表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第十章】道化狂乱篇
131/196

【第十章】道化狂乱篇Ⅴー円卓の会議ー

「やれやれ、こうして集まるのも久し振り…でもないか…」


 金髪の長い三編みに白い瞳が特徴の白金の宗教服を着ている男がそう呟いた。

 彼の名はアスディア・ゼウス・パルテミシア。パルテミシア十二神の長にしてここ、『世界宮殿(パルテノス)』の管理者である。


「ああ、そうだな。貴様の見たくも無い顔をこう何度も見せられると気分が悪くなる」


 黒色の背中まで掛かる程の長い髪に黒い三白眼が特徴の宗教服を着た男がそう言った。

 彼の名はガルディア・ハーデス・パルテミシア。

 パルテミシア十二神の第三権力者であり、アスディアの兄である。


「相変わらずだな、お前達は」


 茶髪に青白い瞳と航海士を思わせる白い服を着た男がそう言った。

 彼の名はイシュガル・ポセイドン・パルテミシア。

 パルテミシア十二神の第二権力者にしてアスディアの兄であり、ガルディアの弟でもある男だ。


「ははは!相変わらず愉快な奴等だ!」


 銀色の短髪に瞳、右耳に複数のピアスを着けている男だった。

 彼の名はアウス・ヘルメス・パルテミシア。

 パルテミシア十二神の一人にして錬金術を操る神だ。


「協調性をもっと着けて欲しいモノだな」


 銅色の髪に瞳を持ち、中性的な容姿をしていた。

 彼女の名はジェネミ・アポロン・パルテミシア。

 パルテミシア十二神の一人で予言を司る神だ。


「もう~、いい加減この雰囲気が嫌になってきたよ~」


 現れたのは瑠璃色のセミロングの髪と瞳を持った中肉中背の少女であった。

 彼女の名はランクル・デメテル・パルテミシア。

 パルテミシア十二神の一人で豊穣を司る神である。


「ふふふ…僕はこうして皆で集まれるのは嬉しいけどね☆」

「死ね」

「な!?」

「二人とも止めろ。話が進まん。アスディア、さっさと話をしてくれ」


 アスディアとガルディアが言い合いになりそうになるとイシュガルが止めに入った。

 とは言え、この風景は日常茶飯事だ。


「ん、そうだね。とうとう、プラネット・サーカスが動き出した」

「プラネット・サーカス…ロキが率いてる組織か」

「目的は…恐らくオーディン復活だろうね」

「あれが復活したら私達もここで悠長に構えてる場合では無くなるわ」

「そ…そうだよね…」


 パルテミシア十二神ですらオーディンの存在は驚異なのだ。

 プラネット・サーカスのやろうとしているのはそれだけ大きな事である事を意味している。


「とは言え、まだ手は出せない。プラネット・サーカスがここに攻め込まない限りね」

「まぁ、地上の奴等に任せるしかねぇわな、今は」

「俺達が出張れば全て丸く収まるのかと言えばそうでも無いしな」


 パルテミシア十二神はその強力な力故に戦闘を制限されている。

 ここ、『世界宮殿(パルテノス)』が攻め込まれる様な事態にならなければ直接戦闘は出来ない。

 例外的にパルテミシア十二神からの決闘を申し込み、相手がそれを了承した時のみ、彼等も戦闘可能になるがまぁ、向こうがそうホイホイと決闘を承諾する筈もない。


「仕方無いさ…それがこの、『世界宮殿(パルテノス)』の意思なんだから」

「概念に意思を持つ事がここまで厄介とはな」

「ガルディアの言いたい事は分かるけど僕らではどうしようも無い…それがこの世界の掟さ」


 パルテミシア十二神とは言えど、『世界宮殿(パルテノス)』の決定には逆らえない。

 『世界宮殿(パルテノス)』とは言ってしまえばこの世界そのものだ。

 それを覆す事など例え神であっても出来はしないのだ。

 所詮、神とは言え、この世界によって造られたモノに過ぎないのだ。


「だけど、プラネット・サーカスは全員四大帝国の総帥に匹敵するだけの力があるんだよ?地上の人達だけで何とかなるかな?」

「何とかならなければその時はこちらが動くしか無いだろうな。奴等は地上を制圧した後、間違いなく此方にも攻めてくる」

「そうだね」


 プラネット・サーカスは世界を混沌へと誘う事が目的だ。

 だが、『世界宮殿(パルテノス)』の意思がそれを良しとはしない。

 地上を制圧した所で『世界宮殿(パルテノス)』の意思によりプラネット・サーカスを潰しに掛かるだろう。


「それをさせないためにこの『世界宮殿(パルテノス)』を落とすのが一番てっとり速い」


 『世界宮殿(パルテノス)』には意思がある。

 『世界宮殿(パルテノス)』の意志は一つ、世界の安定である。

 『世界宮殿(パルテノス)』が現世、冥界、そしてここ、天界の魂を調節しているのだ。

 つまり、魂の運命を操作しているのだ。

 『世界宮殿(パルテノス)』を潰さなければ世界が勝手に操作されてしまう。

 それを防ぐ為にプラネット・サーカスは現世を制圧すれば必ずここに攻めてくる。


「出来れば…僕らの出番は来ないで欲しいな…」

「てめぇがそういう事を言うのはフラグにしか聞こえねぇから止めて欲しいんだが?」

「アウス?人をフラグ建築士みたいに言わないでくれるかい?」

「てめぇがそういう事を言ったら決まってロクな事が起きねぇんだ」

「確かに、アウスの言う通りね」

「ジェネミまで…」


 そう、アスディアがこういう事を言うと決まって悪い方向へと傾いてしまう。

 アスディア本人は悪気は一切無いのだが…全く、勘弁して欲しいモノだとアスディアは思った。


「アスディアの事はさておき、確かにプラネット・サーカスの戦闘力は未知数だ。特に…『上位数字者(ハイ・ナンバーズ)』とやらはな…」

「確かに…彼等の戦闘能力は未知数だ…何せあのロキが率いている組織だからね」

「オーディンは人類が造り出した禁忌だ。あれが解放されたら…」

「分かってるよ…まぁ、今の僕らに出来る事はこの戦いを見守るだけだよ」

「結局そこに行く着くんだよね~」

「本来なら…ロキとの決着は貴様が着けるべきなんだがな、アスディア?」


 ガルディアが意味深な事をアスディアに言った。


「あまりそう言う事は言わないでくれよ…まぁ確かにそうなんだが」

「確かにあの時、アスディアがロキを殺しきっていればこの様な事態にはならなかったかもしれないな」

「イシュガルまでそう言う事言わないでよ~(´д`|||)」


 アスディアは凹む様にそう言った。

 アスディアは結構凹みやすい性格をしている為、こういう事を言われるとすぐに凹む。まぁ、すぐに立ち直ってしまうのもアスディアなのだが。


「今は…見守るしかない…」






 四大帝国会議が終わり、蒼達はカンボジアにいた。

 蒼達に与えられた役目は敵の本拠地と思われる大韓連邦の制圧だ。

 しかし、その前にやる事があった。

 それはー


「美浪君、四宮さんを…絶対に助け出す」


 一夜がそう呟いた。

 そう、蒼達がやらなければならない事のもう一つが美浪と舞の救出だ。

 今回、蒼、慧留、一夜、屍、澪、プロテアの六人編成で行動する事になった。

 本来なら部隊を率いた方がいいと思う所だが彼等は部隊を率いた事が無く、反って効率が悪くなる。

 更に美浪と舞を連れ去ったクメールは相手を洗脳する能力がある為、あまり大勢で行くのは得策では無かった。


「大韓連邦に攻め込むのはここを何とかした後だな」


 ここにクメールが潜んでいる可能性が高かったからだ。大韓連邦に攻め込むのはここを片付けた後だ。

 ここ、カンボジアは現在大人がいない。

 蒼達が見渡す限りでは本当に子供しかいなかった。


「まぁ、説得するのは大変だったがな」


 屍の言う通り、彼等を納得させるのは大変であった。

 美浪と舞の救出に行くのは本来ならクメールの能力に詳しい神聖ローマが動く筈だった。

 しかし、蒼達がどうにか嘆願して今に至る。


「まぁ、今回の四大帝国連合の総大将はルミナス陛下だからね、ローマからしたらルミナスを守る方を優先したいでしょうしね」


 プロテアは至極真っ当な事を言っていた。

 因みに、蒼達は青色の軍服を着ていた。

 今回、蒼達は十二支連合帝国の者として戦争へと参戦している。

 故に十二支連合帝国の軍服を着ているのである。


「それにしても…嫌な雰囲気だな…子供達も死んだような眼をしてやがる…」

「この国はクメールに完全に乗っ取られてるみたいだからね~。子供しかいないなんて…異常だよ」

「そうだね…プラネット・サーカスのヤバさを感じるよ」

「で?まずはどうする?プラネット・サーカスはまだ動いて無いみたいだけど…」


 そう、プラネット・サーカスはまだ動いていない。

 戦争は既に開始されているが彼等はまだ動きを見せていないのだ。

 出来れば今の内に相手に打撃を与えるのがベストなのだが。


「取り合えず、クメールのいる場所を探すのが先だね」

「どうやって探すんだ?」

「このカンボジアの情報は収集済みだ。この中でクメールがいる可能性が最も高いのはこの場所だ」


 一夜がパソコンを立ち上げ、蒼達に見せた。

 一夜のパソコンに写っていたのは地下牢であった。


「地下牢?ここはカンボジアの一番デカイ城のカンビリア城じゃねーのか?」

「どうやら、あそこには人が殆どいないらしい。しかし、この地下牢は最も子供が集中している場所でしかもクメールは聞いた話によると子供を調教するのが趣味なんだとか…ならばこの地下牢が最適だろうね」

「ならば、そこへ向かおうか。どれくらい掛かる?」

「ここから歩いて行ったら三日は掛かるよ」

「う~ん。そんなに時間は掛けてられないな~。あたしは一応、この戦いが終わったら前線から引かなきゃならないし」


 そう、澪は今回、前線に立つのはクメールとの戦いだけだ。

 クメールを倒した後、澪は前線から引き、サポートに回らなければならない。

 今回の澪も無理を言って前線へと出たのだ。


「じゃあどうする?」

「転送魔法を使うよ」

「そうだね、それが妥当だ」

「だけど、あたしはこの場所の事をあまり詳しくないからなえきんの霊力も借りるよ」

「ああ、分かってる」


 転送魔法は転送する場所をある程度把握しなければならない。

 それが出来ない場合は場所について理解がある者の霊力、あるいは魔力を借りて移動するしか無い。


「じゃあ、始めようか」

「あたしも他人の霊力を借りて転送魔法使うのは初めてだから少し時間が掛かるかもだけどそこは勘弁してね」

「問題ねぇ!丸々三日掛かるよりマシだ!」

「うん!」


 蒼がそう言うと慧留も頷いた。

 この戦いは恐らく、蒼より慧留の方が重要になって来るだろう。

 何故なら、クメールの洗脳を無効化出来る唯一の戦力だからだ。

 慧留の時間回帰と過去改変の能力でクメールの能力に対抗出来る。

 一応、蒼も対抗出来るのだが、洗脳された者達まで元に戻す事は出来ない。


「つまり…今回俺達のやる事は慧留のサポートだ」


 そう、慧留がクメールを倒す。それが最も最適な方法であった。

 そんな慧留達と上手く連携が取れる者は蒼達の他にいない。

 それが蒼達がクメールとの戦いで採用された理由でもある。


「じゃあ、準備も出来たし行くよ!【星移動(スター・トリップ)】!」


 蒼達はカンボジアにある地下牢へと転送されていった。








 ここは神聖ローマの『天使城(セラフィム・ヴァール)』。

 この場所は四大帝国連合本部があり、ルミナスもここにいた。

 ここでは主に戦場にいる者達に指示を出したり、転送魔法などで兵士達を移動させたりなどをする場所だ。

 つまり、ここは四大帝国連合の頭脳と呼べる場所だ。

 ここにはルミナスやその護衛役である『セラフィム騎士団』以外にも董河湊やラナエルなどがいた。

 鈍色の髪と瞳の青年が湊、水色の短い髪と瞳なのがラナエルだ。


「時神君達はカンボジアに到着した様です」

「そう、他は?」


 ルミナスが湊に他の状況の説明を求めた。


「今はまだ動いて無い様だぞ」

「そう。………妙ね」

「確かにここまで動きが無いと逆に不気味ですね」


 ルミナスの言葉に湊は同意した。

 現在、全てで四部隊と蒼達遊撃隊で戦場へと向かっていた。

 第一部隊隊長はドゥームプロモ・ドラコニキル…ではあるのだが、ドラコニキルは五部隊を率いる連隊長でもある為、事実上の隊長は黒宮大志だ。

 第二部隊隊長はフォルテ・セイントであり、第三部隊隊長はウルオッサ・テディベアだ。

 第四部隊の隊長はセラフィム騎士団親衛隊の一人、ミルフィーユ・ペテルギウス、そして、第五部隊を率いているのは十二支連合帝国総帥、常森厳陣だ。

 ミルフィーユ以外のセラフィム騎士団は全員、ここ、情報部隊に配属されていた。

 ルバート・セイントはここ、情報部隊に配属されていた。

 役割はセラフィム騎士団と同じで護衛だ。


「もしかして…これが敵の狙いなのかもしれませんね」

「どういう事?董河湊」

「宣戦布告したのは向こう側。ならば向こうから仕掛けて来るとこっちは思います。そうなるとこっちも攻めなきゃという気持ちになりますよね?浮き足立たせてる事が目的なんじゃないですかね?」

「成る程…そういう考えも出来るわね」

「そうなると…敵はまず頭を叩きたいと思うと思います。つまりー」

「真っ先にここを攻めてくると?」

「恐らくは」

「成る程…ならば…」

「ええ。仕掛けて来るとしたら」

「今ね」


 ルミナスがそう言うと地響きが響いた。


「早速…ここを攻めて来たわね」


 ルミナスが冷静にそう言った。

 相手はプラネット・サーカスだ。ここの事は既に知られているだろう。


「あっ!次々とプラネット・サーカスに襲撃されたとの情報が入ったぞ!」

「既に向こうは水面下で動いていたみたいですね」


 ラナエルの報告に湊は冷静に答えた。


「外はルバート達に任せるわ。ここは何としても死守しなさい!」


 ルミナスが無線越しでそう言った。






「全く…人使いの粗い皇帝陛下だね。まぁ、いいや」


 ルバートはそう言って敵を電気の魔法で凪ぎ払った。

 敵の数は相当の数がいた。

 身体が色白な者達が多く、かなり厚着をしていた。

 恐らく、ロシアスタンの者達だろう。

 ロシアスタンを支配しているのは…アリアナ・サンタマザー、恐らく彼女の仕業だろう。

 彼女の能力は確か、恐怖を司る術を使うと聞く。

 恐怖心を増幅させる力。

 実に興味深い。ルバートの興味の琴線に触れた。

 ルバートは是非ともアリアナを調べ尽くしたいと考えていた。

 ルバートは色々な魔術や術の研究をしていたが恐怖心を増幅させる能力など聞いた事が無かった。

 未知の魔術の遭遇…これ程ルバートの心を動かすモノは無い。

 恐怖心により相手を発狂死させる能力…幻術系統の能力とも考えられたがどうもそうではないらしい。

 ルバートはセイント教徒である前に魔術の研究者なのだ。

 やはり、魔術の探求心に勝るモノはルバートには考えられなかった。

 ルバートにとっての戦争の醍醐味は未知なる魔に遭遇する事なのだ。


「さぁて…本当の戦争の始まりだね」


 ルバートは心底楽しそうにそう言って単身で敵に殴り込んだ。






「奇襲をしたつもりだったけど…思ったより対応速いな~。向こうにも頭のいい奴がいたみたいだ」


 ロキがそう呟いた。

 本来なら『下位数字者(アンダー・ナンバーズ)』達を散開させて隙を見て襲撃する予定だったのだが思ったより向こうの焦りが少なかった。


「さてと…どうしたものか( *´艸`)。まぁ、今の所は支障はないかな?」

「呑気なものだネ」

「跡土か、君から半足かけてくるなんて珍しいね( ゜Д゜)」

「そんな事はいいネ。敵は思ったよりやるみたいだネ」


 ロキと跡土はアジトにいた。

 このアジトにいるのはロキと跡土の二人だけだ。


「それにしても…イワンもエスデスもここで待機すればいいのに…( 一一)」

「ミーと違って彼らは戦場に行く事になるネ」

「ま!そうなんだけどね~( 一一)」


 跡土は兵力の増強が主な役割である為、基本的には前戦にはでない。

 しかし、イワンとエスデスは頃合いになれば前戦に出る事になる。


「ミーもしばらくすればここを去るネ」

「その方がいいだろうね。ここは大韓連邦だ。すぐに嗅ぎ付かれるだろうからね」


 跡土は人形を造り出し、それをバラ撒いていた。

 跡土の造り出す人形はコピーした者の能力、霊力までそのまま真似る。

 跡土はそもそも『童話人(グリム)』の中でも戦闘に向いている方では無い。

 影で兵力を増強する方が性に合っている。


「所で、時神陣営とやらは全員、クメールの所へ行った様だがいいのかネ?」

「問題無いよ。あわよくばクメールが全員倒してくれた方がそれはそれで都合がいいし…というより予想の範囲だ(* ̄∇ ̄*)」

「どういう事かネ?」

「今、クメールの手元には霧宮美浪と四宮舞がいる。彼女等を助ける事を彼等は優先するでしょう。だからこれは予想の範囲(* ̄∇ ̄*)」

「そうかネ…ミーは時神蒼達に勝って貰いたいモノだネ」

「そんなに霧宮美浪をクメールに取られた事を気にしているよかい?(´д`|||)」

「人の作品に手を出すのは万死に値するネ」

「う~ん、ならば君が力尽くで彼女を奪えばいいのに…(´д`|||)」

「それでは意味が無いネ。ミーはあくまで本人の意思で行動をさせるネ」

「ふ~ん、やっぱり君の考えは分からんね(;´д`)」


 ロキはある意味、プラネット・サーカスで一番考えが読めないのは跡土だと感じた。

 他の者達は欲望に忠実に動いている。

 そうで無かったとしても考え方自体は分かる。

 だが、跡土の考えはよく分からなかった。

 自身の造り出した作品に拘りを強く持っているにも関わらず放逐するしだからといって放逐した作品が何者かに操られる事をよしとしない。


「ありのままの作品を表現する。それこそが芸術だネ」

「君の掲げる芸術はかなり特殊だと思うけどね!Σ( ̄□ ̄;)」

「そうかもしれないネ。だが関係ないネ。ミーはミーの掲げる芸術を貫く。それが芸術家だネ」


 跡土はそう言ってロキから去っていった。


「ヤレヤレ…やっぱり分からないな…じゃあ、僕も昔の事を思い出してみるかな?」







 千年前の混沌戦争。

 その戦争からロキは存在していた。

 悪戯好きの神、ロキ。

 混沌戦争は突然起こった。

 千年前に突如として『世界宮殿(パルテノス)』が生まれた。

 ロキはこの戦争でアスディアと戦った。

 しかし、アスディアとの戦いに敗れ、ロキは逃げた。

 それから五百年、力を付けた人間たちによる反逆が起こった。

 それが、ヒューマニックリベリオンだ。

 ヒューマニックリベリオン以降、人が魔族を支配し始めていた。

 ロキはずっと戦いを静観していた。

 そして、ロキはこの頃からプラネット・サーカスを作り始めていた。

 それから三百年、天使大戦が起こった。

 四大帝国が生まれたばかりの初めての戦争であった。

 これまでの戦争とは比べ物にならないくらい強大な戦争であり、あのパルテミシア十二神が最も多く死んだ戦争であった。

 ロキはこの戦争に少しばかり関与していた。

 というのも、この戦争を引き起こしたのは他でも無い、ロキだ。

 ロキは人間達や魔族達をたぶらかし、戦争を引き起こさせた。

 悪戯好きの神ならではの方法であった。

 天使大戦が起こったのは魔族と人の領土問題により発生した戦争だ。

 人はこの頃から既に魔族の力を手に入れており、それを軍事力として利用した。

 その力は強大であり、魔族達を葬り去っていった。

 この頃からだ、ロキが人間に興味を持ち始めたのは。

 人間には…誰かを殺す牙も爪も力も無い。なのに人は魔族を凌駕する程の力を手に入れている。

 人間は弱く、そして儚い生き物…それは事実だろう。だが、ロキはそんな人間を…美しく思ってしまったのだ。

 弱いが故に醜く足掻き、弱いが故に力を付け、知恵を付け、そして抗う。

 人間の強さとは恐らく、その抗う力なのだろう。

 人は魔族程長くは生きられない。だが、ロキはそんな人間を…眩しく感じたのだ。

 そう、ロキは人間に憧れていたのかもしれない。

 弱いのに強く、そうだと思えば実に脆い。

 予測不可能で、強く儚い生き物…人間に…ロキは憧れていたのかもしれない。


ーだからこそ…人間に絶望を与えたい。そうする事でどうなるか…僕は見てみたい…


 ロキの心は純粋でだけどどこか歪んでいた。

 ロキは人間の魂の輝きを見たい…そう考えている。

 ロキは絶望を与えてこそ人間は最高に輝くと…そう考えていた。

 だが、今となっては興味の幅は人間だけでは無い。

 魔族も人間と同じ、感情がある。この感情はあまりにも歪でしかも不完全だ。

 だが、不完全だからこそ予測が出来ない。

 故に美しく、素晴らしいとロキは考えていた。

 だが、今の世界は退屈だった。

 第三次世界大戦が終わってからというもの、実に退屈であった。

 魂の輝きを見れない…ロキにとってこれ程退屈な事は無い。

 プラネット・サーカスが存在したのは五百年以上前だが、 『童話人(グリム)』が今の形なったのは第三次世界大戦が終わってからだ。

 そして、それから五十三年後…第四次世界大戦が今、幕を開けた。

 この戦争は…ロキの期待に答えてくれるだろうか?

 ロキはこの戦争で多くの魂の輝きを見れる事を期待している。

 プラネット・サーカスとて一枚岩ではない。

 『童話人(グリム)』のメンバーもそれぞれ違う思惑で動いている。

 自分の価値観を貫き続ける者、自分の欲望の為に動く者、自分の信じるモノの為に動く者、自身の快楽の為に動く者、何かを奪う事を娯楽としている者、自身の探求心で動く者、世界の平和の為に動く者、特に意味は無いが何となく動く者、何かを知りたいと思い動く者と様々であり、バラバラである。

 しかし、彼等にはロキの望む魂の輝きを持っている。

 そして、ロキはこの戦争に勝利し、争い、闘争する世界を得る事を望んでいる。

 そうする事が人が魔族が最も輝ける事だと信じているからだ。

 その為にロキを復活させる。世界に絶望を与える為に。

 ロキは楽しみにしているのだ。四大帝国達がどの様に自分達を倒すのか、或いは倒されるのかを。

 ロキは昔を思い出しながら…記憶をなぞりながらそう考えていた。

 きっと…ロキの頭では予測出来ない様な事になるのだろう。

 希望と絶望は表裏一体。希望が生まれれば絶望の可能性があり、絶望は希望を生む可能性だってある。

 それが世界の理である。

 だがしかし、この世界とは実に不条理だとロキは思う。

 だって、この世界で生まれた瞬間、何かを奪い合わなければ生きてはいけないのだ。

 この世界に生きる者は全て、無意識に誰かを傷付けている。

 その傷の付け合いが憎しみとなり、戦争となる。

 この憎しみという名の化け物はいつになってもそれは変わらない。

 そう、お互いを理解した所で分かり合える訳でも無い。

 だからこそ、争うのだ。


ーこれから…どんな物語になるか…楽しみだね


 ロキは期待に満ち溢れた様にそう思った。






 ここは白い白い世界。

 自分が何者かなんてどうでもいい。

 役割は一つだ。

 この世界を維持する。

 例え…どんな犠牲を払っても。

 この世界を維持する。

 必ず、絶対にそうしなければならない。

 なぜそうしなければならないのか?

 それはそうしなければならないからだ。

 それ以上の理由は果たして必要か?

 まぁ、そんな事はどうでもいい。

 世界は今、大きな戦争になっている。

 今までの戦争とは訳が違う。

 この世界を脅かし兼ねない大きな戦争だ。

 もしかしたらー動き出さなければならないかもしれない。

 この世界の安寧と維持、その為にはどんな事もする。

 しなければならないのだ。

 その為に在るのだ。

 私は。

 僕は。

 俺は。

 自分は。

 我輩は。

 ミーは。

 ワタクシは。

 オレは。

 あたしは。

 卜は。









 誰?????





 To be continued

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ