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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第十章】道化狂乱篇
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【第十章】道化狂乱篇ⅩⅨーalter egoー

 ここは第五部隊。

 ここでは突如として謎の巨大生物が襲い掛かっていた。

 様々な動物を融合させたキメラである。

 一体目は十メートル級のパンダのキメラ、二体目は腕が十本以上ある人間の顔をした金剛力士の様なキメラ、三体目は眼が十個以上ある巨大な蜘蛛のキメラ、そして最後は全身に触手が生えているタコのキメラであった。

 どれも強大な魔力を纏っていた。

 これらのキメラは莫大な霊力を持っており、厳陣以外ろくに対処出来ない状態であった。

 合計で四体であり、主に厳陣が対処に当たっていた。


「くっ…これでは…」


 厳陣は内、パンダと熊の二体のキメラを既に撃破していた。

 残りはタコと剛力士の様なキメラだけだ。


「やっと着いた」


 そう言って、誰かがタコのキメラに手で触れた。

 すると、タコのキメラがバラバラに砕け散った。


「天草君!」

「増援に来てやったぞ、常森厳陣」


 やって来たのは屍であった。

 屍はクメールとの戦いが終わった後、澪によってここに移動していたのだ。


「こいつら…キメラだな。何十種類もの動物が融合されてる上に莫大な霊力を持ってる。だが、体構造を理解すれば俺の前では無力だ!」


 屍はそう言って、剛力士のキメラへと向かっていった。

 剛力士のキメラは無数の張り手で屍を攻撃したが屍は地面の土を錬成して無数の手を作り出し、剛力士のキメラの腕の動きを封じた。

 そして、屍は剛力士のキメラの頭に飛び乗り、両手を剛力士のキメラに触れた。 


「【滅死ノ魔錬手(メツイノマテ)】!」


 剛力士のキメラはバラバラに砕け散った。

 屍の力は錬金術だ。【滅死ノ魔錬手(メツイノマテ)】はその錬金術の応用だ。

 本来錬金術は理解、分解、再構築の順で発動するのだが【滅死ノ魔錬手(メツイノマテ)】は分解で留めてあらゆる物質を破壊する。

 屍の能力はキメラと非常に相性がいいのだ。


「ふぅ…何とか倒しきれたか…」


 厳陣は一段落した。


「こいつは一体どういう事だ?」

「見ての通りだ。何者かが近くでキメラを操ってる。それを探さない事には」

「そうかよ…ならまずそいつを見つけねぇとな」


 厳陣と黒宮が話していると二人の人物がやって来た。

 一人は紫のロングヘアーと瞳、ダークメタルな服装が特徴的な男ともう一人は黒掛かった赤色と瞳の長身のゴツイ黒人の男だった。


「よう!お前ら、苦戦してるみたいだな!」

「増援に来たぞ」

「助かる。グリーフアルト君、グリトニオン君」


 紫のロングヘアーの方がグリーフアルト、黒人の男がグリトニオンだ。

 二人はドラコニキル率いる『七魔王(セブン・ドゥクス)』のメンバーだ。


「グリーフアルト君!周囲の霊力と魔力を探ってくれ」

「分かりやしたよ」


 グリーフアルトは周囲の霊力と魔力を探った。

 グリーフアルトは感知能力に長けている。


「見つけた!あそこだ!」


 グリーフアルトは近くにあった岩壁を指差した。


「【炎帝爆殺(ナシャート・ラハブ)】!」


 厳陣は岩壁を炎の剣で切り裂いた。


「おっと」


 男が岩壁から現れた。

 眼の回りの黒い隈取りに黒い瞳、茶髪が特徴の男が現れた。


「こいつは…メンゲレ・オルターエゴ!」


 グリトニオンがメンゲレの名を口にした。


(ぼく)も有名人になったモノなのさ」


 メンゲレはおどけた様にそう言った。

 メンゲレ・オルターエゴ。

 彼はイギリス連邦のマッドサイエンティストで知られている。

 彼は非道な人体実験や動物を実験体としていた。


「この人数だ!どうするよ?」

「ふふふ…こっちにはまだまだ実験体が沢山いるんだよ!!!」


 メンゲレがそう言うと巨大なキメラを数十体出現した。


「なっ!?」

「だが…天草屍…君だけは卜が倒そう。君のその能力は厄介だからね…」


 メンゲレはそう言って左腕をロケットの様に飛ばした。


「なっ!?」


 屍は何とか攻撃を回避したがメンゲレは更に左腕から小型ミサイルを飛ばした。

 流石の屍も回避しきれず吹き飛ばされた。


「ぐぁ!?」

「天草君!くっ!?」


 厳陣達はキメラ達によって屍の行く手を阻まれていた。






「引き離されたか…」

「そういう事さ!」

「随分とハツラツとした野郎だ」

「ふふふ…自分を実験体として戦うのも久しいからね。テンションも上がるさ」

「お前…自分の身体を改造しまくってるな…」

「改造?そんな生温いモノでは無いのさ!」


 メンゲレは服を脱ぎ捨てた。

 その瞬間、メンゲレの顔の横が変形し、顔が三つに増えていた。

 更に腕の数が六本に増えており、尻からは鋸の様な武器が出現しており、頭が割れ、機械で出来た突起物が出現していた。

 最早、この姿は阿修羅と機械が融合した様な姿で非常に気持ちの悪い姿をしていた。


「何だ??そりゃあ…」

「喰らうのさ!」


 メンゲレは左腕を引きちぎった。

 すると、左腕からミサイルポッドが出現し、一斉にミサイルが放たれた。


「!?」


 屍はミサイルを全て回避するが回避した先には既にメンゲレがいた。

 メンゲレは頭からレーザービームを放った。


「ぐぁっ!?」


 屍は肩を切り裂かれた。

 更に腕で首を捕まれ、両手足も捕まれた。


「これで…さっきの攻撃は出来ないのさ…知っているのさ…君の使う錬金術は両手を封じれば使えないという事をさ!」


 メンゲレは尻から生えていた鋸の様な武器で屍の心臓を突き刺そうとした。

 しかし、屍の左手から小さいボールの様な物が落ちた。

 ボールが落ちた瞬間、光を放ち、爆発した。


「くっ!?」


 屍は何とか爆風で怯んだメンゲレから脱出出来た。

 あらかじめ爆弾を錬成しておいたのだ。

 しかし、あの手の数と武器の多様さ。迂闊に近付くのは難しいだろう。

 屍の破壊の力を使って一撃で倒すのが一番手っ取り早いがその前に腕を捕まれて終わりだ。


「その身体…まるで武器人間だな」

「ふふふふ…この力を使うのは久方振りなのさ!」


 メンゲレは腕を飛ばし、屍の両手を捕らえようとした。

 屍は地面に両手を置き、土の壁を錬成し、メンゲレの腕を防ごうとしたが地面を貫通し、屍に襲い掛かった。

 しかし、屍はメンゲレの腕を掴み、【滅死ノ魔錬手(メツイノマテ)】でメンゲレの腕を粉々にした。


「迂闊に腕を飛ばすのはダメか…」


 メンゲレの破壊した筈の腕が回復していた。

 恐らく、メンゲレは無数の武器を使用する事が出来、無くなってもすぐに修復されてしまう。


「【滅死ノ魔錬手(メツイノマテ)】でやるしかねぇか…」

「錬金術を扱う上で腕は必要不可欠なのさ。その腕を破壊すれば卜の勝ちなのさ!」


 メンゲレは身体全身からロケットを発射した。

 メンゲレはあくまでも屍を近付かずに殺すつもりだ。

 屍の破壊の力は相手の身体に触れていなければ発動しない。

 遠距離で倒せる手段があるのならそれでやるに越した事は無い。

 屍は【アルダメルクリー】を使い、無数の爆弾を錬成した。

 【アルダメルクリー】とは小さい四角い石板の様な形をした魔具であり、霊力を喰らう事であらゆる物質を錬成出来る。


「くっ!?」


 屍はメンゲレのロケットに爆弾を当てた。

 無論、爆弾とロケットは爆発を繰り返し、爆風が襲い掛かる。

 爆風と共にメンゲレの腕が飛んできた。

 屍はなんとか反応したが左腕を捕まれてしまった。


「しまっ!?」

「これで終わりなのさ!」


 メンゲレは既に屍の右手も捕らえようとした。

 屍は咄嗟に右手に青竜刀を錬成し、自身の腕を切り裂き、メンゲレを蹴り飛ばした。


「くっ!?」

「はぁ…はぁ…」


 メンゲレはすぐに立ち上がった。


「左腕を犠牲にするなんてね…並々ならぬ精神力なのさ…」

「そりゃあ…どうも…はぁ…はぁ…」


 メンゲレの腕に一度捕まれると中々離れない。

 なので屍は自身の左腕を犠牲にするしか無かった。

 とは言え、後右腕が犠牲になったらいよいよ後が無い。

 このまま長期戦になれば屍が不利である。


ーこの一手に賭ける!


 屍はメンゲレに突っ込んでいった。


「愚かだな!」


 メンゲレはそう言って腕を伸ばして無数の腕を出現させた。


「な!?」


 メンゲレは最初からこれが狙いだったのだ。

 屍に近付かせ、この無数の腕で捕まえて押し潰す。


「【滅死ノ魔錬手(メツイノマテ)】!!!」


 屍はメンゲレの無数の腕を破壊したがメンゲレ本体に破壊の力が届く前にメンゲレは身体を切り離し、ダメージを逃がした。

 そして再び、無数の腕を出現させた。


「くっ!?」

「終わりなのさ!!!」


 無数の腕が屍を押し潰した。


「がっ!?」

「更に…喰らえ!!!」


 腕から無数の穴が空いた。その穴からビームが放たれようとしていた。

 これ程の無数のビームを喰らえば恐らく屍の身体は耐えられない。


「終わりなのさ!!!」


 無数のビームが屍目掛けて乱発射された。


「これで…天草屍の身体は粉微塵に…」

「勝手に殺すな!」


 屍はそう言ってメンゲレに近付いていた。

 よく見ると屍は足にサーフィンボードの様なモノに乗っていた。

 ボードからは炎が噴出しており、高速でメンゲレに接近していた。


「一体どうやって………!?まさか…!?卜の腕を!」

「その通りだ。お前の腕を使って錬成した」


 屍はメンゲレの無数の腕を一度目は破壊したが全て破壊せずに少しだけ破片を残していた。

 その破片を錬成してボードの形をしたブースターを錬成したのだ。

 メンゲレの身体は無機物で構成されている。

 屍の錬金術で十分錬成可能である。

 しかし、メンゲレの攻撃をかなり受けたのか身体はボロボロであった。


「くそ!」


 メンゲレは屍にミサイルを放ったり、ビームを放ったり、腕を使ったりあらゆる武器を使って襲い掛かったが全ての攻撃を屍に回避されてしまった。


「お前の腕から錬成したんだ。お前の武器の速度にも対応出来る」


 強力な物質を錬成する事でより強力な物質を錬成出来る。

 それこそが錬金術の真骨頂だ。

 やがて屍はメンゲレの眼前へと迫っていた。


「終わりだ!」

「そうはさせるか!」


 メンゲレは焦った表情をして屍の腕を掴もうとした。


「右手に意識が行き過ぎだ」


 屍はそう言ってメンゲレの顔面に今まで乗っていたボードをぶつけた。

 ボードは爆発し、メンゲレは一瞬怯んでしまった。


「がっ!?」

「終わりだ。【滅死ノ魔錬手(メツイノマテ)】」


 屍はメンゲレの顔面を掴み、破壊の力を発動させた。

 すると、メンゲレの身体全身に電流が走り、身体が弾け飛んだ。


「まだ…だ…」


 メンゲレはそう言って頭部からビームを屍に放った。

 屍は回避が間に合わず、脇腹に大穴が空いた。


「がっ!?」


 メンゲレと屍はお互いに倒れた。


「一…人…一………殺……………」


 メンゲレはそのまま死に絶えた。


「がはっ!?」


 屍は血を吐きながら立ち上がろうとしたが脇腹に大穴が空いている為、まともに動く事すら出来なかった。


「くそ…」


 屍はそのまま力尽きた。





「ちぃ!?面倒臭ぇな!」


 グリーフアルトはそう言いながらキメラの相手をしていた。

 それは厳陣もグリトニオンも同じであった。

 キメラの強さは総統なモノであり、やはり屍がいなければ辛いものがあった。


「もう、いいです」


「「「!?」」」


 そんな声が聞こえた。


「【死種神征(ししょうしんせい)】」


 突如空から白い種が降ってきた。

 種に触れたキメラ達が悲鳴を上げて身体がふやけていっていた。


「ぎやあああああああああああああああああ!!!!」

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

「ギエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!」


 周辺にいた兵士達も次々と死んでいった。


「ぎやあああああああああああああああああ!!!!」

「助け…………ガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


 厳陣、グリトニオン、グリーフアルトは白い種を避けていた為、無事であった。


「皆!あの白い種に触れるな!!」


 厳陣がそう叫んだ。


「どうなってんだ!?こりゃあ…」

「分からん!」


 やって来たのは翡翠色の長い髪と瞳を持ったフリルな服を着た少女であった。


「エスデス…ジルド…」


 厳陣がエスデスの名を口にした。


「…全く…メンゲレの造ったキメラは醜いです。こんなモノはさっさと殺すのがいいです」

「何故…お前が…」

「そろそろわたし達も動く事になった…という事です。悪いですけどここの部隊は全滅させるです」


 エスデスがそう言った。

 すると、厳陣達が身構えた。


「一つ、聞いてもいいです?」

「何だ?」

「あなた達は何故こんな愚かな争いをするです?大人しく我々プラネット・サーカスに降伏すれば、助けてやるのもやぶさかでは無いです」

「ふざけるな!貴様らに世界を好きにはさせない!貴様らが勝てばこの世界は更なる混乱に陥れる事になる!」

「争いを起こす事で人や魔族は滅びる…そうすれば争いは無くなるです。今は生きている魔族や人が多過ぎるとは思わないです?しかし、資源は有限。足りなければ奪い合う。そして争いは起こるです。だからこそ、平和の為に命の数を減らすしか無いです」

「やはり貴様もプラネット・サーカスか…」


 厳陣はエスデスを見て、そう言った。

 やはり、エスデスもプラネット・サーカスなのだと厳陣は感じた。

 エスデスの掲げる平和とは誰もいない無の世界だ。


「あなた達は平和の為の礎となって貰うです」


「そうはさせるかよ!奪い取れ…【強欲王子マモン】」


 グリーフアルトは【悪魔解放ディアブル・アーテル】を発動。右腕が巨大化した以外はそこまで変化はなかった。


「同感だな!食い散らせ!【餓血蟲蠅王ベルゼブブ】!」


 グリトニオンの身体は一回りほど巨大化していた。

 体色もより色黒になっており、右腕はバズーカの様な形状になっていた。

 左手も巨大化していた。顔も鬼のような顔に変化していた。そして、背中には蠅の翼と黒い尻尾が生えていた。見た目は完全に巨大な蠅の化け物であった。


「その程度で勝てると思ってるです?」


 エスデスは余裕そうにそう言っていた。


「はぁ!」


 グリーフアルトは右腕からエスデスの霊力を吸い取ろうとした。

 グリーフアルトは相手の霊力や魔力を奪う能力がある。


「【死種神征(ししょうしんせい)】」


 グリーフアルトはエスデスが出現させた白い種を全て吸収した。


「成る程…どうやらただのザコではないようです」

「フン!」


 エスデスがそう言うとグリトニオンがエスデスを殴り飛ばした。

 エスデスはすぐに立ち上がった。


「「なっ!?」」


 グリーフアルトとグリトニオンは驚愕していた。

 何故なら、エスデスの頭の半分は吹っ飛んでいたというのにエスデスは普通に立ち上がったからだ。

 更に欠損した部分はまるで植物が花を咲かす様に再生していった。


「わたしは死なないです。この大地が有る限り」


 エスデスは足を植物の茎の様な形状になっていた。


「まさか…大地の霊力を吸収して身体を再生させているのか!?」


 厳陣がそう言った。

 そう、エスデスは大地の霊力を取り込んで自身の身体を再生させていた。

 地上にはほぼ無限の霊力がある。それを無尽蔵に使えるという事はエスデスはほぼ無敵だ。


「【餓鬼(がき)地導吸樹(ちどうきゅうじゅ)】…この力が有る限りわたしは無敵です。さて…【死種神征(ししょうしんせい)】が効かないとなると…これを使うしか無いです。【王樹界凛(おうじゅかいりん)】!!!」


 エスデスの周囲から無数の樹木が出現した。


「【炎帝爆殺(ナシャート・ラハブ)】!」


 厳陣が炎の剣で無数の樹木を切り裂くがそれでも一向に数が減らなかった。


「ぐおおおおおお!!!!」


 グリトニオンが樹木を打ち砕くが樹木がグリトニオンの身体に絡み付いた。


「がっ!?こいつ…俺の霊力を…」


 エスデスの発生させた樹木は触れた者の霊力を奪う。


「【王樹界凛(おうじゅかいりん)畜生刺枝(ちくしょうさしえだ)】」


 エスデスがそう言うとグリトニオンに絡み付いた樹木から営利な枝が出現し、グリトニオンの全身を貫いた。


「がっ!?」

「グリトニオン!!」


 グリーフアルトはエスデスの樹木をどうにか吸収して無事だった。

 グリーフアルトはグリトニオンの元へと向かった。


「グリトニオンを離しやがれ!」


 グリーフアルトはグリトニオンを縛る樹木を引き剥がそうとした。


「バカですね…そのまま逃げていればよかったものを…」


 エスデスはそう言ってグリーフアルトも狙いを定めた。


「俺の能力は全て奪い取る能力だ!てめぇのそのワケわからねぇ樹も…」

「それが驕りです」


 グリーフアルトはグリトニオンの樹木を引き剥がそうと樹木を吸収した。しかしー


「なっ!?どうなってんだよ!?こりゃあ…!?」


 グリトニオンの右腕から樹木が生えていた。


「わたしの【死種神征(ししょうしんせい)】は死の種。種という事はそこから成長するです。それに…あなたは奪うだけで完全に自身の力に変える事は出来ない…終わりです【死種神征(ししょうしんせい)人形開樹(にんぎょうかいじゅ)】」


 グリーフアルトの樹木は成長し、グリトニオンの樹木と癒着し、更に巨大化していった。


「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

「ぐっ!?クソ…!」


 グリーフアルトとグリトニオンは樹木により霊力を奪われ、更に全身を枝で貫かれた。

 グリーフアルトは必死でもがいて樹木から脱出しようとした。

 厳陣は【炎帝爆殺(ナシャート・ラハブ)】で救出しようとしたが樹木を燃やしきれない。


「くそ!」


「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!死にたく…ねぇよ…!…ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

「く…こ…こまでか……す…ま…な………ド…」


 樹木は完全に成長しきり、グリーフアルトとグリトニオンを押し潰した。

 樹木からは血が滲み出ており、それはまるで樹木の養分の様であった。


「『七魔王(セブン・ドゥクス)』といっても所詮はこの程度です」

「貴様…」


 厳陣はエスデスを睨み付けた。


「所詮はこの程度…あなたもここで殺してやるです」


 エスデスはそう言って樹木を出現させ、自分と同じ姿へと変化させた。


「【樹木分身(じゅもくぶんしん)】。この分身は私と同等の戦闘力を持つ分身です。まぁ、その分三体までしか出せませんけどね」


 エスデスは無数の樹木を再び発生させた


「「「【王樹界凛(おうじゅかいりん)】!」」」


 三体分の【王樹界凛(おうじゅかいりん)】を発生させた為、範囲が桁違いであった。


「【炎岩隕石(ラハブ・カマル)】!」


 厳陣は上空から炎の隕石を落とした。

 無数の樹木は完全に消滅した。


「やるです…!?」


 二体のエスデスは攻撃を回避した。

 一体のエスデスは厳陣の【炎帝爆殺(ナシャート・ラハブ)】により切り裂かれ、粉々に燃え散った。


「分身だったか」

「あなたの能力はわたしを殺すのに打ってつけです」

「そうだな。植物は炎に弱い」

「ええ。なので、わたしもあなたの能力の対策を取ったんです」

「何だと?」

「そう言えば…もう一人のわたしはどこへ行ったのでしょう?」

「!?」


 すると、厳陣の足元からエスデスが出てきた。

 目の前にエスデスはいる。恐らく分身だろう。

 いつの間にか地中へと潜っていた様だ。


「【炎帝滅失(ナシャート・インフィジャール)】!」


 厳陣がエスデスの分身を切り裂いた瞬間ー


「!?」


 厳陣を中心に大爆発を起こした。

 爆発の威力は凄まじく、辺りに大きなクレーターが出現していた。


「あなたの炎をずっとその分身に溜めていたです。あなたの炎をわたしの樹を使って吸収し、それを一気に爆発させた。わたしの今回の戦いの役目はあなたを殺す事でしたからね…常森厳陣…」


 厳陣は爆発した場所から出てきた。

 全身は焼け爛れており、全身ボロボロであった。


「はぁ…はぁ…」

「あれだけの爆発を受けてまだ人の形を保っているのは大したモノですが…もう終わりです」


 エスデスが厳陣に止めを指そうと樹木を出現させた。

 しかしー


「!?」


 エスデスが出現させた樹木は凍り付いていた。


「これは…」


「見つけたぜ…エスデス!!!」


 空中から声が聞こえた。

 エスデスはこの声に聞き覚えがあった。


「やっぱり…ここまで来たですか。来ると思ってましたよ…フローフル・キー・ローマカイザー…いえ、時神蒼」


 空中から時神蒼は現れた。


「どうやら…マーリンの【無限迷宮(ラビリントス)】から抜け出せた様です」

「てめぇ…ここにいる奴等を全部殺ったのか…」

「まあ…そういう事です」

「時神君…」

「常森さん…大丈夫か?」

「何とかな」


 厳陣の後ろに澪が現れた。


「澪さん、屍は?」

「大丈夫。ちゃんと移動させたよ~」

「常森さんも頼む」

「言われなくてもそのつもりだよ~。けど、アオチー…一人で大丈夫?」

「ここまでずっと足引っ張っちまったんだ。俺一人で奴を倒す!」

「分かったよ。余裕が出来たらすぐに駆け付けるよ~」


 澪は厳陣を連れてその場から離れた。


「エスデス…アンタに聞きたい事がある」

「…何です?」

「アンタ…エリシアの弟子だったんだろ?なら、エリシアの事を教えろ」

「成る程…どうやら全部思い出したみたいです」

「俺の質問に答えろ!」

「エリシアが何をしようとしたのか…それはわたしにも分からないです。ただ…彼女はあなたを兵器として利用しようとしていたのは確かです。それで?エリシアの事を恨んでいるです?」

「そんなんじゃねーよ」


 そう、蒼は元より、エリシアを恨んではいなかった。

 理由はどうあれ、蒼にとってエリシアは、師であり、先生であったのだから。


「なら、どうするです?あなたにとってわたしは姉弟子。同じ師を仰いだ者同士、少しは理解し合えると思いますけど」

「悪いが理由はどうあれお前のやってる事を見過ごす訳には行かねぇよ」

「一つ、疑問に思うです」

「何だよ?」

「あなたは月影慧留の様に大きな夢を持ってる訳でも、ルミナスの様な野望や願いを持ってる訳でも無い。なのに、何故そこまで必死で戦うです?」

「確かに…俺はあいつらみたいな大それたモンは持ってねぇよ。けどな…夢を守る事は出来る」

「弱い理由です」

「弱い?確かにそうだ。けどな、そんなもんは多分…理由なんかどうだっていいんだ。確固たる決意があればな!」


 そうだ、蒼はいつだってそうやって戦ってきた。

 そして、これからもそうやって戦っていく。


「あなたが何をしようが…この世界に在る生物を全て滅ぼす…それがわたしの願い、世界平和です」

「世界を滅亡させるのが世界平和とは笑えるな」


 蒼はそう言った。


「この世界の生き物は…生きるだけで誰かを傷付けているです…ならば…全てを滅ぼし、在るべき世界へと戻す!それが世界平和です!」


 エスデスは目を見開き、周囲に樹木を出現させた。


「【χ第二解放(カイザー・エンゲルアルビオン)】」


 蒼は二つの刀を融合させた。

 すると、黒い衣に腕にはχ(カイ)を象った籠手が着いており、背中の翼は黒い氷の翼が生えていた。

 更に刀剣は黒く染まっていた。


「【氷黒楽園(アルカディア・メランアリス)】!」


 蒼は黒刀を構えた。

 【χ第二解放(カイザー・エンゲルアルビオン)】…蒼だけが使える二つのエンゲリアスを融合させ、莫大な力を得る力だ。


「それが…あなたの本気ですね…」


 エスデスは真顔でそう呟いた。


「へっ…無表情かよ」

「勝負はまだ始まってはいないです。冷静さを欠いてはそれこそ終わり。わたしは…あなたを打ち倒します」

「そうか…よ!」


 蒼はエスデスに突っ込んでいった。

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