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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第十章】道化狂乱篇
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【第十章】道化狂乱篇ⅩⅦーmiller 2ー

「かはっ!?」


 スープレイガはバートルから腕を引き抜いた。

 バートルはそのまま倒れ、身体を覆っていた血の鎧は消え去った。


「やったわね」

「ああ」


「うっ…」


 しかし、バートルはまだ意識があった。

 スープレイガはバートルの脇腹を右手で貫いた。


「しぶとい奴だ。さっさと死ね」

「吸血鬼だから生命力は相当なモノね」


 スープレイガがバートルの脇腹を貫くとバートルは動かなくなった。

 しかし、バートルの身体中から鮮血が吹き出した。


「「!?」」


「言い忘れていた…我が死ぬと…我の中にある血が暴発し、ここら一体を吹き飛ばす」

「何!?」


 バートルの発言にスープレイガは驚いた。


「…不味いわね…身体が…動かない…」

「こればっかりは我でもどうしようもない…我の意思ではないしな…貴様らは我と共に常闇の地獄へと落ちるのだ…」


 バートルの身体が赤くなっていく。

 スープレイガとアルビレーヌはなるべく遠くへと離れようとした。


「その程度では無駄だ…我に勝ったのだ…敬意を評して助けたい所だが…悪く思うな」


 バートルの全身が赤くなり、血が吹き出した。


「くっそがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


 スープレイガとアルビレーヌはそのままバートルの血の海に飲み込まれてしまった。





「ん?これは?(^o^;)」


 ロキがそう呟きながら後ろを見るとフォルテもロキと同じ方向を見た。

 すると、大量の血液が流れ込んでいた。


「これは…バートルの自爆か…今回やたら皆自爆するね~。流行ってるのかな??(´д`|||)」


 ロキは困った顔をしながらそう言った。

 バートルの血液は触れるだけで相手の霊力や魔力を無尽蔵に吸収し、更には体内の血液までも吸収してしまう。


ー流石にこれだけの広範囲だ…僕も無事じゃ済まないね(-.-)


 ロキは右手を虚空に薙いだ。

 すると、ロキが薙いだ先に空間の穴が出現し、血が空間へと吸い取られていく。


「!?」


 フォルテは驚いていた。

 ロキはどんな攻撃も通用しない筈だ。

 なのにわざわざ味方の自爆による被害拡大を防いだ。

 考えられる理由は一つ。恐らくこの攻撃はロキに()()()()

 だからロキはわざわざこの赤い血を自身の空間へと移動させたのだ。


「やれやれ…(^o^;)。ん?あー、僕とした事が…狙いがズレてしまったか(´д`|||)」


 ロキの目の前にスープレイガとアルビレーヌが倒れていた。

 血の海に流されてここまで来たのだろう。

 ロキは当然この二人ごと異空間に引きずり込もうとしたのだが狙いが外れ、二人は殺せなかったようだ。


「けどまぁ、バートルの血をあんだけドップリ受けて生きてる筈も無いし、放っておこうか。まずは君だ、フォルテ…」


 ロキは不気味な笑みを浮かべてそう言った。


ーとにかく、ここから一旦離れないと…


 フォルテはここから少し離れる事を考えていた。

 そうしなければ倒れているスープレイガとアルビレーヌが巻き沿いを喰う可能性があるからだ。


「面倒な事になったね…」


 フォルテは冷や汗をかきながらそう呟いた。






「さて…君達が次のマーリンの相手??」


 マーリンはインベルとアポロ、プロテアに対してそう言ってきた。

 インベル、アポロ、プロテアの三人はマーリンを倒す為にここへとやって来た。

 この場所は神聖ローマから遠く離れた広野であった。


「フローフルを…返して貰うわ!」


 プロテアはそう宣言した。


「プロテアちゃん、君、眼の色が変わったね変わったね?左眼…強い力を感じるよ~」


 マーリンは少し驚いた様子であった。

 あったのはつい先日なのにプロテアが見違える程に変化していればそれは驚くだろう。


「ソニーはやられちゃったか~。まぁ、『童話人(グリム)』でも弱い方だし仕方無いか…」


 マーリンは呆れた様にそう言った。

 ソニーを相手にかなり苦戦したプロテアからすればマーリンの発言にあまりいい気分はしなかった。

 しかし、マーリンはそう言えるだけの実力がある。

 何故なら、あの舞を簡単に殺害する程の戦闘力だ。


「さて…どうしたモノかしら?」

「そりゃあ…全力で行くしかねぇだろ!【第二解放(エンゲルアルビオン)】!!!」


 アポロが考えているとインベルは【第二解放(エンゲルアルビオン)】を発動した。

 インベルの背中に四翼の赤い翼が生えていた。

 インベルの姿自体には然程変化は無かったがインベルの剣は巨大なブラストに変化していた。


「【天炎緋血(カマエル・ブラッド)】」


 インベルはマーリン目掛けて砲撃を放った。


「【炎魂砲撃(ゼーレ・カノーネ)】!!!」


 炎の砲撃はマーリンへと向かっていった。


「【鏡転写(インイカース)】」


 マーリンの目の前に巨大な鏡が出現し、インベルの砲撃を反射し、そのままインベルに返した。


「ちぃ!」


 インベルは自身が放った砲撃を回避した。


「やっぱり、四宮先生の情報通りね」


 プロテアがそう呟いた。

 プロテア達はマーリンの情報をある程度知っていた。

 鏡によってあらゆる攻撃を反射する事も知っていた。


「さてさて~、どうするの???」

「ならば…これならどう!【鉄神剣眼(アインハイス)】」


 プロテアの左眼から血が吹き出した。

 すると、マーリンの周囲に無数の鉄の剣が出現した。


「なっ!?」


 マーリンは鏡で反射しようとしたが諦めて回避した。

 マーリンの鏡は四方全てに展開する事は出来ない。


「逃がさない…!」


 プロテアは逃げるマーリンにピントを合わせた。

 プロテアの【鉄神剣眼(アインハイス)】はその眼で見つめたモノを鉄の剣で串刺しにする技だ。


「くぅ~、少し気を抜けば簡単に串刺しにされるね~。ソニーはこれでやられたのか…厄介だね…てかマーリンと相性最悪じゃん!この能力!」


 そう、プロテアのこの力は目視したモノをピンポイントで狙う。

 それにより、鏡の反射能力が意味を成さない。

 マーリンの鏡は反射する物質に触れて尚且つ認識しなければ反射する事が出来ない。

 正にプロテアの【鉄神剣眼(アインハイス)】はマーリンメタな能力なのだ。


「【鉄万化眼(アインマナト)】!!!」


 鉄の剣が突然壁に変化し、マーリンの行く手を阻んだ。


ー成る程…左眼の能力が鉄の剣の発生。右眼が左眼によって発生させた鉄の形態変化だね…


 マーリンはプロテアの能力を分析した。

 マーリンは空中へと逃げようとしたがそこにはインベルが待ち構えていた。


「しまっ!?」

「【炎魂砲撃(ゼーレ・カノーネ)】!」


 空中にはインベルの砲撃、四方にはプロテアの作り出した鉄の壁と剣、逃げ場が無かった。


「【鏡転写(インイカース)】!!!」


 マーリンはインベルの攻撃を反射した。

 しかし、プロテアによる鉄の剣による攻撃は受けた。

 しかも、マーリンの反射攻撃をインベルは回避した。


「うっ!?」

「がっ!?」


 マーリンに攻撃がヒットした所でプロテアは左眼の激痛により、技を解いてしまった。


「プロテア!?【死滅天使(サリエル)】!」


 アポロは慌ててプロテアの眼を治療した。

 だが、アポロに出来るのはプロテアの眼の出血を血止めする事くらいだ。

 恐らくさっきの攻撃でまたプロテアの視力が落ちている。


「大丈夫よ…ありがとう、アポロ」

「その技は使うなって言ったでしょ!?」

「そうも行かないわ。今ので私の技があの女に有効って分かったし」

「……っ!」


 確かにプロテアの【鉄神剣眼(アインハイス)】はマーリンと非常に相性が良かった。

 はっきり言ってプロテアの力は必須だ。

 そうでなくては恐らくマーリンを倒す事は出来ないだろう。


「ふぅ~、どうやらプロテアちゃんのその技…かなり危険性(リスク)があるみたいだね。まぁ、あれだけ強力な力があれば当然かな」


 マーリンは身体のあちこちに刺された後があり、血が吹き出していた。


「それに…アポロちゃんだったかな?君の回復能力も厄介だなだな~?まずは君を叩いた方がいいねいいね」

「それを分かっていて俺達が何もしないなんて思うなよ?」


 マーリンの言葉にインベルがそう言った。

 確かに、マーリンがアポロを狙い打ちにする事が分かっている以上、プロテアとインベルが何もしない筈が無かった。


「それに…いいのかな??マーリンを殺したら…もしかしたら蒼君は助からないかもよ??」


 マーリンはそう言った。

 そう、プロテア達の目的は一番は蒼の救出だ。

 マーリンを倒すのは二の次なのだ。

 仮にマーリンを殺してしまってそれで蒼を助ける事が出来なくなるのであればそれは本末転倒である。


「…確かにそうね……なら…私がやるしか無いわね」


 アポロがそうマーリンに宣言した。


「見た所、君はサポートタイプだろう?マーリンを相手に君ごときが勝てるかなかな?」

「あまり…他人の力を見誤らない方が良いわよ!」


 アポロは銃撃を放った。


「学習しないね!そんな真正面からの攻撃はマーリンには効かない効かないよ!【鏡転写(インイカース)】!!!」


 アポロの銃撃は悉く跳ね返された。


「やっぱりこれ単体じゃあ効果が無いわね」

「おい…まさかお前…」

「そのまさかよ」

「?」


 インベルはアポロのやろうとしている事が何なのか察した様だがプロテアは全く分からなかった。


「前線で戦うつもりだろ。お前はサポートに徹した方が…」

「…それじゃあダメよ。恐らくそれではあの女には勝てない。まぁ、私が適任って事よ」

「確かに…そうかも知れねぇけど…」

「一応、これでもあなたよりは強いんだけどね」

「う…うるせぇよ!万が一って事があるだろが!」


 インベルが言いたいのはアポロは回復能力も持っており、基本的にはサポート型だ。

 そのサポート型が前に出てやられてしまえばインベルとプロテアの生命線が失われてしまう。

 インベルはその事を懸念していたのだ。


「インベル、私はもう、あの日から覚悟は出来てるのよ。フローフルを必ず…友達を…必ず助ける!」


 アポロがそう言うとインベルは根負けした様に溜め息を吐いた。


「分かったよ。どの道、このまま戦っても勝ち目は無さそうだしな」


 プロテアの左眼の力はあまり多様出来ない。

 一見、こちらが押してる様に見えるがマーリンはまだまだ本気を出していない。

 ここから先の戦いはアポロが前線に出るしか無い。


「さぁ、始めるわよ。【第二解放(エンゲルアルビオン)】」






 今から五年前の神聖ローマの広野。

 ここにはアポロとインベルが立っていた。


「フローフルの奴…行っちまったな」

「そうね、あの…バカ…」

「全くだ。俺達に何も言わずにどっか行きやがって…いっつもそうだ」

「…今回の戦いは…失ってばかりだった…」


 インベルもアポロもフローフルがこの国から逃亡した事、戦争を仕掛けた事、そして、エリシアを助け出せなかった事を深く後悔していた。

 もういっそ、何もしない方が良かったのでは無いかと思える程だった。

 二人は幸い、謹慎処分だけで住み、騎士団に復帰した。


「あいつは…生きてるんだよな…」

「多分ね」

「なら、強くならねぇとな。あいつに追い抜かれねぇ様に。あいつを…お前を…仲間を助けられる様に」


 インベルは真っ直ぐとした眼でそう言った。


「そうね、アンタもフローフルも私がいないとダメダメだし…私がしっかりしないとね」

「おい待てお前の台詞なんかおかしいぞ?」


 インベルはアポロの言葉に異議を唱えたがアポロは無視した。


「私の気持ちもあなたと同じって事よ。もう、無力な子供でいたくない。強くなって…足手まといになんかならないわ」

「今度フローフルに会ったら絶対に俺等であいつを助けんだ」

「ええ。絶対に…」


 インベルとアポロはそう強く誓った。

 ローマ聖戦で自身達の無力感を思い知らされた。

 何も守る事が出来ず失ってばかりだった。

 だが、いつまでも止まっている訳には行かなかった。

 曲がりなりにもフローフルは進み始めた。

 ならばインベルもアポロもいつまでも止まっている訳には行かなかった。

 お互い生きていれば必ず会える。

 きっと道が交わる事もあるだろう。

 それまでに絶対に死ぬわけには行かないし強くならないわけには行かなかった。

 インベルとアポロは場所は違えどフローフルと共に強くなり、そして再開したならば今度こそ必ずフローフルを助け出す。

 二人はそう、強く誓ったのだ。

 止まらない限り、道は続く。二人はそう信じて二人は二人なりに進み始めたのだ。

 いつの日か友達であるフローフルと再開する為に、大事なモノを守る為に、進み始めたのだ。


「行こうぜ」

「ええ。ああ、でももしフローフルがヘタレてたら私達でぶん殴ってやらないとね」

「そりゃ名案だな」


 二人は笑いながらそう言った。






「エンゲルアルビオン???」


 マーリンが首を傾げながらそう呟いた。


「ええ、そうよ。【第二解放(エンゲルアルビオン)】…」


 アポロの背中に紫色の翼が生えており、額には第三の眼が開眼していた。

 アポロの銃剣も大型化しており、近接特化されていた。

 更に全身には紫色の羽衣が纏われていた。


「【死滅天使の空間(サリエル・グエム)】」


 アポロの【第二解放(エンゲルアルビオン)】だ。

 アポロがエンゲリアスの名を言った瞬間、アポロを中心に半径百メートルに円形の空間が展開し、マーリンとインベルとプロテアを閉じ込めた。


「これは…」

「【死滅天使の空間(サリエル・グエム)】。アポロの【第二解放(エンゲルアルビオン)】だ。発動するとアポロを中心に広域結界が展開され、その空間内であればアポロのエンゲリアスの力を発動出来る。けど、敵味方関係なく広域結界に閉じ込めるのとアポロの戦闘スタイルの特性上、アポロ自身、この力をあまり使ってこなかった」

「どういう事?エンゲルアルビオンって天使の奥の手なんでしょ?確かに無闇に使う必要は無いけどピンチの時でも使わないなんて…」

「あいつは近距離、遠距離両方対応出来る万能タイプだが、どちらかと言うとサポートを駆使した遠距離戦が得意だ。けど、このエンゲルアルビオンは近距離攻撃に特化した能力でアポロのエンゲリアスは【第一解放(アインスエンゲル)】と【第二解放(エンゲルアルビオン)】との能力の差がかなり激しいんだよ」


 アポロのエンゲリアス、【死滅天使(サリエル)】は回復能力と銃撃戦、銃剣という特性上、近距離にもある程度は対応出来る万能武器だ。

 しかし、【第二解放(エンゲルアルビオン)】になると銃剣が巨大化し近距離に特化した能力になるという。

 確かに遠距離戦とサポートに慣れている者からしたら使い辛い事この上無いだろう。


「確かに、エンゲルアルビオンは天使の奥の手って言われてるのが一般的だがそれは個人差がある。ぶっちゃけ、人によってはアインスエンゲルの方が使い勝手が良かったりもするしな。アポロなんかがいい例だ。あいつのエンゲルアルビオンは確かに強力だが、使い勝手はかなり悪い」

「どんな能力なの?」

「見れば分かる。取り合えず俺達は少し離れるぞ。援護するにしても迂闊に近付くと巻き沿い喰うからな」


 インベルとプロテアは少しアポロから離れた。


「行くわよ。【死滅天使神剣(グエム・デーゲン)】」


 アポロがそう言って銃剣を振り上げるとアポロの目の前にマーリンがいた。


「えっ!?」


 流石のマーリンも驚いていた。

 アポロが銃剣を振り上げただけでマーリンはアポロの目の前にいたのだから。


「【鏡転写(インイカース)】!!!」


 マーリンはアポロの銃剣を鏡によって弾き飛ばした。


「うっ!?」


 しかし、アポロはすぐに銃剣を取り、再び銃剣を虚空に切り裂いた。

 すると、また、マーリンはアポロの目の前にいた。


「くっ!?」


 マーリンは鏡の反射欠片を出現させ、アポロに攻撃を仕掛けた。

 アポロは攻撃が回避仕切れずダメージを受けた。


「かはっ!?」


「【炎魂砲撃(ゼーレ・カノーネ)】!!!」


 インベルはマーリンの後ろから砲撃を放った。


「かわしきれない!」


 アポロはマーリンから即座に離れた。

 そして、マーリンはインベルの砲撃をまともに受けた。


「うっ…」


 マーリンは身体が焼け爛れていた。

 マーリン自身、かなり身体が頑丈である様だ。


「やってくれるね…でも、今ので分かったよ。アポロちゃんのエンゲルアルビオンの能力…ズバリ、疑似空間切断能力だね」


 マーリンはアポロの能力を言い当てた。

 そう、アポロの【第二解放(エンゲルアルビオン)】の能力は疑似空間切断能力だ。

 切った場所の空間を断ち切り、相手との距離を近付けたり、相手の身体を空間ごと切り裂く事が出来る。

 だが、連続での使用は出来ず数秒のインターバルが必要となる。


「…その鏡…思った以上に頑丈ね。本当は鏡ごとぶった切ろうと思ったのに」

「だろうね。けど、残念。君程度の切断能力じゃマーリンの鏡は切れない」

「おい、アポロ。どうする?」

「取り合えず、接近戦は私がやるわ。あなた達が迂闊に近付けば私の空間切断に巻き込まれるわ」

「確かに、集団戦では使い勝手悪いわね、その力」


 プロテアが皮肉を言うが今は構ってる場合では無い。


「取り合えず、あの鏡を切り落とすのが先よ。至近距離ならあの鏡を私の【死滅天使神剣(グエム・デーゲン)】で切り裂ける筈よ」

「確かに、あなたのその空間切断は鏡で反射は出来ない様ね」

「みたいだな。出来たらとっくにやってる筈だしな」


 マーリンはプロテア、インベル、アポロの三人を見た。

 アポロの疑似空間切断は切り裂く対象の距離が近ければ近い程高い威力を発揮する。


「いや~、対抗策は用意するとは思ってたけどここまでマーリンをメタって来るとは思わなかったな~。あまり長引かせるとこっちが不利不利だね」


 マーリンの纏う空気が変わった。

 間違いなく本気でプロテア達を殺しに掛かろうとしていた。


「【鏡の迷宮(メルア・マタハ)】!」


 プロテア達の周囲に無数の鏡が展開された。


「これは…」

「四宮舞をこの技で殺してやったよ。君達はこれを対処しきれるかなかな?」


 マーリンは鏡の中へと入り込んだ。


「四宮舞の情報通りね」

「ああ、鏡の中に入って移動しやがる」


 マーリンは鏡へ鏡へと移動しており、捕らえるのは困難であった。


「【鏡の欠片(メルア・キマーマ)】!」


 全方向から鏡の欠片が飛んできた。


「【鉄魔王剣(ハディード・セイフ)】!」

「【炎魂砲撃(ゼーレ・カノーネ)】!」

「【死滅天使神剣(グエム・デーゲン)】!」


 三人はそれぞれ鏡の欠片へと攻撃し、砕いた。

 三人は知っていた。

 この攻撃は避けてはならないと。

 もし避けてしまえば鏡の欠片は鏡から鏡へと移動し、威力と速度が加速してしまうからだ。

 だからといってあまり強い攻撃をすると鏡に力が反射されてしまう為、インベルとアポロは力をある程度は制限する必要があった。

 しかし、アポロの能力である疑似空間切断はマーリンの鏡では弾き返せない為、アポロのみ、全力を出せる。


「厄介だね…アポロちゃんは…マーリンの鏡を消し飛ばすなんて…」


 マーリンはアポロによって消された鏡を再び出現させた。

 しかし、マーリンとて、無限に鏡を出現させる事が出来る訳では無い。

 この大量の鏡を維持するのにかなりの霊力を消耗する。

 それでもマーリンの莫大な霊力であれば数日は保つがこのままでは突破される方が速いだろう。

 誤算だった。ここまで徹底してマーリンを対策していたとは。


「なら、まずは君からだ!アポロちゃん!」


 マーリンはアポロに攻撃を仕掛けた。

 しかし、アポロの前に既にプロテアが立っていた。


「【鉄神剣眼(アインハイス)】!」


 マーリンはプロテアの作り出した無数の剣を回避し、プロテアに鏡の欠片をぶつけた。


「くっ!?」


 プロテアは全身に血を流したがそれでもマーリンを捕まえようとする。

 しかし、マーリンは鏡の中へと逃げ込もうとしたがアポロもそこまでノロマでは無かった。


「【死滅天使神剣(グエム・デーゲン)】!」


 プロテアはマーリンを切り裂いた。

 しかし、マーリンの鏡が盾となり、マーリン自身は無傷であった。


「!?」


 アポロは驚愕の表情を浮かべた。

 マーリンの鏡を切り裂いた事で鏡の中の空間が見えた。

 そして、アポロは一瞬だけ黒い髪と青い瞳の青年を発見した。間違いない、蒼だ。


「不味いね…」


 マーリンも流石にアポロが蒼を見つけた事を知った様で、アポロに攻撃を仕掛けた。

 しかし、インベルがマーリンに攻撃を仕掛けた。


「【炎魂砲撃(ゼーレ・カノーネ)】!」


 マーリンは攻撃をあっさりと回避した。


「悪いけど君達はここでとっとと死んで貰うよ!」


 マーリンは無数の鏡の欠片をアポロ達に放った。


ー数が多過ぎる!


 アポロ達は無数の鏡の欠片が襲い掛かる。





「あれ?あんまりダメージを受けてねぇ…」


 インベルがそう呟いた。

 所々に鏡の欠片が刺さっていたがいずれも致命傷は避けられていた。


「プロテア…あなた…」


 アポロがそう呟いた。

 インベル、アポロ、プロテアの周囲に鉄の盾が張られていた。

 恐らく、プロテアの眼の能力だ。


「ぐっ!?」


 プロテアは両眼を押さえた。

 プロテアもアポロも致命傷は避けられた様だがプロテアの眼の負担がデカかった。


「おいおい!大丈夫かよ!?プロテア!」

「ええ、大丈夫よ」

「大丈夫な訳ないでしょ!?あなた…その力を使い続ければ本当に失明するわよ!」

「そうね…もう、あまり多用は出来ないわ…その前に…何としてもあいつを倒して…フローフルを…」

「それについては…考えがあるわ」


 アポロはフローフルを助け出す方法を思い付いていた。

 アポロはインベルとプロテアにマーリンが聞こえない様に作戦を伝えた。


「成る程…そういう事か」

「プロテア…あなたはサポートに徹して、分かった?」

「…ええ」

「じゃあ、始めましょう」


 アポロがそう言うと鉄の盾は消え去った。


「大した能力だねそれ…本気でやったつもりだったんだけど」

「なら、詰めが甘かったわね」


 アポロがそう言って弾丸を放った。

 しかし、マーリンは鏡へと移動し、別の鏡へと移動した。

 空となった鏡はアポロの弾丸を反射した。


「【鉄魔王剣(ハディード・セイフ)】!」


 プロテアは反射したアポロの弾丸を切り裂いた。

 そして、マーリンが移動した鏡へと斬りかかった。

 マーリンは再び移動し、プロテアの後ろの鏡へと移動した。

 マーリンが入っている鏡は反射の力が発動しない。

 その事をアポロはさっき把握していた。

 そして、マーリンが鏡から鏡へと移動する速度は凄まじく速かった。

 マーリンが鏡から鏡へと移動するのにある程度法則性があった。

 マーリンは敵の後ろの鏡へと移動する傾向が極めて高いのだ。

 これはプロテアの観察眼で既に把握していた。


「え!?」


 マーリンは驚愕していた。

 何故なら自分が移った鏡の目の前に既にアポロがいたからだ。


「思った通りよ、【死滅天使神剣(グエム・デーゲン)】!」


 アポロはマーリンの鏡を切り裂いた。





「クソ…やっぱり…駄目か…」


 蒼は既に限界が近かった。

 さっき、一瞬だけ出口が見えた気がしたが一瞬で閉じてしまった。

 恐らく、誰かが一時的にこの空間に穴を開けたのだろう。

 やはり、蒼はここから誰かの助けを来るのを待つしかないのだろうか。


「!?」


 蒼がそんな事を考えていると蒼の目の前に巨大な穴が空いた。

 間違いない、外へと出れる出口だ。

 蒼は急いで出口へと走っていった。






「まさか…マーリンの空間に穴を空けるなんてね…」


 マーリンは鏡の外へと出ていた。

 そして、鏡の空間を閉じようとしたが至近距離でアポロの疑似空間切断を受け、閉じるのに数秒掛かりそうだった。


「インベル!」

「分かってる!」


 インベルがさっきあまり行動しなかったのはこれが理由だ。

 プロテアが囮となり、アポロが空間に穴を空け、インベルがそれを助け出す。


「そうはさせないよ!【鏡呪縛(メルア・アサビーア)】!」


 インベルの周りに鏡が出現し、インベルを縛り付けた。


「この鏡に写った者はあらゆる動きを縛る」

「くそ…動けねぇ…」


 インベルが動けないと判断するとプロテアは蒼の元へと自分が向かった。


「プロテア!?」


 アポロは驚いていたが今はインベルが動けない以上、仕方が無かった。


「そうはさせないよ!」


 マーリンがプロテアを止めようとしたがアポロが銃剣をマーリンに振り掛かった。

 マーリンは左手でアポロの銃剣を受け止めた。


「くっ…」

「あなたはここから通さないわ!」


 プロテアは空間の裂け目へと辿り着いた。


「フローフル!!!」


 プロテアはそう言って手を伸ばした。


「プロテア!」


 蒼もプロテアに気が付き、走り出した。


「やらせないよ!!!」


 マーリンが空間の裂け目を閉じ始めた。


「【鉄神剣眼(アインハイス)】!!!【鉄万化眼(アインマナト)】!!!」


 プロテアは鉄の剣を発生させた後、その鉄の形を変え、鉄の膜を作り、空間の裂け目を開いたままにしていた。


「そんな!?ただの鉄が空間に作用するなんてなんて!プロテアちゃんのあの眼は空間にも影響を与えるの!?」


 マーリンはプロテアの能力に驚愕していた。

 プロテアの能力は単純に時間や空間、概念にも効果があった。


「フローフル!!!」


 プロテアは両眼共に血が流れていた。

 かなり眼に負担が掛かっているのは間違いない。


「プロテア!!!」


 蒼はプロテアの手を掴んだ。

 しかし、空間の裂け目から特殊な力が発生し、その力が蒼とプロテアに駆け巡る。


「な!?」

「うっ!?」


 蒼とプロテアの異常をアポロは察知した。


ー何だ?これは…頭の中に…何かが入り込んで来る…


 蒼とプロテアは頭の中の記憶が融合する感覚に襲われた。


「な!?このままだと不味いわ!」

「どうなるんだよ!?」

「これは珍しい現象だねだね。時空の歪みによって二人の霊力が異常同調を起こしてる…このままだと…」

「二人の記憶が融合するわ!」

「何だと!?」


 アポロとマーリンの言葉にインベルは驚愕した。

 蒼とプロテアの意識が融合を始めた。






 ここは…一体どこだろう?

 自分は…何者なのだろう?

 何の為に…生きていたのだろう?

 昔はそんな事すら考えもしなかった。

 けど、今なら考える事が出来る。思い出す事が出来る。

 何故、今まで忘れていたのだろう。

 そう、これは…蒼の…フローフル・キー・ローマカイザーの…忘れ去られていた記憶。

 フローフルが…インベルやアポロと出会うよりずっと前の記憶。

 そう、その記憶は…フローフルが…プロテアと初めて出会った時の…記憶であった。





To be continued

 それにしても蒼が完全にヒロインですねこれ(笑)という訳で今回のお話は如何でしたか?今まで出すに出せなかったアポロの本気をようやく書けました。

 そしてそして、次の話は過去篇では書ききれなかった過去を書いていきます。過去篇で蒼の大まかな過去を書きましたがあれはあくまで蒼が中心の過去です。他のキャラの過去を書く事でまた別の発見があったり…するかもしれません。

 それではまた!

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