【第十章】道化狂乱篇ⅩⅠーrestー
「はー、イワンは勝手に動いちゃったか~。待てって言ったのに…まぁ、彼らしいと言えば彼らしいけどね…(^o^;)」
オーディンのいる洞窟まで戻ったロキがそう呟いた。
イワンは第三部隊に奇襲を掛けていた。
その部隊には本来、ソニーに向かわせるつもりだったが予定が狂った。
ソニーはソニーでイワンが第三部隊に来る事に気が付き、何処かへと行ってしまった。
「全く…どいつもこいつも集団行動が出来ない子達ばかりで困るよ(T0T)」
ロキは悲しそうにそう呟いた。
まぁ、勝手に講堂を取られた所で今の所は支障は無いのでそこまで問題では無いのだが。
「やれやれ…しょうがないか…(^o^;)戦争はまだ始まったばかり。好きにやらせようかな…(*´∀`)」
ロキはそう呟いた。
「戻ったわね」
ルミナスがそう言った。
ここは天使城。
つまり、連合軍の本部だ。
「はい、お待たせしました」
「状況の報告を」
戻ってきたのは澪達であった。
彼女らはクメールを倒す為にカンボジアの地下牢まで行き、それが一通り完了したので澪の転送術で戻ったのだ。
「? フローフルがいないけど?」
「それについても説明します。その前に、月影慧留が重症なので治療を」
「アポロ」
「分かってるわよ!」
アポロは慧留を運んでいった。
「では…まず、クメールは月影慧留が打ち取りました。ですが、プラネット・サーカスの一人、マーリン・モリガンの乱入で時神…いえ、フローフル・ローマカイザーはマーリンの何らかの能力で幽閉されました」
「何ですって!?」
ルミナスが珍しく慌てている様子であった。
「そして…あたし達を逃がす為に…四宮舞が一人でマーリンを食い止めています」
「マーリンと言えば、USWの魔鏡のマーリンか…」
アルダールがそう言った。
「そんなにヤバイ奴なのか?」
「手配書Sランクの犯罪者だからな」
屍の問いにアルダールは淡々と答えた。
「じゃあ、すぐに四宮先生を…」
「そうね、すぐにでも増援を送るわ」
「場所はどこ?」
「はい…それは」
「ルミナス陛下!」
ルミナス達が話している時にそんな声が聞こえた。
「どうしたの!?今は大事な…」
「四宮舞から巻物が届いております!」
「「「「「「「「!?」」」」」」」」
兵隊の報告に一同は驚愕した。
すると、四体の小人がルミナス達の前に現れた。
彼らは四人で巻物を持っていた。
間違いない、舞が使役している四大神だ。
「何で…わざわざ…巻物で報告を…」
「四宮さんは…どうなったんですか?」
「………董河湊君、君は確か感知タイプだったわね?」
「は…はい」
「なら、四宮舞の霊力を探りなさい」
「分かり…ました…」
現在、湊は戦争のそれぞれの部隊の魔力と霊力を感知をしていた。
湊はこの戦争が始まる前に、全部隊の霊力と魔力を覚えていた。
それぞれの部隊の感知を一旦止めて舞の魔力を感知し始めた。
しかし、舞の魔力が感知出来なかった。
カンボジア方面に探知能力を集中させたが気配が全く感じられなかった。
「そんな…」
「湊さん…」
「四宮先生の魔力が…消失しています」
「嘘…」
「そんな…」
「考えたくないけど…わざわざ自身の身体にある四大神を使った事を考えると、そうみたいね…」
ルミナスが冷静にそう言った。
舞が死んだ。その事実が澪達に重くのし掛かる。
美浪は泣き崩れ、屍は歯を食い縛っていた。
「悲しんでばかりいられないわ。巻物の内容をー」
「何で…そんな冷静でいられるんですか?」
口を開けたのは湊であった。
「戦争に犠牲者は付き物だ。一々悲しんでいたら身が持たないわ」
「そんなー」
「董河止めろ!」
湊を制止したのは屍であった。
「あいつの言う通りだ…悲しむのは…後だ。今は四宮が遺した情報をどう有効に使うかを考えるのが大事だ」
屍も多くの仲間の死を経験している。
だからこそ、今の湊の気持ちも分からない訳では無い。
だが、今は悲しんだり、悲観したり、味方に怒る状況では無い。
舞の犠牲をどう活かすかが大事なのだ。
「フローフルは…まだ死んでないのね…」
「恐らく…生きてると思うわ」
「なら、フローフルを助け出す。この戦争では彼の力が必須だわ」
「けど、マーリンは既にカンボジアにはいない可能性が…」
「この巻物には敵の衣服も付着していたわ。この痕跡を辿れば見つける事が可能の筈よ」
「どうします?どこかの部隊を送りますか?」
「どこの部隊も戦闘中よ。送り込む余裕も無い上に話を聞く限り単独で動いている可能性が高いわ。少数で攻め込むべきね」
「なら、誰を連れていくかだが…」
「私が行くわ」
真っ先に名乗り出たのはプロテアであった。
プロテアは蒼を助け出すと心に決めているのだ。
プロテアにとって蒼は命の恩人である。失う訳には行かなかった。
「………」
ルミナスはプロテアを睨み付けた。
ルミナスとしてはプロテアを行かせたくは無かった。
何故ならプロテアは蒼と…
しかし、ここで行かせてはならない理由も説明出来なかった。
「分かったわ。只し、あなた一人に行かせるのはリスクが高いわ。この巻物を解読し次第、あなた以外に連れていくメンバーを編成するわ」
「分かった、それまでに準備しておくわ」
プロテアはそう言った。
「アルダール、解読をお願いするわ」
「分かりました」
四大神は既に姿が消えていた。
舞の魔力が完全に尽きてしまった事で姿を保てなくなり、消えたのだろう。
舞と四大神の命は繋がっていると言う。
四大神が死んだということは舞もー
「どれくらい掛かりそうかしら?」
「この内容でしたらすぐに終わりますよ」
「分かったわ」
アルダールは優秀な頭脳を持っている舞の遺した情報もすぐに解読出来る。
「大体内容は分かりました。では情報を読み上げますよ。マーリン・モリガン、性別は女、外見的特徴はセピアの瞳に桃色のふわふわした髪とヒラヒラした衣装が特徴で能力は鏡を使った能力で鏡は全ての術や魔術、体術を相手に跳ね返す能力があるそうです」
「術も魔術も全て…か…」
「はい、只し、鏡に触れなければ跳ね返せない様で、透過能力といった視認出来ないモノも弾けない様です。さらに、鏡を周囲に鏡を発生させる能力もあるようで鏡から鏡へと移動する事や飛び道具を放つ事にも使える様です」
「汎用性の高い厄介な能力ね」
「フローフルを閉じ込めたのもこの鏡による能力らしく、平次元に閉じ込められているとの事です」
「成る程ね…空間に関わる能力…か…」
マーリンの能力を一通り聞き終えたルミナスは少し考えた。
相手は相当厄介な能力を持っており、ここに記されている能力も全てでない可能性が極めて高かった。
人選は慎重に選ばなくてはならない。
考えた結果、ルミナスがとった選択はー
「インベルとアポロ、プロテアの三人に行かせるわ」
「畏まりました」
「異論は無いわね?プロテア?」
「ええ、問題ないわ」
ルミナスは少し考えた結果、インベル、プロテア、アポロの三人に行かせるのが得策と考えた。
プロテアとしても全く知らない者と一緒に行動するよりは幾分マシである。
インベルとアポロは一応、プロテアと面識がある。
「インベルとアポロをここに呼んできて頂戴」
「その必要は無さそうですよ」
アルダールがそう言うとインベルとアポロは既にここにいた。
「全く…ルミナスの命令を聞くのは癪だけどフローフルを助けに行くためなら仕方無いわね」
「世話の焼ける奴だな…あいつも」
アポロとインベルがそれぞれそう言った。
「宜しく頼むわ。インベル、アポロ」
「言われるまでもねぇよ」
「ええ、あのバカをさっさと助け出すわよ」
「最優先はフローフルの救出よ。理想はマーリンを倒す事だけどそれが無理そうなら速やかに撤退しなさい」
「分かったわ」
「命令しないで欲しいわね」
「了解す」
ルミナスの指示に三人はそれぞれ答えた。
「じゃあ、早速三人とも向かって貰うわ」
「「「了解」」」
三人はそう言って本部から出ていった。
「さてと…あなた達にも前戦に出て貰うわ。常森澪は本部で待機、天草屍は第五部隊に向かって頂戴。霧宮美浪と苗木一夜は擬流跡土の捜索をして貰うわね」
「第五部隊は今、どうなってる?」
「謎のキメラが第五部隊を襲っているそうよ」
「それだけ聞けば十分だ」
「常森澪は天草屍を第五部隊に転送」
「了解」
澪は屍を第五部隊に転送術で転送した。
屍の姿は消えた。
「ちょっと待ってください。擬流跡土の捜索は後回しにした方が…」
「後回しにする理由が?」
「くっ!?」
一夜は言葉を止めた。
問題があった。それは擬流跡土を殺してしまえば美浪も死んでしまうという事だ。
だが、ルミナスの様子を見る限り、そんな事を言った所で納得する筈も無い。
「大丈夫です。問題ありません」
「美浪君!?」
「よし、じゃあ、明日には向かって貰うわ。今はもう夜よ。捜索は昼間の方がやりやすい」
「分かりました」
「………」
一夜は押し黙っていた。
美浪と屍はルミナスの元から離れた。
このまま美浪を行かせる訳には行かない。
せめて、美浪を助け出す方法を思い付くまでは美浪に行かせる訳には行かなかった。
一夜は誰も仲間を死なせたくは無かった。
もう、二度とあんな目には…音峰遥の様な犠牲者は出したく無かった。
「僕が…必ず…美浪君を助ける方法を見つけ出す」
「やっぱり…温泉に限るよね~、疲れを癒すには」
マーリンは十二支連合帝国の温泉に来ていた。
温泉と言えば十二支連合帝国と相場が決まっている。
今は戦争中だが十二支連合帝国でもトウキョウ以外の場所は比較的安全である。
世界大戦とは言え、世界全てが戦場と言う訳では無く、中には戦場になっていない場所もある。
そういう場所こそ、狙われにくいモノだ。
とは言え、見つかれば即刻戦場と化すのであまりのんびりはしていられない。
マーリンは現在、露天風呂で身体を休めていた。
「そうですね。疲れを癒すには温泉が一番です」
「うわ!?エスデスちゃん!?いたの!?」
「いて悪いですか?」
エスデスは膨れっ面でそう言った。
エスデスの見た目は小さい少女である為、幼さが残っていた。
「いや~、そんな事は無いよ?それにしても今は戦争中だよ?くつろぎすぎじゃあ…」
「そう言うあなたこそ、ここでくつろいでるじゃないですか?」
「マーリンは一仕事終えたからだよだよ!」
「相変わらず特徴的な喋り方です。まぁ、いいです。一仕事終えた…ということは時神蒼は倒せたみたいですね」
「いや~、あれはまともにやり合ったら勝てないから封印したよ!けど、大丈夫!後三日もすれば霊力奪い尽くされて死ぬから!」
「成る程、最低限の役割はこなした…という事ですか」
マーリンもエスデスも世間話をするかの様に会話していた。
今、露天風呂はマーリンとエスデスの貸し切り状態であった。
「それにしても、あなた程の使い手が勝てないと判断するなんて…時神蒼はそれ程までに強いのですか?」
「まぁ、霊力の高さと相性が悪かったからね~。対応される前に封印したけどけど?手を打つのが遅かったら多分負けてたね」
「そうですか。もし戦う事があれば、心しなくてはなりませんです」
「いや、話聞いてた?マーリンが封印したんだからエスデスちゃんが戦う事は無いんだよだよ?」
「何が起こるか分かりませんからね。もしかしたら、あなたの封印を破ってくるかも…」
「それは無いね☆マーリンの【無限迷宮】は内側からじゃ絶対に開けられないないからね」
「確か、あなたのその技、封印した者の様子が見れるんですよね?時神蒼はどうしてるです?」
「ん~?必死こいて抵抗してるよ?けど、無意味」
そう、マーリンの【無限迷宮】は内側からの攻撃は全て反射してしまう為、どう足掻いても破る事は叶わないのだ。
「味方だからいいものの、敵に回ると思うとゾッとするです」
「そんな謙遜しなくても…数字はマーリンより上なんですし」
「あなたといい、イワンといい、『童話人』の数字を力の序列そのままだと思って判断するなんて愚かです」
「いや、あの数字が目安に過ぎないのは分かってるよ?けど一応、階級って事だし」
「わたしは数字に縛られる様な愚かでは無いです。わたしは世界を平和に出来ればそれでいいです」
「平和って退屈じゃないない?」
「退屈、平穏程安心できる時間は無いです。犠牲も出ずに済みます」
「でもさ、平和を求めるのはちょっと変じゃない?」
「何が言いたいです?」
「いやだって、この世界で生きていくには何かを奪わないといけないじゃん。人や魔族だって動物を喰らって生きてる訳だよね?それなのに人だけが平和を求めるのは烏滸がましくない?」
マーリンの言う事は尤もであった。
生きるとは他者を喰らう事である。
それは人も魔族も同じだ。
にも関わらず人や魔族は安心を求める。
そもそも平和とは何だ?人や魔族さえ平和ならそれは平和と言えるのか?
「無益な殺生をしていてはこの世界はあっという間に崩壊します」
「まぁ、それはそうだけど…結局の所、平和…何て言う言葉は人が都合良く創った言葉に過ぎないよね?」
「それは否定しないです。ですが…わたしにはわたしの正義があります」
「正義…ねぇ…その辺もマーリンは分からないないや」
「所詮、あなたもロキやイワンと同種…という事です」
「…思ったんだけどさ、何で君はプラネット・サーカスにいるの?マーリン達ってさ、基本的には快楽主義者の集まりで君みたいな人は異質だと思うんだけど?」
プラネット・サーカスは基本的にマーリンの言うように快楽主義者の集まりであり、自身の欲望を満たそうとする者ばかりだ。
エスデスの様な平和を本気で目指して動いている者はいない。
「何かを掴む為には力が必要です。プラネット・サーカスはその為に利用しているだけです」
「利用…ねぇ…まぁ、マーリン達って基本的に持ちず持たれずって関係だしね~。仲間意識がそこまである方でも無いし」
「そうですね。そちらの方が都合もいいですしね」
「でもさ、今日の君は随分と喋ってくれるね?どんな風の吹き回し?」
「別に特に深い理由はないです。温泉に行ったらたまたまあなたと出会したので話してただけです」
「そっか…まぁ、たまには悪くないね~こういうのも」
マーリンはそう呟いた。
「じゃあ、わたしはそろそろ出るです」
「え~?もうちょっとゆっくりしても…」
「あまり長居するのも気が引けるです。ここが戦場になるのも忍びないです。あなたもさっさとここから消えるです」
「ぶー」
「駄々をこねないで下さいです。では…」
「やっぱりツルペタだね、エスデスちゃんは」
「………殺す」
ドスの聞いた声でエスデスはそう言った。
マーリンは珍しくビビっていた。
マーリンは温泉から出て、白い浴衣を着て歩いていた。
マーリンはこういう和服を着てみたかったのだ。
「でも…ちょっと胸の辺りが窮屈だな~。跡土君は気崩してたけどマーリンにそれは出来ないしな~」
マーリンは困ったようにそう言った。
やはり、すぐに元の衣装に戻した方がいいだろう。
だが、せっかく着た浴衣なのでしばらくは着ておこうと思った。
「月が綺麗だね~」
マーリンはそう呟いた。
今は冬だ。残念ながら夏ではないので風鈴の音は鳴らなかったがもし鳴っていたなら風情があっただろう。
「今度はどこに行こうかな?」
マーリンは明日の朝にでも何処かで戦いに行こうと考えていたが他の部隊で無闇に邪魔をするのも気が引ける。
特にイワンは戦いを邪魔されると確実にキレそうであった。
頃合いが来ればロキとルミナスを倒しに行くのでそれまでは自由に適当な所でくつろぐのも悪くないかもしれない。
ロキの元にいておく…という選択肢もあるがロキと一緒にいるより、自由気ままに色々な所を回った方がマーリンにとっては良かった。
マーリンは別にロキの事が嫌いという訳ではない。
だが、それよりも一人でいた方が好きというだけだ。
マーリンは温泉に行くまでの間に戦場の状況を把握していた。
クメールだけでなくアリアナも死んだ事、更にイワンが独断で第三部隊に攻め込んだ事も知っている。
「アリアナちゃんの自爆で大分相手の兵力を減らせたね~。こっちも減らされたけど跡土君がいるから問題ないね。ここまでは…ロキの想定の範囲内か~」
マーリンはロキの予想通りに事が運んでいる事が若干不服であった。
ゲームとはどうなるか分からない勝負が楽しいのだ。
展開通りに進むのは見ていて楽しいモノでは無い。
尤も、今回はマーリンは見ている方では無く、プレイヤーなのだが。
蒼は未だに抵抗している。
本来ならマーリンの【無限迷宮】で封印されれば一日も経てば霊力を奪い尽くされて死ぬのだ。
しかし、蒼の霊力は図抜けており、三日は掛かる。
「けど無駄無駄だよ~、蒼君。君の力では壊せない」
マーリンは手鏡を出現させて自分の顔を見た。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?………何てね。」
マーリンは白雪姫に出てくる魔女の台詞を自嘲気味言った。
マーリンは決して魔女のように自分の容姿を美しいと思った事は無い。
だが、マーリンは世間的に見れば間違いなく美女だろう。
「白雪姫で言うとマーリンは魔女かな?姫を殺す辺り…ね…」
マーリンの言う姫というのは四宮舞の事だ。
マーリンはどうやら、自身とその回りを白雪姫のキャラクターに見立てているのだろう。
「いや、白雪姫は蒼君…かな?まぁ、そんな事はどうでもいいや」
マーリンはそう呟いた。
どうでもいいと考えていながらもマーリンは考えずにはいられない。
マーリンは白雪姫が好きだった。
童話の中でもあの話はとてもロマンチックで素敵だと…美しいと感じてしまったのだ。
マーリンは戦いが好きといいながらも、白雪姫が好きという少女らしい一面もあった。
「マーリンは白雪姫にはなれなかったよ…けど…もういいや。今は…戦いを楽しもう…」
矛盾している。
マーリンの心は矛盾しているのだ。
白雪姫に憧れていながら、争いを楽しんでいる。
この相容れない二つの事柄をマーリンは抱えている。
もしかしたら、この矛盾こそが心というモノなのだろうか。
マーリンはそこまで深く物事を考える性格でも無い。
だが、この戦いが始まってから少し、色々な事を考える様になった。
「もしかして…これ…死亡フラグ立っちゃってる?」
マーリンはそう言った。
戦いで色々な事を走馬灯の様に考え出すのは死亡フラグと相場が決まっている。
まぁ、そんな物は覆る可能性だってあるし絶対とは決して言えないのだが妙に死亡フラグというのは説得力があるのが常である。
「そんな事はどうでもいいか…この戦いで…「キレイなモノ」…見つかるといいなぁ…」
マーリンはそう言ってここから去っていった。
「やれやれ…アリアナの奴…やってくれたネ…」
跡土は歯軋りしながらそう言った。
ここはとある洞窟だ。
ここで跡土は多くの兵士を造っている。
死者の復活からコピーを造るなどをしていた。
だが、アリアナの自爆で跡土の造り出した「作品」が大量にやられた。
跡土はどんな作品であろうと自分の造った「作品」に誇りを持っている。
それを壊されるのは我慢ならない。壊したのが味方なら尚更だ。
「アリアナが生きていたらとっちめてやりたい所だが…それも不可能ネ…クメールも死んだ様だし…思ったよりやられるのが速いネ…まぁ、クメールに関しては好都合だったがネ」
跡土が生き返らせた美浪はクメールにより洗脳されていた。
そのクメールが倒された事により、美浪の洗脳が解けたのだ。
「さて…ミーの作品達をこれだけ動かしたのは初めてだ…気を引き締めないとネ…」
跡土は自分が造った多くの「作品」を今回で使っている。
これは跡土にとっては集大成であり、自身の芸術を極める為に重要な事なのだ。
何かを産み出すには何かを犠牲にする必要がある。
跡土は自身の「作品」を造る為に多くの者を犠牲にしてきた。
跡土はその為に今まで生きてきた。
「ミーの芸術がどの様になるか…楽しみだネ…みなみ…君にも期待しているネ」
跡土は自身の「作品」に誇りを持っている、例えそれが敵に回ったとしてもだ。
美浪は跡土の手駒には出来なかったが、跡土の作品である事には変わりは無い。
だからこそ、跡土は美浪に不用意に手を出さないし、出す者には容赦しない。
跡土にとって今回の戦争の勝ち負けなどどうでもいい。
仮にプラネット・サーカスが勝とうが負けようが跡土には何の関係の無い話だ。
跡土は自分の芸術を披露する場所が欲しかっただけで後はどうでも良かったのだ。
どの道、今回の戦争でこの世界は大きく変わるだろう。
跡土はその先の戦いで自身の芸術を極めればそれでいい。
跡土にとっての芸術、それは完璧な人形を造り上げる事だ。
完璧を求める以上、ゴールは無く、常に極め続ける。
ある意味、跡土は魔術を極めようとするルバートと同類と言えるだろう。
人形達が動く…跡土の思いのままに。跡土は完璧を望んだ。
跡土は無神論者だ。生死観もズレており、やはりまともとは言えなかった。
そう、狂っているのだ、冷静に。
しかし、跡土はそんな事はどうでも良かった。
人が進化していったのはその狂気の力なのだ。
そもそもこの世界は平等では無い。
平等では無いからこそ、争いは起こり、それにより、美学が…芸術性が産み出されるのだと跡土は考えていた。
人は闘争を求める生き物だ。
戦争もそうだ。戦争を経験した事が無いものからしたら戦争はとても魅力的にみえるモノなのだ。
戦争で活躍して、英雄と呼ばれた者がいるのも事実であり、戦争のお陰でやっていけた者もいるのだ。
英雄と暴君は紙一重であり、その人にとっては英雄でも他国になればその英雄も暴君に変わる。
世界とは人とは魔族とは…見る者によって色々な姿に見えるモノなのだ。
その観念に一々囚われていては本当の自分を見失ってしまう。
だからこそ、跡土はそんな愚かな考えには囚われず、自身の芸術を極めようとしていた。
この世界に秩序など無いのだ。
秩序が無いのなら…無秩序に縛られる必要などない。
「そう…ミーの芸術が…」
跡土は何かを言い掛けると足音が聞こえた。
どんどん、こちらへと向かっていた。
「誰か…来る…」
一瞬、ロキ辺りかと思ったが違う。
ロキの場合は跡土の真後ろにいきなり来たり、驚かせようとする事が多い。
イワンは今、戦場に独断で向かっているので有り得ない。
マーリンも今はどこかへ行っており、エスデスも少なくともこの近くにはいない。
バートル、メンゲレ、ソニーも戦場にいる。
アリアナとクメールは死んでいる。
だとすると、敵である事はほぼ確実だ。
プラネット・サーカスのメンバーは『童話人』の十人以外は小国の兵隊か跡土の造ったコピー人形、或いは死者を復活させた者だけだ。
この場所には結界が張っており、そう簡単には近付けない筈だ。
それを掻い潜れる者がいるとしたらそれは四大帝国連合軍に優秀な者がいると考えるのが自然だ。
「思ったより速く見つかったネ…」
跡土は決して四大帝国連合軍を舐めていた訳では無い。
実際、跡土は頻繁に場所を変えて移動しており、痕跡も残していなかった。
それなのにこうも速く見つかるとは思っていなかった。
だがしかし、見つかってしまった以上、仕方がない。
迎え撃つしか無いだろう。
ここまで嗅ぎ付けて来る様な奴だ。恐らく、逃げた所で無駄である。
それならば、ここで倒してしまった方が確実だ。
跡土は戦闘力に自信がある訳では無いが多くの手数がある為、弱い訳では無い。
むしろ、たった一人で十二支連合帝国を壊滅寸前にまで追い込んでいる為、素の戦闘力は折り紙付きだ。
プラネット・サーカスに所属しているだけあり、その力は未知数だ。
「ミーの作品はまだまだある…丁度試したい作品もある事だ…やるか…」
跡土は敵を迎え撃つ事を決め、立ち上がった。
立ち上がった跡土は和服と合間って非常に怪しげな雰囲気を醸し出していた。
侵入者の顔が徐々に見えてくる。そこにやって来たのは跡土にとっては意外であったと言えるしそうであったとも言えなくもない…たが、跡土の元へ彼女がやって来るのは必然であったと言える。
跡土は彼女の事をよく知っていた。
水色のセミロングと瞳が特徴であり、小柄な少女。
跡土が二百年前の天使大戦の時に生き返らせた少女。
かつて自分が生き返らせた少女が今、跡土の敵として立ち塞がっている。
跡土は少し、ほんの少しだが、この事実に嬉しく思った。
まさか、自分の造った「作品」がこの様な形で現れてくるとは。
「ふ…君だったか…意外と言えば意外だが………いや、これは必然だったのかもしれないね…」
跡土は語り口調でそう言った。
少女は何も答えない。
少女の眼はとても真っ直ぐで今にも跡土に襲い掛かりそうだ。
跡土は少女に強い何かを感じた。
しかし、跡土はそんな事はどうでも良かった。
例え相手が自身の造り出した「作品」であろうともやる事は一つだ。
「君とはここで決着を着けよう…みなみ」
跡土は薄ら笑いを浮かべながらそう言った。
美浪は跡土を見つめていた。
To be continued




