【第九章】天使輪廻篇ⅩⅡーaliveー
「全く…退屈だな…」
金髪のリーゼントに瞳を持つ男がそんな事を呟いていた。
彼の名はスープレイガ・レオンジャック。
USWの悪魔であり、アンタレスという、USWの警察の者である。
そして、アンタレスの幹部格である七魔王の一人でもある。
彼はUSWの首都であるネオワシントンから離れた街にいた。
特に何か仕事がある訳でもなく一人でいた。
スープレイガは単独行動をする事が非常に多く、今回も例外では無い。
「そう言えば…あの野郎は十二支にいやがるんだったな…」
スープレイガは蒼の事を思い出していた。
スープレイガは未だに蒼を付け狙っている節があり、蒼を倒そうとしている。
だが、立場と都合により、それが中々出来ない状態になっている。
ヘレトーアの件に至っては共闘までしてしまった。
「今度こそあいつをぶっ倒してやる…待ってやがれ!時神!」
スープレイガはそう言って十二支連合帝国へと向かった。
「何?スープレイガが?」
「ええ、この国から出ていったわ」
黒髪のストレートヘアーに白と黒のオッドアイの男がそう言った。
彼の名はドゥームプロモ・ドラコニキル。
USWの七魔王のリーダーであり、USWの総帥代理をしている。
ここは闇魔殿という、アンタレスの本部であり、国の中枢地帯でもある。
あくまでも代理であり、表向きでは別の人物が取り仕切っている。
もう一人の女性はアルビレーヌだ。
アルビレーヌはスープレイガがどこかへ行ったのをたまたま目撃したのだが、時既に遅しであった。
「全く…奴には困ったモノだな…」
「どうする?ドラコ?」
「そうだな…誰かに連れて返らせるべきだな…」
「私が行きましょうか?」
「いや、君には別の仕事を頼みたい。グリトニオンに任せる」
ドラコニキルがそう言うと黒がかった赤髪と赤黒い瞳の黒人の長身の男がやって来た。
「仕事か?」
「ああ、頼めるか?」
「スープレイガを連れ戻せばいいんだろう?」
「頼むよ」
ドラコニキルがそう言うとグリトニオンが部屋から出ていった。
「ふー、厄介な事になったね」
「レイの奔放さにも困ったモノね」
「全くだ…少し放置するとこれだ」
「昔も大概だったけど…ここ最近酷くなったわよね?」
「これも…時神蒼の影響かね?全く…」
ドラコニキルは何となくスープレイガの目的を察していた。
スープレイガは一度決めた獲物は倒すまで追い回す。
スープレイガは三年前、蒼に負けている。
それに納得が行かずにリベンジの機会を伺っていたのだ。
「蒼を倒そうとしてるって事?」
「だろうな…」
「一度は共闘した仲なのに何でそんな…」
「俺が知るか。全く…」
スープレイガは頭を抱えていた。
「ドラコ、大丈夫?」
「大丈夫に見えるのか?ラナエル?」
水色の髪に水晶の様な瞳をした少女がドラコニキルに話し掛けた。
彼女はラナエル・ミュウ。ドラコニキルの昔の仲間であり、この闇魔殿でドラコニキルの補佐をしている。
「ラナエルも秘書として随分板についたわね」
「えへへへ…」
「所で…ドラコ…スペニア・メキシカについてだけど…」
「ああ、どうやら、プラネット・サーカスは四大帝国以外の小国をほぼ全て吸収、合併させてしまっている様だ」
ドラコニキルが訝しげな表情でそう呟いた。
スペニア・メキシカとはUSWの南部にある小国であり、大韓連邦やロシアスタンなどと同様の小国だ。
この国は黒人が多く住んでいる国であり、他の小国と同様、治安が非常に悪い。
気候の寒暖差が激しく、テロが頻発している国である。
四大帝国以外の小国は実に五十国以上存在しているのだが四大帝国以外の国の治安は非常に悪い。
逆に四大帝国は非常に治安がいい国なのだ。
昔は更に多くの国があった様だが今は国と国の統合し、今の状態となった。
「プラネット・サーカスは社会的に危うくなった者を取り込んで組織を拡大させてる様ね」
「しかもそれだけじゃあない。他の国では出来ない汚れ仕事をし、そこで資金を調達している。更に今回、スペニア・メキシカがプラネット・サーカスに取り込まれた事でほぼ全ての小国がプラネット・サーカスに奪われた訳だ。つまり、プラネット・サーカスはいつでも、四大帝国に進攻可能になった訳だ」
スペニア・メキシカは今までプラネット・サーカスに乗っ取られていなかった数少ない国だった。
しかし、つい先日、完全に乗っ取られてしまった。
それにより、プラネット・サーカスは四大帝国と同等以上の力を手に入れてしまった事を意味している。
「だけど、四大帝国の本拠地は大韓連邦にあるんでしょ?本拠地を叩けば…」
「いや、あれは仮の本拠地である事が分かっている。本当の本拠地は別にある」
「じゃあどうすれば…」
「少なくともUSWだけで解決出来る問題では無いね。恐らく、奴等と対等に渡り合うには四大帝国が協力するのは必要不可欠だね」
「連合を組む…という事?」
「そうだね…まぁ、俺一人どうこう言った所でどうにもならない。総議長が四大帝国会議を開かない事にはね」
四大帝国会議は四大帝国の全てを取り仕切る四大帝国総議長により開催される。
三年前まではその総議長はUSWの光明庁長官、カーシス・ベルセルクが務めていた。
USWの総帥はタブラス・エントニオンであるが彼は最近起こったイシュガルド事件と同時期にプラネット・サーカスのメンバーである神混髏奇により殺されており、現在、USWには総帥が空席の状態だ。
本来ならタブラスが総議長を勤めるのが常識であるがタブラスには総議長は無理と四大帝国が判断し、カーシスが努める事になった。
とは言え、カーシスも閻魔関連の四大帝国会議は他の者に権利を一時的に譲渡して欠席していたが。
カーシスが死に、総議長が空席になっていたのだが、神聖ローマが国を完全に統一した事により、神聖ローマ皇帝陛下であるルミナスが総議長に立候補した。
その後、神聖ローマで四大帝国会議が開かれ、十二支連合帝国からは常森厳陣と腹心である黒宮大志、ヘレトーアからはデミウルゴス・ペラーゼとアント・ミュー、USWからはドラコニキルとアルビレーヌ、そして、神聖ローマは立候補者のルミナスとその腹心であるローグヴェルトであった。
そして、会議は進められ、ルミナスが新たな四大帝国総議長として君臨した。
四大帝国会議の開催決定権はルミナスが持っており、ルミナスが参加の意思を示さなければ四大帝国会議は開けない。
「とは言え、ルミナス殿もこの状況を良しとは思わないだろうから近い内に四大帝国会議は開かれるだろうね」
「それまでは情報を集めるしかない…という事ね」
「残念ながら」
「まぁ、プラネット・サーカスも取り込んだ国を御すにはそれなりに時間も掛かるだろうからまだ慌てる状況では無いよ。…悠長にはしてられないけどね」
ドラコニキルとて、プラネット・サーカスのヤバさは理解している。
他の四大帝国以外の小国を全て取り込んだとなると四大帝国が結束した所で果たして勝てるかどうか…
プラネット・サーカスの目的が不明である以上、こちらも迂闊に手を出す訳にも行かなかった。
「プラネット・サーカスは近い内に必ず四大帝国を落としに来る…目的は世界征服…と言った所か?」
「…何となくだけど…それが目的とは思えないわね」
「どう言う事だ?」
「言ってるでしょ?何となくだぞ?他に目的があるんじゃないかって…」
ドラコニキルの言葉をラナエルは否定した。
プラネット・サーカスは確かに快楽主義の者が多く、やる事に法則性が無い。
ラナエルの言う事も一理あるかもしれない。
「それにしても…ここ近年…何かデカイ事件が起こるのは十二支連合帝国が中心だな」
「まぁ、USWでも起こってはいるけど…確かにそうね。十二支連合帝国を中心に…更に言うと」
「時神蒼…全く彼はとんだ巻き込まれ体質だね…同情するよ」
「そう言うあなたも総帥代理なんてやってるんだから私からしたらあなたも気の毒よ」
「止してくれよ…」
ドラコニキルの言う事は確かに正しい。
三年前から時神蒼を中心に様々な事件が起こっている。
そして、蒼は数々の強敵を倒していった。
そう、蒼を中心に事件は起こっているのだ。
「時神蒼には…何かがある…」
「そうね…」
「蒼は凄い奴だぞ!」
ドラコニキルも蒼とかつて戦った事がある。
彼もスープレイガ同様、蒼にこっ酷くやられてしまった。
アルビレーヌは蒼と戦ってはいないが蒼の事を何だかんだで気には掛けており、会ったら頻繁に話している。
ラナエルにとって蒼は恩人であり、ドラコニキルとの仲を取り戻すきっかけを与えてくれた。
スープレイガも蒼と会ってから彼に対抗意識を燃やす様になっていた。
USWの者達だけではない。
十二支連合帝国は勿論、ヘレトーア、神聖ローマにも蒼に大きく影響されている。
世界は確実に蒼を中心に変わっていっている。
「不思議な奴だ」
「全くね」
ドラコニキルの言葉にアルビレーヌは同意した。
そして、ドラコニキルは夜空を眺めていた。
ローグヴェルトは現在、十二支連合帝国まで辿り着いていた。
彼はビルを飛び越えながら移動していた。
「久し振りに来たな…この国にも」
ローグヴェルトがこの国に来たのは実に三年振りだ。
あの時は慧留に会えず仕舞いだった。
「エル…」
ローグヴェルトは慧留のかつての友だ。
だが、慧留はローグヴェルトが生きているという事実を知らない。
ローグヴェルトは慧留と会う事は出来ない。
何故ならローグヴェルトは神聖ローマのセラフィム騎士団団長だ。
ローマの為に生き、そして、ルミナスの為に死ななければならない。
ローグヴェルト自身、過去を切り捨てたつもりだったがまだ甘さが残っていた様だ。
「む?あれは…」
ローグヴェルトはある人物が視界に入った。
金髪のリーゼントと瞳が特徴の不良風の格好をした男だ。
彼はスープレイガ。USWの悪魔であり、前の四大帝国会議で共闘した事もある。
ローグヴェルトは足を止めた。
「スープレイガ殿」
「あ?ああ、アンタは確か…ローグヴェルトとか言ったか?」
「久し振りだな」
「ああ、四大帝国会議以来だな」
「ここに何をしに?」
「そりゃこっちの台詞だ。お前は何しに来たんだよ?」
「少し訳ありでな」
「そうか…俺はよ……この国の奴等を皆殺しに来たんだよ!!!」
スープレイガは突然剣を抜き、ローグヴェルトに襲い掛かった。
「!?」
ローグヴェルトは背中にあった剣を抜き、スープレイガの剣を防いだ。
「何のつもりだ?」
「てめぇもいずれ邪魔になる…死んで貰うぜ!」
スープレイガは剣の速度を緩めずにローグヴェルトに攻撃を仕掛けた。
「おいおいどした!?そんなもんかよぉ!!」
「調子に乗るな」
ローグヴェルトはスープレイガを吹き飛ばした。
だが、スープレイガはすぐに立ち上がり、【黒閃光】を左手から放った。
黒い閃光はローグヴェルトに襲い掛かるがローグヴェルトは片手で閃光を弾き飛ばした。
「はっ!弾いたかよ!流石にこの程度じゃあ…」
スープレイガが言い掛けるとローグヴェルトは一瞬でスープレイガに間合いを詰め、斬撃を繰り出した。
スープレイガは衝撃で吹き飛ばされ、右手首を少し切った。
「何のつもりだ?USWが我ら神聖ローマに牙を向くという事は四大帝国同士の戦争を意味するぞ」
「だからなんだよ?てめぇ…俺を倒す気でいやがるのか?あ?」
「どうやら…言葉が通じんらしいな」
ローグヴェルトはスープレイガに肉薄し、再び斬撃を繰り出した。
だが、ローグヴェルトは一つの違和感を抱いていた。
どう考えてもスープレイガの様子がおかしい。
確かにスープレイガは粗暴な人物ではあるがUSWでは一応、警察官の立ち位置だ。
警察官としての最低限の自覚はある筈なので無闇やたらに他国の者と戦う様な事はしない筈だ。
しかも、今目の前にいるスープレイガはいつも以上に好戦的な気がする。
数回しか会った事が無いので断定は出来ないがどう考えても今目の前にいるスープレイガは普通ではない。
「【剥拳】!」
スープレイガは拳から気弾を放った。
「!?」
ー【黒閃光】より速度が速い!?
「【剥拳】は威力は【黒閃光】には及ばねーが…スピードは【黒閃光】の…十倍だ!」
「成る程…それは少し面倒だな…だがー」
ローグヴェルトは一瞬でスープレイガに回り込み、切り裂いた。
「それより速く動けばいいだけだ」
「はっ!?嫌になるぜ…てめぇ…さいっこうにムカつくな」
「貴様…様子がおかしいぞ?何かあったのか?」
「何にも…ねぇよ!」
スープレイガが再び攻撃を仕掛ける。
「貴様の太刀筋は見切った」
ローグヴェルトはあっさりとスープレイガを吹き飛ばした。
「ははは!!このままじゃあ…てめぇに勝てそうにねぇな…」
スープレイガが剣を自身の腰まで落とした。
「煌々と照らせ!【黄金汪魔】!!!」
スープレイガは【悪魔解放】を発動。
身体中には金色の薄い鎧で覆われており、四肢には鋭く鋭利な刃物が付いていた。
髪は伸びており、自身の身長と同じくらいの長さになっていた。
頭には金色の王冠が付いており、牙も生えていた。
悪魔の象徴である尻尾はあるが翼は確認出来ない。
先程ローグヴェルトが負わした傷は全て消えていた。
「翼が無い【悪魔解放】か…変わった悪魔だな」
悪魔には大概黒い翼があり、【悪魔解放】を使う事で悪魔本来の力と姿を顕現させる。
翼が無いのは非常に珍しいのだ。
「へっ…てめぇを…叩き潰すぜ!」
スープレイガは高速でローグヴェルトへと肉薄した。
To be continued




