾き返した。


「君の空間切断は連続使用出来ない」


 アポロは後ずさった。


「どうする?アポロ?」

「とにかく…あの鏡をどうにかしないと行けないわね。私が…あの鏡をたたっ切る」

「じゃあ、俺はそのサポートだな」


 インベルはマーリンに銃口を向けた。


「行くわよ」

「ああ!」


 インベルは炎の砲撃を放った。

 アポロはそのままマーリンに走っていった。


「甘い甘いよ!」


 マーリンは周囲に鏡を展開し、鏡の破片を放った。

 しかし、インベルの炎で全て焼きつくした。


「そっちこそ、私達を舐めすぎよ!【死滅天使神剣(グエム・デーゲン)】!」


 アポロは鏡ごとマーリンを切り裂いた。


「え??」


 マーリンはアポロの一撃を受け、後ずさった。

 マーリンは何が何だか分からないといった様子だ。

 マーリンは斬られた場所に手を触れた。

 血だ、赤い血が流れていた。そして、マーリンはその血を舐めた。

 その瞬間、遅れて痛みを感じた。そう、マーリンはダメージを受けたのだ。


「ふふふ…」

「「?」」


「ははははははははははははは!!!!ははははははははははははは!!!!」


 マーリンは突然嗤いだした。

 インベルもアポロも訳が分からなかった。


「何がおかしい!?」


 インベルはマーリンに問い質した。


「何がおかしい…か…いや、久し振りに血を流したから…少し興奮してしまっただけだけだよ~。ようやく…ようやく戦いが実感出来る!」


 マーリンはとても嬉しそうに嗤っていた。

 マーリンは戦いが好きだ。とくにスリリングな…拮抗した戦いが…

 だが、しばらくの間、本気で戦う事が極端に減った上にマーリンに傷を付けられる者が数百年現れなかったのだ。

 しかし、今回の戦いでマーリンは久々に傷を負った。これを喜ばずにはいられなかったのだ。


「【無限迷宮(ラビリントス)】!」


 インベルとアポロの真下から巨大な鏡が出現したが二人ともその鏡を回避した。


「あなたのその能力は相手に鏡を当てなければ発動しない!」


 そう、マーリンの使う【無限迷宮(ラビリントス)】は相手に特殊な鏡を当てる事で鏡の世界へと永遠に閉じ込める能力があり、閉じ込めた者の霊力を奪い尽くし、死に至らしめる能力だ。

 だが、いくつかの誓約も存在し、まず、閉じ込める対象の霊力量によって左右される。

 つまり、霊力があまりに大きすぎると封印自体が出来ない事があり、封印出来ても複数人出来ない場合がある。

 とは言え、使い手がマーリンの為、それは有り得ないが。

 次にアポロの様な空間を操る者がいると【無限迷宮(ラビリントス)】の空間へと侵入される恐れがある事だ。

 これにより、一度閉じ込めた蒼の脱出を許してしまっている。


「そうだね…けど…【無限迷宮(ラビリントス)】の能力はそれだけじゃないない」


 鏡から炎の砲撃が放たれた。


「これは…【炎魂砲撃(ゼーレ・カノーネ)】!?」

「マーリンの【十字無間迷宮(クロウツ・ラビス)】で吸い上げた霊力をそのまま放ってるんだよ。【反転迷宮(カハ・ラビリントス)】!」


 周囲の鏡にインベルとアポロがそれぞれ写し出されていた。

 そして、マーリンが放った炎の砲撃がアポロが写ってる鏡に命中した。


「きゃあ!」


 アポロの左肩に炎の砲撃を受けていた。

 アポロは炎の砲撃を回避していた筈だ。なのに何故ー


「まさか…」

「そのまさかだよだよ…この鏡に写っている者にダメージがフィードバックされる。この鏡に写っている者とその本体のダメージは連動してる…つまり…」


 マーリンはインベルが写っている鏡に鏡の破片を飛ばした。

 すると、インベルの右肩が切り裂かれていた。


「くっ!?」

「こういう事だよだよ~」


 これは不味い。

 というより、アポロとインベルの攻撃がかなり制限されてしまっている。

 迂闊に攻撃すれば攻撃を弾き返される、だからといって攻めなければマーリンはインベルとアポロが写っている鏡に攻撃してこちらはやられてしまう。


「さて…どうする?」


 マーリンは挑発してきた。


「アポロ…どう攻める?」

「そうね…」


 アポロは考えた。

 マーリンの能力をどう攻略するのか。

 今までの戦闘を振り返っていた。

 マーリンの大まかな能力は鏡に触れたモノを全て反射する、鏡に体を入り込ませ光速で移動出来る、相手を封印する、鏡に写した者の霊力を奪い、更にダメージをフィードバックさせる事も可能だ。

 非常に多くの能力を持っていた。

 これらの能力を全て使い分けるマーリンは正に猛者と呼ぶに相応しいだろう。


「思い付いた…行くわよ、インベル!」

「ああ!…で?どうする?」


 インベルがそう言うとアポロはインベルに耳打ちをした。


「成る程な…」

「じゃあ、始めるわよ」


 アポロがそう言うと今度はインベルが突っ込んだ。


「!?」

「【剣形態(デーゲン・フォルム)】!」


 インベルのブラストが巨大な大剣に変化した。

 インベルはマーリンに斬りかかった。


「【炎天血剣(ブルート・デーゲン)】!」


 インベルはマーリンに攻撃をしたがマーリンは鏡を構えていた。

 インベルはマーリンに斬りかかる直前に剣を止め、ジャンプしてマーリンの鏡へと斬りかかった。


「【鏡転写(インイカース)】」


 インベルは上空へと打ち上げられ、炎をまともに受けた。


「ぐっ!?」


 インベルの攻撃により、マーリンの鏡が少しマーリンから離れていた。

 更にマーリンはインベルに視線が行っていた。しかし、それが罠だった。


「【死滅拘束(サリエル・バインド)】」


 アポロはマーリンの鏡の隙間を突いて特殊光弾を放った。


「!?」


 マーリンの身体は光弾により拘束された。


「これは…」

「【死滅拘束(サリエル・バインド)】…私の【第二解放(エンゲルアルビオン)】唯一の遠距離技よ。特殊光弾を相手に打ち込んで動きを止める…そして…空間移動のマーキングもされる」

「!?」

「理解が速いわね。そういう事よ」


 【死滅拘束(サリエル・バインド)】の最も恐ろしいのは動きを拘束される事では無く、打ち込んだ相手の場所まで一瞬で空間移動出来る事だ。

 つまり、鏡を触れなければ能力が発動しないマーリンの能力は無力だ。


「行くわよ…」


 アポロはありったけの霊力を銃剣に込めた。

 すると、アポロの銃剣が紫色に輝いていた。


「【死滅天使神剣(グエム・デーゲン)】!!!」


 アポロの姿が消えた。


「がっ!?」


 アポロは既にマーリンを切り裂いていた。

 空間を飛び越え、マーリンを斬ったのだ。

 マーリンの身体が真っ二つに切り裂かれた。

 しかしー


「ぐっ!?」


 アポロの全身も鏡の破片で全身を切り裂かれていた。

 マーリンは自身がマーキングされている事を利用して自分の周囲に鏡の破片を仕込んでいたのだ。

 そして、アポロが空間を飛び越えた瞬間を狙ったのだ。

 更に…マーリンの真後ろにはインベルが写っていた鏡があり、アポロはそれごと切り裂いてしまった。


「がはっ!?」


 空中で浮いていたインベルの上半身と下半身が分断された。

 インベルはそのまま落下した。






「鏡よ鏡、この世界で最も美しいのはだぁれ?」


 幼かったマーリンはずっとそう言っていた。

 しかし、マーリンは白雪姫に出てくる魔女の様に自分の名前を言って欲しい訳では無かった。

 マーリンは知りたかったのだ、この世で最も美しいものは何か。

 だが、マーリンには既に結論は出ていた。

 そう、鏡だ。鏡は全てを写し出す、綺麗なものだ。


「鏡より…美しい物がある筈無い無いよ…」


 マーリンは独り言の様にそう言っていた。

 ここはヘレトーアの僻地であり、マーリンはここで静かに暮らしていた。

 マーリンはモリガンという、戦争を好む精霊として知られている。

 マーリンは確かに戦いが好きだ…その過程を楽しむのが…だが、もっと好きなもの…それは鏡であった。

 鏡は自分を写し出してくれる。この世界の闇を照らしてくれる。

 光をくれる。

 だが、鏡は残酷だ。全てを写し出すという事は光も闇も写し出す…という事だ。

 美しく、そして醜い。鏡とはそういうモノだ。

 マーリンはしばらくしてヘレトーアを抜け、一人で世界を歩み始めた。

 そう、これがマーリンにとっての地獄巡りの始まりであった。





 マーリンは世界を巡った。

 マーリンは元から気紛れな性格故に特に理由は無かったがマーリンは綺麗なモノを探そうとした。

 鏡は美しい、だが鏡はこの世界全てを同時に写し出す事は出来ない。

 だからこそ、マーリンは自分の眼で世界を見てみたくなった。

 だが、マーリンが見たモノは汚いモノばかりであった。

 止まらない奪い合い、殺し合い、騙し合い、裏切り合い、そして…世界を破壊していく程の戦争。

 マーリンは人の…魔族の穢れた部分ばかりを見続ける事となった。

 時代も悪かった。マーリンは世間知らず故に知らなかったのだ。

 この時、天使大戦と呼ばれる大戦が起こっており、世界は正に世紀末であった。

 マーリンはヘレトーアの僻地で育ち、ずっといた為、戦争による被害が無かったのだ。

 マーリンの眼に写ったのは血と業火、そして…何もない荒野…全てが破壊された土地ばかりであった。

 臭いも非常に不快で死体と血の臭いしかしなかった。

 そして、マーリンは理解した。これが戦争なのだと。

 マーリンにとって戦争は遊戯…ゲームの様なモノだと思っていた。

 だが、現実は違う。失えば永遠に失う。リセットなど…出来ないのだ。

 マーリンはそれを理解し、歩み続けた。

 マーリンは戦いながら世界を巡った。

 マーリンは強かった。そこら辺の魔族や人間など相手にならなかった。

 マーリンはそうしていく内に矛盾した感情を得る事となる。

 マーリンはこの戦いが終われば…平和になれば美しい世界になると考えた。

 だが、それと同時に戦う事にも楽しみを覚えていた。

 平和を求めながらも闘争を求める。マーリンはそんな矛盾した感情を持つようになっていった。

 いや、もしかしたらこれこそが人間や魔族…果ては生物が元来持っているモノであり、マーリンはその極致となっていたのかもしれない。

 マーリンは一人、進み続けた。

 すると、小さな少女とピエロ風の男が目の前に立っていた。


「君を…プラネット・サーカスに勧誘しに来た(*´∀`)」

「いきなり何だい?悪いけど、マーリンそういう胡散臭い団体には興味ないから」

「そう…でも…僕達は君に興味があるんだよね~(*´∀`)」

「君達を倒せばいいのかな?」

「出来れば平和的解決をしたいです」

「なら君達が引けばいいよね?」

「そうは行かない\(^o^)/」


 マーリンはこのままでは埒が空かないと思ったのか鏡を出現させた。


「へぇ~( ̄ー ̄)それが君の能力か…でも…」


 ピエロの男が突然と姿を消した。


「!?」


 ピエロの男は既にマーリンの後ろへ回り込んでいた。


「どう…やって…!?」

「どうやって?さぁ?どうやったんだろうね?(* ̄∇ ̄*)」

「ふざけるな!」


 マーリンは鏡の欠片を使ってピエロの男に攻撃をした。

 しかし、全ての攻撃がピエロの男から()()()()()()()


「!?」

「無駄だよ…m(。≧Д≦。)m。君では僕に傷一つ付けられない(´д`|||)」


 マーリンはピエロの男の能力が何かを考えたが検討はある程度付いているものの根拠としては弱いモノばかりだ。

 身体を透明化する能力…或いは時空間能力…もしくはその両方…いずれにしても術のカラクリを把握しない事にはどうしようも無かった。


「落ち着くです。何も争いに来た訳では無いです」

「この状況でよくもまぁそんな事が言えるね」

「わたし達の仲間になってくれればこれ以上は何もしないです」

「そゆこと(* ̄∇ ̄*)」

「………」


 マーリンは少し黙ったがこれ以上このままでも状況を悪化させるだけだ。


「分かったよ…で?君達の…その…プラネット・サーカス…だっけ?何をする組織なの?」

「一言で言うなら…そうだね…偽りのない…本物の世界を作る…勝者だけの世界…愛だけの世界…平和だけの世界をね。破壊神オーディンを復活させ…世界をゼロへと戻す…ありのままの美しい世界だ」


 ピエロの男の言葉を聞き、マーリンは眼を見開いた。


「そう…かい…それで?君達の名前は?」

「ああ、そうだね…( ̄ー ̄)僕の名前はロキ・カオストリクスタシア(*´∀`)」

「わたしはエスデス・ジルド」

「マーリンはマーリン・モリガン。君達の誘い…乗って上げるよ」


 マーリンはロキとエスデスが掲げた世界に行ってみたかった。






「がっ…」


 マーリンは身体を真っ二つに切り裂かれた。

 アポロは身体全身を切り刻まれ、インベルもマーリン同様身体が真っ二つになっていた。

 だがー


「まだ…生きてる…!」


 そう、インベルもアポロも生きている。

 マーリンはもうじき死ぬだろう。しかし、彼等も道連れしなければならない。

 この世界を変える為にも。

 マーリンは鏡を出現させ、鏡の中に肉体を写し入れた。

 これで数分は生き永らえる事が出来る。


「これで…終わり!!!」


 マーリンはインベルとアポロに鏡の欠片を放った。


「【終焉の滅矢(ドゥームズデイ)】」


 マーリンは巨大な矢によって鏡の欠片ごと貫かれた。


「なっ!?」


 マーリンは一体どこからと思ったが矢を放った者はすぐに現れた。


「ふぅ~間に合った~」

「君は…ジェラート!?」


 そう、現れたのはジェラートであった。

 神聖ローマの皇族であるローマカイザーの第二皇女である。

 彼女はかなり特殊な力を持っており、その能力が転生能力だ。

 彼女は幾度となく転生を繰り返し、今までの前世の記憶も保持している。

 悪魔と天使の力を持つデモンエンジェルと呼ばれる種族だ。


「それにしても…君の鏡は頑丈だね~。私の一撃でも壊せないなんて…」


 マーリンは鏡から出た。

 いや、これ以上鏡に留まる事が出来ないのだ。

 霊力が既に底を尽きていた。

 鏡から出たマーリンはそのまま倒れた。


「くっ!?」

「限界だね…マーリン」

「君は…この戦いに興味が無いと思ってたよ…」

「うん、そうだよ?けど…インベルやフローフルがピンチとあれば話は別かな?」

「どこまでも…気紛れな奴だね」

「気紛れって言葉は君にだけは言われたく無いよ~。私以上の気まぐれの癖に」

「…はぁ…勝負に負けて…道連れにすら出来ないなんてね…」


 マーリンはそのまま眼を閉じた。

 そして、そのまま絶命した。


「………」


 ジェラートは真っ二つになったインベルの上半身と下半身を繋ぎ合わせた。

 更に霊力で固定させた。しかし、これでは気休めにしかならず早急に治療が必要だ。


「さてと…アポロもつれていかないとならないのか~。面倒臭」


 ジェラートは心底面倒臭そうにしていた。

 まぁ、ジェラートは蒼やインベルとはそれなりに親好があるものの、アポロにはあまり無い。

 というかアポロは自分から敵をわざわざ作るきらいがあり、ジェラートはあまりアポロを快く思っていないのだがー


「まぁ、君も一応、フローフルとインベルの友達だしね…貸し一つだよ」


 ジェラートはアポロとインベルを担いでここから離れた。






 蒼は天使城(セラフィム・ヴァール)へと戻っていた。


「蒼!戻ってきたんだね!」

「ああ、何とかな…それよりプロテアを」


 蒼は担いでいたプロテアを見ながらそう言った。


「随分派手にやられたな~、フローフル」

「ミルフィーユ…」


 橙色の髪と瞳を持つ女性が蒼の前にやって来た。

 ミルフィーユ・ペテルギウス。セラフィム騎士団の一人だ。


「そんなに強かったのか?はー、私も戦いたかったな~」

「それは残念だったな。今回お前らセラフィム騎士団は皇帝様の警護が優先だからな」

「まー、確かに総大将がやられたら敗けなのは分かるけど私も前戦に出たかったな~。セラフィム騎士団ほぼ全員で皇帝の護衛ってやり過ぎな気がするんだけど」

「命令を出したのはルミナスだろ、俺に言うな」

「まぁそうなんだけど…は~、インベルとアポロが羨ましいな~」

「二人ともお前と違って戦いが好きな方でもねぇだろ」

「それもそうだね…苗木君、君はプロテア・イシュガルドを医務室に連れていって~」

「分かりました。蒼、じゃあまた」


 一夜はプロテアを抱えて医務室へと向かった。


「所で…聞きたい事があるんだが…」

「珍しいね、フローフル。あなたが私に質問なんて」

「いいから答えろ。……ルミナスの目的は何だ?」

「あー、そう来たか…」

「ルミナスは明らかにこの戦争で何かを企んでる。今回の戦いでセラフィム騎士団を殆ど警護に回してるのは総大将の守りを固める事じゃねぇ…戦力を温存する為だ」

「………」


 そう、明らかに今回の神聖ローマは戦力を温存している。

 襲撃に備えて総大将を警護という名目でセラフィム騎士団ほぼ全員をここに置いているが戦力温存である事は明らかであった。


「それに…あまりに()調()()()()

「何が言いたいの?」

「今回の戦争…一見拮抗している様に見えるが…実は神聖ローマのダメージがほぼゼロ…こっちが終始遊離に進んでるんだよ。お前はこれをどう説明するんだよ?」

「フローフルも気付いてたか…」

「?どういう意味だ?」

「実はルミナスは私達セラフィム騎士団にも詳しい事は伝えていない。だからあなたのその質問には答えようにも答えられないわ」

「何だと…?」

「あなたの推察は恐らく正しいでしょうね。ルミナスは明らかに戦力を温存している。ここから先の戦いを見越しているんでしょうね」

「ここから先の戦い…だと?」

「戦力を温存する理由なんてそれしか無いでしょう?ルミナスはこの戦争を終えた後、何かをするつもり…なのは確かでしょうね」

「ルミナスは…お前らにも話して無いのかよ?お前は…天使親衛隊(フィーア・エンデ)だろ!?」


 天使親衛隊(フィーア・エンデ)とはセラフィム騎士団の親衛隊の事であり、蒼の知っている限りではミルフィーユ、エクレア、そして元団長のフランの三人だ。

 そして、蒼はかつて、この天使親衛隊(フィーア・エンデ)の一人であり、昔は四人いたのだが恐らく新しい団長であるあのローグヴェルトが天使親衛隊(フィーア・エンデ)に加わっているのだろう。


「ルミナスは私の事をあまり信用してないみたいね。いえ…ルミナスは誰も信用していないのかもしれない」

「どういう事だよ?」

「そのままの意味よ。とにかく、私はルミナスには何も知らされていない。恐らく、エクレアもフランも彼女の目的は知らないでしょうね、ローグヴェルトはどうか知らないけど」

「どういう事だ?ローグヴェルトってそんなに信頼されてるのか?」

「あの二人は基本的に一緒にいるわね」

「ローグヴェルトは何者なんだ?」

「五年前、突然現れて、突然騎士団長になった男よ。彼の経歴、出生、全て謎よ」

「あいつは…慧留と何か関係があるみたいだった…」

「その様ね、なら月影慧留に直接聞くと良いかもね、ローグヴェルトについては」


 ミルフィーユもあまり状況を把握しきれていない様であった。


「いずれにしても…ルミナスが何かをしようとしてるのは確かよ。用心した方が良いかもね」

「ミルフィーユ…アンタ…一体何がしたいんだよ?」

「私は戦いが楽しめればそれでいい。セラフィム騎士団に付こうが付くまいが楽しく戦えればいい」

「毎度毎度思うけど…何でお前はそんなに戦いが好きなんだよ?」

「勝つことが楽しいからよ」

「勝者ならではの台詞だな」

「確かにそうね、負け犬は戦いが好きじゃないもの」

「それはそれで偏見な気もするがな」

「いえ、案外そんなもんよ、ゲームだって強い人は好きでいられるでしょうけど負けっぱなしの人がいつまでも好きでい続けられる者なんて…果たしてどれくらいいるんだろうね…」


 ミルフィーユは達観した様にそう呟いた。


「ルミナスがどうこうしようが自分には関係無いって事かよ?」

「まぁ、そうね」

「薄情な奴だな」

「私はお人好しじゃないのよ。それに…馬鹿弟子三人も育てた私に薄情だなんてよく言えたモノねあなたは」

「それ、俺の事言ってるんだよな?」

「あなただけじゃないけどね」

「そうかもな…特に…俺はそうかもな」

「?随分と素直ね」

「本当の事だからな」


 蒼はそう言った。

 そう、蒼は間違いなくミルフィーユの馬鹿弟子だろう。

 蒼が犯した過ちなど数えきれる筈もない。


「そう、なら…それを帳消しにしないとね」

「そうだな…ああ、そうだ。俺さ、アンタにずっと言いたかった事があったんだよ」


 蒼は思い出した様にそう言った。


「?」

「アンタの弟子にしてくれて…ありがとな」

「!?」

「そんだけだ、じゃあな!」


 蒼はミルフィーユから去っていった。


「ふふ…まるで息子を見送る母親だな…今の私は…」


 ミルフィーユはそう呟いた。

 蒼を弟子にした理由など戦いを楽しむ為だけだった。

 まぁ、ミルフィーユはどうもお人好しの所があるようで決してそれだけでは無かった。

 弟子は師匠に似る…というが案外それは間違ってはいないようだ。






「戻ったか!フローフル!」

「久し振り…って言えば良いのか?アルダール」

「アオチーお帰り~」


 アルダールと澪は蒼にそう言った。


「フローフル、戻ったのね」

「ああ、お陰さんでな。で?今はどうなってる?」

「敵はエスデス、ロキ、イワンの三人が残ってるわね」

「マーリンはどうなった?」

「さっき、ジェラートから連絡が入ってどうにか倒せたらしいわ。アポロもインベルも無事の様だけど二人とも重症よ」

「そうか…」


 蒼が安堵すると湊が大声を上げた。


「大変です!第五部隊が突如現れたエスデス・ジルドにより壊滅状態です!」

「!?」


 蒼はそれを聞いてすぐに澪の所へ行った。


「澪さん!」

「分かってるよ~」

「待ちなさい!あなたはここで…」

「ルミナス、俺はアンタには従わない。俺は…仲間を守るだけだ」


 そう言って蒼と澪はテレポートで消えていった。


「全く…どうしようも無いわね…」

「いかがなさいます?」

「第五部隊はフローフルに任せましょう」


 ルミナスはそう呟いた。





To be continued

 マーリンの名前のモチーフはずばりマリー・アントアネットです。そして、童話のモチーフは白雪姫の魔女です。童話については鏡の話を頻繁にしていたのですぐに分かったと思います。このマーリンはとにかく「矛盾」を意識してました。安寧を望みながらも争いを求めている…そんな矛盾した性格をしていました。ある意味、人間臭いキャラになっていたと思います。

 今までの敵は倒しても死なない事が多かったし、死んでも一人いるかいないかでしたが今回はほぼ全員敵キャラは死んでます。これは今までの戦いとは違い、戦争であるという事を認識して貰う為です。今までの戦いは事件やいざこざの範疇で「戦争」では無かったのです。なので極力キャラを死なせない様にしてました。しかし、今回は敵味方関係なく死んでます。戦争って多分呆気なく殺されてそして殺す惨いモノだと思うのでそれを表現したかったのです(戦争経験した事無いけど)。どこにぶつければいいか分からない憎しみに溢れ、ゴミの様に命が消え去る…それが戦争だと思います。そんな時代に生まれなかった事を幸いに思いつつ忘れてはならないモノであると感じております。

 話は変わり、今回でようやく蒼が戦場へ向かいます。出番無さすぎですね。しかし、最後の方はちゃんと活躍します。この話も後半に突入しましてますので流石に…ね?

 それではまたお会いしましょう!

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