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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第九章】天使輪廻篇
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【第九章】天使輪廻篇ⅩⅩⅠー十二支連合帝国崩壊ー

 蒼達は四神天城(シシンテンジョウ)の外へ出た。

 すると、空にいた人影は徐々に地上へと降りてきていた。

 その男は花柄の和服と右半分が黒髪、左半分が白髪の紫色の三白眼の持ち主だった。

 誰かなんて聞くまでも無い。


「擬流…跡土…」

「ミーの事はもう知ってるみたいだネ。ならば話が速い」

「まさか、そっちから来るとは思いませんでしたよ」

「ああ、本当は退くつもりだったんだけど、用件が二つあってね。………久し振りだネ、みなみ。二百年振りかな?」


「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」


 跡土の言葉に蒼、慧留、プロテア、一夜、屍、澪、湊、厳陣、黒宮、舞は驚愕の表情をした。


「どういう…事だよ?」

「何だ、本人から聞いていなかったのかネ?その女はミーが二百年前の天使大戦で生き返らせた魔族だネ。フェンリルという、この国では珍しい種族だネ」

「何だと?美浪は妖怪なんじゃあ…」

「違うネ。そもそも、狼の妖怪如きが時間操作なんて能力が使える訳が無いだろう?君達もみなみについては多少なりとも違和感はあった筈だネ」


 確かに美浪が普通の魔族で無い事は何となく蒼達も感じてはいた。

 時間を操る狼の妖怪など聞いた事が無い。

 フェンリルはヨーロッパに生息していた魔族であり、ヒューマニックリベリオンにより、数が激減し、色々な地域へと転々と移住した。

 フェンリルは神々に匹敵する潜在能力があるとされ、それを恐れた人々は天使大戦でフェンリルをほぼ完全に滅ぼした。

 目の前にいる美浪以外は。


「ミーが滅ぼした村でその子を見つけ、ミーが生き返らせた。だが、どういう訳か生き返らせた瞬間、どこかへと消えてしまった。生き返りは失敗したとばかり思っていたんだけど…普通に生きていたネ」


 跡土が感心する様にそう言った。


「じゃあ、何だってんだよ…霧宮を自分の仲間にしようってか?」

「最初はそう思ってたんだけど…みなみの意志は固いようだからネ。ミーはコピーを作ったり生き返らせたりする事は出来るけど…心までは縛れないネ」

「じゃあ、何でわざわざ美浪君に会いに来たんだい?」

「自分の作品を一度目にしておきたいだろう?ミーは一応、芸術家ネ」

「意味が分からないな」


 跡土の言葉に厳陣はそう言った。

 確かに、味方にする事も出来ないのにかつて生き返らせた者と会うなど正気の沙汰ではない。


「芸術家の感性は常人には理解出来ないネ。ミーの掲げる芸術とは魂の輝きだネ。ミーはそれを見たいのだネ」


 ますます跡土の言っている事が分からない。


「で?もう一つの用ってのは何なんだよ?」

「ああ、そうだネ。それは…君達に報いを受けて貰おうと思ってネ」

「どう言う事だ?」

「君達はミーの芸術を壊した。ミーが作った作品を…悉く!ミーはね…自分の作品を汚される事が我慢ならないのだネ…だから…君達にはその報いを受けて貰うネ」


 跡土は怒りの形相でそう言った。

 つまり、跡土は蒼達に自分の作ったコピーを壊された腹いせをしたい訳だ。


「この数でそんな事が出来んのか?こっちは八人だぞ?」

「あれ?僕頭数に入ってないよねそれ?」


 蒼がさらっと湊に冷たかった。

 まぁ、確かに湊は戦闘にはあまり役に立たないのだがそれは一夜も同じ筈なのに湊は解せないと思わざるを得なかった。


「君たち…ミーを誰だと思ってるネ」


 そう言って跡土は左手に書いている5の数字を見せた。


「何だ…それは?」

「!? それは…」

「まさか…」


 蒼達は跡土が見せた数字の意味が分からなかったが厳陣と黒宮は跡土の言いたい事が分かった様だ。


「ミーは…プラネット・サーカス。『童話人(グリム)』第五ノ席。傀儡王擬流跡土」


「「「「「「「!?」」」」」」」


 蒼達は愕然とした。

 そう、跡土はプラネット・サーカスの幹部の一人なのだ。

 プラネット・サーカス。詳細不明の謎の組織。


「プラネット・サーカスは四大帝国以外の全ての小国を掌握したネ。近い内に戦争が起こるだろうネ」

「何だと!?」


 そう、プラネット・サーカスは四大帝国以外の全ての小国を支配していた。

 つまり、四大帝国が落ちればプラネット・サーカスに世界征服されてしまうという事になる。


「力の無い小国を従えるのは造作も無い事だネ。数が多いので時間は掛かったがネ」

「あなた達の目的は何です?」

「それはまだ言えないネ。まぁ、君の察しの通り、ただ単に世界征服だけが目的ではない…とだけ言っておくネ」


 黒宮の質問に曖昧な感じで跡土は答えた。


「君達四大帝国は…力を奮い、他の小国を虐げて来た。その結果がこれだネ。そう、君達四大帝国のツケがここで回ってきたんだネ。四大帝国の安寧は他の小国の犠牲の上で成り立っている。君達はそれを…思い知るべきだネ」

「確かに我々の政策は間違っているのかもしれん。しかし、だからと言ってこんな事が許される筈も無い!」


 厳陣だって分かっている。

 多くの犠牲の上で平和が保たれているという事を。

 だからこそ、厳陣は厳陣なりに足掻き続けた。

 擬流跡土の思い通りに…いや、プラネット・サーカスの思い通りにしていい筈が無い。


「そう言うと思ったネ」


 跡土は上空へと浮遊した。


「待ちやがれ!」


 蒼が跡土に攻撃を仕掛けるが、跡土は蒼の刀を白刃取りをして受け止め、蒼を蹴り飛ばした。


「くっ!?」


 跡土は浮遊する速度を上げ、上空三百メートル程の場所にいた。


「さて…これを落とすとするか…」


 跡土は左手から黒くて長い鉄の塊を落とした。


「何ですか?あれは…」


 美浪が指を指してそう言った。

 確かに鉄の塊が落ちていた。

 厳陣と黒宮はすぐにヤバイと気が付いた。


「「皆、伏せろ(伏せてください)!!」」


 厳陣と黒宮が同時にそう言った瞬間、蒼達の世界が白く染まった。






「ケホっ…ケホ…」


 蒼達は咳き込みながら辺りを見回した。

 周囲は土煙ばかりで視界が悪かった。


「皆、無事か!」


 屍がそう言うと皆返事を返した。


「ああ、何とかな」

「私も無事だよ」


 どうやら、皆は無事の様だ。

 やがて土煙が消え去り、景色が見えた。

 しかしー


「な!?」


 蒼が驚愕の声を上げた。

 それもそうだ。何故ならー


「何で…どうして…こんな…」


 美浪がそう呟くのは無理は無かった。

 何故なら、()()()()()()()()()()

 四神天城(シシンテンジョウ)は勿論、ここら一帯全ての建物は消え去っており、あるのは荒野だけであった。


「はぁ…はぁ…はぁ…」

「くっ…」


 厳陣と黒宮が力尽きる様に倒れていた。

 近くには澪と湊、舞もいた。


「常森さん!黒宮さん!」


 蒼達は二人の元へと駆け寄った。


「私と黒宮で…民間人達を黒宮の影に潜り込ませた…しかしー」

「見たところ、トウキョウ全域に被害が出てます…数十万人は恐らく…」


 厳陣と黒宮のお陰で被害は最小限に抑えられたらしいがどうやら、トウキョウ全域がこうなってしまったようだ。

 やがて、跡土は空から地上へと降りてきた。


「思い知ったかネ?これがミーの怒りだ」

「てめぇ…何しやがった!?」

「核融合と霊力を練り合わせて作った特殊な爆弾さ。あれを作り出すのには苦労したが…まぁ、トウキョウを壊滅させるには十分だったネ」


 跡土が天才と謳われる所以を蒼達は垣間見た気がした。

 跡土はその気になれば十二支連合帝国を破壊する程の力があるのだろう。


「ミーと対等の力を持つ『童話人(グリム)』はミー以外にも九人いるネ。分かっただろう?君達十二支連合帝国だけではミーを倒すのは不可能ネ。仮にミーを倒す事が出来たとしても更に九人の『童話人(グリム)』…君達が千度立ち上がろうと…君達の前に勝利は無いネ」


 跡土はそう言ってここから去ろうとした。


「待ちやがれ!」

「何だネ?」

「このままで素直に帰すと思ってんのか!?」

「ふむ…ミーとて先程の攻撃で戦力をある程度削る事さえ出来ればまだ戦ったが…そちらは皆無事の様だからネ?撤退させて貰うネ。ミーはあまり戦闘力は高く無いのでネ」

「ふざけんな!」


 蒼が【χ第二解放(カイザー・エンゲルアルビオン)】を発動した。


「【氷黒楽園(アルカディア・メランアリス)】!」


 蒼が黒刀で跡土に斬りかかった。

 しかし、今度は片手で跡土は蒼の刀を掴んだ。


「甘いネ。来る場所を予測していれば受け止めるのはそう難しく無いネ」

「つっても、手は凍ったがな」


 確かに蒼の刀を掴んでる跡土の左手が凍り付いていた。


「凄いね、君のその力」


 跡土は余裕の表情で蒼から離れた。


「くそ…左手を犠牲にしたか…」


 そう、跡土は左手を犠牲にして蒼から離れたのだ。


「ミーは戦闘能力はそこまで高くないネ。これ以上の争いはミーにとっては不毛ネ」

「ふざけんな!この国をこんなんにして…ただで済むと思ってんのか!?」

「ならば、私怨に刈られている暇があるなら、ここの国の人間や魔族を何とかすべきでは無いかネ?」

「!?」


 跡土はそう言って全速力で逃げた。


「待って!」


 美浪が跡土を追い掛けていった。


「美浪君!」


 一夜も美浪と共に跡土を追っていった。


「俺達も…」

「いえ、ひとまずは彼等に任せましょう。今は彼を追うより国の建て直しが優先です」

「くそ…!」


 跡土を追うのにそこまでは人数は割けない。

 跡土によって十二支連合帝国の本部がある四神天城(シシンテンジョウ)は愚か、トウキョウその物が壊滅的被害を受けてしまった。

 勿論、蒼達が住む苗木日和も粉々に吹き飛んでいた。

 このままでは十二支連合帝国は格好の的だ。

 蒼は空を見上げていた。






「まさか…君達がミーを追い掛けるなんてネ…」

「逃がしません…」

「ふっ…これは…不味いネ…」


 さっきの蒼の一撃で跡土はかなりのダメージを受けていた。

 このまま戦えば間違いなく跡土が負けてしまうだろう。

 ならば…奥の手を使うしか無いだろう。


「何を…笑ってるんですか?」

「いいのかネ?ミーが死ねば…君の魂も消えてしまうネ」

「!?」

「何…だって…」


 美浪に追い付いた一夜が驚愕の表情をした。

 それはそうだ。跡土を殺せば美浪も消えるというのだ。


「当然だろう…みなみはミーが生き返らせたネ。ミーが死ねば…ミーが造り上げた作品は全て消えるネ…」

「そんな…」


 一夜は跡土を見つめた。

 一夜の平行世界を見る能力である程度跡土の言ってる事が本当かどうかを類推出来る。しかしー


「嘘は…吐いてないみたいだね…」

「この期に及んで嘘が通じるだなんて思っていないネ」

「つまり、本当に君を殺せば、美浪君は消えてしまうんだね」

「ああ、その通りだネ。それでも…君達はミーを殺せるかネ?仲間を殺してまでミーを殺せるかネ!?」


 跡土はそう叫んだ。

 跡土の行動は…卑劣だ。

 しかし、効果は絶大であった。特に一夜に対しては。


「そんなの…そんなの…関係ないです!あなたは…いずれ大きな敵になる…倒さないと行けない…絶対にこの場で倒す!」


 しかし、美浪は迷いを振り切っていた。

 跡土の眼前に迫っていた。


「な!?」


 流石に跡土も美浪がこんな簡単に迷いを振り切るとは思っていなかったらしく驚愕した。

 しかし、美浪の拳は跡土に届く事は無かった。


「一夜さん!?」


 そう、一夜が美浪の両肩を挟み、動きを止めたのだ。

 だが今の美浪の速力で一夜が追い付く筈がない。美浪はそう思っていたが一夜には霊呪法がある。

 それで美浪に追い付いたのだ。


「君は…絶対に死なせない。霊呪法第九十四番【瞬雷光(しゅんらいこう)】」


 一夜はそう言って跡土の前から美浪を連れて逃げた。


「君の優しさに敬意を表するよ。苗木一夜」


 跡土は皮肉混じりにそう言った。

 まさか、自分が殺そうとしていた相手に結果的に助けられる事になったのだ。

 皮肉も言いたくなるだろう。


「だが、君は選択を間違えたネ。みなみにミーを殺させておくべきだった…」





「一夜さん…何で!?」

「君を死なせる訳には行かないよ!」

「どうして!?どうしてそんなに私を助けようとするんですか!?」

「そんなの決まってるだろ!君は…」


 一夜は美浪を死なせる事なんか出来ない。

 それで仮に戦いに勝利しても意味が無い。

 少なくとも一夜にとっては何の意味も無いのだ。


「僕の…一番最初のお客さんなんだから」

「!?」


 そう、美浪がいたから…苗木日和は始まった。

 そんな美浪を見殺しにするなんて一夜には出来ない。


「そうですね…一夜さん…意外にバカですからね…」

「言ってくれるね…」


 美浪は涙目になりながらそう言った。

 一夜は頭がいい。しかし、他の人達と違って時々突拍子も無いバカな事もする。

 美浪は…嬉しかった。

 一夜が命懸けで自分を助けてくれた事に。

 しかし、時間の問題だ。

 擬流跡土はプラネット・サーカスのメンバーだ。

 必ず蒼達と戦う事になるし戦いは避けられない。

 だからこそ…


ー擬流跡土は…私が倒す!


 美浪はそう心に誓った。


「君は死なせやしない。絶対に!」


 一夜は美浪にそう言った。







「成る程、理解した。つまり、君は十二支連合帝国に不穏な動きがあったという情報を入手し、独断で先行した…という訳か」

「ああ、そうだ」

「…嘘を吐くならもっとマシな嘘を吐け」


 ここはUSWの闇魔殿(オプスデラカストラ)だ。

 スープレイガは蒼を倒す為に十二支連合帝国へ行っていたのだがそこに常森厳陣のコピーと遭遇し、スープレイガは見事に黒宮大志のコピーを撃破したのだ。


「嘘は行ってねぇ!」

「いや、コピー人間とやら本当なのかもな。しかし、君はあくまで時神蒼と戦いたかっただけだろう?」

「くっ!?」


 ドラコニキルはスープレイガの考えはお見通しの様だ。


「まぁいい。十二支連合帝国に何らかの事件が起こり、貴様は巻き込まれたという訳か…」

「プラネット・サーカスかしら?」

「ふー、そうかもしれないね」

「あのピエロ共の事か?」

「となれば…近い内に四大帝国会議が開かれるかもな」


 グリトニオンが言った四大帝国会議とは不定期に開かれる四大帝国の代表が集まる会議であり、話し合いの場である。

 プラネット・サーカスは以前から問題に上げられており、今回、仮に十二支連合帝国に攻撃を仕掛けていたのならば会議を開かざるを得ないがー


「また、十二支連合帝国か…あの国はどうなっている?」


 ドラコニキルが呆れる様にそう言った。

 三年前にも四大帝国会議が行われたがその時も十二支連合帝国がらみだった。


「つくづく…時神蒼があの国に来てから厄介な問題があの国を中心に起こっている様だな…」

「はっ!おもしれぇ…」

「いや、全然面白くないわよ、レイ」


 ドラコニキルとアルビレーヌは心底面倒臭そうにしていたのに対してスープレイガは嬉しそうにしていた。

 いずれにせよ、十二支連合帝国は壊滅的な被害が出ている。


「面倒な事になってきたな…」






 ジェラートは神聖ローマへと戻っていた。

 現在、既に海を越え、迷いの森にいる。

 天使城(セラフィム・ヴァール)に辿り着くまでもう少しだ。


「ん?君は…」


 ジェラートは目の前に誰かいる事に気が付いた。ローグヴェルトだ。


「お久し振りです。ジェラート様」

「うん、君と出会ったのは三年前だね」

「あの頃に比べて…随分変わりましたね」

「そんな事は無いよ~」

「いえ、あなたは比べ物にならないくらい強くなりました」

「ふふふ…それほどでも…あるかな~?」


 ローグヴェルトの言葉にジェラートが少し照れていた。


「それが…あなたの本来の力なんですね…」

「まぁ、そうとも言えるし…そうでないとも言えるかな~?で?君は私をどうしたいの?ルミナス辺りに私を始末するように頼まれた?」

「いえ、そう言う訳では…」

「けど、ルミナスは明らかに私を警戒している…それは間違い無いよね?」

「それは否定しません」


 ジェラートは深いため息を吐いた。

 まぁ、せっかく力を取り戻したと思ったらルミナスがジェラートを警戒しているのだ。 

 力を取り戻したら取り戻したで新たな拘束が生まれてしまった。


「なら私がセラフィム騎士団に入れば大丈夫なの?利害の一致って事でさ?」

「いいえ、あなたはセラフィム騎士団にいれるつもりはありません。しばらくの間、あなたは私と共に行動して貰います」

「はぁ~、まいっか。どうせ私は今すぐに事を動かせないし…ローグヴェルトが私の暇潰しの相手をしてくれるなら」

「あまり御期待には添えそうにはありませんがそう言う事です」

「君を倒す事は出来てもルミナスを倒すのは無理ゲーだからね~」


 ジェラートはそう言った。

 ルミナスはそれ程までに規格外の力を秘めているのだ。

 恐らく、力を取り戻した今のジェラートですら、ルミナスを倒す事は難しいだろう。


「…精々、あなたに寝首を掻かれないよう、努力しますよ」

「ふふふ…頑張ってね☆ローグヴェルト」


 ジェラートは退屈していた。

 ずっと引きこもっていた。

 何百年も…何百年も…

 だが、その退屈した日々はようやく終わりを告げた。

 確かにそれによってまた別の拘束が生まれてしまったが、ジェラートは今、間違いなく楽しんでいた。


「しばらくは退屈しなさそうだ…」


 ジェラートは楽しげにそう呟いた。






 十二支連合帝国の被害は甚大であった。

 厳陣と黒宮の尽力のお陰で被害を最小限に抑える事は出来たのだがそれでも被害を完全に抑える事は出来なかった。

 トウキョウは壊滅的被害を受け、十二支連合帝国は実質破壊されてしまった。

 たった一人の存在、擬流跡土によって。

 彼はプラネット・サーカスの中心メンバーだと言っており、他にもまだ多くの仲間がいるという。

 つまり、跡土の様な化け物がプラネット・サーカスには何人もいるというのだ。

 これは最早、十二支連合帝国だけで手に追える組織では無い。

 果たして、四大帝国全ての力を終結させた所で果てして勝てるかどうか。

 現在、トウキョウの復興作業が続いているが苗木日和は勿論、四神天城(シシンテンジョウ)も崩壊している。

 完全修復にはまだまだ時間が掛かると言う。


「酷いモノだね…」


 一夜がそう呟いた。

 現在、蒼、慧留、一夜、屍、美浪、プロテアの六人は苗木日和跡地にいた。

 そこにあった蒼達が住んでいたマンションは粉々になっていた。

 形ある物はいずれ朽ちる…というがその様を見るのは何とも悲しいモノがある。

 自分が住んでいる家、故郷が破壊されるのは特に心に来る。

 それは、人も魔族も同じなのだ。


「俺達が…絶対…あいつらを倒す」

「そうだね」

「今度はもう…負けないわ」


 蒼、慧留、プロテアがそう呟いた。

 美浪はずっと黙っていた。

 一夜と美浪は美浪の事を話していなかった。

 跡土を殺せば美浪も死ぬという事を。

 一夜は必ず美浪を助ける方法を見つけると言っていたが、美浪はもう、跡土を逃がすつもりは無かった。

 今度…今度会ったら確実に倒す。それで例え、自分が死ぬことになっても。


「形だけなら戻す事ならいくらでも出来る…だが…また壊されたらそれまでだ」


 屍はあの後すぐに薊達の安否を確認した。

 全員、無事だった。

 屍の錬金術さえあれば苗木日和も修復は可能だ。

 しかし、これから恐らく、プラネット・サーカスと大規模な戦争が起こる。

 いくら直した所でまた壊されては意味がない。

 だから屍は何もしなかった。

 戦争が始まる前というのは…不穏なモノだ。

 不気味な程に静かなモノだ。


「戦争が始まる…戦争はいつだって得るモノより失うモノが多い…けど、負ければそこで終わりだ」


 そう、勝てば官軍負ければ賊軍。

 所詮この世は勝者が正当化され、弱者が虐げられる。


「皆、行こうか」

「ああ」

「うん」

「おう」

「はい」

「ええ」


 蒼達は苗木日和跡地を後にした。





 ここは大韓連邦のとある洞窟だ。

 跡土はこの地にやって来ていた。

 ここにプラネット・サーカスのアジトがある。

 とは言え、ここは数多くあるアジトの一つに過ぎない。

 跡土が洞窟内に行くと多くの人影があった。

 プラネット・サーカスの幹部達、『童話人(グリム)』達だ。


「遅かったじゃあ無いか、跡土(*´ω`*)」

「ああ、どっかの誰かさんがミーを助けなかったせいだネ」

「まぁまぁそう言わず、皆揃っているよ( ´,_ゝ`)」


 髏奇(るく)が煽り口調で跡土にそう言った。


「相変わらず…ムカつく話し方をするネ…ロキ」

「君が僕の本名を呼ぶなんて久し振りだな(*´∀`)」

「黙ってくれるかネ?」

「済まないが僕が主催者だからね。黙る事は出来ない┐( ̄ヘ ̄)┌」

「………」


 跡土は髏奇の言葉を無視していった。


「ふぅ、これで…ようやく全員揃ったね」

「貴殿なら無事だと思っていたのだ」

「黙れロリコン」

「我輩は子供が好きなだけなのだ!」


 跡土はクメールに対して冷淡に接した。

 跡土は心底面倒臭そうにしていた。


「ワタクシはあなたが死んでなくて少し安心しましたわ。あそこで死なれては面白くありませんでしたし」

「アリアナ、君は相変わらずの減らず口だ」

「お褒めにお預かり光栄ですわね」


 アリアナに対しても跡土は冷淡に接した。

 割りと跡土はメンバーとの関係が淡白な様に見える。

 しかし、皆は跡土という人物を知っている。

 これが跡土の他人に対するせっしかたなのだ。


「他の六人も揃っているよ(*´∀`)さぁ、君も座って( ´,_ゝ`)」


 跡土以外は全員席に着いていた。

 髏奇、跡土、アリアナ、クメール以外の六人は顔が暗くて見えなかった。

 プラネット・サーカスの幹部である『童話人(グリム)』は全員で十名だ。

 そして、その十名全員が手配書(アオス・テーター)Sランクの重罪人だ。

 元々プラネット・サーカスは小組織であった。

 しかし、四大帝国以外の小国を取り込む事で勢力を拡大していった。


「さてと…今回は跡土が頑張ってくれてね…なんと、十二支連合帝国を壊滅状態にする事に成功しました!o(^o^)o」

「まぁ、主要人物は誰一人殺せなかったがネ」

「それでも十二支連合帝国は事実上壊滅した…これは大きな戦果なのだ!」

「だから君は黙ってくれロリコン」

「跡土!我輩の扱いが酷くない!?」


 クメールがそんな事を言うが跡土は勿論、髏奇も無視した。


「まぁ、ミーはあの連中に作品を多く潰された事に憤っただけだネ」

「全く…道具を壊されただけで国一つ消し去るなんて正気の沙汰じゃないね┐( ̄ヘ ̄)┌」


 髏奇はやれやれといった感じでそう言った。


「所で、オーディンは?」

「口を慎みなさい!跡土!オーディン様とお呼びなさい!」

「アリアナ、オーディンの呼び方なんてどうでもいいよ┐( ̄ヘ ̄)┌」

「よくありませんわ!あなた達はオーディン様に対する礼儀がなっていませんわ!」

「まぁ、そういう信仰心は人それぞれじゃないか(-.-)。あまり気にしない方がいいよ(*´∀`)僕ら、仲間じゃないか\(^o^)/」

「こんな時だけ仲間の主張をするのはあなたらしいですわね、ロキ」

「テヘペロ(^o^)/」


 髏奇は茶目っ気のある顔でそう言った。

 皆は心底髏奇に対してウザそうな顔をしていたが髏奇はスルーした。

 そもそも髏奇がウザい目で見られるのなんて慣れっこなので髏奇自身、そこまで気にしていなかったりする。


「はぁ~、まぁいいですわ。とにかく、十二支連合帝国には打撃を与えられた…という事ですわね」

「まぁ、そうなるね。所で跡土、左腕は大丈夫かい?(--;)」


 髏奇は跡土が蒼によって左腕を凍り付けにされている事を知っていた。

 更にその凍り付いた左手は粉々に砕けていた。


「問題ないネ。すぐに改造(なお)せる」

「そうか、ならば良かった(*´∀`)」


 髏奇は適当にそう言った。


「さて、もう少しで祭りが始まる。恐らく、今までで一番楽しい祭りになるだろうね」

「オーディン様の素晴らしさを教えるにはいい機会ですわ」

「ミーの芸術が最強だネ」

「わ…我輩は子供だけの国を創る!」

「まぁ、ここにいる者達は趣味、嗜好、性癖、信仰心、価値観、考え方、何もかもがバラバラだ。けど、そのバラバラな個性でありながら僕らがここまで来れたのは…僕達が全員、快楽を求めているからだ!」


 そう、ここにいるメンバーは全員何もかもがバラバラだ。

 にも関わらず、四大帝国と同等の規模にまで勢力を拡大できたのはここにいる全員が共通する点があるからだ。

 それは…狂っている事。

 そう、ここにいる者達は全員、どこか狂っている。

 だからこそ、彼等は恐ろしく、強いのだ。


「僕達はサーカスの団員、一人一人が道化、ピエロだ!ピエロは常に楽しく面白く舞台を茶化す!気に入らないのであれば野次を飛ばし、楽しい事があれば面白おかしく眺め続ける!だが、今回は違う!僕達は僕達の快楽の為に舞台へと上がる!( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆」


 プラネット・サーカスは今までは傍観しているばかりであった。

 楽しい事や面白い事を眺めているだけで脳汁が文筆されていた。

 だが、今回は自分達から舞台へと上がるという初の試みをする。


「楽しい事にはなるだろうが危険が伴う。勝てば僕らは生き残り、負ければ死ぬだろう!けど…楽しもう…生を…死を!苦痛を!苦しみを…!狂乱を、絶望を、希望を!(* ̄∇ ̄*)」

「そうだネ。それは同感だネ」

「楽しむ…それがオーディン様の教え!」

「やりたい放題…好きな事をするのがこの組織のモットーなのだ!」


 プラネット・サーカスが今、一つとなった。

 狂っている、端から見れば頭がおかしい事この上ないだろう。

 しかし、とても恐ろしく、強く強大だ。

 間違いなく、蒼達の最大の敵になるだろう。


「さぁ…戦争(パーティ)の時間だ(* ̄∇ ̄*)( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆(T_T)(゜ロ゜)(´д`|||)(#`皿´)(*´∀`)」


 髏奇が眼を血走らせながらそう呟いた。





To be continued

 これで第九章は終了です。残す所、後二章になりました。てか、いきなり十二支連合帝国が潰れました。急展開過ぎですね。

 次の章が終了すれば最終章に入ります。今回の話は所謂ループモノで、何回も主人公が死にましたね。ここの所蒼の出番がわりと制限されてます(笑)こうなってしまったのは蒼は既に作中最強クラスの力を持ってて彼が出張ると殆どの敵がすぐにやられてしまうので動かし辛くなってしまったからです。だからよっぽどのチート持ちじゃないと蒼とまともに戦えない為、こういう事になったんですね(笑)

 今回は自分の偽物と戦うという内容と蒼を死のループから助け出すという二本柱で物語を展開しました。コピーと戦うという内容は前々から考えてたんですがループモノを取り入れようと思ったのは最近で自分でも頭がこんがらがりました(笑)やっぱ、安易にループモノを書くものではないですね。失敗します。

 次の章はプラネット・サーカスが本格的に動き出しますのでお楽しみに。それにあたって次に投稿するのはかなり期間が空きます。というのも今、第十章を書いてるのですがかなり長い話で未だに第十章を書き終えておらずあまり進んでません。今までの章で恐らく最長篇になるかと思われます。一番長かったのは長らく第三章であるUSW篇だったんですがそれを余裕で越えてます(苦笑)その分色々と謎が明らかになる(と思う)ので楽しみにしていて下さい!それではまた!

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