【第十章】道化狂乱篇Ⅳーgrimー
「随分と戻ってくるのが遅かったですわね」
アリアナがロキとエスデスにそう言った。
今、彼等がいる場所は数あるプラネット・サーカスのアジトの一つだ。
洞窟になっており、ここは薄暗く不気味な雰囲気を醸し出していた。
「ふふふ…♪」
「済まない済まない…所で…随分と気分が良さそうじゃないかクメール?(* ̄∇ ̄*)」
「ああ!素晴らしいモノを手に入れたのでな!」
「そうかそうか…それは良かった(*´∀`)」
「良くないネ!」
花柄の和服と右半分が黒髪、左半分が白髪の紫色の三白眼の男がそう言った。
彼は擬流跡土。プラネット・サーカスの幹部である『童話人』の一人であり、五の席傀儡王の異名を持つ『童話人』の中でも上位の実力を持つ『上位数字者』の一人である。
「君はご機嫌斜めだね( ; ゜Д゜)跡土。何かあったのかい?( ´△`)」
「クメールの奴…ミーの作品を洗脳したネ!これはあってはならぬ屈辱…!」
「貴殿だって美浪たんを連れ戻したかったのだろう?」
「貴様に洗脳されるくらいなら敵として現れた方が数百万倍マシだネ!貴様…みなみに妙なマネをしてみろ…無事で済むと思うな…?」
「何故、そこまで…一度捨てたモノにそこまで執着するのだ?」
「ミーの芸術を誰かに遊ばれるのは我慢ならないネ。クメール…今は見逃してやるがこの戦いが終わった後は覚悟はしておくネ」
どうやら跡土は自分が生き返らせた美浪がクメールによって洗脳された事に怒っている様だ。
跡土はプラネット・サーカスの中でも特に繊細で拘りの強い性格をしており、職人気質な人物だ。
自分の造り上げたモノを誰かに操られて不満なのだろう。
「跡土、気持ちは分かりますが抑えてです」
「エスデス…相変わらず死んだ魚みたいな眼をしているネ」
「それはどうも。他の五人は?」
「ああ、全員揃っているネ」
跡土がそう言うと五人の人影が現れた。
一人は黒い眼帯を左目に着けており、薄茜の髪と瞳を持ち、ゴシックメタル風の服を着ている女性であった。
「こうしてプラネット・サーカスが全員集まるのは久し振りだな…我が瞳も震えている…」
彼女の名はバートル・ツェペシ。
中二病で拷問好きな人間の女性であり、彼女は年間五千人以上の人間や魔族を拷問しており、拷問した者の手を集める猟奇的趣味を持っている。
「あなたのそのノリは何とかならないのかい?バートル?」
口に歯の形をした面を被っており、白いコートに身を包んでいる青紫の髪と瞳を持った男がそう言った。
彼の名はソニー・ビルドアルファ。
人や魔族の悲鳴を聞く事を趣味としているこれまた頭のおかしい人物である。
「卜らはどこか狂っているからね~仕方ないのさ」
眼の回りに黒い隈取りと黒い瞳、茶色の髪をした男がそう言った。
彼の名はメンゲレ・オルターエゴ。
マッドサイエンティストで知られる人間であり、人や魔族、動物関係なく違法な実験に手を染めている犯罪者だ。
「君の作ったジズさんは壊されてしまった。済まなかったね( ´△`)」
「いや、いいんだ、ロキ。また造り直せばいい。実験は終わらないのさ!」
メンゲレはとても楽しそうにそう言った。
メンゲレにとって自分が造り出した命が消えてもなんら問題ないと考えている。
壊されるということは、命が尽きるという事は、完璧では無い事を意味する。
ならば、まだまだ先がある。メンゲレにとってこれ程素晴らしい事は無い。
「完璧でなければまたよりイイモノが造れる…という事さ!それはとても素晴らしい事だ!」
メンゲレは性格がかなりぶっ飛んでおり、倫理観が完全に破綻している男だ。
彼にまともな話が出来る者はそうはいないだろう。
「ふっ…未来とは予測不可能よ…」
薄柿色のトゲトゲした頭と瞳、黒い濃い髭を生やしている黒服の男がそう言った。
彼はイワン・ライグル。支配欲が非常に強い人物であり、全てを武力で支配しようとしている危険思想の持ち主である。
「イワン、君まで来てくれるなんてね」
「まぁ、この戦いに勝てば余の願いは叶うのだからな」
「その前に死ななければいいですね」
「ふ…強気だな、エスデス」
「あなたの思想とわたしの思想は相反しますからです」
「ならば…この戦いが終われば貴様から殺すとするか」
「それはいいです」
「君達、喧嘩は止めてくれ( ´△`)」
イワンとエスデスは仲が悪い。
それも当然だ、エスデスは武力により本気で平和を成そうとしているのに対し、イワンは武力で自分が頂点に立とうとしている。
この二人の思想は相反するモノだ。
「二人とも~喧嘩はダメダメだよ~」
大きいセピア色の瞳を持ち、桃色のフワフワした髪が特徴的なアイドル衣装を着た女性がそう言った。
彼女の名はマーリン・モリガン。精霊ではあるが争いや戦争が大好きな変わり者の精霊である。
「マーリンの言う通りだぞ☆せめて今は仲良くね(*´∀`)」
「まぁいいです」
「どの道、貴様は生かしてはおかん。ここにいる奴等も余の目的が達成された暁には全て消す」
「面白い事を言うネ。戦闘狂の分際で」
「ふ…擬流…貴様は序列の意味を理解出来てない様だな。貴様は五番、余は二番だ。実力差があるのは明白だ。貴様は余より弱い」
「ふっ…その数字はあくまで基準に過ぎないネ。そんなモノは宛にならないネ!」
「だ~から~、仲良く仲良く…(T△T)」
ロキは珍しく困った顔をしていた。
「はぁ~、困った困った…だね☆これから楽しい楽しい戦争なのに~。そんなんじゃ楽しく無くなくなるよ☆」
「マーリン、貴様のその気色の悪い喋り方はどうにかならないのか?」
「イワン、君はそういう事ばかり言うから皆に嫌われ嫌われちゃうんだよ?」
「ここで貴様を始末してもいいんだぞ?」
「もう~、意地悪言わないでよ~。マーリンが君に勝てる訳ないないでしょ?」
「調子の狂う奴だ」
イワンはマーリンと話している内に闘争心が萎えた様であり、大人しくなった。
「これで全員揃ったね。いや~、こうやって全員揃うのは何年振りかな?」
「そんな事はどうでもいいネ。早く話をしよう」
「そうだね、じゃあ、始めようか。僕は四大帝国に宣戦布告をした訳だけど…四大帝国の勝利条件は僕ら『童話人』を全員倒す事にある。そして、僕らの勝利条件は四大帝国総帥を全員殺す事だが…恐らく、総大将はルミナスになるだろう。そのルミナスを殺せば僕らの勝ちだが…」
「恐らく、ルミナスはそう簡単には倒せないのだ」
「クメールの言う通り、彼女は強い」
「ふっ…ロキ、貴様らしく無いな。常に余裕をこいていてウザいのが貴様の筈だが?」
「言ってくれるね、イワン。それだけルミナスが強い…という訳さ。そして、厄介なのはルミナスだけではない」
「確かに、四大帝国の総帥達は厄介だな」
「いや、バートル。厄介なのは彼等では無いよ。厄介なのは『時神陣営』だ」
「時神陣営?」
バートルは疑問符を浮かべた。
聞き覚えの無い単語なのだから当然である。
「正直、四大帝国総帥達はルミナス以外は恐るるに足りない。本当に厄介なのは時神蒼達だ」
「時神蒼?」
「フローフル・キー・ローマカイザー。こう言えば分かるかい?」
「ああ、元ローマカイザーの第四皇子か」
「ああ、時神陣営だけでなく、ローマカイザー達も厄介だねとにかく、時神蒼を取り巻く者達は全員、時間に関する能力を持っている」
「時間?」
「ああ、そうだよ、イワン」
「成る程な…それは厄介そうだ」
「まずは…天草屍、彼は物質の時を止める事が出来る。だが、止められるのは物質だけでそこまで厄介な能力じゃない。本当に厄介なのは触れただけであらゆるモノを粉々にしてしまう能力だ」
「破壊の力という事事?」
「いや、恐らくは錬金術の類いだろうね。まぁ、彼は接近戦が中心だからさしてそれに注意すれば問題無いよ。次に…クメールが捕まえた霧宮美浪。彼女は時間を飛ばす能力があるんだが…まぁ、クメールが洗脳してるから問題無いね」
「ふふふ…我輩が厄介な敵の一人を捕まえていた…という事なのだな!」
「うん、そうだね。生まれて初めて君を褒め称える気になったよ」
「生まれて初めて!?」
クメールは釈然としないといった表情をしていたがロキは話を進めた。
「次にエル・マクガヴェイン。彼女は過去改変と時間回帰を使う。プロテア・イシュガルドは時を渡る能力を持っている」
「面白そうな能力者ばかりなのさ!」
「メンゲレの言う通りだね。けど、その分強いよ?そして、彼等の中心人物である時神蒼、彼はあらゆる時間の能力を使い、その中でも時間の停止能力を得意としている」
「成る程ねそれは厄介そうだ」
「時神蒼は最重要警戒人物ですね」
「いや、時神蒼よりある意味厄介な男がいるネ」
「どういう事です?」
「跡土は苗木一夜を異常に警戒しているんだ」
「苗木一夜?彼は特に戦闘能力が低い雑魚では?」
「どうもそういう訳でも無いんだよ。いや、間違いなく雑魚なんだけど…」
「奴の眼はミーの造ったコピーを見破れる。ミーのコピーは相手の性格、能力、霊圧や魔力まで完璧にコピーする。それを見破るのはただ事ではないネ」
「考え過ぎだろう?」
「いや、苗木一夜は警戒するべきだ」
「まぁ、跡土がここまで言うのも珍しいからね。確かに不可解な能力を持ってるのは変わり無いから警戒は重要。だけど彼等以外も注目するべき敵はいるよ?神聖ローマのジェラートやローグヴェルトなんかは優先的に処理するべきだ」
「向こうもやり手が多い…という訳訳ですね?」
「その通り。まぁ、オーディンさえ復活してしまえば問題無いがね。オーディンは全てを破壊する」
「オーディン様は全能の神なのですから当然ですわ!」
「アリアナは本当にオーディンを信仰しているね」
「当然ですわ!オーディン様の為に!ワタクシは動いているのですから!」
アリアナは狂った様にそう言った。
ロキは大変楽しそうにしながら話を続けた。
「まぁ、ロキを復活させるには七つの鍵が必要だけど…それはもう揃っている。後は多くの魔族や人間を生け贄に捧げるだけだ。だから君達には一杯殺して貰うよ☆(* ̄∇ ̄*)」
オーディンは七つの鍵により封印されていたがプラネット・サーカスはそれを全て見つけ出し封印自体は解いている。
しかし、長年封印されていた事により、意識は無く、完全に起動させる為には数十万の魔族や人間を殺し、生け贄に捧げる必要がある。
君達の身体に刻まれてる数字…それはオーディンの加護。
つまり、『童話人』によって殺された者達は全員、自動的にオーディンに捧げられるのだ。
プラネット・サーカス自体は手配書のSランク犯罪者のみで構成されている小組織である。
彼等の規模のデカさは小国を占領した事によるモノが大きく、ほぼそれによるモノなのだ。
「跡土、君は戦力増強の要だ。君は前線には出ず、こちらの兵隊を量産して貰うよ(^_^)」
「分かっているネ」
「『下位数字者』は前線に出て、小国の頭として動いて貰うよ(*`Д´)ノ!!!跡土以外の『上位数字者』は戦局が変われば投入するよ!」
「分かりましわ」
「了解」
「分かったのだ!」
「分かったのさ」
「震えるぞ…我が魂が!」
「了解了解!」
「分かりましたです」
「………」
「ああ、マーリン。君は時神蒼の対処を任せるよ。時神蒼は最優先に対処したいからね。君の能力はうってつけだ(* ̄∇ ̄*)」
「分かり分かりました!」
「よし…これで何の問題も無く戦争を始める事が出来る…( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆。この戦いが終われば僕らの願いも達成するだろう。僕達は踊るピエロ!この世界は舞台、サーカスさ!僕らは今までは外から野次を飛ばす傍観者だった!しかし!今回僕らは初めて舞台へと上がる!この狂乱の舞台を楽しもう(●^o^●)!!そして、傍観者として…野次を飛ばそうじゃあ無いか!(* ̄∇ ̄*)」
ロキがそう言うと話は終わり、それぞれ持ち場へと行った。
「待て、クメール」
「何なのだ、跡土?」
「分かっているんだろうネ?みなみには何も手を出すな!」
「それは我輩が決める事なのだ!我輩が支配したのだから今は我輩の所有物だ!貴殿に何と言われようが知った事では無いのだ!」
「もし…みなみに手を出せば…ミーが貴様を殺す…!…………見ているからな?」
「ムムムムムムムムム…貴殿は何様のつもりだ!」
「君がミーの作品に手を出した…それだけでも万死に値するネ」
「ふ…まぁいいのだ。この件が終わったら!貴殿とは決着を着ける!」
「そうだな…そうしようか…」
跡土とクメールは何処かへと消えていった。
「やれやれ…厄介だな~。組織を保つ…というのも…まぁ…いずれは全てメチャクチャにしてやるから関係ないがな(*・∀・*)ノ」
ロキは組織はあくまでも狂乱の世界を造る為のきっかけに過ぎない。
それを達成出来れば後はどうでもいいのだ。
狂う狂う狂う…それがロキだ。
ロキにとっては全てが暇潰しであり、戦争や殺し合いすらただの退屈しのぎにしか過ぎない。
ロキはとにかく楽しみたいのだ。
楽しめるならなんだっていい。
全てを狂乱へと誘い、この世界を混沌を生み出す。
それが混沌王であるロキ・カオストリクスタシアの望みであり、願いだ。
「さぁ…戦争殺し合いだ…」
バートルはカナダ全域を支配下に置いていた。
バートル自身はUSWの出身であり、人間と吸血鬼の間に生まれた雑種である。
彼女はUSWのアンタレスに所属していており、犯罪者の情報を吐かせる拷問をする事が多かった。
最初の頃は拷問が好き…という訳では無かったがいつしか拷問をする内に性的快感を得る様になっていった。
そこからバートルの猟奇的趣味に目覚め始めた。
牢屋に囚われていた囚人を順番に拷問をし始めた。
方法は様々だった。蝋燭の蝋を身体に着けるというライトなモノから首を絞めたり、鉄の処女にぶちこんだり、身体の一部だけ燃やして死なない程度まで追い詰めるといったヘビーなモノまで様々であった。
そうしている内にUSWもバートルの行為は黙認出来ない状態まで陥っていた。
バートルは一般人も拷問をしていたのだ。
その事を知ったUSWはバートルを処理しようとしたが吸血鬼である以上、不死身であり更に卓越した戦闘力を持っていた為、逃がす事になってしまった。
「ふ…USW…この私を捕まえられると思うな?我が力の前では全てが平伏すしか無いのだ…」
バートルはそう呟いた。
彼女は今、カナダへと向かっている。
カナダとはUSWの隣接する国であり、USW傘下の小国であったがバートルが支配していた。
とは言え、バートルがカナダを手に入れたのはつい最近の事だ。
バートルがカナダを支配下に置けたのはカーシス・ベルセルクの死によるUSWの国力低下によるものが大きかったからだ。
USWはこの三年で四大帝国の中でも最も国力が低下している国であり、今でも弱体化の傾向にある。
バートルはその隙にカナダを支配した。
「第四次世界大戦…震える…魂が震えるぞ!」
バートルが左手を右手で押さえ付けながらそう言った。
バートルは典型的な中二病であり、こういった派手な行動が好きな人物なのだ。
今回の戦争の主な場所はユーラシア大陸の中でもロシアスタン、大韓連邦、モンゴル帝国が中心だ。
しかし、そんな生真面目にそこだけを攻め込むなんて真似はしない。
今、USWは大きな隙がある状態だ。
今の内にUSW本土を叩く。それがバートルの目的だ。
「戦争は…常に狂乱の宴だ…さぁ…始めよう…」
バートルはそう呟いた。
「全く…ドーラーには困ったモノなのだ」
クメールはそう呟いた。
前の戦いで洗脳した美浪と舞は牢屋に閉じ込めており、眠って貰っている。
「くっ!メチャクチャに出来ないのが誠に残念なのだ!ドーラーめ…この戦争が終わったら貴様を殺し、美浪たんを好きなだけ料理してやるのだ…むふふふふふ…」
クメールはよだれを滴ながらそういった。
はっきり言って気持ち悪い限りである。
クメールは美浪と舞以外にも多くの魔族や人間を洗脳していた。
それは老若男女問わず様々である。
クメールとしては小さい子供を洗脳したい所だが戦争なのだからそんな事は言っていられない。
更にクメールはもう一つの手を考えている。
クメールは今、カンボジアの牢獄にいる。
そして、カンボジアは今、大人はクメールしかいない。
つまり、クメール以外は全員子供なのだ。
ここは地下牢であり、上には多くの子供達が住んでいる。
今日は国中の子供達がクメールの元へ集まっていた。
その数、実に二十万人である。
それがこのカンボジアの総人口である。
大人達は根こそぎ殺した上に子供も「調教」で使い物にならなくなった者達が大勢いた為、人工が減少し続けていた。
二十万人の子供達は全員、クメールによって洗脳されており、カンボジアは子供の国と化していた。
クメールの政策ははっきり言って頭がおかしいだろう。
だが、子供が大好きなクメールにとってはそれが至極当然の事であり、クメールにとっては楽園なのだ。
「今回、皆に集まって貰ったのは…この国が悪い大人達が攻めて来るからなのだ!」
クメールは子供達の集まりの中心に立ち、話し始めた。
「何だって!?」
「それは大変よ!」
「楽園が壊れちゃう!」
「如何にも!だから、貴殿達も協力して欲しいのだ!この国を…楽園を守る為に!」
「楽園を守る!」
「クメール様の為に!」
子供達は狂った様にクメールの名を呼び続けた。
『クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!クメール様!』
「げひひひ…我輩はこ~んなにも貴殿達に愛されて嬉しいのだ!では!貴殿達に力を貸して貰うのだ!」
クメールはそう言った。
「この国は四大帝国という巨悪により、陰惨な戦場になろうとしています!あなた達に力を貸して頂きたいのですわ!オーディン様復活の為に!」
アリアナはロシアスタンに戻り、ロシアスタンの国民達に演説を行っていた。
アリアナはロシアスタンを完全に掌握しており、大半の者達がオーディンを信仰している。
「ふざけるな!貴様らのせいでこの国は混乱しているのだろう!」
しかし、全国民がアリアナに支持しているのかと言えば当然そんな事は無く、反乱分子も存在する。
「何を言う貴様!アリアナ様になんて無礼な!」
「貴様!」
「オーディン?ふざけるな!そんな神がいるのなら何故戦争が起こる!?神ならこの戦争を止めてみせろ!」
現在、アリアナと支持する者が大半だが反乱分子も存在する以上、この様な事態になるのは必然だ。
「そこのあなた、ワタクシに対する無礼は許されてもオーディン様の無礼は許されませんわよ」
「オーディン?そんな神がいるか!バカも休み休み言え!」
一人の男がそう言うと男の胸に白い棒が刺さっていた。
そして…
「うわああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
「何だ!?」
「どうした!?」
男は涎を滴ながら倒れた。
完全に心臓は止まっており、死んでいた。
民衆達はあまりに突然の事で恐怖した。
「おお!何と言う事でしょう!神に刃向かった愚か者の末路!しかし、安心してくださいまし。オーディンを信仰するあなた達には永久の加護が!!そう、あなた達は選ばれた者達なのです!さぁ!共に戦いましょう!!!!!」
アリアナがそう言うと民衆達は叫んだ。
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!』
しかし、それは悲鳴にも聞こえた。
恐怖で人を支配する。最も簡単な方法だ。
アリアナはこの得体の知れない力でこの国を恐怖で支配した。
アリアナは下卑た笑みを浮かべた。
恐怖による支配は実に容易い。
恐怖は全てにおける原始的な感情であり、それを操るにはテクニックがいるがそれが出来れば操る事は容易いのだ。
「敵は四大帝国!オーディン様の為にその身を捧げるのです!!!!!」
アリアナがそう言うと民衆達は悲鳴という名の叫び声を一層強く上げた。
ソニーは一人、広野に立っていた。
ソニーは『童話人』で唯一、国を掌握していない。
掌握していない理由はソニーは国などに興味が無いからだ。
そう、ソニーが好きなモノは悲鳴、呻き声、苦しむ声、苦しむ姿、相手が絶望している姿だけだ。
ソニーは生まれながらの殺人鬼であり、戦争にまみれた世界を望んでいる。
「あー、楽しみだ…戦争がさ…」
ソニーは常に一人で行動している。
群れるのが嫌い…という訳では無いのだがそれ以上に一人でいる事が好きなのだ。
だからこそ、彼は仲間を持たず、部下も駒も持っていない。
「オレは…ただ…壊すだけだ…壊して…この世界を悲鳴と呻きに変えてやろう…」
ソニーは不気味な笑みを浮かべながらそう言った。
「さーってと…今度は何を造ろうか…それにしても…ジズ・ティアマを破壊するとは…向こうにもやり手がいるんだね~」
メンゲレはそう呟いた。
彼は先程からアジトにずっといた。
メンゲレはロキに自身の造った生物を渡す事がよくあった。
ジズ・ティアマというのはロキがジズさんと言っていたタコ型の生物だ。
超速再生能力を持っており、そう簡単には倒せなかった筈だがどうやら倒された様だ。
ジズ・ティアマはロキが蒼とパルテミシア十二神の一人であるイシュガルと戦いが終わった時にロキが差し向けたあのタコだ。
ジズ・ティアマは屍によって木っ端微塵にされていた。
「天草…屍…ふぅむ、興味深い。錬金術の使い手と聞くが一体どうやってジズ・ティアマを倒したのか…」
メンゲレはジズ・ティアマを倒された事に全く悲しみを感じていなかった。
むしろ、あのジズ・ティアマをどうやって倒したのか…そっちの方が気になる。
それが分かれば更に素晴らしいモノを造る事が出来るかもしれないからだ。
メンゲレは圧倒的な知的好奇心に支配されていた。
「天草屍…是非とも会いたいモノだ…さぁてと…卜が造った生物達を今回の戦いで存分に生かそうかな…」
メンゲレは今までここまで実験に相応しい場所は無かった。
兵器を試すには戦争が一番だ。
だが、今回の戦争は今までの中でも最大規模の戦争だ。
プラネット・サーカスは小国同士の戦争に雇われた事もあり、傭兵集団としての一面も持っている。
そこから安値で金が取り引きされ、そこから力を付けていった。
しかし、それらの戦争はそこまで大きな戦争では無く、メンゲレの実験を十二分に行えた事はあまり多いとは言えなかった。
しかし、今回の戦争は十分に自身の造った生物の力を試す事が出来る。
そして、そこから更なる進化を促す事が出来る可能性がある。
科学者とは高みを求め続ける生き物だ。
そこに終わりは無く、終わりが見えた瞬間、科学者とは呼べないだろう。
それがメンゲレの考える化学者だ。
常に高みを探求し続ける喜び、ワクワク感、高揚感がメンゲレの心を刺激した。
「さて…そろそろ…準備を済ませないとね…ああ、楽しみだ。卜の造り出した実験体がどこまでやれるかをね。願わくは卜を驚かしてくれる事を期待したいのさ…」
メンゲレにとって今回の戦争は大きな実験に過ぎない。
実験は終わらない。実験はずっと続く。
メンゲレは誓ったのだ。この世界の全てを探求すると。
そして、それは果てしなく困難な事だが人の知識欲とは抑えがきかない魔物なのだ。
この知識欲という名の魔物が人類を進化させてきたというのも事実だ。
恐らく、多くの者がこの戦争で命を落とすだろう。
だが、メンゲレはその犠牲を無駄にする気は無かった。
無駄にしたら勿体無いから…という効率重視な理由からだが。
そう、全ての事柄には意味があるのだ。
その意味を見出だす事こそがこの世界の真理を解き明かす為に必要な事であるとメンゲレは考えており、それがメンゲレの行動理念でもある。
この世界は平等では無い。そもそも、真の平等など存在はしないのだ。
この世界は自分一人で生きている訳では無い。
他人がいる。他人がいる以上、自分とは異なる思惑、考えが生まれるのは必然であり、そんな状態で完全なる平等を創る事など不可能だ。
もし、そんな事が可能ならそれこそ本当の神とやらの力を使う他無いだろう。
まぁ、メンゲレは化学者である以上、信仰を信じる気などサラサラ無い。
謎を解き明かす、そして、新たな進化を産み出す、それを無限に繰り返し、更なる高みへと上り詰める。
理屈じゃない、これは本能だ。
メンゲレの果ての無い欲望がそうさせているのだ。
メンゲレはだからこそ、探究を続ける。高みの為に。
マーリンはイワンと共にいた。
彼等はアジトの外に出ていた。
「ねぇねぇ?イワンはさ~、気に入らない者を片っ端から潰して一人で王様になって何が楽しい楽しいの?」
「黙れ、貴様に語る事など無い」
「え~??気に気になる~???」
「貴様はその気持ち悪い喋り方を何とかしろ。貴様は何故余に構う?」
イワンはマーリンの喋り方がウザくてうんざりしていたがマーリンは止める気は無いらしい。
そもそも、マーリンはやたらとイワンに突っ掛かって来る。
「嫌嫌だよ?マーリンはイワンがボッチだから可哀想だな~って」
「貴様はここで殺す」
「嘘嘘冗談冗談だよ~。君と話すと気が楽だから~かなかな?」
「余は貴様と話すのが不愉快で仕方無い」
「まぁ、そう言わないで言わないでよ。もう、お互い二度と会えないかもしれないんだからさ」
「そうだな。余は負ける事は無いが貴様は死ぬかもしれんからな」
「そう言う事事。だから…ね♪」
イワンは何故かマーリンとよく一緒にいる事が多い。
これも何かの縁だろう。
「まぁ、精々死なない事だな」
「!!!」
「何だ?」
「君が他人の心配をするのが意外意外と思ったんだよ」
「悪いか?」
「ううん、少し…安心したかなかな?まぁ、マーリンはこの宴を楽しむだけだよ」
「勘違いするな。余は戦いに勝ち、勝利の美酒に酔いしれるのが好きなのだ。貴様の様な戦争という過程が好きな狂人と一緒にするな」
「マーリンは人間じゃ無い無いけどね~。まぁ、そんな事はいいや。けどね、狂ってるのはお互い様だよ」
「ぬかせ」
イワンは軽い感じでそう呟いた。
二人はお互いに狂人である事には変わりない。
過程を重視するか、結果を重視するか…ただそれだけである。
「イワンは動かないの?素直にロキの言う事を聞くなんて珍しいね」
「勘違いするな。余は自身が最も勝率が高い時に動く。それだけだ」
「成る程成る程ね~」
イワンはあくまでも戦いに勝つ事に拘っている。
ならば今は出るべきではない。そう考えたのだ。
「ん~でもでもね~、マーリンは過程のみを拘っている訳でも無いよ?」
「どういう事だ?」
「だって…戦争に負けちゃったら…次の戦いを楽しめなくなるじゃん!」
「成る程な…それは同感だ」
イワンはマーリンに対して始めて笑った気がした。
「じゃあ、マーリンはもう行くね!ロキに頼まれちゃってる事だし!」
そう言ってマーリンはイワンの元から去っていった。
イワンは何も言わずにただただ空を眺め続けていた。
To be continued




