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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第九章】天使輪廻篇
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【第九章】天使輪廻篇ⅩⅥーtrue routeー

 プロテアは蒼のいる繁華街に向かっていた。

 厳陣、黒宮、舞のコピーに見つからない様に彼等のいるルートとは別ルートでプロテアは移動した。

 そして、プロテアは蒼を見つけた。


「フローフル!」

「? プロテア?」

「良かった…ここは危険だから行くわよ」

「え?あっちょ!」


 プロテアは蒼の言葉を聞かずに【時空加速(ワクター・サタリア)】を使い、一夜の家へと向かった。




「な!?時神蒼を見失った!?」


 金髪の女性が唖然としていた。

 先程まで蒼の居場所を捕捉していたのに見失った。

 今まであの女に何度も何度も邪魔をされた。


「あの女…どうやって私の行動を…!」


 忌々しげに彼女はそう言った。

 そして、彼女は約二月前の事を思い出していた。

 彼女はドーラーにより蘇生された。

 そして、ドーラーは今、十二支連合帝国のどこかにいる。

 しかし、ドーラーと彼女はあくまでも別行動を取っている。

 ドーラーが何故生き返らせたのかは分からない。

 だが、これは好機だ。何としても蒼を殺す。


「私は…アラルガンドの仇を…取る!」






 あれから一時間後、プロテアは蒼と慧留、屍と美浪を一夜の家に集めた。


「おい、何なんだよ?何で俺らを呼び出したんだよ、一夜?」

「そうだね…まずはこれから起こるであろう事について説明するよ」


 一夜は改めて説明を始めた。


「単刀直入に言うと、蒼はこれから死ぬ」


「「「「!?」」」」


 一夜の言葉に蒼と慧留、屍と美浪は驚いていた。

 無理もない、いきなり死ぬなんて言われたらそんな反応にもなるだろう。

 だが、分からない事がある。


「何で…そんな事が言いきれるんだよ?」


 蒼が一夜に聞いてきた。

 だが、その答えに答えたのはプロテアだった。


「私が…何度も見てきたからよ」

「? どういう事だ?」


 今度は屍が聞いてきた。


「君達はプロテアの能力を知っているだろ?プロテアは時を渡る力がある。そこで蒼の死を何度も見てきた」

「因みに、フローフルがこの二週間弱で殺された数は十三回よ。しかも同じ敵にね」

「な!?」

「その度にプロテアが蒼を守っていたんだよ」


 驚いたのは蒼だけではない。

 慧留も屍も美浪も驚いていた。

 自分達が知らない間にいつの間にか状況は動き出していたのだ。


「だけど…おかしくねぇか?時神がそんなに連続で殺されるなんて…」

「屍の言う事は最もだ。だから、今から蒼が死ぬ原因になったモノを取り除くよ。それには慧留ちゃんと屍の協力がいる」

「どうすればいいんですか?」

「まずは慧留ちゃんの時間回帰で蒼の時間を巻き戻してくれ」

「分かりました。【拒絶王女(ルキフグス)】」


 慧留は紫色の錫杖を取り出し、時間の巻き戻しを開始した。

 そう言えば、イシュガルドとの戦い以降、慧留は蒼の時間を巻き戻していなかった。

 ヘレトーアの戦い以降はアポロが主に蒼の治療を行っていたからだ。


「!? 何?これ…!?」


 蒼の身体から何か黒いモノが出現していた。


「屍!君の錬金術でその物質と蒼を分離させてくれ!」

「分かった!」


 屍は蒼の両手に手を置き、黒いモノと蒼の身体を分離した。

 すると、黒い物質は黄金の矢となって蒼の身体から離れて地面に落ちた。


「何だ?これは?」

「それが…蒼を殺したモノだよ。敵の合図でその矢が発動して蒼の心臓部分に出現して蒼の霊力を消失させていたんだよ。蒼が何度も何度も殺されていた理由はそれさ」

「いや、こんなのいつの間に…」

「ヘレトーアの戦いの時に付けられたのさ」

「ヘレトーアの時…だと?」

「ああ、アラルガンドだ。蒼、君はアラルガンドに何かされなかったかい?」

「何か……!?」


 蒼はアラルガンドとの戦いを思い出していた。


『氷騎士…いや、フローフル・ローマカイザー…貴様はいずれ………………()()()()()


「心当たりがある様だね」

「なら、アラルガンドの仕業って事か?」

「いや、アラルガンドはあくまで仕掛けをしただけさ。因みにこの事を一番最初に嗅ぎ付けたのはスープレイガだ」

「何でスープレイガが出てくるんだよ」

「それについては後で話す。問題は次だ」


 一夜は改めて説明をした。


「蒼を何度も何度も殺したのは、金髪の長い髪の長身の女性だ。そして…彼女の名はーケルビエル。アラルガンドの持っていた黄金の天使の名だ」


「「「「「!?」」」」」


「これで、彼女が蒼を執拗に殺そうとする理由が分かっただろう?」


 そう、彼女…ケルビエルの目的は主であるアラルガンドを殺された復讐だ。

 プロテアもその事実は知らなかったので驚いていた。


「何で一夜がそんな事を…」

「僕の能力だよ。僕の力は平行世界…つまり、この眼で見たモノのあらゆる可能性を見る事が出来る。過去を見る事も出来る」

「お前…いつの間にそんな能力を…」

「ジェネミさんと話した時があったろう?その時さ。それでプロテアが一人で蒼の死を回避しようとしている事に僕が気付いて協力して今に至る訳さ」

「何で…プロテアはその事を誰にも言わなかったの?」


 慧留が疑問を浮かべた。

 確かにそうだ。歴史を変える…なんて話は確かに信じがたい事ではあるがプロテアの能力は特に慧留は直でその力を見ている。

 この事実を隠す理由が無い。むしろ、他の者達…特に蒼には伝えた方が良かった筈だ。


「それは出来なかったのよ」

「出来ない理由が二つあってね。一つは時間の拘束力。この力のせいでプロテアは君達に()()()()()()。時の力はそれ程強力だという訳だね。僕の場合は自力で気付けたから時の力の枠から外れていたに過ぎない。そして…もう一つ…どうも、今回の事件はケルビエルだけの一枚岩では無い様なんだ」

「? どういう意味ですか?」


 美浪は疑問を浮かべた。


「君達はまだ遭遇していない様だが、何者かが僕達の偽物を作って暗躍している様なんだ」

「偽物?」

「ええ、今の所、セルリアの偽物とアルビレーヌの偽物と遭遇したわ。この二人は私が倒したけど、他には常森厳陣、黒宮大志、四宮舞のコピーも確認されてるわ」

「因みにルバートの偽物も確認されてるよ。この偽物の厄介な所は本人と全く同じ能力と戦闘力を持っている所でね、しかも性格まで本人のそっくりそのままだから見ただけで判別するのはほぼ不可能だ」

「お前らはどうやって判断したんだよ?」


 セルリアの場合は研修中の為、四神天城(シシンテンジョウ)から出ている筈が無い事をプロテアがたまたま知っていたからだ。

 一夜の場合は自身の能力で相手の平行世界を見て、偽物だという事を察知しているからだ。

 これらの事を一夜がまとめて説明をした。


「成る程な…つまり、今現状、偽物か本物かを判別出来るのは苗木だけって事かよ」

「そうなるね…まぁ、今僕達がやる事はまず、ケルビエルの対処だ」

「そうですね、蒼はもう、ケルビエルに即死させられる事は無いですし」


 ケルビエルが蒼を狙っている以上、ケルビエルとの戦いは避けては通れないだろう。


「ケルビエルは…俺が倒す」

「蒼一人で大丈夫なの?」

「私はフローフルに着いて行くわ」

「わっ…私も行きます」

「というかこれは皆で行った方がいいね」


 一夜がそう言うと皆はコクりと頷いた。


「だけど、他の敵が襲ってこないとも限らないわ。用心して行きましょう」


 プロテアがそう言うと六人共外に出た。


「やはりここにいたか」


「「「「「「!?」」」」」」 


 蒼達が丁度外に出た瞬間、厳陣がいた。

 厳陣だけでは無い。舞と黒宮もいた。


「これは…面倒な事になったね…」

「おい…まさかこいつら全員…」

「そのまさかさ、屍。全員偽物だ!」


 一夜は失念していた。

 彼等はコピーした者の記憶まで引き継いでいる。

 つまり、一夜の家を特定出来るのは当たり前だ。


「ここは私と美浪ちゃんと屍で何とかするよ!」

「そう言うこった。速く行け!時神!」

「時間は稼ぎます!」

「済まない!」


 蒼は一夜とプロテアと共にケルビエルの元へと向かった。


「舐められたモノですね。君達如きが我々を倒せるとでも?」

「倒せるとか倒せないとかじゃねーよ!」


 屍は壁に手を当て、そこから槍を生成した。

 そして、屍は槍を黒宮目掛けて投擲した。


「お得意の錬金術ですね」


 黒宮は屍が投げた槍を軽々と回避した。


「【戦神(クー)】!」


 舞は屍に爆発する弾を放った。


「!?」

「【世界逆流(レイウェルティ)】!」


 しかし、慧留の時の巻き戻しにより、舞の撃った弾が撃たれる前の時間に戻り消えた。


「【炎帝爆殺(ナシャート・ラハブ)】!」


 厳陣が慧留と屍に炎の刃を向けた。

 しかし、美浪が厳陣を蹴り飛ばし、二人は無事だ。


「くっ…」

「思ったよりいい連携をしますね」

「そうこなくてはの」


 屍はスマホ型の石を取り出した。

 【アルダメルクリー】という道具であり、この道具は屍の霊力に反応してあらゆる物質を錬金する事が出来る。

 更に指定した物質の解析も可能だ。


「【物質解析(マルク・アナライズ)】」


 屍は彼等の体構造の解析を始めた。


「こいつら…全員紙で身体が構成されてやがる…」

「紙!?」

「式神の類いですかね?」

「多分そうだ」


 偽物とは聞いていたがまさか式神とは。

 式神だけで相手の性格と能力をそのままコピーするとは相手は相当の手練れだ。


「さて…どうします?」

「済まないが…我々も君達といつまでも相手をしている時間は無いんだ」

「それはこっちの台詞だよ!御出で!【黒時王子(ルキフゲ・ロフォンカレ)】!」


 慧留は【悪魔解放(ディアブル・アーテル)】を発動した。

 慧留の全身は黒い喪服となっていた。

 更に背中には骨と黒い羽根で出来た巨大な一対の翼があった。

 瞳は紫色に変化しており、黒紫色の錫杖が握られていた。


「【冥界創造(プラエテート)】!」


 厳陣達の周囲に無数の剣が囲んでいた。

 慧留の【黒時王子(ルキフゲ・ロフォンカレ)】の能力は過去改変であり、慧留は厳陣達の周囲に無数の剣が覆っているという過去に改変したのだ。

 無数の剣が厳陣達に襲い掛かる。

 しかし、三人は慧留の攻撃を軽々と回避した。


「あなたの過去改変は絶対では無い。改変する力がそこまで強く無いので霊圧や魔力で抑え込む事も可能です」


 黒宮は簡単に言うが慧留の過去改変を霊圧や魔力で抑え込むなど簡単な事では無い。

 これは厳陣と黒宮と舞が圧倒的な力を持っている事に他ならない。


「【冥海神(カナロア)】!」


 舞は【冥海神(カナロア)】の銃弾を放った。

 【冥海神(カナロア)】の銃弾は絶大な貫通力があり、防ぎきる事は不可能だ。


「【世界逆流(レイウェルティ)】!」


 慧留は過去改変で舞の銃弾を消し去ろうとするが無理だった。

 慧留の過去改変の力をも貫通していた。


「くっ!」


 慧留は舞の銃弾に直撃した。

 脇腹を貫かれ、吐血した。


「あなたの力は面倒だ。優先的に殺させて貰いますよ!」


 慧留に黒宮が畳み掛ける。

 しかし、黒宮の攻撃を美浪が押さえ込んだ。


「【神掛(かみかかり)】!」


 美浪は自身の身体に神の霊力を纏い、黒宮を蹴り飛ばした。


「おやおや…君は…」

「?」


 一瞬、黒宮では無くなった気がした。

 いや、今眼の前にいるのは黒宮の偽物なのだが黒宮の偽物は偽物で自我がある。

 だが、さっき、黒宮の自我が一瞬失っていた気がしたのだ。


「あなたは…一体…」

「そうか…君が…ふふふ…」


 黒宮は美浪の事を知っている様な口振りだった。

 しかし、今はそんか事を考えている場合では無い。


「隙だらけだぞ」


 美浪の後ろに厳陣が既にいた。


「!?」

「うおりやぁああ!」


 厳陣は屍の既による攻撃に気が付き、咄嗟に避けた。


「さっきの攻撃は…当たったら不味かったよ」

「何言ってんだよ?素手の攻撃だぞ?」

「錬金術を使って戦う君が何故わざわざ素手で戦う必要がある?」

「ッチ!」


 屍は素手で触れたモノを破壊する能力がある。

 だが、それは錬金術の一つであり、錬金術の崩壊の力を最大限に使った力だ。

 慧留が厳陣と屍の間に割って入り、厳陣に錫杖で攻撃した。

 決まれば相手を一撃で倒せるのだが、欠点も存在し、素手で相手に触れなければならない。その為、攻撃が回避されやすい。

 更に相手の体構造を解析しなければならない。その為にさっき【アルダメルクリー】で相手の身体の解析を行っていたのだ。

 更に手からしか攻撃が出来ない為、両手を失えば終わりだ。


「【豊神(ロノ)】」


 舞が屍に銃弾を放った。


「【時崩(トキクズシ)】!」


「「「!?」」」


 屍は舞の銃弾の時間を止めた。

 屍の技の一つである【時崩(トキクズシ)】はあらゆる物質の時間のみを止める事が出来る。

 屍は舞のいる場所まで移動した。

 舞は銃弾を放つ。


「無駄だ!」


 屍は再び舞の銃弾を止めた。

 屍の【時崩(トキクズシ)】は指定された範囲内であれば全ての物質の時間を止める事が出来る。

 つまり、銃を使って攻撃する舞とは相性がいいのだ。


「気を取られ過ぎですよ」


 舞を守る様に黒宮が出てきた。

 黒宮は屍の影を操った。


「【身代わりの影(スキア・シルト)】」


 屍は自分の影を素手で掴み粉々にした。


「駄目!屍!」


 慧留が止めに入るが遅い。

 屍は既に自身の影を粉々にしてしまっていた。


「ぐっ!?」


 屍の全身が血塗れになっていた。

 【身代わりの影(スキア・シルト)】を破壊すると与えたダメージがフィードバックする。


「【影境界(シャドウ・オーバー)】」


 黒宮と屍の地面から影が巨大な影が出現した。


「【天時飛(アマシタカ)】!」


 黒宮はいつの間にか美浪に殴り飛ばされていた。

 美浪の【天時飛(アマシタカ)】は時を数秒だけ飛ばす事が出来る。

 屍は再び立ち上がり、舞に接近した。


「!?」


 屍は舞の身体に触れた。そしてー


「【滅死ノ魔錬手(メツイノマテ)】!」


 舞は身体中が高圧電流を流された様な感覚に襲われた。

 舞の四肢は吹き飛び、吐血していた。


「あ"…」


 舞は倒れた。

 屍も片膝を着いていた。

 屍も先程の黒宮の攻撃によってかなりのダメージを受けていた。

 舞はそのまま身体が粒子となり消えていき、紙人形に戻っていた。


「【影吸収(スキア・ドレイン)】」


「「「!?」」」


 屍と慧留、美浪は突然身体から力が抜け、地面に伏した。


「私の影に踏んでいる者の体力を強制的に吸い上げる技ですよ。少々発動までに時間が掛かりましたが…」


 黒宮は最初からこれを狙っていたのだ。

 確かに慧留達の地面には黒宮の影が広がっていた。

 慧留は過去改変により影を無かった事にしようとするが力が入らなかった。


「無駄ですよ。影に捕まっている以上、君の力は上手く使えません。とは言え、舞さんがやられるのは予想外でしたのでよくやったと思いますよ」

「さて…では、終わらせるとするか」


 厳陣がそう言って右手を上げた。

 すると、空から巨大な炎の隕石が出現した。


「な!?」

「あんなのが落ちたら…!」

「くっ…」


 あれ程の隕石が落下すればここら一帯どころか街一つ吹き飛んでしまう。


「【炎帝流星群(ナシャート・ハガル)】」


 隕石が落下しかけたその時ー


「【滅殺虹剣(サンダルフォン)】」


「「「「「!?」」」」」


 隕石は何者かによって粉々になって消滅した。

 慧留は隕石を破壊した人物を直視した。

 長い黒髪と紫色の瞳を持つ、中世風の服を着ていた。

 慧留はその姿に見覚えがあった。

 昔とは雰囲気が変わっていたが慧留はその人物が誰なのかすぐに分かった。


「ロー…グ…」


 慧留がローグヴェルトの名を呼ぶとローグヴェルトは慧留の方へと振り向いた。


「エル…久し振りだ」

「生きて…」


 慧留は目頭が熱くなるのを感じた。

 死んでいたと思っていた親友が生きていたのだ。嬉しくて当然だ。


「おやおや…これは…神聖ローマの…」

「これは一体どういう事だ?黒宮卿、常森総帥」

「違う!ローグ!眼の前にいるそいつらは偽物なんだよ!」

「偽物?その偽物とやらは他にもいるのか?」


 ローグヴェルトの質問に慧留はコクりと頷いた。


「成る程な…つまり…俺が倒したスープレイガも偽者だったのか…」

「一人増えたからと言って関係ありませんよ!あなたは…私の影を踏んでるんですから!」

「!?」


 ローグヴェルトは地面に伏した。


「これは…」

「この影を踏んでいる者の霊力を奪う能力だ」


 屍がローグヴェルトにそう答えた。


「成る程…ならば…こうすれば良いだけだ」


 ローグヴェルトはそう言って【滅殺虹剣(サンダルフォン)】を黒宮目掛けて投げ飛ばした。


「ふっ…そんなモノは回避すれば…」


 黒宮が言い掛けるが既に黒宮の脇腹に大剣が刺さっていた。


「な!?」


 黒宮が大剣を引き抜いたが大剣とは思えない程の軽さだった。

 先程のダメージで黒宮の【影吸収(スキア・ドレイン)】は解除されていた。


「物量が軽ければそれだけ速度は速くなる」


 ローグヴェルトはそう言って、【滅殺虹剣(サンダルフォン)】を霊力で自分の元へと引き寄せた。

 そう、ローグヴェルトは【滅殺虹剣(サンダルフォン)】を極限まで軽くして黒宮に投げ飛ばしたのだ。

 それにより、軽い大剣は速度を上げ、黒宮に回避する暇も与えずに貫いたのだ。


「剣の重さを操作する…それが君のエンゲルアスの能力か」


 厳陣が冷静にローグヴェルトの能力を分析した。


「困りましたね…」

「そうだな…お前は再生能力が使えないからな」


 そう、黒宮のコピーは黒宮本体と違って再生能力を持っていない。


「四宮さんが倒されたのがここで響いてしまいましたね」


 舞がいれば傷を直す事も出来たが先程、屍によって倒されてしまった。


「これで…形勢は逆転ですね」


 美浪がそう言うが厳陣は不敵に笑っていた。


「いや、どうやら…こちらにも増援が来たようだ」


 やって来たのは屍とプロテアの…コピーだった。


「「「「!?」」」」

「さて…第二ラウンドと行きましょうか」


「そうだな!随分面白そうな事してんじゃねーかよ!?」


 そう言って空からスープレイガが現れた。


「俺も混ぜろよ?」

「スープレイガまで…」

「これは…乱戦になりそうですね…」

「スープレイガ!?何で…」

「あ?今はんな事どうでもいいんだよ!時神をぶっ倒しに来たんだが…思わぬ祭りに出会したぜ…」

「これで四体五ですか…こちらが数では不利ですね」

「構わん。ローグヴェルトはさっきの戦いで消耗している」


 厳陣はそう言った。

 確かにローグヴェルトは先程のスープレイガ戦で消耗していた。


「行くよ!」


 慧留がそう言うと皆一斉に動き出した。







 ケルビエルは苛立っていた。

 彼女は現在、ビルの屋上にいた。

 あれだけ追っていた時神蒼を見失ったのだ。

 周囲を探し続けたが未だに見つからなかった。

 時神蒼は何としても殺さなければならない。

 アラルガンドの仇だ。

 ケルビエルにとってアラルガンドと共にいる事が全てだった。

 ()()()()に神聖ローマのとある場所に安置されていた。

 一人でいた所をアラルガンドと出会った。

 だが、ケルビエルは一人きりでいる事に嫌気が差し、消えた。

 そして、辿り着いたのがヘレトーア。

 そこで…アラルガンドと出会ったのだ。

 アラルガンドは黒い雨にうたれて親が既に死んでおり、このままでは一人で死ぬ筈だった。

 ケルビエルはアラルガンドを助ける事にした。

 ケルビエルはどういう訳か人の姿になる事が出来た。

 彼女は物心がつくまでアラルガンドを育て続けた。

 やがて物心がついたアラルガンドは彼女と話す様になる。

 この時のケルビエルは常に人の姿でいられる訳では無かった。

 更にアラルガンドが物心つく頃には人間の姿になる能力が失われ始めていた。


「時は流れて…アラルガンドは私を生き返らせようとした…」


 しかし、その目論みは失敗し、アラルガンドは時神蒼に殺された。

 アラルガンドが殺された時、ケルビエルは剣の姿でずっとそのアラルガンドが死んだ場所にいた。

 そんな時だ。ドーラーが現れたのは。


『千年もの間、主を何度も変えてきた気紛れの剣、ケルビエル。君はミーが生き返らせてあげるネ』


 そう言って、ドーラーはケルビエルに霊圧を込め、ケルビエルに肉体を与えた。

 そして、ケルビエルは今の姿になった。


『これは…どういう事?』

『君に肉体を与えた』

『あなたの目的は何?』

『何も?ミーはミーの好きな様に行動しているだけネ。君は…アラルガンドに会うまでの五百年は主に対して何の思い入れも無かった…しかし、アラルガンドだけは違った。違うネ?』

『何が言いたいの?』

『復讐の機会をあげるネ。時神蒼を殺すネ』


 ドーラーは明らかにケルビエルを利用しようとしていた。

 しかし、ケルビエルはこの案に乗らない道理は無かった。


『分かったわ。アラルガンドの仇は…私が取る…!』

『そうこなくてはネ…』

『所で…あなた…何で私の事を知ってるの?』

『調べたからね。君の事は。そう言えば君、五百年前と若干言葉使いが変わってるネ?それも心境の変化かネ?』

『どうなのかしらね…』


 確かに昔と比べて女言葉を話す様になったが特に理由は無い。


『君の本当の主に会わなくてもいいのかネ?』

『私の主はとっくに死んでいるわ』

『そうなのかネ?』

『ええ、この眼で見たもの。五百年前のヒューマニックリベリオンで彼女は焼き殺されたわ』


 そう、ケルビエルの主は五百年前のヒューマニックリベリオンで人間に焼き殺されていた。

 それはケルビエルも目撃していたのだ。


『ならば…妙だネ?君は主が死ねばエンゲルアスは消える筈ネ』

『いいえ、既に別の持ち主に受け継がれていたらエンゲルアスは消えないわ。あの時私はアラルガンドと契約していたから私は在るのよ』

『あー、成る程。で、アラルガンドが死んで消えかけていた所をミーが助けて君は蘇った訳だ』


 ドーラーは納得いった様にそう言った。


『とにかく…私は時神蒼を殺す…何としても…!』


 ケルビエルは眼を血走らせながらそう言った。

 ドーラーはケルビエルの殺意に感心した。

 ケルビエルがどれだけ深くアラルガンドを愛していたのかが分かる。


『時神蒼を殺した後はどうするネ?』

『そんなのは後から考えればいい…』

『ミーの配下になるネ』

『お断りよ』


 ケルビエルはあっさりと断った。

 ケルビエルが認めた主は今も昔もアラルガンドただ一人だ。

 従う気など毛頭無い。


『ならば…ミーに従えば…アラルガンドを生き返らせよう…』

『!? それは本当?』

『ああ、約束は守るネ』


 ケルビエルは狂気的な眼をしていた。

 そして、ドーラーはにやりと嗤らいながら


『その狂気を忘れない事だネ』




「狂気…か…」


 狂気は危険な感情だ。

 しかし、その狂気を自由にコントロール出来るモノは何者にも優る力となる。


「!?」


 ケルビエルは並外れた五感を有している。

 そして、気が付いていた。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「何故…時神蒼がここに…まさか…私の事を既に知られて…」


 いや、それは当たり前だろう。

 何故なら、あのプロテアという少女が何度もケルビエルを妨害していた。

 蒼が既にケルビエルの事を知っているのは当然だろう。

 だが、分からないのは何故、今になって時神蒼からこちらへ向かっているのかだ。


「まぁ…いいわ。こっちとしては好都合よ…」


 ケルビエルがそう言うとケルビエルの後ろに蒼とプロテア…そして一夜がいた。


「まさか…自分から殺されに来るなんてね…」


 ケルビエルは嘲笑うかの様にそう言った。


「殺されに?馬鹿な事を言うなよ。俺はお前を倒しに来たんだよ」

「私はあなたには負けないわ」

「ああ、確かにお前は俺を何度も殺した。だが、もう俺はお前には殺されない」

「? 何を言ってるの?」


 ケルビエルは蒼の言葉の意味が分からなかった。

 ケルビエルは今まで一度も蒼の殺害に成功していない。

 にも関わらず、蒼は何度も殺されたと言っている。


「そんな事はどうでもいいんだよ。とっとと終わらせようぜ…」


 蒼は異空間から二つの刀を取り出した。

 右手は水色の刀、左手には黒刀。

 そして、蒼は刀を交差させた。


「【χ第二解放(カイザー・エンゲルアルビオン)】」


 全身に黒い衣が纏われており、両手にχ(カイ)を象った籠手が付いていた。

 背中は黒い氷の翼が展開されていた。

 刀は融合しており、【黒時皇帝(ザフキエル)】が【氷水天皇(ザドキエル)】に溶け込み、【氷水天皇(ザドキエル)】は黒色に変色していた。


「【氷黒楽園(アルカディア・メランアリス)】」


 蒼はとてつもない霊圧を放っていた。


「前にも感じたが…蒼のあの力は相当なモノだね…」

「ええ…霊圧だけで…身体が灰になりそうよ…」


 蒼の【χ第二解放(カイザー・エンゲルアルビオン)】は二つのエンゲリアスを融合させ、新たな力を発現させる力だ。

 その力は凄まじく、あのパルテミシア十二神であるイシュガルと互角以上の力を発揮した。


「へぇ…そんな隠し玉があったなんてね…」


 ケルビエルも流石にこの霊圧には驚いている様だ。

 アラルガンドとの戦いではあんな力は無かった筈だ。

 あの時は蒼だけでなく、四宮舞とインベル・ヴァレンテ、アポロ・ローマカイザーの四人掛かりでようやく倒せたのだ。

 しかし、今眼の前にいる蒼はその時の蒼とは全く異なっていた。


「行くぜ、ケルビエル」


 蒼は左手の黒刀をケルビエルに向けてそう言った。

 絶大な力の前にケルビエルは少し怯んだがケルビエルとて負けるつもりは毛頭無い。

 ケルビエルは弓を顕現させた。

 ケルビエルが使う能力は弓を使う。


 ー負ける訳には行かない…必ず…勝つ!


 時神蒼とケルビエルの戦いが始まった。






To be continued

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