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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第九章】天使輪廻篇
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【第九章】天使輪廻篇ⅩⅢーIXAー

 常森澪(つねもりみお)は一人でお墓参りに来ていた。

 澪は親友の音峰遥(おとみねはるか)を死なせてしまった。

 遥が死んだ直後は受け入れる事が出来ず、立ち直れずにいたが今はこうして乗り越える事が出来た。

 今は雨が降っている。雨の日のお墓参りは憂鬱な気持ちになるが今日いけなければしばらくの間、ここに来る事が出来ないので澪はこの日に来た。


「明日叔父さんに呼ばれてるんだ。多分、戦争の準備をする事になる。ここももしかしたら戦場になるかも。でも、大丈夫。私は死なないから。それに…頼もしい仲間達もいるしね」


 澪は厳陣からプラネット・サーカスの活動が水面下で本格化している事を聞いている。

 近い内に戦争になるであろう事を。

 そして、四大帝国な総力を上げて潰さなければならない事を。


「この場所も絶対に守るよ。だから…見守っててね、遥」


 澪は久し振りに遥の名前を呼んだ。

 普段はハルちゃんと呼んでいたので奇妙な気分だ。


「お墓は嫌いなんだよね~。辛気臭くてさ」

「!?あなたは…ルバート卿…何故ここに?」


 そう、そこに現れたのはルバートであった。


「その黒髪赤目に髪を括ってるそこの君は…常森澪だね。久し振り…かな?」


 ルバートと澪は確かにヘレトーアの一件で会った事はあるがその時は一度も会話をしないまま終わった。

 というより、変だ。今、ヘレトーアもプラネット・サーカスと戦う為、国から離れている場合では無い。


「どうして…あなたはここに?」

「ああ、常森厳陣に会いにね」

「ヘレトーアは今、戦争の準備をしてる筈ですが?」

「ええ、その為に常森厳陣と…」

「へぇ~、シラを切るんだ?」

「………」


 澪は目の前にいるルバートが本物とは思えなかった。

 今、ヘレトーアは前にあった戦争の後始末がまだだしこの先の戦争の準備をしなくてはならない。

 少なくとも今は厳陣と会っている場合では無い。


「はぁ~、駄目か。鋭いね君?」

「あなたは…幻術か何?」

「違うよ~。僕はルバート・セイントのコピーだよ」

「コピー!?」

「僕はある人物によって作られた存在なんだよ…他にもいるよ?君はたまたま僕が偽物だと見抜けたけど…他の皆はどうかな?」

「っ!?」


 ルバートの話が本当なら、他にもこの街に偽物が紛れているという事だ。

 それは非常に不味い。


「一体…誰が…」

「それは言えないね~。僕を倒したら…教えてあげなくも無いよ?」

「つまり、教えるつもりは無いって事ね」

「ふふ…」


 ルバートは手を澪の方へと向けた。


「【天雷(ラアド・ラエド)】」


 澪の頭上から無数の落雷が降り注ぐ。


「【流星神速(スタードライブ)】!」


 澪は光速でらくらいを回避した。

 更に澪は【星神の杖】を出現させ、ルバートに攻撃を仕掛けた。


「【星混沌旋風(スターカオスストリーム)】!」


 澪は杖から巨大なエネルギー弾を放った。

 しかし、ルバートは余裕の笑みを浮かべていた。


「【火炎花火(フオ・シャオ)】、【風魔之一撃(パラム・パラム)】」


 ルバートは炎の花火を放ち、更に風の力で花火の威力を組み合わせる合わせ技で澪の攻撃を防いだ。


「【天雷(ラアド・ラエド)】」


 ルバートは再び澪に落雷を放った。

 澪はルバートの攻撃を回避しようとするも技の発生が速すぎて回避する事が出来なかった。


「くっ…」

「僕の二十二式精霊術(アルカナ)の能力はあらゆる魔術の使用できる。けどね、この能力の真価は技を放つ発生が速い事。技の打ち合いだと僕は負けないよ」


 ルバートは再現なく強力な技を連続で撃つ事が出来る。

 確かにこれなら技を先に撃った方が有利な呪術戦ではルバートは負ける事は無いだろう。


「ねぇ?一つ…気になる事があるんだけど?」

「何だい?命乞いかい?」

「あなた、グノウェーの力は使わないの?」

「使うまでも無いさ。君が相手ならね」

「使わないんじゃなくて使()()()()の間違いじゃないの?」

「………」

「やっぱり」

「感がいいね、君。そう、僕はあくまでルバートのコピー。ルバートの中にいる別の魔獣はコピーされていない」


 ルバートは身体の中にグノウェーと呼ばれる光の神を宿している。

 ルバートがその封印を解除する事で神の力を扱う事が出来る。

 だが、目の前にいるルバートのコピーはそのグノウェーを使う事が出来ない様だ。


「安心したよ…もし、グノウェーを使えるんだったら、あたしに勝ち目はゼロだったからね」

「う~ん?それはまるで…(グノウェー)がいなければ僕に勝てる…と言ってる様に聞こえるんだけど?」

「どう…かな…!」


 澪は【流星神速(スタードライブ)】でルバートに突進して遠くの空に突き飛ばした。


「ぐっ…」

「ハルちゃんのお墓を壊したくないからね。場所を変えさせて貰ったよ」

「ふっ…上等!【義憤女神審判(ネメシスシーツリヒター)】!」


 ルバートは光の閃光を放った。


「霊呪法第六百三十八番【義憤女神審判(ネメシスシーツリヒター)】!」


 澪も同じ霊呪法を放った。

 威力はほぼ互角であった。


「【氷魔連刃(ひょうまれんじん)】!」


 澪はルバートの地面に氷の刃を出現させた。


「霊呪法第二百四十六番【火炎地獄(インフェルノ)】」


 ルバートは地面に溶岩を発生させ、澪の発生させた氷を溶かした。

 更にルバートは無数の光の棒を飛ばした。


「【百白棒(ひゃくはくぼう)】!」

「【三重虚神(さんじゅうきょじん)】」


 澪は霊呪法で攻撃を防ぐも防ぎきれず三重虚神が貫通された。

 だが、澪はどうにかして攻撃を回避した。


「【縛十光輪(ばくじゅうこうりん)】!」


 澪は光の縄でルバートを縛り付けた。


「更に!霊呪法第八百八十六番【九頭竜黒縛(くずりゅうこくばく)】!」


 ルバートの身体に黒い九つの四角い模様が発生し、更に拘束力を強めた。


「うわっ…動けない…」


 ルバートは振りほどこうとするが何せ、二重で拘束系の霊呪法を打たれているのだ。

 ルバートでも簡単には破れなかった。


「幾千の星々よ、全てを照らす光の如く、その強さを示せ、戦かせ、輝け!」


 澪が杖を構えて詠唱を始めると澪の周囲の空間に穴が六つ空き、それらから光が収束していた。

 ルバートは今回の戦いで初めて焦りの表情を見せた。


「そんなモノを撃たせると思っているのかい?こんなモノ…」

「【彗雲流星群(スター・ゲイストブラスター)】!!!」


 六つの空間から光弾が放たれた。

 放たれた光弾は全てルバートに命中し、爆発した。

 爆発した瞬間、巨大な火柱が発生していた。

 この一撃は澪の使う二十二式精霊術(アルカナ)、【新星(ザ・スター)】は星を司る能力だ。

 先程の一撃はその中でも特に強力な一撃であり、威力によっては町一つ吹き飛ばせる程の破壊力だ。


「!?」


 澪は驚きの表情をしていた。

 それもそうだ。先程の一撃を受けて、まだ立っているのだから。


「今の…は…流石に…ヤバかったよ。くっ…」


 しかし、ルバートは地上へと落下した。


「殺すつもりで撃ったんだけどね…」


 澪は地上へと降りていった。


「まだやるの?」


 ルバートは地面に膝まずく様に倒れていた。


「当たり…前だよ…僕はまだ…戦えるんだからね!」


 ルバートはそう言って立ち上がった。

 だが、ルバートは既に満身創痍だ。

 勝負は既に見えているが相手が向かってくる以上、澪は戦うしかない。

 ルバートは水と突風を出現させ、澪に攻撃を仕掛けた。

 だが、澪は攻撃を回避した。

 ルバートは更に炎の花火と雷を放った。

 だが、澪はそれらも【流星神速(スタードライブ)】で回避した。

 そして、澪は霊力で刀を作り、一瞬でルバートを切り捨てた。


「がっ…」


 ルバートは身体を切り裂かれ、絶句した。


「流石…常森厳陣の姪と言った所かな?」


 ルバートは諦めた様にそう呟いた。

 ルバートの身体は崩壊を始めていた。


「ああ、そうだ。君に言わないといけない事があった」

「………」

「僕を作ったのはーーーーだよ」

「!?」


 ルバートはそう言い残して完全に消滅した。

 そこにあったのは人形の紙切れだけであった。


「まさか…そんな…」


 澪はルバートの言葉に驚愕を隠せなかった。

 声がか細かったが…間違いなく澪はルバートの言葉がはっきりと聞き取れた。


『全く、余計な事を行ってくれたネ』

「!?」


 突然、紙人形が宙を舞い、声を発していた。

 澪は驚きの表情をしていた。


「あなたが…そうなんだね」

『ああ、いかにも。ミーこそがドーラー。ルバートを作ったのはミーさ』

「あなたの目的はなんなんだい?」

『素直に答えると思うのかネ?ミーはルバートとは違うんだネ』


 随分特徴的な喋り方をするなと澪は呑気にも思った。

 だが、ふざけた喋り方ではあるがそれが余計に不気味さを助長していた。


「そりゃそうね…じゃあ、何でわざわざ紙人形越しであたしに話しに来たの?」

『いやあね、君に聞きたい事があってネ』

「聞きたい事?」

『苗木一夜はどこだネ?』

「…それこそ愚問ね。答えると思ってるの?」

『いや、今ので何となく分かったよ。君は知らないんだネ』


 どういう理由かは知らないが目の前の敵は一夜を探している様だ。

 何故一夜を探すのかは分からないが恐らくロクな事では無い。


『ふぅ~む。困ったネ。それじゃあ、他を当たるかネ』

「!? 待て!」


 紙人形はそのまま地面に落ちた。

 恐らく完全に通信を遮断している。


「確かめて見る必要が…あるわね」


 澪はそう言って四神天城(シシンテンジョウ)へと向かった。




 澪は四神天城へと辿り着き、厳陣の元へと向かった。


「叔父さん!」

「動くな!今動けば撃つ!」


 厳陣が銃を構えた。


「叔父さん!?」

「澪…」

「まさか…叔父さんも…偽物の誰かと?」

「という事は…お前もか、澪?」


 どうやら、厳陣も既に偽物の敵と遭遇していたそうだ。


「あたしも偽物の敵と戦った。叔父さんも?」

「ああ、偽物の黒宮と戦った」

「で…その黒宮さんは?」


「ここにいますよ?」


 そう言って執務室に黒宮がやって来た。


「黒宮さんは大丈夫だったんですか?」

「大丈夫じゃあ、無かったよ。厳陣にこっぴどくやられたんですから」


 そう言って黒宮は執事服を脱いで上半身を澪に見せた。

 確かに黒宮の左肩には火傷の痣の様なモノがあった。


「二週間前、厳陣にやられましてね。「偽物は再生能力まではコピー出来ないから私の攻撃を受けろ」なんて滅茶苦茶言い出すんですよ?まぁ、事情が事情だから仕方ありませんでしたけどね」


 どうやら、目の前の黒宮は本物の様だ。

 更に本物だと示す為に手首に包帯も巻いていた。


「それに関しては何度も謝っただろう?」

「不死とはいえ、痛いものは痛いし、ダメージは受ける事を厳陣は知っているでしょ?」

「分かったよ。悪かったと何度も言ってるだろ?」


 どうやら、厳陣も黒宮も思ったより大丈夫そうであった。


「叔父さん。ミットンはいる?」

「董河君なら隣の部屋にいるよ。それが?」

「今回の偽物騒動…どうやら式神が関係してるみたいなんだ」


 そう言って澪は厳陣と黒宮の二人に紙人形を見せた。


「これで偽物を作っていたと?」

「信じられんな」

「ミットンに逆探知してもらえないかなって」

「そう言う事か。分かった、すぐに董河君にそれを」


 厳陣がそう言うと澪は隣の部屋へと向かった。





「ミットン!」

「うわっ!?澪さん!?久し振りですね」

「挨拶は後だよ。これを使って逆探出来ない?」

「?」


 澪の突然の要求に湊は動揺していた。

 鈍色の髪と瞳が特徴な優男である。

 彼は式神に精通しており、式神使いのエキスパートと言ってもいい。

 澪は湊に細かい事情を説明した。


「偽物の事は話に聞いてたけど…てか、それのお陰で僕、二週間くらいここに引きこもりっぱなしなんですけど…」


 どうやら、湊は二週間程家に帰っていないようだった。

 偽物騒動が終息するまで外に出すのは厳陣からすれば面倒だったのだろう。

 入れ替えられたら困るし。

 湊は一応、厳陣に雇われてこの城でバイトをしているのだが、そのせいで二週間もこの城に閉じ込められるのは流石に同情する。


「で?どう?逆探出来そう?」

「う~ん、これはちょっと逆探は難しいですね。完全に霊力が切れてる。これじゃあ、紙切れと変わらないですよ」

「そっか…」


 どうやら、そう簡単には尻尾は掴ませてはくれない様だ。


「でも…式神で偽物を作れるなんて…それもただの偽物じゃなくて能力までそのままコピー出来るなんて…」


 湊はかなり驚いていた。

 式神でコピー体を作る事はそれほど難しい事なのだろう。


「時神君達に伝えた方がいいんじゃないですか?」

「そうしたい所だけど…さっき言った様に誰が本物か偽物か分からないんだよ…迂闊には動けない」

「こういう風に味方同士で疑心暗鬼に陥らせるのが敵の狙いなんでしょうね」


 湊の言う通りで間違い無いだろう。

 味方をコピーして襲わせる。

 そうするだけで簡単に疑心暗鬼というものは起こる。

 この手の敵は相当厄介であると言えるだろう。


「僕は僕でこの式神の事を調べてみますね」

「頼んだよ」

「澪さんはこれからどうするんですか?」

「取り合えず、しばらくはここで待機だね。叔父さんも私を外出させる事を許さないだろうし」


 今のこの状況では考え無しに外へ出る事は厳陣は許さないだろう。

 しばらくはここで待機するしかない。

 だが、ただ何もせずに待機する訳にはいかない。

 澪は澪でこの状況を打開する術を考えなくてはならない。


「そうですね」

「ありがとう、ミットン。じゃあ、あたしはここで」


 澪はそう言って湊の部屋を後にした。






To be continued

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