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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第二章】四大帝国会議篇
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【第二章】四大帝国会議篇Ⅱー堕ちるー

 蒼たちは十二支連合帝国政府と閻魔家と対決することを決意する。その為に、一宮高校と共同戦線を張ろうと試みる。

 しかし、閻魔はある刺客を蒼たちに送り付けていた。

 蒼は窓際から空を眺めながら授業を受けていた。

 屍たち「アザミの花」が処刑されるまであと四日、蒼はその事を考えていた。

 先日、魔道警察官が魔族の少女を殺そうとしている所を蒼と慧留が助け出したのだが、その事を生徒会に報告した後、蒼たちはこの学校の真実について聞かされる。

 この学校、一宮高等学校は一部の魔族と人間が作り上げた、閻魔家の野望を阻止するための隠れ蓑であり、生徒会にのみ、この国の情報が閲覧できる理由がそれが理由だったからである。

 慧留は特に驚いていた様子であった。

 勿論、蒼は全く驚いていなかった訳ではない。むしろ、一部の魔族や人間だけでここまでの学校を作り出したのは大したことである。

 しかし、蒼はふと疑問に思った。蒼はてっきり、この学校の教職員は人間しかいないと思い込んでいたが、もしかしたら魔族の教職員もいるかもしれないということだ。

 無論、国が魔族を教師の免許を与えることを許すはずが無いので、恐らくモグリしかいないであろうが、魔族の教職員がいることは十分考えっれる事であった。

 蒼は溜め息を吐きながら呟いた。

「先が思いやられる」

 実際その通りである。蒼たち生徒会は閻魔家の目的を阻止することになった。この話は今頃、教職員に澪と遥が伝えている頃だろう。

 この学校の目的の一つが閻魔家打倒の者を増やすことが目的なのだから。教職員自ら、動かなかったのは恐らく動かなかったのではなく動けなかったのだ。

 政府もバカではない。この一宮高校の事も知っていたはずだ。政府は一度はこの学校の取り壊しを目論んだがそれが出来ずにいたのだろう。

 学校も無暗に情報を与えてしまうと国に生徒が余計な危害を加えるだろう。要はお互いが手を出し合えない状態だったのだ。

「とは言え、「アザミの花」救出については正直賭けだな…案だけこの国に甚大な被害をもたらしたんだ。教職員共は納得するか…」

 蒼の今回の懸念事項はそれであった。

 蒼たち生徒会は今回の事態を一宮高校生徒会と教職員だけではとても太刀打ちできないと判断し、トウキョウ警察署に監獄されている「アザミの花」の救出を提案し、それを実行しようとしている。

 しかし、「アザミの花」はこの国の人間に甚大な被害をもたらした、テロ組織なのだ。簡単に納得するとは思えなかった。

 まぁ、それでも「アザミの花」の戦力は今回は不可欠の為、蒼たちは何が何でも助けに行くが…

 慧留も今日は落ち着かない様子だった。いつも以上にソワソワしていた。

「…分かりやすい奴…」

 蒼はジト目で慧留を見つめてそう言った。


 遥と澪は職員室に来て、昨日の一件の事を教職員に話していた。

 一宮高等学校の教職員は全員で三十名弱…非常に数が少なかった。その中で授業に向かってる者が十二人いる為、現在は十八人しかいなかった。

「成程…お主等は「アザミの花」とも協力体制を取る…と…妾は反対じゃな…」

 女教師がそう言ってきた、この女性は四宮舞しのみやまい。外見年齢が二十歳くらいで若そうに見える美女だが、この女性は人間ではない。不老長寿の魔族である。

 全身を黒のゴスロリを着ており、この学校の中でも最年長の魔族であった。

「しかし、我々だけではどうしようも…」

 遥がそう言うと三十代くらいの男が反応した。この男の名は武内限外たけうちげんがい。人間であり、元魔道警察官であった男だ。

「まぁ、君たちの言いたいことも分かる…はっきり言って、今のままでは我々は抵抗するまでもなく負けるだろう…だが、他に手がある、この事を他の三国に我々が知らせればいい。そうすれば…」

 武内がそう言うが澪はそれを反論した。

「それでは、この国が三国に乗っ取られる可能性があります。この国が歪ながらも平和を保てているのは魔族条約以上に四大帝国がバランスを保てていることが大きい。確かに三国に情報漏洩をさせて、三国に撃退してもらうのが一番の安全策ではありますが、それをすればさらなる争いの火蓋になりかねません」

 澪はそう告げた。実際その通りなのだ。この世界が形だけとは言え平和を保てているのは魔族条約とそれ以上に四大帝国による絶妙な軍事力のバランスにおけるものが大きい。

 仮にこの国を三国が全精力を上げて、攻め入れば確実に勝利が出来るし、閻魔家を壊滅に持ち込めるだろう。

 しかし、そうなれば十二支連合帝国は他の三国に権力を取られてしまい、そうなれば、保たれていた均衡を崩れ去ることを意味するのだ。

 そうなれば、今以上の争いになりかねない。下手をすれば、『第三次世界大戦』、いや、それ以上の凄惨な戦争になる可能性すらあった。

「しかし…」

 他の教職員たちも微妙な表情をする。

「もし彼らが再び何かしでかすようなことがあれば…こちらで処理させて頂きます。彼らには私たちは一度勝っている。それなら文句は無いでしょう?」

 澪がそう言うと教職員たちは更に苦悶の表情をした。

「君たちは仮に、奴らを救出するとして、どうするつもりじゃ?トウキョウ警察署はかなり堅牢な場所じゃぞ…警備も厚い…」

 四宮が問いただすと澪が「それは…」と話し出そうとした瞬間、突然窓ガラスが割れた。

「何事じゃ!」

 四宮が声を上げると「あれは…」と言う声が聞こえた。

 学校に、様々な魔物が襲来していた。しかし、

「あれが…魔物?ちょっと形が変じゃない?」

 遥がそう言った。確かにかなり遺物な形をした魔物だった。

 手と足が反対の位置にあったり、腕が胸から生えている個体もいれば、顔中に目がある個体などとにかく異形の形をしている者が多くいた。

 まるで、「個体と個体を組み合わせたような」生き物であった。

「『混獣ダイダラボッチ』…十二支連合帝国が秘密裏に作っていた生体兵器じゃ」

 四宮が長い紺色の髪をなびかせてそう言った。

 『混獣ダイダラボッチ』は生きた魔族同士で合成して作った生体兵器であり、閻魔家が作り上げたものだ。所謂、キメラである。

 あまたの魔族が重なり合っている為、あのような異形の姿をしているのだ。言うまでもなく、生きた魔族をこのように使用することは魔族条約を大きく違反している。

 というより、この手の研究は非人道的である為、全体的に禁止されているのだ。

「なんてひどいことを…」

「…」

 遥がそう言うと澪は怒りの視線を静かに向けていた。

「何があったんだ!?」

 蒼と慧留、湊が外に出ていた。美浪と一夜も現場に来ていた。

 遥と澪もすぐに外に向かった。


「何?あれ…?」

 慧留が怯えながらそう言った。無理もない。あれほど異形な形をした者を見ると誰であっても恐怖はあるだろう。

「ダ…ス…ゲ…デ…」

 『混獣ダイダラボッチ』はそう言っていた。

「?」

 蒼は疑問を浮かべていた。すると、遥と澪が駆け付けてきた。

「間に合ったわね!あれは『混獣ダイダラボッチ』よ。閻魔家が非人道的な方法で作った魔族のキメラよ」

 遥がそう言うと他の者たちは驚愕の顔を浮かべた。

「じゃあ、あの人たちは生きて…」

 慧留がそう言うと一体目の『混獣ダイダラボッチ』は口からエネルギー弾を放った。

「霊呪法第二一四番【虚神きょじん】!」

 蒼は巨大な盾を展開し、砲撃から守った。その瞬間、他の生徒たちも今の状況に気付き、校舎の外から出ていた。

「何だありゃ!?」

 生徒が叫ぶと『混獣ダイダラボッチ』は生徒に襲い掛かった。

 蒼は天使を解放した。

「【氷水天皇ザドキエル】!」

 蒼の氷の刀が顕現され、『混獣ダイダラボッチ』を凍り付かせた。そして、そのもまま氷も『混獣ダイダラボッチ』ごと崩れ去った。

 『混獣ダイダラボッチ』の数は合計で十体程であったが、一匹一匹がかなり強い。恐らく、蒼も天使を解放しなければ太刀打ちできないだろう。

 二体目の『混獣ダイダラボッチ』が攻撃を仕掛ける。しかし、四宮をはじめとする教職員たちがそれを防いだ。しかし、三名ほどの教職員が倒されてしまった。

「【動くな】」

 四宮がそう言うと『混獣ダイダラボッチ』は動かなくなった。四宮は言霊使いであり、言葉を操る術を使うことが出来る。今の技はその言霊の基礎中の基礎、金縛りだ。

 『混獣ダイダラボッチ』が動きを止めると四宮は別の言霊を使った。

「【焔球ホムラダマ】」

 相手の身体から炎が発生し、跡形もなく二体目の『混獣ダイダラボッチ』は消え去った。

「何で…殺すんですか!?生きてるんですよね!?」

 慧留がそう言うと四宮が話し出した。

「こやつらはもはや自我を失った化け物じゃ。殺してやるのがせめてもの救済じゃ」

「そんな…」

 慧留がそう言うと他も者たちも『混獣ダイダラボッチ』と交戦していた。

 生徒会メンバーは一人も倒れていないが、教職員たちがすでに十人ほどやられていた。死者は出ていないものの、このままではジリ貧だった。

「止めて!止めてよ皆!」

 慧留は戦いを止めるように言ったが、誰も止めようとはしなかった。

「殺せ!」「魔族は敵だ!」「殺せ殺せ!」

 生徒の声が聞こえる。すると、蒼が一人の生徒を殴りつけた。

「がはっ!てめぇ、何を…」

 生徒がそう言いかけると、蒼は今までで一番恐ろしい眼をしていた。

「うるせぇ…戦ってもいねぇやじ馬が吠えてんじゃねぇよ」

 そう言って蒼は再び戦闘に戻った。

 蒼も本当は戦いたくないのだ。殺したくないのだ。この『混獣ダイダラボッチ』は国によって作られ、利用されているだけなのだ。そんなことは生徒会の人々は勿論、教職員たちも分かっている。しかし、殺す以外の方法がない。

 -どうすれば…

 慧留は立ち止り、葛藤していた。そうしている内に『混獣ダイダラボッチ』は次々と跡形もなく倒されていった。

 残るは後一体までになっていた。

 教職員は五人程しか残っておらず、後は全滅していた。

 慧留は今、自分はどうするべきかを考えていた。自分にできることと言えば時間を巻き戻して…

「!」

 慧留は一つの答えに辿り着いた。

「これで…」

 蒼がそう言うと慧留は蒼を止めた。

「待って!」

「慧留?」

 蒼が慧留の名を呼ぶ。

「お願い…私に考えがあるの」

 慧留がそう言うと蒼は「分かった」と言った。

 そして慧留は『混獣ダイダラボッチ』に近づき、自身の黒い翼を広げた。

 誰もが見ればその美しさに魅了される、それ程までに美しい天使の翼であった。

「お願い…元に…戻って!」

 そう言って慧留は黒い波動を『混獣ダイダラボッチ』に放った。すると、『混獣ダイダラボッチ』は悲鳴を上げ、身体が徐々に縮んでいた。

 そう、慧留は時間の巻き戻しを使うことで『混獣ダイダラボッチ』になる前の時間まで巻き戻す。それが、今、慧留がやろうとしていたことなのだ。

 やがて、『混獣ダイダラボッチ』の身体が分離し、元の形に戻った。現れたのは四人程の魔族だった。

「元に…戻った?」

「やった!元に戻った!」

「戻った…」

「信じられない…」

 魔族の者はそれぞれそう言った。中には幼い子供までいた。

「良かった…」

 慧留はそう言って尻餅をついた。翼は既に閉まっていた。

「信じられぬ…これほどの力が…」

 四宮は驚愕の表情を浮かべていた。

「慧留…」

 驚いていたのは四宮含む教職員だけでは無かった。蒼を初めとした生徒会も驚いていた。

「月影さん…人間じゃない…」

 生徒の中から声が聞こえた。

「魔族を今、助けたんだよな…」

「あいつも敵ってことかよ…」

 そんな声が聞こえた。

 そして、生徒たちは慧留に石をぶつけ始めた。

「止めるのじゃ!お主等!」

 四宮たち教職員と生徒会が石を投げる生徒の止めに入るが全く収まる気配がない。

 慧留は石を投げつけられながらも後ろに魔族を庇っていた。石によって傷つけられた場所は自身の力で治せる。

「お姉ちゃん…」

 魔族の子どもが心配そうに慧留を見つめる。

「大丈夫…お姉ちゃんはすぐに治るから」

 蒼は遂に業を煮やした。

「てめぇら…いい加減にしろ!!!!」

 蒼が叫ぶと辺り一面が氷に覆われた。そして、石も凍り付き、砕けていた。

「寒!」

「凍り付いた!?」

「何だあれ!?」

「もしかして、時神君も…」

 そう言って蒼は右肩に翼を広げた。

「見ての通り、俺は天使だよ…お前らの中にも何人か…魔族がいるはずだ」

 蒼がそう言うと何人かの生徒が反応した。

「けど、そいつらがお前らに危害を加えたことがあったか?一度もなかっただろ!」

「うるせぇ!」「魔族は悪だ!」「汚らわしい存在なんだよ!」

 蒼がそう言うと生徒がさらに反発しだした。すると、今度は澪が話し出した。

「君たち、こんな大人数で一人の女の子を追い詰める方がみっともないんじゃないかな?それに、この学校の教職員の約半数が魔族なんだよ?その魔族たちは君たちを襲ったことや危害を加えることがあったかい!?君たちの言う魔族は悪ってのは君たちの勝手な偏見だよ!君たちの方がよっぽど汚らしいよ!」

 澪は珍しくも声を荒げていた。

「どうして?どうして分かってくれないの?手を取り合えばお互いを理解し合えば…戦争なんてなくなるのに…何で皆は…私たちは優しくできないの?」

 慧留は涙ぐみながらそう言った。

 慧留は今でも望んでいるのだ。魔族と人間が全ての者が共存できる世界を。だからこそ今でも、慧留はこうして立っているのだ。

「?何や…あれは…」

 美浪が空を見上げた。

「あれは…閻魔家のヘリじゃ…」

 四宮がそう言った。

「国が俺たちを助けに来てくれたんだ」

「そうだ!魔族は殺さなきゃならないんだ!」

 そんな生徒の声が聞こえた。

『この学校はもう消えてもらう…散々邪魔してくれたね…死ね』

 そう言ってヘリは何かを落とした。あれは…

「マズい!あれは霊子爆弾だ!」

 叫んだのは一夜だった。一夜はこの手の情報に詳しい…まず間違いない。霊子爆弾とはその名の通り霊子

を凝縮した爆弾であり、ここら一帯は簡単に吹き飛ばせる威力がある。

「どういうことだ?」

「何で?」

「私たち死んじゃうの?」

 生徒たちが狼狽の声が聞こえた。

「爆破まで後三〇秒と言った所だろう。このままではここにいる全員どころか、この街がお陀仏になるよ…やってくれたね…閻魔」

 一夜は苦悶の表情と共にそう告げた。

「俺の氷でここにいる奴らは守れるけど…この町全体は無理だぞ…しかも、爆弾を壊そうにも爆弾の周りに特殊なプロテクトが張られていて手が出せねぇ…」

 蒼がそう言うと慧留は立ち上がった。

「私がもう一度…力を使えば…」

 しかし、慧留は膝を付いてしまった。慧留の神力が限界なのだ。時間系統の術はとにかく力の消費が激しい、それは霊力でも魔力でも神力でも変わらない。

「無茶よ!」

 遥がそう言うが慧留は反論した。

「じゃあ、他に方法があるんですか!?私は…この街が好きなの!ここには大事な思い出があるの!私は…それを壊したくない!」

 慧留は力強くそう言った。なら、蒼のやることは一つだった。

「俺の神力を使え。【第二解放エンゲルアルビオン】!」

 蒼は【第二解放エンゲルアルビオン】を解放した。【第二解放エンゲルアルビオン】は天使の二段階目の解放であり、この形態になると、神力を纏うようになる。

「【アルカディアの氷菓】」

 蒼の髪は白髪になり、眼もオッドアイから両目とも水色になっていた。さらに体には白い衣を纏っており、右肩には氷の翼が生えていた。

 蒼は慧留の肩に右手を乗せ、神力を送った。

「これなら!」

 慧留は背中から二対の黒い翼を再び広げた。

 そして、そのまま、黒い波動を放った。その瞬間、原子爆弾が爆発した。

「お終いだあああああああ!」

 生徒たちの悲痛な叫びが聞こえた。しかし、爆発の範囲が広まることは無かった。

 爆弾はやがて爆発する前の時間に巻き戻されていき、最終的には原子爆弾が出来る前までの時間に戻された。

 空から落ちてきたのは大量の化学物質と鉄くずだった。

「終わった…ふぅ~」

 蒼と慧留はそのまま尻餅を付いた。蒼の【第二解放エンゲルアルビオン】は解けており元の姿に戻っていた。

 慧留も同様で翼は消えていた。

「よいしょっと…」

 慧留は立ち上がり、再び呼び掛けた。

「皆…今すぐに全て受け入れるのは難しいと思う…それでも、私は信じたいの…皆が分かり合える世界が出来るって…だから…せめて、この場はここで納めてください」

 慧留は頭を下げた。誰も、慧留に対して文句を言う者はいなかった。

「その…こっちこそ悪かった…です…助けてもらってたのに…」

 生徒がそう言うと生徒の皆は慧留に頭を下げた。

「これで…一段落だね…」

 湊がそう言うと蒼が湊の頭に拳骨を入れた。

「痛!何するのさ!」

「てめぇに締められるのが一番むかつくんだよ!」

「ひどくない!?」

 蒼と湊のやり取りを見て、美浪と慧留は微笑を浮かべた。


 十二支連合帝国政府が一宮高校襲撃事件後、蒼たち生徒会一行は四宮舞に呼び出されていた。

 四宮はまず一つ目に蒼と慧留について尋ねてきた。それに一夜は即座に答えた。

「なるほど…時神と月影の事情は分かった。他の教職員たちにはお主等の事は伏せておこう。仮にも学校を救ってくれた恩人じゃしな。礼を言わせてくれ。ありがとう」

 四宮が頭を下げた。

「いえ…そんな…」

「それより、あんたはいくつか聞きたいことがあんだろ?それは何なんすか?」

 蒼が四宮に尋ねてきた。

「そうじゃったな…では、話を続けるかのう。お主等はどうやって、「アザミの花」を救出する気じゃ?」

 四宮が聞いてくる。

「生憎じゃが…教職員の大半がやられてしまっての。もはや、お主等に任せるしかなくなってしもうたのじゃ。「アザミの花」を救出する事は本来なら反対じゃったがお主等の判断に任せる外無くなった。すまない」

 一夜がそのことについて答えた。

「心配いりません。協力者を連れてきました。入ってきてください」

 そうして現れたのは佐藤だった。

「また、あんたか…」

 蒼はそう答えた。

「全くだ…一体お前は何度俺をこき使えば気が済むんだ…」

 佐藤は呆れながら言った。

「まぁ、そう言わずに…これも国の為ですよ」

 一夜は佐藤にそう言った。

「今回は俺もクビを覚悟しないとな…まぁ、状況が状況だしな。俺も協力することにした」

 佐藤がそう言うと四宮が訝しげな顔をした。

「そやつは…魔道警察じゃな…信用していいのか?」

「大丈夫ですよ。僕の友人なんで」

 一夜はそう答えた。

「使いっ走りの間違いだろ?」

 佐藤はそう言った。

「で?どうする気だ?」

 蒼が一夜に聞いてくる。

「四日後、十二支連合帝国は全魔道警察官を動員させる。会議が開かれる場所はトウキョウ裁判所だ、「アザミの花」が捕らえられてるトウキョウ警察署から大分離れた場所で行われる。流石に牢屋を空っぽにすることは出来ないから大量の『混獣ダイダラボッチ』と数人の監獄官がいる。だが、ほとんど戦力になる奴は四大帝国会議に出席する。俺もそのメンバーなんだが、ダミーを作ってごまかしてる。つまりだ、「アザミの花」が処刑される日が最も警備が手薄なんだ。救出するにはこのタイミングしかない」

 佐藤はそう言った。

「またあのキメラが…だけど…」

 蒼が訝しげな顔をした。慧留の力があれば『混獣ダイダラボッチ』を元に戻せる。しかし、慧留のあの時間の巻き戻しは一回使用するだけで大量の神力を消費する。あまり、多用は出来ないのだ。

「まぁ、俺たちの目的は敵の殲滅じゃない。あくまでも屍たちの救出だ」

 蒼がそう言った。

「うん…そうだね…」

 慧留がそう言った。



 ここはUSW裁判所である。その裁判所で会議が行われていた。

「例の物は」

 男が聞いてきた。別の男が「これです」と言い、映像を流した。

 その映像は慧留が時間を巻き戻してる時の映像でさらに、学校の暴動を止めている映像であった。

「素晴らしい力だ…」

 男がそう言った。

「力だけでは無い…カリスマもある」

 今度は女性の声であった。

 ここにいるものは全員鉄仮面を被っており素顔が見えない。

 彼らは十二支連合帝国に一人スパイを忍ばせていた。そのスパイが撮った映像がこれである。

 USWは完全に今の十二支連合帝国の企みに気付いていた。

「これについては…」

 と別の男が聞いてくる。

「会議まであと四日だ…これ以上騒ぎを立てるのも忍びない。というより、気が付くのが遅かった。十二支連合帝国がここまで無茶をする国だったとは…所詮は神風特攻隊の国か」

 男がそう言った。USWがかつてアメリカと呼ばれていた頃、そして、十二支連合帝国が日本だった頃、第二次世界大戦があった。

 その時、日本軍は神風特攻隊と言う、その名の通り、爆弾を乗せた飛行船に乗り、相手軍に突撃し爆弾を爆破させることで、相手の戦力を落とすとともに自らの命を絶つ戦い方をしていた。

 USWはこれについての意見が分かれており、戦の為に命を投げ出すことを厭わなかった日本人を尊敬するものもいたし、逆に愚かだと主張する者もいた。

 どちらにせよ、USWにとって神風特攻隊は大きな印象を残しており、現在でもなお語り継がれている。

「まぁ、そこまでは心配することもあるまい。我々には勝てはしない」

 男はそう断言したのであった。



 蒼は家に戻り、部屋でぼーっとしていた。

「暇そうね」

 突然声が聞こえ、蒼は身体を起こした。すると、そこにいたのは薊だった。

「薊!?」

 蒼は驚きの声を上げた。

「お前…どうやって…」

 蒼がそう言うと慧留も隣にいた。

「慧留…お前の仕業か…」

 蒼は手を頭に置いてそう言った。蒼の家の鍵が慧留も持っている。

 蒼は慧留の鍵を持ってないが…

「薊ちゃんがどうしても蒼の部屋に行きたいっていうから…」

 慧留がそう言うと薊が顔を赤らめた。

「べっ…別にそんなんじゃ…ただ聞きたいことが…あったのよ」

「何だ?聞きたいことって」

 蒼が尋ねると薊は蒼に問いかけた。

「時神蒼、あなたは…人と魔族…どっちなの?普通の天使となんか違う気がして」

「ああ、そのことか…ああ、お前の言う通り俺はただの天使じゃねぇよ。天使と人間の間に生まれた半人間だ」

 蒼が薊の質問にすぐ答えた。

「そっか…あなたは人手もあり、魔族なのね」

 薊はそう言った。

「あなたは…その…差別や迫害を受けてきたんじゃないの?あなたは完全な天使でも人間でもない訳でしょ?どうなの?」

 薊は再び質問をした。

「ああ、あったよお前らと似たようなこと…俺の周りは冷たかった。色んな奴に差別されたよ。同族の天使にさえ…な」

 蒼は薊にそう告げた。

「まぁ、自分と違うものを排斥したがるのは人間も魔族も変わらねぇってことだよ。立場が違えば、人間が魔族を差別する…なんてこともあって不思議じゃねぇよ」

 蒼は更に続けた。

「時神蒼は…どうしてそこまで真っ直ぐなの?」

 薊は再度蒼に問いかけた。

「俺は…お前が思ってるほど真っ直ぐじゃねぇよ…けどまぁ、腐らずに済んだのは「あの人」のお陰かな」

 蒼がそう言うと薊は「あの人」と言ったが蒼はこれ以上そのことについては話さなかった。

「聞きたいことはそんだけか?」

 蒼が言うと薊はさらに話を続けた。

「私のせいなのかな…私が十二支連合帝国の情報を国外に漏洩したからこんな事になったのかな?」

「まぁ、直接的にはそうだろう。けど、いずれは絶対誰かがやってたし、十二支連合帝国は動き出していただろうな。結果的には速いか遅いかだ。お前が気に病むことじゃねーよ」

 蒼は薊にそう告げた。

「ありがとう、時神蒼」

 薊は蒼に礼を言った。

「なんか今日はやけに他人に礼を言われる日だな」

「そうだね」

 蒼がそう言うと慧留が笑いながらそう言った。

「あいつらは絶対に助け出す」

 蒼がそう言うと薊と慧留は頷いた。

 その後、慧留と薊は自室に帰って行った。


 ここは魔道警察署の牢屋だった。今はもう夜中の十二時を過ぎていた。

「はぁ…薊の奴元気にやってるかなぁ?」

 天草屍あまくさしかばねは牢屋でそう呟いた。

「まぁ、大丈夫だろ?」

 隣の牢にいた赤島英明あかじまひであきはそう呟いた。

「いや、軽すぎるだろ!?」

 赤島と共に閉じ込められている兎咬がそう言った。

「牢屋…退屈」

 屍の前の牢に閉じ込められていた御登狂みとくるがそう呟いた。

「俺たちも後三日の命だ…せいぜい楽しもうぜ」

 赤島がそう言うと兎咬はそれに反論した。

「馬鹿か貴様は!この状況をどうするかをな…」

「どうにも出来ないよ。俺たちじゃな」

 兎咬の言葉を屍は批判した。

「ボス!では諦めろと?」

 兎咬がそう言うと屍は「いいや」と言った。

「俺はまだ諦める気は無い。だが、今は警備が厚すぎる。今のままじゃ突破は無理だ。気を伺うしかない」

 屍はそう言った。

「屍さんも諦めが悪いな…」

 赤島がそう言った。

「当たり前だ。こんなところで死ねるか」

 屍がそう口にした。

「あいつらの目的は全世界の魔族の殲滅、これを知ったら蒼たちも黙ったいないだろう。閻魔についてはあいつらに任せる」

 屍はそう言った。すると、赤島が微笑を浮かべた。

「何が可笑しい?」

 屍が赤島に尋ねる。

「いいや、屍さんにしては随分敵に入れ込んでるなと思って…そうだな…俺ももう一度くらいあの「天使使い」に会いたいね~」

 赤島がそう言うとどこか虚ろだった赤島の眼に光が戻っていた。

「英明…やっとやる気になった」

 狂はそう呟いた。

「三日後は警備が手薄になってる筈だ。四大帝国会議が開かれるからな。俺たちが処刑されるのもその日だ。逃げるタイミングはここしかねぇ」

 屍はそう言うと他の三人は小さく頷いた。

 そして、処刑の日がやって来たのであった。


  To Be continued

 『四大帝国会議』篇第二話投稿しました。この話は慧留の力の一端が見れましたね。彼女の事についてはまたいずれ掘り下げる予定です。いずれね…

 今回は学校側の新キャラを登場させました。彼女はこれからも出てきます。(出番は少ないかもしれないけど…)

 次はとうとう、蒼たちは殴り込みに行きます。(多分)それではまた!

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