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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第十章】道化狂乱篇
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【第十章】道化狂乱篇Ⅷーfearー

 ここは『天使城(セラフィム・ヴァール)』。

 現在、この場所はアリアナ・サンタマザー率いるロシアスタンにより、侵攻されていた。

 現場での対処はルバートを中心とした少数精鋭で行っていた。

 ルバートはほぼ単独で敵を撃退していた。

 赤髪と瞳が特徴の赤を基調とした白の軍服を着た男と薄紫色の髪と瞳を持ち、薄紫を基調とした翼の意匠がある白い軍服を着ていた少女がいた。

 赤髪の方がインベル・ヴァレンテ、薄紫の髪の方がアポロ・ローマカイザーだ。

 二人ともセラフィム騎士団の一員であり、蒼の昔の友人達だ。

 二人も敵を倒していたがルバートの方が多くの敵を倒していた。


「流石はヘレトーアの総帥様だな。強さがデタラメだ」

「そんな事を言ってる場合じゃないわ。敵はかなりの数よ」

「そう…だな!」


 二人は次々と敵を倒していた。

 他の者達もロシアスタンの敵達を倒していっていた。

 今のところは互角と言った所だ。


「ふ~ん、案外皆やるもんだね~」


 ルバートはそう言いながらどんどん奥へと進んでいった。

 すると、修道服を着た女性がそこにいた。

 間違いない、アリアナだ。


「君が訳の分からない宗教の開祖かい?」

「訳の分からない宗教ではありませんわ。オーディン様を奉る宗教ですわ」


 ルバートとアリアナは向かい合った。


「へぇ?君、中々の霊圧の持ち主だね。強そうだ」

「それはどうもお褒めに預かり光栄ですわ。光栄ついでにあなたには死をプレゼントして差し上げますわ!【震えの神棒(ダグダ・フィアース)】!」


 アリアナは白い棒を出現させ、ルバートに飛ばした。


ーあれが恐怖心を増幅させるという棒。


 ルバートは攻撃を回避した。

 しかし、アリアナは無数の白い棒を飛ばしていた。


「これは避けられないね。【天雷(ラアド・ラエド)】!」


 ルバートの周囲に無数の雷が落下した。

 白い棒は全て消し炭になった。


「大した術ですわね」

「それはどうも!【風魔之一撃(パラム・パラム)】!」


 ルバートは巨大な突風を発生させた。

 アリアナはその突風を避けようとしたが範囲がでかすぎて避け切れ無かった。


「うっ!?」

「【火炎花火(フオ・シャオ)】」


 ルバートが発生させた花火がアリアナに襲い掛かる。

 アリアナは白い棒を再び飛ばした。

 しかし、ルバートには簡単に回避された。


「甘いわ」

「!?」


 ルバートが避けた先に既に白い棒が飛ばされていた。

 ルバートは回避が間に合わず、左腕に白い棒が命中した。

 すると、ルバートは恐怖のイメージが流し込まれた。


「!?」


 ルバートは白い棒を急いで引き抜いた。

 しかし、身体が震える。

 これは想像以上の力だった。


「まさか…僕が恐怖を感じるなんてね…」


 冷や汗をかきながらルバートはそう呟いた。

 しかし、ルバートの攻撃は確実に命中した。

 これではアリアナも生きてはいないだろう。


「なんて…思ってるのでは無いでしょうね?」

「!?」


 ルバートの術を直撃した筈なのにアリアナは立っていた。

 しかし、アリアナの身体はボロボロになっていた。

 とても戦える様な状態では無い。


「その様子だともう戦えそうにないね。降伏すれば命だけは助けてあげるよ」

「降伏??する分けないでしょううううう!!!降伏などしませんわ!あなたは理解してない様ですわね!?『童話人(グリム)』に選ばれるという事が…どういう事なのかを!!」


 そう言ってアリアナは白い棒で自身の心臓を貫いた。


「!?」


 ルバートは突然の彼女の行動に理解出来なかった。


「お…オウオウオウオウオウ……OHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!」


 ルバートの身体が変質し始めていた。

 白い怪物の姿へと変貌していった。


「何だ!?それは!?」


 流石のルバートも彼女のその異形の姿に驚きを隠せなかった。

 アリアナは十メートル級の怪物になっていた。

 全身が白くなっており、左目が上の方にあり、右目が下の方にあった。

 身体の作りは粘着質の様だがその癖、かなり堅そうであった。

 その姿は異形の怪物といった様子で最早、人間の姿では無かった。


「これは…オーディン様から授かった力ですわ!ワタクシは神の使徒…神の名の元にアナタヲ断罪イタシマスワ!」


 アリアナの言葉遣いも徐々に片言になっていた。

 アリアナはその巨大な手でルバートな襲い掛かった。

 ルバートはどうにか攻撃を回避したが物量がデカイ分、回避するのは容易では無かった。


「【震エノ神棒(ダグダ・フィアース)】!!!」


 アリアナのその巨体から無数の白い棒が吹き出してきた。


「【天雷(ラアド・ラエド)】!」


 無数の落雷が白い棒を打ち落とす。しかしー


ー駄目だ!数が多すぎる!!!


 無数の白い棒は周囲で戦っている敵味方関係なく命中した。


「うわあああああああああああああ!!!!」

「だすげ…あああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

「アリ…アナ…ざま…なじ…あああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


 白い棒に当たった者は敵味方関係なく発狂しながら死んでいっていた。


「味方ごと…」

「震エロ!震エロ!フルエロ!!!震えるノデス!!!神ノ名ノ元ニ震エルノデス!!!!アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」

「うっ!?」


 ルバートの両肩と左足に白い棒が命中した。


「あっ…う……くっ!?」


 ルバートは先程とは比べ物にならない恐怖のイメージに襲われた。


「【闇波動(やみはどう)】!」


 しかし、発狂せずにルバートは黒い波動を帯びた手で白い棒を全て引き抜いた。


「っ…身体が震えて…動かない!?」


 ルバートは恐怖が身体に刻み込まれたせいで身動きが取れなかった。


「終ワリデス!!!」


ー仕方無いね…


 ルバートの姿が徐々に変化していった。


「【光照大兎(グノウェー)】!」


 ルバートは巨大な兎の姿に変貌した。


「ホウ…ソレガ…太陽神グノウェー…」

「そう、僕の身体に封印されているヘレトーアの神だよ」


 ルバートの身体には太陽神グノウェーが封印されており、その力は天災級の強さがある。


「フフフ…神ヲ犠ニ出来ルトハ…嬉シイデスワネ…」

「君のその恐怖を増幅させる能力はどうやら、脳にある海馬を狂わせて起こすモノだね。特殊な信号を脳の海馬に送り込み、恐怖のイメージを捩じ込ませる…恐らく生物の身体に直接干渉する光属性の能力だね」


 ルバートはアリアナの能力を冷静に分析していた。

 そう、アリアナの能力は特殊な信号を対象の身体に注ぎ込む事で脳に恐怖のイメージを捩じ込ませる能力だ。

 そして、生物の身体に直接干渉する光属性の能力で間違い無いだろう。


「ヨク分析シテイマスワネ…」

「とは言え、君の恐怖の能力は相当なモノだ。一番の対策は君の攻撃に命中しないようにする事だ」

「ソウト分カッテイナガラ的ヲ大キクシタノハ馬鹿以外ノ何者デモアリマセンワネ!!」


 アリアナは白い棒を身体全身から飛ばした。


「【光輝大砲(ダウ・インスカース・カノン)】!」


 ルバートは口から光の砲撃を放った。

 アリアナの白い棒は全て消し炭になった。


「何トイウ…力…」

「一応、ヘレトーア最高神の力だよ?舐めて貰っちゃ困るよ」


 ルバートはそう言ってアリアナに突進し、光の牙を向けた。


「【光兎牙(ダウ・アルナブ・ナーブ)】!」


 ルバートはアリアナの身体を引きちぎった。


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


 アリアナは叫び声を上げ、白い棒をルバートに飛ばした。

 しかし、ルバートはその巨体の割りに素早く、軽々とアリアナの攻撃を回避した。


「ァッ…ウ…」


 アリアナの身体の三分の一程消し飛んでいた。


「結構ダメージを与えたよ?これで………!?」


 ルバートは途中で言葉を止めた。

 何故なら、アリアナの身体が恐ろしい程の速度で再生していたからだ。


「ワタクシニハ超速再生ガアリマスワ…ソウ簡単ニハヤラレマセンワ」

「くっ…それは厄介だな…」


 アリアナには超速再生能力があった。

 超速再生は相手を殺さない限り延々と繰り返される。

 急所があればその急所を狙って短期決戦するのが一番効率が良い。

 アリアナの再生能力がどれ程のモノかは分からないが消し飛ばした部分が完全に再生している事からかなりの再生力である事が分かる。


「ワタクシハ…負ケマセンワ…全テ…オーディン様ノ…」

「君、何でそこまでオーディンに拘るのさ?君のその信仰心を否定するつもりも無いけど、ちょっと度が過ぎてるんじゃない?」

「黙レ…!ワタクシハ…オーディン様ニ恐怖カラ救ッテクダサッタノダ!!」

「恐怖?」






 アリアナは常に怯えて生きてきた。

 アリアナは非常に臆病な性格であった。

 彼女はごくごく普通の少女であった、非常に臆病な性格である事以外は。

 周囲の視線が怖い、自分に向けて何か悪口を言われている様で怖い、人々の声が怖い、毎日が怖い、生きるのが怖い、他人と関わるのが怖い、誰かに何かを言われるのが怖い、明日が怖い、過去を振り替えるのが怖い、とにかく怖かった。

 アリアナはその性格のせいで外に出る事すらままならなかった。

 だが、時は経ち、アリアナは外に出る様になった。

 それでも、周囲の視線は怖く、アリアナにとっては恐怖でしか無かった。

 そんな時、アリアナはオーディンと出会ったのだ。


「やぁ(*´∀`)ノ。君、随分ションボリした顔をしているね(*^^*)」

「あなたは?」

「僕はロキ、旅人さ。君の名前は?」

「アリアナ…」

「アリアナか!君、随分とションボリとしているがどうしたのかな?(;´д`)」


 アリアナはロキの事をふざけた男だと感じた。

 こんなふざけた喋り方をした者は見た事が無かった。

 さっさと逃げる事にしようとアリアナは思った。

 こんな胡散臭い男と一緒にいるのはロクな事が無い。


「すみません、急いでるんです」

「おやや、まぁまぁ、そう言わずに(* ̄∇ ̄*)」

「………」


 ロキは逃げようとするアリアナを力尽くで引き留めようとはせず、あくまでも声だけで引き留めようとした。

 アリアナはそんなロキを不思議に思った。

 普通、誰かを引き留めようとすると口だけでなく身体も動くモノだ。

 アリアナは特に何もする事が無かったので一応、ロキと話して見る事にした。

 いつまでも怯えている訳にはいかないし。


「少しだけなら」

「そうこなくっちゃ!」


 ロキはそう言ってアリアナと一緒に歩き出した。

 しばらくするとベンチに着き、二人はそこで腰掛けた。

 そして、二人は話をした。

 ロキはアリアナの話を聞き、そして笑いだした。


「ふはははははは!」

「何笑ってますの…こっちは真剣に悩んでるのに…」

「確かに…それは生きる上ではしんどいだろうね…(^_^)。君は相当神経質な様だ!Σ( ̄□ ̄;)」

「分かっていますわよ…」

「そうか…ふふふ…君のその恐怖心が消えればいいね(*^^*)。ああ、そうだ。君に(まじな)いをしておいたから」

「そう簡単には消えませんわ」


 ロキはそう言って去っていった。


「何なんですの?」


 アリアナはそう呟いた。

 だが、少し安心した。

 アリアナはそのまま家に帰ろうとした。

 しかし、返る途中でアリアナは見てはいけないモノを見てしまった。

 それは人間を補食している魔族であった。


「グール!?」


 アリアナはそう呟いた。

 グールとは人間を補食する魔族であり、希少な魔族である。

 グールの姿は人間と大差ない為、魔力の質の違いで見分けるしか方法がなく、他人に怯えて暮らしていたアリアナがそんな術を体得している筈も無かった。


「お前も人間か…貴様は…ここで俺に喰われるのさ」

「ひっ!?」


 アリアナは逃げようとするが足がすくんで動けなかった。

 グールの男はアリアナを喰らおうとする。


「あっ!?」


 しかし、グールがアリアナに手を出す事は無かった。

 グールの肩に白い棒の様なものが刺さっていた。


「え?」

「あっ…あっ…あああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


 グールが突然発狂しだし、そのまま倒れた。


「??」


 アリアナはグールの首の部分に触れた。

 脈が無かった。これはー


「死ん…でる…?これは?」


【我の加護を使いこなすとは見事なモノだ】


「!? 誰?」


【我が名はオーディン、神だ】

「神?」

【我の力の一部を貴様に与えられた事で貴様は力に目覚めたのだ】


 声だけがアリアナの頭に響いてくる。

 オーディン、噂には聞いた事がある。

 オーディンとは人間が創り出した人工神であり、古の時代に封印された神だと。


「一体…なんで…………!?」


『君に(まじな)いをしておいたから』


「まさか…」

「そのまさかさ!いや~、オーディンが君に眼を付けていたから試しに力を与えたら…本当に力を使いこなすなんてねo(^o^)o」


 ロキがやって来た。


「君のその力はオーディンの力だよ。オーディンは自分の魂の欠片を他人に移す事でその者の潜在能力を引き出す力があるんだよ」

「だから…ワタクシは…」

「そゆこと~(^_^)」


【我の力があれば貴様の恐怖は無くなる。力さえあれば…恐怖は無くなる…】

「力さえ…あれば…」

「どうする?僕の元へ来るかい?」


 ロキはアリアナに手を差し出した。

 アリアナはロキの手を取った。




 アリアナはプラネット・サーカスに入った。

 それからのアリアナはそれから自身の力を使い、猟奇的殺人を繰り返した。


ー怖くない!怖くない!怖くない!怖くない!怖くない!怖くない!怖くない!怖くない!


 アリアナは人や魔族を殺す事で自身の恐怖を消し去っていった。


ー楽しい!楽しい!楽しい!楽しい!楽しい!楽しい!楽しい!楽しい!楽しい!楽しい!


 アリアナはやがて人や魔族を殺す事が快楽となっていった。

 アリアナはたった数年で殺した人や魔族の数は数千を越えていた。


「これも…オーディン様の力のおかげ…ワタクシは…恐怖を克服出来たのですわ!」


 アリアナは嬉しそうにそう言った。

 そして、いつしか、アリアナはオーディンを狂信する様になった。

 自分に力を与えてくれたオーディンを。

 それからアリアナはオーディンの布教活動を始めた。

 そして、ロシアスタンを完全に征服する事に成功した。

 オーディンの布教活動はかなりの範囲で行われており、オーディン復活の生け贄という名目でアリアナは魔族や人を殺し続けていた。





「ワタクシハ恐怖ヲ克服シタ。オーディン様ノオカゲデ!」


 アリアナはそう言った。

 ルバートはアリアナに対して覚めた視線を向けた。


「何それ?」

「?」

「君のそれはただの弱い者いじめと変わらないよ。君は誰かを殺す事で恐怖から逃げてるだけだよ。君、小心者だね。オーディンに踊らされてるだけだね」


 ルバートはアリアナに吐き捨てる様にそう言った。


「貴様ゴトキニ何ガワカル!貴様貴様貴様貴様!!!!」


 ルバートの言葉がアリアナの逆鱗に触れたのかアリアナは更に巨大化した。

 更に、アリアナのさっきまで身体が巨体の中心部に出現した。

 眼はくり貫かれた様に空っぽになっており、口と眼の部分には血が出ていた。

 更に、身体もバラバラに出てきており、グロテスクな見た目であった。


「………醜いね」


 ルバートはアリアナをどこか哀れむ様にそう言った。

 恐怖…それは人間が魔族が…生物なら誰もが持つ原始的感情だ。

 強い敵から身を隠すため、恐怖は必要な感情だ。

 しかし、その恐怖に負け、溺れた姿が今のアリアナであった。

 恐怖を感じない者などいない。

 生きていれば誰でも恐怖は感じる。感じて当然だ。

 だが、それに負けてしまえばそれは死人と変わらない。


「美シイ姿ヲ醜イ者ガミレバ醜ク見エル者デスワ」


 アリアナがそう言うとアリアナの巨体から無数の眼が出現した。


「何だ!?」

「【恐怖邪眼(ストラーフ・ホルス)】!!!」


 眼が見開いた。

 ルバートは恐怖のイメージに襲われた。


「な!?これは…」

「ワタクシノ【恐怖邪眼(ストラーフ・ホルス)】ハソノ眼デ見タ者ノ神経ニ浸入シ、恐怖ノイメージヲ叩キ込ム!!」


 ルバートは恐怖のイメージに襲われた。

 魔術が使えなくなり、為す術無く殺されるイメージ、全てが消えて無くなるイメージ、自分の身体が溶けて無くなるイメージ。

 とにかくあらゆる恐怖のイメージに襲われた。


「うっ…!?」

「コレダケノ恐怖ノイメージヲ叩キ込ンデイルノニ発狂シナイノハ大シタモノデスワ!デスガ!」


 アリアナは更に全身から白い棒を放った。

 【震えの神棒(ダグダ・フィアース)】だ。

 今のルバートに攻撃が回避出来る筈もなく、白い棒を全身で受けてしまった。


「うっ…あ…あ…」


 アリアナはひたすらルバートに恐怖のイメージを見せ続けていた。

 ルバートは発狂するのを堪えていたがもう…これ以上は限界である。


「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


 ルバートは発狂し、光属性のブレスをアリアナに向けて放った。

 しかし、照準が定まっていなかった為、回避するのは容易であった。


「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!オワリデスワ!!!」


 アリアナはルバートに接近し、再び、邪眼を開き、ルバートに恐怖のイメージを見せ続ける。


「【光輝大砲(ダウ・インスカース・カノン)】!!!!」


 ルバートはどうにか正気を取り戻し、アリアナの一瞬の隙を突いて、光のブレスを放った。


「!?」


 もうルバートは動けないモノだと完全に油断していたアリアナはルバートの攻撃を回避する事は出来なかった。

 ルバートの攻撃でアリアナの身体は大きな大穴が空き、殆どの身体が消し飛んでいた。


「うっ…あ…」


 ルバートの身体が徐々に縮んでいた。

 ルバートは精神攻撃により、大きく体力と精神を磨耗し、グノウェーを維持出来なくなっていた。

 ルバートは地面に落下し、そのまま倒れた。


「ハ…ハハハ…ようヤク…クタバリマシタわね…」


 アリアナも同様に身体が縮み、人の形に戻っていた。

 しかし、左半分が最早、原型を留めていなかった。


「これだけ…の…ダメージを受けては…修フクには…ジカンが掛かりますわね…ぐっ!?」


 アリアナはそう言いながらルバートに近付いた。

 ルバートは完全に気を失っていた。


「あれだけの恐怖ノイメージヲ与えながらも…生きているとは…全く…トンでもない精神力ですわね…」


 アリアナはルバートの精神力の高さに驚いていた。

 アリアナの恐怖の力をここまで耐え抜いた者は今までいなかったからだ。

 ただ単に精神力が強いというだけでは片付かない程だった。


「これで……うっ!?」


 アリアナは勝利を確信した瞬間、左胸に激痛が襲われた。

 アリアナは左胸を見ると誰かの手があった。


「なっ!?」


 アリアナは後ろを見た。

 すると、そこにいたのはルバートであった。

 ルバートの右手がアリアナを貫いていたのだ。

 ルバートの右手には黒い雷を帯びていた。


「【黒御雷(クロミカヅチ)】」


 ルバートの全身に電流が走った。


「あああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


 ルバートなアリアナを貫いた右手を引き抜いた。


「がっ…なん…で…」


 アリアナはルバートがいた場所を見た。

 それは分身であった。


「な!?」


 アリアナはもう一度、ルバートの方を見た。

 ルバートの身体はボロボロになっていた。

 アリアナの攻撃ではああはならない。

 よく見るとルバートの身体は所々に黒いオーラが出ていた。


「まさか…気付いていましたの!?」

「うん…とっくにね…君のその術の対処法…それは闇属性を使えばいい」

「!?」

「君のその恐怖の力は光属性によるもの…光属性は闇属性に弱い。君の恐怖の力は闇属性の攻撃を受けると無効化さるる…それが弱点だったんでしょ?」


 そう、アリアナの攻撃は全て光属性攻撃。

 光属性の弱点は闇属性である。

 この二つの属性は二極属性と呼ばれており、お互いに対となる属性であり、逆にお互いに弱点でもある属性だ。

 光属性と闇属性は能力も対になっており、闇属性は単純な闇系統の能力以外に物質や生物以外に直接干渉する能力が多い。

 時属性や影属性も闇属性の派生属性に属する。

 一方で光属性は光の能力以外にも生物の身体に直接干渉する能力が多い。

 幻術や医療術、身体強化などはこの光属性に属している。

 アリアナもその例に漏れず、相手の精神に直接干渉する光属性に類する能力だったのだ。


「いつから…気が付いていましたの?」

「僕がグノウェーの力を使う直前だよ」

「!? あの時、あなたは恐怖の力で動けなかった筈!」

「うん、迂闊に引き抜く事も出来なかった。だけど、君の恐怖の力の話を聞いた時から君の攻撃が精神干渉系の能力だと分かっていた。君と戦う前から君の使う属性が光属性である可能性は高いと見てた。だから試しに闇属性を使いながら君の棒を引き抜いたら…棒は消滅した」

「なら…何故闇属性を使って戦わなかったのです!?」

「生憎、僕は闇属性を扱うのが不得意でね。他の属性はそれなりに扱えるんだけど闇属性だけは苦手なんだよ。グノウェー化してる時は特に闇属性は使えない。だから君が油断した時まで取っとこうと思ってね。こうして…上手くいった」


 そう、ルバートは戦いが始まる前からアリアナの能力に気が付いていた。

 それを試す為にあえて最初に攻撃を受け、闇属性で恐怖の力を無効化出来るか試したのだ。


「何故グノウェーの力を使い続けたのかしら?」

「君のさっきの異形の姿…あの姿は相当頑丈だった…グノウェーの力を使わないと火力不足だったんだよ」


 アリアナのあの怪物の様な姿は見た目によらずかなり堅牢であった。

 ルバートの術では倒しきれなかっただろう。


「とは言え…まさか眼だけで相手を恐怖の力に嵌める事が出来るのは予想外だったよ…お陰で対処は遅れて精神にかなりのダメージを受けたよ…」


 ルバートにとっての唯一の誤算、それはアリアナが棒を使わずとも相手をその眼で見つめただけで恐怖の力が発動してしまう事だ。

 それにより、ルバートは甚大なダメージを負う羽目になった。

 そもそもアリアナの攻撃は強力で大概の相手ならアリアナの攻撃を受けたらすぐに発狂するか身動きが取れなくなる。

 ルバートは単純に精神力も図抜けていたのだ。


「それでも、グノウェーを解除した瞬間に僕の身体に闇属性を流し込んで恐怖の力を軽減したけどね…けど、闇属性の力を自分にぶつける…という事だからね…身体がボロボロだよ…」

「…もし…もし…闇属性の力を使ってもワタクシの力が無効化出来なかった場合は…どうしましたの?」

「その時は…また別の手があったよ。披露する機会は無かったけどね」


ーこいつ…他にまだ能力が…


「うっ…」


 アリアナは距離をとって、ルバートに白い棒を飛ばした。


「【震えの神棒(ダグダ・フィアース)】!」

「【闇波動(やみはどう)】」


 ルバートは全身に闇属性エネルギーを纏った。

 すると、アリアナの白い棒が粉々に消え去った。


「うっ!?まだ…まだですわ!」

「どうやら、再生する力は殆ど残ってないみたいだね…降伏すれば…命だけは助けるよ?」


 ルバートはアリアナに降伏勧告をした。


「ふふふ…ふふふふ…はははははははははははははははははははははははははははは…」


 アリアナはあまりにおかしく、笑い転げた。


「ふざけるな!降参などしませんわ!ワタクシは…ワタクシの役目は…オーディン様復活の為に多くの者を殺すこと!」


 アリアナはそう言って、身体中から眼が出現した。


「!?」

「ワタクシは…まだ…」


 アリアナの周囲にとてつもない霊力が放出されていた。


「一体…何を…」

「ワタクシの命と引き換えにここから半径百キロに恐怖の針をばら蒔きますわ!」

「!?」

「ワタクシはこれから…オーディン様の生け贄となりますわ!これで…ワタクシは…」

「止めろ!速まるな!」


 ルバートはアリアナを止めようとする。

 しかし、ルバートはアリアナによる精神攻撃と自身に闇属性攻撃を加えた事で心身ともにボロボロであり、身体が思う様に動かなかった。


「ワタクシを即座に殺さなかった事…後悔させて差し上げますわ!」




To be continued

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