【第十章】道化動乱篇Ⅱーレゾナンスー
四大帝国会議が始まった。
四大帝国会議は一人の総議長と四大帝国会議の総帥達が全員揃う事で始められる。
現在始まってそこまで時間は経ってはいなかった。
「プラネット・サーカスは我々四大帝国を脅かす程の存在になっているわ。その為にも我々で連合を組む他ありません」
ルミナスがそう言った。
ルミナスの言葉に他の三国は賛同する他無かった。
それも当然だ。現在、四大帝国で最も力を持っているのは神聖ローマだ。
そのローマが他の三国に攻撃を仕掛ければ他の三国は人溜まりもない。
「そうだな。その前にプラネット・サーカスで知っている情報を共有しておきたい」
厳陣がそう言って手配書を立体映像として出し、擬流跡土のページを開いた。
「擬流跡土、十二支連合帝国出身の陰陽師であり、我々の国を半壊させた男だ」
「ふー、擬流跡土…昔は銘打ての傀儡師としても有名だったね」
「まさか、プラネット・サーカスにいたとはね」
傀儡師とはその名の通り、傀儡を操る者の事であり、跡土は陰陽師としてだけではなく、傀儡師としての一面もある。
天使大戦でも多大な戦果を上げる程には跡土は強大な強さを持っている。
「あの男が最も厄介なのは手数の多さですね。十二支連合帝国には彼が造ったコピーが多く送られたと聞くわ」
ルミナスの言っている事は的を射ていた。
確かに跡土が最も厄介なのは兵力の多さだ。
コピー人間を無数に造る事が可能だ。
しかもただのコピーだけならまだしもオリジナルの能力をそのままコピーし、行使してくるのが最も厄介だ。
「現在、プラネット・サーカスの構成員が把握出来ているのは擬流跡土含めて五人だけ…厄介だね~」
「現在、把握出来ているメンバーは擬流跡土、神混髏奇、アリアナ・サンタマザー、クメール・サロットサロットそして…エスデス・ジルド」
エスデス・ジルドはアフリカ帝国を支配している独裁者だ。
彼の悪名は知れ渡っているが彼はあまり表だって行動する事が少なく他四人と比べて謎も多い。
「どんな能力かを把握出来ているのは擬流跡土のみ…」
「ははは!情報戦でもう負けてるね僕ら」
「全く笑い事じゃあ無いけどね」
大声で笑うルバートにドラコニキルは突っ込みを入れた。
だが、ルバートの言う事も事実だった。
情報戦で既に負けている。
恐らく、向こうは四大帝国の情報をある程度手に入れているだろう。
それに対してこちらは相手組織の規模、構成員の能力、戦力を全くと言っていい程把握していなかった。
「今から五十年前に起こったヘレトーア内乱も元を正せば神混髏奇が仕組んだ事だと聞くわ。ヘレトーアとプラネット・サーカスよ関係も知りたいわね」
「少なくとも僕は全く無関係だよ~。まぁ、確かに疑われても仕方が無いけどね。実際、アラルガンドはプラネット・サーカスと何らかの繋がりがあったみたいだしね」
ルバートは惚けた様にそう言った。
尤も嘘をついている様には見えなかった。
ルバートはわざわざ嘘をつく動機も無いので当たり前だろうが。
「いずれにしても連合を組むというのは無難な流れでしょうね。それと…情報を得ないと。俺達は奴等の事を知らなさすぎる」
ドラコニキルの言う通り、戦いが始まる前になるべく多くの情報を入手した方がいいだろう。
ズドン…
「「「「!?」」」」
そんな音が聞こえ、ルミナス達は驚いた。
「何事?」
「伝令!何者かがこの鏡の城へと侵入しました!」
「侵入者の数は?」
「現在確認さるてるのは二…名…」
伝令の男の下半身が完全に消えていた。
伝令の男はそのまま倒れた。
そして、ルミナス達の座っている席の中央からピエロの様な風貌をした男が現れた。
「ばぁー!!!\(^o^)/」
そんな声を上げて髏奇は現れた。
「神混髏奇…いえ、ロキ・カオストリクスタシア…」
「ドッキリは成功したみたいだね。良かった良かった(* ̄∇ ̄*)」
髏奇…いや、ロキがそう言った。
「あなた、随分と堂々とした侵入をするのね」
「お久し振りでーす、ルミナス。また、会えたね☆」
「星マークを付けないでくれるかしら?気持ち悪いわ」
「釣れないね~(T_T)」
「ロキ・カオストリクスタシア…だと?」
「如何にも!( ゜o゜)君達はその名を知ってるだろ?何せ、神の名だからね?(* ̄∇ ̄*)」
ロキ・カオストリクスタシアとは北欧神話の神、ロキその人であり、人間が千年前に造り出した人工神である。
その強さは別次元であり、あのパルテミシア十二神と比肩する力があるとされている。
「今度の敵は神様か…これは面白い事になってきたね~」
「そんな事を言ってる場合では無いぞ…」
ルバートが楽しげにそう言うがドラコニキルは心底面倒そうにしていた。
それも当然だ。プラネット・サーカスにまさか神が…それも最高クラスの力を持った神がいるのだ。
そんな奴を相手にするとなると普通に考えて面倒とかそういう話ではない。
「僕にばかり構ってる暇は無いんじゃないかな?(*´∀`)まぁ…」
ロキがそう言った瞬間、ルミナスが白色の長剣を抜き、ロキに斬りかかった。
ロキはルミナスの攻撃をあっさりと回避した。
「酷いよ~(T_T)。喋ってる途中で斬りかかるなんてさ~(T_T)」
「あなたを片付ければこの戦いは勝ったも当然よ」
「いんや、そうでもないよ?僕を殺した所で僕達は止まらない。君達が全滅するか僕らが全滅するか…それまでは止まらないよ(* ̄∇ ̄*)」
「そういう事を言ってるんじゃ無いわ」
「?」
ロキはルミナスの言葉の意味が分からなかった。
「ルミナス~、君、何であいつの事を知ってるの?」
「私の部下に詳しい情報通がいてね。そこで知ったわ」
ルバートの問いにルミナスはそう答えた。
嘘は突いていない。突いてはいないが真実を言ってもいなかった。
だが今はそんな事を言及している場合では無い。
「はぁ~、僕、一応君達と話をしたいだけなんだけど?」
「それにしては随分と行儀の悪い入り方だな」
「それが僕らなりの流儀なんですよ(* ̄∇ ̄*)、常森厳陣」
ロキは呑気そうにそう答えた。
ロキは話がしたいだけと言っていたがはっきり言ってそれを素直に信用する程、厳陣達はおめでたく無かった。
相手は不法に侵入した挙げ句、伝令役の者を殺している。
信用出来る筈がない。
だが、ロキは見たところ、戦意は感じられない。今のこの状況だと迂闊に手を出すべきではないだろう。
「あいつ…」
蒼がロキの元へと向かおうとする。
しかし、近くにいた男に止められた。
彼は確かヘレトーアの魔族だ。
男は蒼に突然殴りかかってきた。
「な!?どうなって!?」
「蒼!後ろだ!」
一夜がそう言うと剣を持った男が蒼の後ろから襲い掛かった。
それだけではない、蒼の周囲の者達が一斉に蒼達に襲い掛かってきた。
「どうなってんだよこれ!?」
「何者かに…操られてるのか!?」
「それなら…【拒絶王女】!」
慧留は黒紫色の錫杖を顕現させ、洗脳されている人々の時間を巻き戻した。
すると、洗脳された人々は正気に戻った。
「私は…一体何を…」
「どうにか戻ったみたいね。洗脳の能力…厄介ね」
「!? プロテア!後ろ!」
プロテアは後ろを振り向いた。
すると、ハートの形をした霊力が飛んできていた。
プロテアは慌てて攻撃を回避した。
すると、プロテアの後ろにいた女性に命中した。
「あ~、クメール様ぁ~♥」
女性はプロテアを殴り飛ばした。
「な!?」
プロテアはそのまま吹き飛ばされ、壁に激突した。
「クメールの仕業ね」
「御名答(* ̄∇ ̄*)」
蒼達の様子を見ていたルミナスがそう呟いた。
「どういう事だ?」
「神聖ローマのSランク犯罪者の一人よ。彼は愛の矢主と呼ばれているわ。彼は子供達に手を上げる様になったのは突然で連続殺人の濡れ衣を着せられた後よ。相手の心を操る能力を使うわ。一発でも喰らえば皆クメールの奴隷になってしまうわ。更に彼はロリコンとしても有名で特に幼女を優先的に狙って洗脳するのが特徴ね」
「済まない最後のは言わないでも良かった」
厳陣がクメールの性癖にドン引いていた。
クメールはかつては神聖ローマの天使であったが当時起こっていた連続殺人事件の濡れ衣を着せられていたという経緯がある。
幸い、濡れ衣である事が分かり、クメールは無罪放免になったのだが、それ以降、クメールは子供に執着する様になったという。
「勘違いしないで欲しいね、彼は幼女だけじゃなくてショタもイケてしまう真性の変態だよ(*`Д´)ノ!!!」
「それフォロー所か悪化してないか?」
ロキの言葉にドラコニキルが突っ込みを入れた。
「いずれにしてもこのままだと不味いわね。クメールの場所を何としても突き止めないと…どこから狙ってるか分からない以上、あの醜男にいつ洗脳されるか分かったモンじゃないわ」
「ルミナス、君クメールの事が嫌いなのかい?(^o^;)」
「単純にキモいだけよ」
「もうクメールは泣いていいと思う(T△T)」
味方だけでなく敵まで彼の事をキモいだの醜男だの言われるクメールにロキは少しだけ同情した。
これなら自分の扱いの方がまだマシなのかもしれないとすら思った。
「さてと…僕らは僕らで話をしようか…僕らはあくまで…交渉に来たんだから(´д`|||)」
「交渉と言うのは対等な条件でやるものよ。あなたのこれは交渉とは言わないわね。ただの脅迫よ」
「どう判断するかは君達だ。僕は知らない(* ̄∇ ̄*)」
ロキがどうでも良さげにそう言った。
「敵はまだいると見ていいだろう。蒼、敵をどうやって見つけ出す?」
「こんな時に湊がいたらな~って思う」
「同感だ」
湊は周囲の気配を察知する能力に長けている。
こういう時に湊は欲しくなる。
「とは言っても、そこまで遠くにはいない筈です。遠くからこんな強力な洗脳を使える筈が無いですから」
美浪がそう言った。
そう、恐らく敵は近くにいる。
近くから洗脳波を撃ち、洗脳しているのだ。
「今のがどこから来るか分からない。周囲を警戒しねぇと…」
「いや、そんな面倒臭い事はしなくていい」
「時神?」
「霊呪法第八百九十六番【氷の世界】」
蒼の周囲が完全に凍り付き、この部屋一帯を凍り付かせた。
【氷の世界】は自分の周囲を完全に凍結させる霊呪法だ。
「ぐぎぇ!?」
そんな声が聞こえた。
氷から小太りの男が出てきた。
「見つけた」
「ムムム…見つかってしまったか…」
「…テメーは…クメール・サロットサロットか…」
「知ってるのか、時神?」
「神聖ローマにいる人ならあの人を知らない人なんていないよ」
どうやら蒼だけで無く、慧留も彼の事を知っている様だ。
それだけヤバイ人物…という事だろう。
「我輩もここまで名が知れているとは…人気者は辛いのだ」
「気を付けて!この男は小さい子供が大好きな変態だよ!美浪ちゃんとか四宮先生は小柄だから狙われやすいですよ!」
「「誰が幼児体形や(じゃ)」」
慧留の粗相な言いように美浪と舞はブチ切れた。
「残念ながら我輩はロリババアには興味ないのだ。それと君達には言っておかなければならない事がある。………高校生以上は…ババアなのだ」
「「「「あ?」」」」
クメールの発言に美浪と舞は勿論、慧留とプロテアまで切れていた。
「ロリババア…言ってくれるのぉ…」
「ババア…言ってくれるじゃない…」
「私、結構沸点は高い方だと思ってたけどなぁ…?どうしよう本気で殺意が沸いてきたよ」
「あの人、一番言っちゃあかん事を言いおったな…」
舞、プロテア、慧留、美浪が本気でクメールに殺意を滲ませていた。
というか、慧留や美浪が本気で怒るのはかなり珍しい気がする。
「なんか…敵の方が可哀想に見えてきたね」
「「同感だ」」
乱戦が続いてる中、一夜と蒼、屍はそう呟いた。
女を怒らせると怖いってハッキリ分かる瞬間である。
「ちょちょちょ…貴殿ら…怒りすぎではないか!?本当の事を言われたくらいで…」
「「「「殺す」」」」
クメールはダッシュで逃げていった。
慧留とプロテア、舞と美浪はクメールを追い掛けていった。
「な!?あいつら…俺達も追うぞ!」
蒼がそう言うと一夜と屍は慧留達を追い掛けていった。
「慧留達を見失っちまった…」
蒼と一夜と屍は慧留を追い掛けていったのだが見失ってしまった様だ。
「近くに誰かいる」
屍がそう言うと辺りを見回した。
すると修道服を着ている女性がいた。
女性の周囲の人々は倒れており、何人かは棒に刺されていた。
「あ…あ…ああああああああああああああ!!!!」
「いやああああああああああああああ!!!」
「だすげ…ああああああああああああああ!!!!」
女性の持っている白い棒に刺された者は例外無く、発狂して生き絶えていた。
「あらあら?あなた達は確か…」
「てめぇは…何者だ!?」
「ワタクシはこう言う者ですわ」
そう言って女性は自身の舌を出した。
そこに刻まれていたのは10の数字であった。
「ワタクシはプラネット・サーカス、十の席『童話人』の一人、『聖母』、アリアナ・サンタマザー」
「てめぇが…三人目の侵入者か!?」
「相当ヤバそうだな」
「ふふふ…まさかこんな所であなた達に会えるなんて…あなた達は確か跡土の国の人達でしょ?いいですわ…生け贄には丁度いいですわぁ…」
先程のクメールといい、ロキといい、プラネット・サーカスにはヤバイ奴しかいないというのが蒼達の印象である。
アリアナも見た目は美女だが、頭のネジが飛んでそうであった。
「さぁ…始めますわよ!」
アリアナは周囲に先程の白い棒を出現させ、蒼達に飛ばした。
蒼達はアリアナの攻撃を回避した。
「その棒に触れたら不味いよ!」
「分かってる!」
蒼達が回避した白い棒が他の人達に当たった。
「う…うわあああああ!!!!」
「ぎゃあああああああああ!!!!!」
白い棒に当たった者達は例外無く発狂しながら死んでいる。
「どうなってんだ?」
「そこですわ!」
蒼は一瞬アリアナから死線を反らしてしまいその隙にアリアナは蒼に白い棒を打ち込んだ。
蒼は左手で棒を防いだ。
「!?」
蒼は頭から自分の死のイメージが浮かび上がった。
更に仲間が次々と殺されるイメージ、身体からウジ虫が集まってくるイメージ様々な恐怖のイメージが頭に捩じ込まれた。
「くっ!?」
蒼は【氷水天皇】で即座に白い棒を凍り付かせ、引き抜いた。
しかし、蒼の身体は震えていた。
「蒼?」
「時神、大丈夫か!?」
「ああ…何とかな…だが…」
「足がすくんでしまっている様ですわね」
「ちぃ…」
そう、蒼は今、足がすくんでしまっており、動けなかった。
「どういう事だい?」
「まさか…お前の能力は…」
蒼がそう言うとアリアナは「御名答」と言った。
「そう、ワタクシの能力は『恐怖』。ワタクシのこの棒を相手に刺す事で相手にとっての苦痛、恐怖を増幅させる。普通なら一撃を受けただけで発狂死するのですけれど…あなた、中々強い精神力のお持ちの様で」
「そりゃ…どうも…」
蒼は身体の震えが未だに止まらなかった。
アリアナの能力は『恐怖の増幅』だ。
恐怖とは生物なら誰しも持っている最も根元的な感情だ。
恐怖は敵から逃げるため、生き残る為に大切な感情であると同時に最もストレスを感じる不安定な感情だ。
恐怖を過剰に感じると精神崩壊を起こし、先程の者達の様に発狂死してしまう。
そうでなくとも恐怖を与えれば動きはある程度弛緩される。
蒼は一瞬あの白い棒に触れただけでかなりの精神攻撃を受けていた。
それでも蒼が平静を保てているのは蒼が相当強い精神力があるのと即座に白い棒を除去した事が大きい。
「これは…不味いね…」
「ああ、一発喰らっただけで時神もこれだ」
「問題無ぇよ!」
蒼は左手に黒い刀を持った。
「【χ第二解放】」
蒼は【χ第二解放】を発動した。
蒼は全身に黒い衣を纏っており、背中には黒い氷の翼が映えており、両手にはχの字をあしらった籠手が着いていた。
「な…!?この…霊圧は!?」
アリアナは顔面蒼白になっていた。
蒼の事はある程度知っていたがここまでの霊圧とは思わなかった。
「【震えの神棒】!」
アリアナは無数の白い棒を出現させた。
「【氷菓神刀】!」
蒼は巨大な氷の刃を放った。
アリアナの白い棒は全て凍り付き、機能停止した。
「俺の氷はあらゆる物質の機能を停止させる」
「ちぃ!分が悪いですわね…」
だが、このタイミングで奥の手を使う訳にもいかない…アリアナはそう考えた。
「まだですわ!」
アリアナは白い棒を連続で飛ばす。
しかし、蒼は全ての氷を凍り付かせた。しかしー
「甘いですわ!」
アリアナは蒼では無く、一夜に白い棒を飛ばした。
一夜は白い棒を右肩に命中してしまった。
「一夜!?」
「くそ!」
近くにいた屍が一夜に刺さった白い棒を引き抜こうと白い棒に触れた。
「「!?」」
一夜と屍の頭の中に恐怖のイメージが刻み込まれた。
「くそが!」
蒼は一夜に刺さった白い棒を凍り付かせ、粉々に砕いた。
「はぁ…はぁ…」
「触っただけで…く…」
どうにか発狂はしなかったが屍と一夜は精神的にかなりダメージを受けていた。
アリアナの白い棒による精神攻撃がそれほど強力である事を意味していた。
「数的有利を取ったからといって勝てるとは限りませんわ。このままでは分が悪いのでワタクシは引かせて貰いますわ」
アリアナはそのまま消えていった。
「待て!」
蒼はアリアナを止めようとしたが結局逃げられてしまった。
「くそ!」
「済まない…蒼…」
「気にするな」
「まさか…触っただけで効果があるなんてな…くっ…身体が震えて動けねぇ…」
アリアナの能力は想像以上に厄介なモノだった。
あの白い棒に触れるだけで効力を発揮する様だ。
「アリアナ・サンタマザー。彼女はロシアスタン出身の狂信者として知られている。やはりプラネット・サーカスは厄介な奴等が多いね」
「時神、お前は先に月影達の所へ」
「ああ」
蒼は一夜と屍を置いて、慧留達を追い掛けて行った。
「はぁ…はぁ…しつこいのだ…」
クメールは慧留達から必死で逃げたがこれ以上は逃げても無駄そうだ。
「やっと逃げるのを止めた様ね」
「違うのだ。もう、逃げる必要が無いのだ」
「何じゃと?」
「我輩の能力は愛!愛さえあれば全てが上手く行く!【寵愛の恋矢】!」
クメールは両手でハートを作り、ハート型の霊力を飛ばした。
慧留、プロテア、舞、美浪はクメールの攻撃を回避した。
「ムムム…やるのだ…だがしかし!」
クメールはハート型の霊力をねじ曲げ、慧留の方へと向かった。
「【世界逆流】!」
クメールの作り出したハート型の霊力を慧留は消し去った。
「何!?時間回帰か…どうも貴殿と我輩の相性は最悪の様だ」
クメールの能力は自身の霊力を相手にぶつける事で相手を洗脳する能力だ。
しかし、慧留の場合は相手を操っても操る前の時間に巻き戻せるし、さっきの様に技が発生する前の時間に巻き戻す事も可能だ。
「あなたの能力は私には通用しないよ!観念して!」
「確かに我輩と貴殿の相性は最悪だ。しかし!愛は無限!愛は最も強い力なのだ!」
そう言ってクメールは口からもハート型の霊力を放った。
更に両手からもハート型の霊力を放った。
「攻撃が直線じゃな。こんなもの…」
「四宮舞…我輩はロリババアは趣味ではないが貴殿は調教のしがいがありそうなのだ」
「!?」
クメールは舞に狙いを定めていた。
舞の全方位にクメールの霊力が放たれていた。
舞は上へ飛んで回避した。だが、それが命取りとなった。
「はぁ~い?四宮舞、君はこれから我輩のモノだ。【寵愛の恋矢】!」
「しまっ!?」
舞は【戦神】を纏った銃弾をクメールの霊力へと放ったが霊力は銃弾を透過し、舞の頬に直撃した。
「「「!?」」」
舞は倒れ、クメールは爆撃の銃弾を回避した。
「さぁ、立つのだ、舞」
「はい…❤クメール様ぁ~❤」
「そんな…」
「嘘…」
「あの…四宮先生が…」
舞の眼にハートマークが浮かんでおり、うっとりしている状態だ。
「【戦神】」
舞は慧留達に銃弾を放った。
すると、銃弾は爆発し、慧留達にダメージを与えた。
「くっ!?」
「きゃあ!」
「うっ!?」
「【冥海神】」
舞は今度は銃に【冥海神】を憑依させ、水属性を付加した銃弾を放った。
【冥海神】は舞の四大神の銃の中で最も破壊力のある銃弾だ。
「【天時飛】!」
美浪は時を飛ばし、一気に舞へと肉薄した。
舞は接近戦を不得手としている。
「貰った!」
「我輩もいるのだぞ?」
「!?」
美浪の時飛ばしのタイミングを狙ってクメールは美浪にハート型の霊力を放った。
美浪は時を飛ばす能力がある。故に時間の加速などよりも速く行動が出来る。
しかし、発動した後は隙が生まれやすくクメールはそこをついたのだ。
美浪はクメールの【寵愛の恋矢】を受けてしまった。
更に舞の放った銃弾が慧留とプロテアに命中してしまった。
「きゃあ!」
「うわああ!」
クメールは高らかに笑った。
「ははははははははははははは!!!!愉快愉快!!!これで四宮舞と霧宮美浪は我輩のモノだ!!!」
美浪は立ち上がった。
しかし、眼は舞と同じハートマークが浮かんでおり、完全にクメールに洗脳されてしまっていた。
「そんな…」
「美浪ちゃんまで…」
「美浪…この女は幼児体型で割りと好みだぞ…むひひひ…調教のしがいがある…ふふふ…」
「気持ち悪いわね」
「全くだね」
クメールの下卑た笑みがプロテアと慧留にとって気持ち悪い事この上無かった。
「やれ!舞、美浪ちゃん!」
「分かりました!」
「クメール様の為に!」
舞と美浪はプロテアと慧留に攻撃をしてきた。
「慧留!あなたの時間回帰で!」
「あの二人、かなり強い力で洗脳されてる!すぐに元に戻せないよ!」
「なら私が時間を稼ぐわ!」
「駄目だよ!迂闊に行くと、プロテアまで洗脳されちゃう!私しかあの攻撃は防げないんだよ!」
実際、慧留の言う通りであった。
どうやら、クメールのあのハート型の霊力はこちらの物理攻撃を透過する。
慧留の時間回帰の能力でも無ければ対処は不可能に近い。
「むひひひ…さぁて…次はプロテアを支配してやる…四宮舞!美浪ちゃん!やっっておしまい!」
「本当に気持ち悪い奴ね。こんなに生理的嫌悪を覚えた敵は初めてよ」
「くっ…このままじゃあ!」
完全に慧留とプロテアは防戦一方だった。
迂闊に前へ出ていけば先程の美浪の様にクメールに隙を突かれて洗脳されるし二人を元に戻そうとしてもクメールが放っておく筈も無かった。
「ふふふ…終わりなのだ。ああ~、楽しみなのだ。美浪ちゃんをどう調教しようかな??むひひ…ああ、首を絞めて苦しむ顔もみたいな~、いや、身体中を痛め付けるのもいい!あっ、いや!それとも身体に異物をぶちこんでヨガッてる姿を見るのも…いや、ああすればいいか?いや!こうすればいいのか!?分からん!!!う~ん?迷う迷う迷うぞ~????まぁ、ロリババアはどうでも良いが…」
クメールの頭がトチ狂った言葉に慧留も美浪も恐怖を覚えた。
どうやらクメールは予想以上にヤバイ思考の持ち主の様だ。
それにしてもクメールは美浪の事をかなり気に入っている様だ。
彼はロリコンなのは知っているが彼のロリコンの基準はかなり曖昧であるらしい。
先程まで高校生以降はババアと言っていたにも関わらずこれである。
まぁ、舞は対象外らしいが。
見た目だけなら舞も美浪も容姿は優れてるのは同じだし彼の好みに合ってそうなのに何故舞に対してはどうでも良さげなのは訳が分からない。
まぁ、慧留もプロテアもクメールの趣味なぞ理解したくもないのだが。
「はぁ!」
プロテアは鉄の剣で舞を吹き飛ばした。
「????何をやっている??????ロリババア?????」
「申し訳ありません」
「許さん!!!」
クメールは舞の頬にビンタをした。
舞の頬は赤く腫れていた。
しかし、舞は何故か気持ち良さそうにしていた。
「申し訳ありましぇん…❤クメールしゃま…❤」
「全く!これではお仕置きでは無く御褒美だな!!!」
舞は呂律が回っておらずとても嬉しそうだった。
「このロリババアが!戦闘力が高い以外に貴様には価値が無いのだぞ!何をやっているのだ!」
「ハヒン❤ごめんなしゃい❤」
「速く行け!イケ!」
「ハヒン…」
クメールは舞の尻を蹴り、舞を戦闘へと行かせる様にした。
舞はビクンと身体を震わせ、霊力が更に上昇していた。
「な!?霊力が上がってるですって!?」
「あんな如何わしい事しただけで霊力上がるってどういう事!?」
プロテアと慧留はもう訳が分からなくなっていた。
しかし、一つ言えるのはクメールは洗脳した対象の霊力、及び魔力を強化する能力もあるという事だ。
この能力は非常に厄介だ。
「くっ…」
「ふはははは!!!愛があれば何でも出来るのだ!何故戦争は起こるのか…それは愛があるからなのだ!その愛を利用すれば簡単に解決するのだ!!!愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛!!!!!」
クメールは高笑いしながらそう言った。
戦争が起こる要因は様々だが根本的には愛と憎しみにより起こるものである。
愛があるからこそ憎しみが生まれ、憎しみという化け物は新たな戦争や争いを産み出す。
「くっ…」
「どうすれば…」
プロテアも慧留もこのままではじり貧だ。
このままではすぐにやられてしまう。
最初は明らかにこちらが有利だったのにあっという間に数的有利を取られてしまった。
これがプラネット・サーカスの力。
「終わりなのだ」
「お前がな!【氷菓神刀】!」
巨大な氷の刃がクメールに襲い掛かる。
クメールは攻撃を回避しきれず左手が凍り付いた。
しかし、クメールは氷を砕いた。
「時神…蒼…」
「よう、随分好き勝手やってくれたな」
To be continued




