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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第十章】道化狂乱篇
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【第十章】道化狂乱篇Ⅹーmillerー

「さて…どうするするの~??」


 マーリンがそう言った。

 ここはカンボジアの地下牢で、プラネット・サーカスの一人であるクメールがここにいた。

 そのクメールを慧留が倒し、子供達も無事に逃げる事が出来た。

 しかし、突如、プラネット・サーカスの一人、マーリンが乱入し、蒼がマーリンの鏡の世界に封印されてしまった。

 現在、ここにいるのはマーリン、屍、プロテア、澪、舞、美浪、一夜、クメールとの戦いで気絶している慧留だ。

 マーリンは彼等を逃がすつもりなど毛頭無い。

 彼女の目的はあくまで殲滅。一人とて逃がすつもりは無い。


「くっ…ここは…」

「妾が一人でやる」

「なっ…!?」


 舞の台詞を聞いてプロテアが声を上げて驚いたが他の者達も驚いていた。


「いや、ここは全員でやるべきだろ!?」

「そうだね…六体一だ。こっちの方が…」

「あのマーリンという女…只者ではないのぉ…ここで全滅するのは眼に見えておる」

「だから…あなたが食い止めるって言うの?」

「心配するな…時神は妾が助け出す。助け出し、頃合いを見れば妾も引く。お前達はここから逃げるのじゃ。月影の治療も急がねばならん」

「けどよ…」

「分かったよ、マイマイ」


 屍が言おうとすると、澪が慧留を担いで逃げる準備をした。

 澪以外は納得していなかった。


「おい、常森!四宮を見捨てるのか!?」

「…全滅するよりはマシだよ…皆!逃げるよ!えるるんの治療もしないといけない!」

「確かに…そうだね…僕らは死ぬわけにはいかない…」


 一夜はそう言ってここから出ていった。


「くそ…四宮…死ぬんじゃねーぞ!」

「四宮先生じゃ」


 屍もそう言ってここから逃げた。


「分かりました…」


 美浪もそう言って逃げていった。


「………」


 プロテアは何も言わずに出ていった。


「マイマイ…あたし達が逃げ終わったらすぐに逃げてね」


 澪は慧留を抱えて逃げた。


「逃がさない逃がさないよ!」


 マーリンは鏡の欠片を逃げる澪達に狙った。


「【豊神(ロノ)】!!」


 プロテアは澪達の方向に銃弾を放った。

 すると、急速に樹木に成長し、鏡の欠片を防いだ。

 澪達は全員、マーリンの視界から外せた。


「はあ~。逃がしちゃったか~。まぁ、いいや。君は逃がさないよ?四宮舞さん」

「退路を樹木で塞いだ時点で逃げる気は毛頭無いのぉ!」

「やっぱり、最初から自分が犠牲になるつもりで…」

「お主、何か勘違いしているのぉ…妾は…お主を倒す…!」

「倒す…か~??出来るかな?一応、マーリンはプラネット・サーカスの中でも上位に君臨するんだけどね~」


 マーリンは余裕の態度を崩さなかった。


「君、霊力が回復してるね?全く…クメールも余計な事をしてくれたね~」


 クメールは死の直前、自身が洗脳した者達全員の霊力を回復させた。

 それにより、舞も霊力が回復していたのだ。


「行くぞ!…【戦神(クー)】!」


 舞は銃に戦神(クー)の力を装填し、マーリンに放った。

 戦神(クー)の能力は爆発能力であり、命中したら即爆発する。


「【鏡転写(インイカース)】」


 マーリンの目の前に鏡が出現し、舞が放った銃弾を跳ね返した。


「な!?」


 舞は銃弾を回避した。

 その瞬間、銃弾は爆発した。


ー爆発する前に跳ね返せるのか…厄介じゃのぉ…


「無駄だよ…マーリンの鏡は絶対防御と絶対反射能力がある…君の力じゃ勝てない勝てないよ~」

「気色の悪い喋り方じゃな」

「それ、イワンにも言われた~。そんなにキモい?マーリンの喋り方?」

「イワン…まさか…イワン・ライグル…奴もプラネット・サーカスのメンバーなのか!?」


 イワン・ライグルの名前は舞も知っていた。

 彼は中華共和国出身の魔族であり、中華共和国の上層部を全員虐殺した罪がある。

 強大な戦闘力を持っているのは言うまでも無い。


「ふっふっ~ん。分かった所でマーリンが君を殺すから関係無いけどね☆このままカウンターばっかり狙っても埒が開かないね~、そろそろ攻め攻めますか…」


 マーリンはそう言って鏡から白い五芒星のビームを放った。


「な!?」


 攻撃が速すぎて舞は攻撃を回避しようとしたが回避しきれず、命中した。

 舞は咄嗟に戦神(クー)の銃弾でダメージを軽減した為、傷は浅かったが左腕が焼け爛れていた。


「今のは…【白城五芒星(ホーリーペンタグラム)】」

「違うよ?マーリンは霊呪法使えないし。これは光だよ。この鏡は光を吸収してそれを霊力に変換して放てるんだよ。勿論、マーリンの霊力を喰って光に変える事も出来るよ?」


 マーリンの鏡はカウンターのみならず、光を使った攻撃も使う事が出来る。

 攻守共に安定した能力だ。


「とは言ってもカウンターの方がこの鏡の真価を発揮出来る出来るんだけどね?」

「時神を封じ込めたあの技は使わないのか?」

「【無限迷宮(ラビリントス)】は封印出来る霊力に容量があるからね~。蒼君程の使い手を閉じ込めたから君を閉じ込めるだけの容量(キャパ)が無い無いんだよね~」


 マーリンは溜め息混じりにそう言った。

 成る程、あれだけ強力な技なのだから危険性(リスク)もそれなりにある様だ。


「とは言っても、【無限迷宮(ラビリントス)】は封印した者の霊力を喰らい続けるよ。速く何とかしないと…蒼君は死んじゃうね。それに…マーリンの奥の手は【無限迷宮(ラビリントス)】だけじゃないよ?」


ーな!?こいつ…まだ隠し玉を持っていると言うのか!?


 舞はマーリンの底の知れなさに驚いていた。

 蒼を封じ込めた【無限迷宮(ラビリントス)】以上に強力な力があるというのだ。

 正直、想像がつかなかった。


「行く行くよー。【鏡反射光(メルア・ヌル)】」


 マーリンは鏡から光を放った。

 光はとてつもない熱量を誇っており、当たったら人溜まりもないだろう。


「【豊神(ロノ)】!【樹海壇上(じゅかいたんじょう)】!」


 舞は地面に銃弾を放った。

 すると、地面から巨大な樹木が多数出現し、マーリンの発生させた光を遮り、更にマーリンに襲い掛かった。

 しかし、マーリンは鏡で舞の発生させた樹木を跳ね返した。更にー


「甘い甘いね♪」


 マーリンがそう言うと舞の身体が切り裂かれた。


「!?」


 マーリンは何に切り裂かれたのか分からなかった。


「樹木で光を遮っても僅かな隙間さえあれば問題無い無いなんだよね~」


ーどういう事じゃ!?


 舞は攻撃を完全に防いだ筈なのに攻撃が命中していた。


「【命神(カネ)】!」


 舞は自分のこめかみに銃を向け、放った。

 すると、舞の傷がみるみる回復していった。


「成る程ね…回復の力か…」


 あの鏡はあらゆる物理攻撃を反射してしまう。

 ロノの攻撃も反射されてしまった。

 残るはー


「【冥海神(カナロア)】!」


 舞は最後の神の銃撃を放った。


「無駄無駄だよ~?マーリンのこの鏡は全ての攻撃をー」


 マーリンがそう言い掛けると舞の銃弾はマーリンの鏡を透過した。


「へっ!?」


 舞の銃弾はマーリンの脇腹に命中した。


「何で!?」

「思った通りじゃ…貴様の攻撃は確かに…物理攻撃を全て弾き返す事が出来る…じゃが…透過能力のある妾のカナロアの銃なら…鏡をすり抜けられる」

「物質を透過させる能力…?そんなのあり?」


 マーリンは完全に油断しきっていた。

 マーリンの鏡を破れる筈が無い。その怠慢が今に繋がった。


「貴様の攻略法は見つけた…これで…」

「ううん、君はマーリンの事を攻略しきれてないよ」


 マーリンがそう言うと舞の身体がいつの間にか全身を切り裂かれていた。


「な!?」


 舞は膝を着いた。


「ネタバラしして上げるよ」


 そう言ってマーリンは指をパチンとならした。

 すると、この部屋全体に鏡の破片が撒き散らされていた。


「何じゃ…これは!?いつの間に!?」

「最初からだよ。最初、マーリンは鏡の破片をぶつけた。あの時からこの部屋には鏡の欠片が散らばってたんだよ。鏡は光の屈折によって透過していた。だから目視出来なかったんだよ」

「くっ!?」

「【鏡の迷宮(メルア・マタハ)】!」


 マーリンと舞の周りに無数の鏡が出現した。

 そして、鏡の欠片が全て鏡に吸い寄せられていった。


「マーリンの【鏡の欠片(メルア・キマーマ)】をこの鏡に吸い寄せた…そして…君に放つ!」


 鏡の欠片が舞に襲い掛かる。

 舞は攻撃を回避する。しかしー


「無駄だよ…」


 鏡の破片は鏡から鏡へと写り込み、そして、加速しながら舞に襲い掛かる。

 舞の脇腹に鏡の破片が貫通した。


「ぐふっ!?」


 舞は吐血した。

 しかし、鏡の破片は舞に攻撃を続けていた。


「マーリンの【鏡の迷宮(メルア・マタハ)】は物質を反射させて反射を繰り返す事で攻撃力と破壊力を上げていく…つまり、回避すれば回避する程、威力は跳ね上がっていく」

「【戦神(クー)】!」


 舞は爆発能力のあるクーの銃弾でマーリンの鏡の欠片を砕いた。

 しかし、あまりに数が多すぎた。

 欠片はまだまだ残っており、舞の身体をズタズタに切り裂く。


「【豊神(ロノ)】!」


 舞は地面に銃弾を当て、巨大な樹木で攻撃を防いだ。


「はぁ…はぁ…」

「よく防げたねー?」

「【冥海神(カナロア)】!」


 舞はカナロアの銃弾を放った。

 この銃弾はマーリンでも防げない。


「甘いね」

「!?」


 いつの間にかマーリンの姿が消えていた。


「こっちだよ」


 舞は後ろを見た。しかし、マーリンはいなかった。


「いやこっち」

「こっちだよ☆」

「こっちこっち!」

「どこ見てるの?こっちだよ~」

「いや、こっちかな?」

「どっちかな?」

「はははは!」

「はははははははは!」

「ケタケタ…」

「こっちだってwww」


 舞はキョロキョロ見回していた。

 それも無理もない事だ。何故ならー


「さて、問題。本物のマーリンはどこでしょう?」


 鏡の全てにマーリンが写し出されていたのだから。

 そう、マーリンは鏡に自由自在に入り込む事が出来るのだ。

 鏡の破片でそれが出来るならマーリン本体でそれが出来ない道理などない。

 鏡はそれぞれ別々の動きをしており、どれが本物か検討もつかない。

 非常に不気味であり、まるで大量のドッペルゲンガーを見ている気分だった。


「くっ!」


 舞は鏡に銃弾を当てた。

 しかし、鏡は砕ける事も無く、マーリンに命中する事も無かった。


「残念、ハズレ~」

「くっ!?」

「じゃあ、今度はこっちから行こうかな?」


 そう言ってマーリンは手から鏡の破片を出現させ、鏡の中から無数に放った。

 今までとは比べ物にならない位の数だった。


「【無限鏡欠片(メルア・インイカース)】!」


 全方向から鏡の欠片が飛んできた。

 鏡の欠片は鏡と鏡を通して、速度と破壊力を上げていた。


「【豊神(ロノ)】!」


 樹木を作り出し、舞は自身を守った。しかしー


「そんなんじゃ硬度が足りないよ?」

「!?」


 マーリンの造り出した鏡の欠片は樹木を貫通し、そのまま舞の身体全身を貫かれた。






ー妾は…死ぬのか?


 舞の身体は全身に鏡の欠片が突き刺さっていた。

 周囲に展開されていた鏡は解除され、倒れている舞の前にマーリンが立っていた。

 舞の今の状態はどう考えても重症であった。

 背中には巨大な鏡の欠片が突き刺さっており、急所を四ヶ所も風穴を空けられていた。


「少してこずっちゃったな~。流石、十二支連合帝国の中でも上位の力を持つだけの事はあるね~。まぁ、風前の灯火だけどね」


 マーリンは勝ち誇った様にそう言った。


ーこやつの能力…本部に伝えなくては…


 舞は連絡用の巻物に霊力を込めていた。

 これで、一通り、マーリンの能力を記す事が出来た。

 問題はこれをどう運ぶかだ。


「まぁ、流石に死んだとは思うけど念には念をだね。頭を砕くか…また、回復されても厄介だしだしね~」


 そう言って舞は巨大な鏡の欠片を出現させた。


ーくそ…身体が…動かぬ…


 舞は何としてもこの巻物を届けようとするが身体が思う様に動けない。


ー思えば…妾は過ちばかり犯していたのぉ…


 舞は自身の過去を走馬灯の様に思い出していた。

 最初は平凡に暮らしていた筈なのに…軍の戦いに巻き込まれ、それでも世のため人のためと思い、軍人として戦いに身を投じたが軍人になっても平和になる事は無かった。

 むしろ、憎しみの連鎖を産み出す結果となった。

 プロテアの両親を守れず殺してしまい、厳陣の計らいで教師となり、罪を償うつもりでいても結局自分に出来た事など知れていた。

 そう、過ちばかりだった。失敗ばかりだった。

 それでも、ここでプラネット・サーカスを倒せば少しは変われると思っていたがその選択も失敗してしまった。

 舞は奪ってばかりだった。

 そのツケが今になって回ったのだとしたら、舞の死は必然と言えるだろう。


ーふっ…ならば…妾が死ぬのも…必然…か…


 舞が今まさに、諦めようとしていた。しかしー


ー死なないで


「!?」


 舞はプロテアの言葉を思い出した。

 先程、プロテア達が逃げる時、プロテアは舞に何も言わなかった訳では無い。

 しかし、誰にも聞こえない様な小さな声で舞に言ったのだ、死ぬなと。

 プロテアはきっと、舞を赦した訳では無いのだろう。

 だが、彼女は己の力で憎しみを乗り越えようとしている。

 プロテアだけではない、蒼、慧留、屍、一夜、美浪、澪…大勢の舞の教え子達が…それぞれ、憎しみと戦い続けている。

 答えを…探し続けている。進もうとしているのだ。


ーふっ…皆…自分なりに諦めずに進もうとしている…なら…妾も諦める訳には行かんのぉ…


「ヴヴ…」

「………やっぱり生きてた…心臓は止まってた筈なのに…不思議だね~」


 気力だけで立ち上がった舞を見て、表情こそ変えていないがマーリンはかなり驚いていた。

 あれだけの攻撃を受けて、まだ生きている。


「これで…最後じゃ!!!」


 舞は四大神全ての霊力を銃に憑依させた。

 かつてない程の霊圧が迸っていた。

 マーリンはとうとう表情を変えた。

 その表情は戦いを愉しむ者のそれであった。


「正直、君の事を甘く見てたよ…君の力に全力で応えるのが礼儀だね…」


 舞は全ての霊力を弾に込め、マーリンに放った。


「【四神双破(しじんそうは)】!!!」


 舞は全力の一撃を放った。


「【鏡反射(インイカース)】!!!」


 マーリンは鏡で舞の渾身の攻撃を防いだ。

 地下牢獄が爆発し、天井から青空が見えた。


「………さようなら」


 マーリンがそう言って舞の額を鏡の欠片で貫いた。

 頭を貫通された舞はそのまま意識が消え始めていた。


ーふっ…結局…届かなかった…だが…後は…託せた…


 舞は蒼達の事を思い出した。

 舞には確信があった。彼らなら…


ー空が…綺麗だのぉ…


 舞は青空を見たまま、絶命した。





「クソ…クソ…クソ…!!」


 蒼は何度も何度も刀を振り回したが鏡に傷一つ負わせる事が出来なかった。


「カイザー・ブルメラスデーゲンでも駄目なのかよ!?」


 蒼は渾身の一撃を放つもそれでも鏡に傷を負わす事すら叶わない。

 蒼は鏡から映像が見えていた。

 マーリンにズタズタにされて倒れる舞。

 そう、マーリンは舞を倒してしまったのだ。

 蒼はその事実を知り、必死で抵抗するも抵抗虚しくマーリンに閉じ込められた鏡の世界から抜け出る事が出来ずにいた。


「俺が…俺が…」


 蒼は声を絞り出し、叫んだ。


「俺が守らなきゃならねぇんだよ!!!!!!!」


 この鏡の世界ではいるだけで霊力が奪われていく。

 それは蒼も感じていた。

 力が抜けていく感覚を感じている。

 このままでは蒼は全ての霊力を食い尽くされ、死んでしまう。

 一刻も速く、ここから出なければならなかった。

 それなのにこの鏡の世界はとてつもなく頑丈であり、蒼の全力を以てしても抜け出せない。


「クソ…クソがぁ!!!!」





「十二支連合帝国の舞姫…四宮舞、散る…か…」


 マーリンはそう呟いた。


「蒼君はマーリンの世界で随分と暴れてくれちゃってるみたいだけど…あの世界からは抜け出せないないよ?」


 マーリンの【無限迷宮(ラビリントス)】からは絶対に抜け出せない。

 一度閉じ込めたら二度と出れない闇の迷宮なのだ。


「さてと………!?」


 マーリンは舞から距離を取った。

 何故なら、舞の身体から霊力が迸っていたからだ。


「まさか…頭を潰してのにまだ…」


 舞の身体から小さい小人が四体現れ、巻物を持って何処かへと行った。


「……逃がさない!」


 舞はあの巻物が自分の事を書かれた情報だと分かった。

 逃がす訳には行かなかった。

 しかし、舞が鏡の欠片で攻撃するも四体の小人は姿が消えていた。


「逃げられたか…まぁ、いっか!」


 久し振りに楽しい戦いが出来たのだ。

 あれくらい見逃してもいいだろう。

 マーリンは舞の死体を見た。するとー


「身体が…」


 舞の身体が青い炎で燃えていた。

 魔女特有の青い炎だ。

 魔女は死んだ時、青い炎により燃やされ、粉々になって消滅する。

 舞の身体は灰となって消滅した。


「オーディンの生け贄にはならなかったみたいだね~。自身の身体に宿していた四大神に自分の魂を喰わせたのか…そもそも…最後の一撃を放ったのも、マーリンを倒す為じゃなかった…」


 そう、舞が最後に全力の一撃を放ったのはこの地下牢獄を壊す事だった。

 そして、舞は己の魂を四大神に喰わせ、四大神を召喚し、その四大神にマーリンの情報を記された巻物を持って逃亡させた。

 つまり、舞は後を皆に託したのだ。

 マーリンは傷こそ負ってはいなかったものの、服はボロボロになっていた。

 最後の一撃が相当な一撃だったのだ。


「はぁ~、服も汚れちゃったしそろそろここから消えようかな?」


 マーリンがそのままここから出ていこうとした。

 すると、マーリンの後ろから空間の裂け目が出現した。


「ロキか…」

「随分とてこずった様だね…(´д`|||)まぁ、相手はあの四宮舞だったからね~!Σ( ̄□ ̄;)けど、目的は全部果たしてくれたみたいだね☆お疲れ様!」

「うん…これでしばらくは自由に行動していいんだよね?」

「うん?まぁ、構わないけど?取り合えず君の役目は終わった。でもどうするんだい?他の所から奇襲をかけるつもりかい?o(^o^)o」

「しばらくは身体を休めるよ~。お風呂入りたいし」

「まぁ、これからどんどん働いて貰うよ~。フローフルを喰らい尽くしたら…今度は僕と一緒にルミナスを潰しに行くよ?(^○^)」


 ロキがそう言った。

 マーリンはロキから下された命令を忠実にこなした。

 マーリンとしてはしばらくは休憩したい所だった。


「それにしても…自身の魂を四大神に喰わせてオーディンの生け贄を回避するなんて…四宮舞…大した奴だね…(* ̄∇ ̄*)」


 ロキは舞に称賛の言葉を贈った。

 オーディン復活の為には多くの魔族や人の魂が必要である事は連合側も把握していた。

 だから舞は己の魂を四大神に喰わせたのだ。


「とは言っても、こんな芸当が出来るのは四宮舞くらいのモノ…一人くらいそこまで大した事は無いね」

「いいのかい?四大神を逃がしたみたいだけど?(´д`|||)」

「四大神と四宮舞はリンクしているんだよだよね~。四宮舞の魔力が尽きれば四大神も消える…それに…情報を手に入れられたくらいでマーリンは負けない負けないよ」

「大した自信だね(* ̄∇ ̄*)」


 マーリンはそれだけ自身の力に自信があった。


「でも、何でマーリンなの?一緒にルミナスを()りに行くならイワンやエスデスの方がいいんじゃないないかな?」

「イワンやエスデスが僕に素直に協力してくれると思うかい?(´д`|||)彼らは我が強すぎて僕に協力はしてくれないよ…(/_;)/~~」

「なんか…マーリンが君の便利屋みたいになってるんですけど…」

「君の事は信頼しているさ(* ̄∇ ̄*)」

「調子がいいね…ま、良いけどさ。戦いが楽しければ…」


 マーリンは退屈だった。

 その為に戦った。

 悠久の時を生きるマーリンだからこそ、戦いは最高の娯楽であり、退屈しのぎだった。

 退屈を嫌っている…という所がロキと共通するのでこの二人はある意味、同じ穴の狢とも言える。

 だが、マーリンはロキの様に他人を弄ぶ事には興味がない。

 戦うなら自分で戦いたいのだ。

 その為にプラネット・サーカスに入ったのだ。

 マーリンが犯した大罪…それは自身の出身であるUSWの街の一つ、トラゲイを壊滅させた事だ。

 USWと言えば悪魔が有名であるが当然、悪魔以外の魔族も存在している。

 トラゲイは悪魔以外の魔族が多くいた町であり、中でも精霊が多かった。

 マーリンはそのトラゲイ出身の一人の精霊であった。

 しかし、マーリンは精霊の中でも特別であり、とてつもない長寿であり、真祖と並ぶ程だと言われている。

 マーリンが大罪を犯したのは三百年前であり、USW…いや、まだアメリカと呼ばれていた時だ。

 マーリンはそれまでひっそりと過ごしていた。

 戦いこそがマーリンの退屈をまぎらわせてくれた。

 マーリンは何でもいいのだ。退屈さえ凌げれば。

 それがたまたま戦いであっただけの話だ。

 まぁ、だからこそ、プラネット・サーカスに勧誘された訳だが。


「君はそこら辺の戦闘狂と違うからね~」

「…大して変わらないよ。違うというのはロキの思い違いだよ」

「またまた~(*´∀`)」

「それにしても…ルミナスはそんなに強いの?」

「少なくとも、パルテミシア十二神に相当する力はあるよ」

「それはかなりだね…じゃあ、蒼君と同格って事?」

「いや、フローフルなんて相手にならないよ…別次元の強さだよ…あれはね…」

「ロキがそこまで言うんだから相当だねだね~。だったら尚更マーリン以外を連れてった方がいいでしょそれ?」

「一応、分かってると思うけど、あの数字は別に強さの序列がそのまま反映されている訳では無いんだよ?」


 ロキは悲観的な事を言うマーリンに対してそう言った。

 プラネット・サーカスの幹部達には1から10の数字が与えられている。

 基本的に、10から6までが下位数字者(アンダー・ナンバーズ)、5から1までが上位数字者(ハイ・ナンバーズ)と呼ばれ、無論、下位数字者(アンダー・ナンバーズ)より上位数字者(ハイ・ナンバーズ)の方が戦闘力が高い。

 だが、あくまでも基準であり、強さの序列が全て正確な訳では無いのだ。

 故に数字での格差はあまり生じていないのが現状だ。

 まぁ、中には数字で強さを判断する者もいるが少なくともロキは数字で強さを判断したりはしない。


「まぁ、協力はして上げるよ。君といると退屈しないしね」

「僕ら、同じ穴の狢だからね(* ̄∇ ̄*)」

「癪だけど、それは否定出来ないね。じゃ、マーリンはもう行くよ」


 マーリンはそう言ってここから去っていった。


「さてと…僕ももう行くか…」


 ロキは空間に穴を開け、消えていった。






「ふぅ~、何とかここには被害が出なかったみたいだね…」


 ウルオッサはそう言った。

 ウルオッサは第三部隊の隊長である。

 先程、アリアナが自爆した事により、第一、第二、第五部隊に被害が出たと言う。

 幸い、ここには被害が出なかった様だ。


「面倒臭い事はゴメンだからね」


 現在、第三部隊はお互いに戦力が拮抗していた。

 ウルオッサはサポートに徹しており、自身の能力で敵達を弱体化していた。

 ウルオッサは既に【悪魔解放(ディアブル・アーテル)】を発動していた。

 ウルオッサの身体が全身に包帯が巻かれており、頭には二本の角が生えていた。

 更に髪の色も水色に変色しており、背中には所々穴が空いている巨大な黒い翼が生えていた。


「さてと…ここからどうするかな?」


 ウルオッサがそう言っていると突然巨大な霊圧を感知した。


「!?…これは…」


 すると、上空から一つの人影が落ちてきた。


「随分と…楽しそうだな…」


 薄柿色のトゲトゲした頭に瞳、黒い濃い髭を生やした黒髪の男がそう言った。


「あの男は…嘘…でしょ?マジで…冗談キツいよ…」


 ウルオッサはあの男を知っていた。

 いや、手配書(アオス・テーター)を見ていれば彼の名はおのずと分かる。

 プラネット・サーカスの幹部クラスは全て、手配書(アオス・テーター)Sランクの重犯罪者達で構成されているのだから。

 彼の名は…


「イワン・ライグル…これより貴様らを皆殺しにする」


 イワンがそう宣言した。


「やっぱりか…全く…勘弁して欲しいな…自爆の被害が出なくてラッキーとか思ってたのに…」


 運が良かったとさっきまで思っていたウルオッサだが、今の状況ではむしろ逆だ。

 最悪である。イワンはかつて、一国を一人で潰した事がある。

 能力もハッキリ分かっておらず未知数の部分が多いのだ。


「ふん…他の奴等がモタモタしてるから…待つのは飽きた…こんな事なら…余が全て潰した方がいい…」


 イワンがそう言いながら歩いていた。

 イワンの迫力はウルオッサでもビビる程だ。

 正直、ウルオッサではイワンを相手にするのは手に余る。

 一対一では確実に負ける。

 只でさえ、こちらの戦力とあちらの戦力は拮抗しているというのにイワンが来てしまってはこちらがかなり不利になる。

 ここから逃げる…というのが正しい判断だがイワンが相手ではそれも難しいだろう。

 イワンはシビアな勝利主義者としても知られており、戦いに勝つ為ならどんな手段も選ばないのだ。


「何て…霊圧だ…」

「これが…プラネット・サーカス…」


 他の者達も動揺していた。

 無理もない。これだけの霊圧を放たれたら恐怖せずにはいられないだろう。


「参ったね…どうも…ここをどう切り抜けるか…考えないといけないなんてさ…」





To be continued

 はい、蒼が閉じ込められてしまいました。どうするんですかねこれ…

 と言うわけでこの道化狂乱篇ですがまだまだ続きます。

 今回は舞が犠牲となりました。彼女に関しては生かすか殺すかでギリギリの所まで悩みました…しかし、結局殺す事に。遥以来の主要キャラの死亡です。やはり主要キャラの死は物語に緊迫感を与えるモノです。

 舞は理由がどうあれ多くの人々を殺めて来た訳ですからそのツケが回ったのかもしれません。けど、彼女には確かな信念と思いがあった訳で、その思いは蒼達に受け継がれて行く事でしょう。

 今回のお話はかなりシリアスに書かれておりイシュガルド篇並みに重い話になっています。まぁ、戦争の話なのでシリアスにならない方がおかしいのですが。

 それではまた次回お会いしましょう!

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