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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第九章】天使輪廻篇
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【第九章】天使輪廻篇Ⅸーroute Nー

 一夜は街を走り回っていた。

 プロテアを探しているのだ。


「………やれやれ…冗談きついね…僕みたいな雑魚相手に敵さん容赦無さすぎじゃないですかね?」


 一夜は冷や汗をかきながらそう呟いた。

 そこにいたのはアルビレーヌとルバートであった。

 この二人が普段一緒にいるなどまず有り得ない。

 その理由としてはアルビレーヌはUSWの悪魔であり、ルバートはヘレトーアの人間だ。

 この二人は恐らく面識が無いのでこの時点で一夜は気が付いていた。

 一夜は眼の力を使うまでも無く二人が偽物である事は分かった。

 最早、敵は一夜に自身の能力を隠す気は無いらしい。

 つまり、敵は一夜を本気で殺しに掛かっているという事だ。


「苗木一夜…死んで貰うわよ」

「君を殺すのが僕たちの仕事だからね~」


 アルビレーヌは巨大な鎌を持ち上げて一夜に切りかかり、ルバートは炎の玉を一夜にぶつけてきた。

 一夜はどうにかして攻撃を回避した。


「霊呪法第九十四番【瞬雷光(しゅんらいこう)】!」


 一夜は身体を電気にかえて逃げた。

 【瞬雷光(しゅんらいこう)】は自身の身体を電気に変えて高速移動する霊呪法だ。

 光と同じ速さの為、単純な速力では【瞬天歩(しゅんてんぽ)】より速い。

 ただ、身体を電気に変えるという性質上、番号の低さの割りに習得が難しい霊呪法でもある。


「不味い不味い不味い!ルバートとアルビレーヌの二人掛かりなんて僕に勝てる訳無いだろ!そもそも蛇姫君を倒せたのも不意打ちだったし!」


 そう、一夜の戦闘力は決して高くない…どころか蒼達の中で断トツの最弱だ。

 薊を倒せたのは薊が油断していた事と一夜が不意打ちをかませたからだ。

 ガチの勝負だったら一夜は瞬殺されていただろう。

 しかも今回はルバートとアルビレーヌを同時に一夜に襲わせてる辺り、ガチで向こうは一夜を殺しに掛かっている。

 向こうは一夜を自身にとって危険な存在であると認識したのだ。

 しかもアルビレーヌとルバートというのが非常に悪意を感じる。

 かつて、USWに一夜が行った時、一夜はアルビレーヌに一瞬で倒されてしまっているのだ。

 更にルバートはアラルガンドが亡き今、間違いなくヘレトーア最強の戦士だ。

 だが、一夜はコピー体の事である程度分かった事がある。

 それは相手の能力はコピー出来るが武器まではコピー出来ないという事だ。

 薊にしてももし仮に薊が神器を使って攻撃されていたら一夜は間違いなく負けていた。

 薊の神器は致死量操作の為、一夜は為す術無くやられていただろう。

 見た所、ルバートもグノウェーの力を使っていない。

 本気で一夜を殺そうと言うのなら神の力を解放するべきだ。

 それをやらないという事は出来ないと考えるのが自然だ。

 だが、これはあくまで一夜の推測に過ぎず憶測を出ない。

 能力を確かめたいという気持ちはあるものの、一夜では一瞬で殺されてしまう。

 ここは逃げるしか無い。


「逃げれると思ってるのかしら?」

「くっ!?」


 アルビレーヌとルバートはもう追い付いていた。

 アルビレーヌは【神速(ケレリタース)】により、追い付き、ルバートも何らかの高速魔術を使ったのだろう。

 一夜では一瞬で追い付かれるのは自然の事だ。


「甘いよ!」


 だが、一夜はそんな事は計算通りだ。


「霊呪法第三十番【筒隠(つつかくし)】!」


 一夜は霊呪法で姿を消した。

 【筒隠(つつかくし)】は自身と景色を完全に溶け込ませる霊呪法だ。


「子供騙しだね!」


 ルバートは一夜の霊呪法を一瞬で解除した。

 そして、アルビレーヌが大鎌で一夜の背中を切り裂いた。


「がっ…」


 一夜の身体が二つに分断された。


「え?」


 アルビレーヌはそんな声を上げた。

 何故なら一夜の身体がいきなり消えて無くなったからだ。


「これは…霊呪法第十三番【原子分身(アトミック・ミラージュ)】…」


 ルバートが一夜の霊呪法の正体を看破した。

 そう、一夜は二つの霊呪法を組み合わせていたのだ。

 【原子分身(アトミック・ミラージュ)】はその名の通り、原子をかき集めて分身を作り出す霊呪法だ。

 弱い分身の為、よく見ればすぐにバレるのだが短時間で作れ尚且つ戦闘では陽動としては十分な役割を果たしてくれる。


「ふふふ…あまり使われない弱い霊呪法を上手く巧みに利用する…面白いね…苗木一夜…」

「それにしても…情報では苗木一夜は雷系統の霊呪法しか使えないって聞いてたけど…」

「この三年の間で習得したんでしょ?別に不思議は無いよ」


 ルバートが楽しそうにそう呟いた。

 偽物とはいえ、性格はルバートそのものだ。

 こういう一夜の巧みな戦術に興味を示すのは自然の事だ。


「感心してる場合じゃ無いわ!速く探すわよ」


 さっきの今でそう遠くには行ける筈が無い。

 アルビレーヌは周囲を見回すと一夜を発見した。


「いた!あそこよ!」


 アルビレーヌがそう言うとルバートも一夜を追いかけた。


「今度こそ逃がさないよ!それ!」


 ルバートは光の縄で一夜を縛り付けた。


「がっ!?くそ!」


 一夜は縄に縛られた。

 そして、一夜は地面に突っ伏した。

 アルビレーヌとルバートが一夜の眼前に立つ。


「これで終わりね」

「…その様だね…それにしても…ルバート…君はグノウェーの力を使わなかったね」

「…それが何?」

「いや、使えない…かな?」

「!?」

「やはりそうか…その反応が見れただけで十分だよ…」


 そう言って一夜は煙となって消えた。


「な!?」

「霊呪法第百十番【共有分身(リンク・ミラージュ)】…」


 ルバートがそう呟いた。

 【共有分身(リンク・ミラージュ)】とは分身体を作り出すのは先程の【原子分身(リンク・ミラージュ)】と同じだが、こちらは分身体が体感した事が本体に還元される。

 つまり、ルバートがグノウェーの力を使えない事がこれで完全にバレた。


「ここは二手に別れた方が良さそうね」

「そうだね…また分身作ってるかもだし」


 そう言って二人は二手に別れて一夜の捜索を開始した。


「はぁ…はぁ…冗談じゃない…何で…僕が狙われるんだよ…」


 一夜は走りながらそう言った。

 息がかなり上がっており、体力が限界に近い。

 このままでは一夜の体力がヤバい。

 どうにか二人を撒いたものの、二手で探されては見つかるのも時間の問題だ。


「速くプロテアを見つけないと…この際、誰でもいい…誰か僕を助けてくれ…」


 一夜は情けない事を言っていた。

 まぁ、一夜の今の様な状況になれば誰しも思う事だろう。

 一夜はどうにかして人混みに紛れようとしたその時ー


「見つけたよ!」


 ルバートが一夜を見つけていた。


「うわっ!?もう見つかったのか!?」

「散々僕をコケにしてくれちゃってさ~?悪いけど一瞬で終わらせて貰うよ!」


 ルバートは一夜に突っ込んで行った。

 一夜は【瞬雷光(しゅんらいこう)】で逃げようとするも結局間に合わ無かった。

 ルバートは手に霊力を込め、一夜の背中を貫き、心臓を潰した。


「がっ!?」

「な!?」


 しかし、ルバートは一夜の身体を貫いた瞬間、違和感に気が付いた。

 そう、これは電流を触った時の感触だ。

 一夜の身体が電気に変わり、ルバートの動きを拘束した。


 ー霊呪法第四百七十番【電気分身(でんきぶんしん)】!?


 【電気分身(でんきぶんしん)】とはその名の通り、電気で作り出す分身だ。

 分身を作り出すのに時間は掛かるがバレにくく、かなり精巧な分身である上に分身を破壊した相手を一定時間拘束できる。


「やってくれるね…苗木一夜…ふふ…君は僕の手で絶対に殺してやるよ…」


 ルバートは憎々しげにそう呟いた。







「ヤバい…もう限界だ…はぁ…はぁ…」


 予想より速く【電気分身(でんきぶんしん)】がやられてしまった。

 一夜の今の霊力では一体作るのが限界だった。

 現在、一夜は公園にいた。

 幸い、今は日が暮れている為、人っ子一人いない。

 今の一夜には最早、歩く力すら残っていなかった。

 誤算だった。まさか、こうも速く刺客が来るとは。

 一夜が薊のコピーを倒したのにそこまで時間は掛かっていない…といより、今から三時間も経っていない。

 にも拘らずこうやってすぐに奇襲が来たという事はこの国のどこかに術者がいる可能性が非常に高い。

 ルバートをどうにか拘束する事は成功したが恐らく今頃拘束を解いているだろう。


「やれやれ…非力なのは自覚していたが…ここまでとは正直情けないね…」


 一夜は自嘲する様にそう言った。

 もうすぐここも嗅ぎつかれてしまうだろう。

 どうにかして仲間達と合流したかったというのが正直な所だ。

 苗木日和まで後、少しで着くのだ。

 なのに、一夜の身体は言う事を聞いてくれない。


「くそ…」


「ようやく見つけたわ」


「!?」


 一夜は右側から声が聞こえたので振り向いた。

 そこにいたのはアルビレーヌだった。


「今度もまた分身…では無さそうね」


 アルビレーヌは一夜にゆっくりと近付く。


「くっ…」


 一夜は何とかして逃げようとする。

 しかしー


「ふん」


 アルビレーヌは人差し指から霊力の塊を放ち、一夜の足を撃ち抜いた。


「ぐあああああああああ!!!!」

「消えない所を見るとやっぱり本物みたいね」


 一夜は足を撃ち抜かれた事により、もう完全に身動きが取れない状態になっていた。


「ここまで掻き乱してくれちゃって…全く大したモノね」

「USWの『七魔王(セブン・ドゥクス)』にそんな事を言われるなんて光栄だね」

「何それ?偽物の私に対する皮肉かしら?」

「どうかな?でも、偽物でも君はあくまでアルビレーヌのつもりなんだろ?」

「…!」


 やはりそうだ。

 性格まで完全にコピーしているという事は本人の意思の力まで反映される。


「ふっ…完璧過ぎるコピーも考えモノだね」

「死ぬ前に言いたいのはそれだけ?」

「何だい?遺言を言わせてくれるのかい?そう言う所も本物のアルビレーヌと同じだ」

「うるさい!黙りなさい!」


 アルビレーヌは一夜の首に鎌を突き付けた。

 アルビレーヌは一瞬動揺したものの、すぐに冷静さを取り戻していた。


「最後に一ついいかしら?」

「何だい?」

「あなたにとって時神蒼とは何?」

「どうしてそんな事を聞くんだい?」

「いいから答えなさい!」

「そんなの答え一つだよ…僕達は…友達だからだ」

「それだけ?」


 それだけの為に蒼を助けようというのか?

 アルビレーヌは理解出来なかった。


「ああ、そうさ。蒼は僕に新たな世界を見せてくれた…蒼がいたから…今の僕は在る」


 一夜はそう言った。

 そう、一夜は蒼と出会って、変わった。

 最初は退屈な日常を送ってばかりだった。

 だが、蒼と出会って一夜の世界は回り始めたのだ。

 だから助ける。自分の道を示してくれた蒼を。


「これ以上の時間稼ぎは無駄の様だね」

「ええ、あなたはここで死ぬ。悪く思わないでね」

「………」

「さようなら」


 一夜は諦めた様にそう言った。

 アルビレーヌの鎌が一夜の首を刈り取るその時、


「【時空神速(ワクター・サタリア)】!」


 一夜の目の前に何者かがやって来た。

 みると、一夜の首に今にも切りかかりそうな大鎌を鉄の剣で止めていた。


「プロ……テア……」


 そう、プロテアが一夜を助けたのだ。







 プロテアは蒼の周辺で蒼を狙う者がいないかをずっと見ていたがやはりどこにもいなかった。


「手懸かりが掴めない…」


 プロテアはそんな事を言われる呟いていた。

 歩きながら公園の近くにやって来た。

 すると、一夜がアルビレーヌに殺されそうになっている所を見た。

 プロテアとアルビレーヌは一度しか会った事は無いがUSWの『七魔王(セブン・ドゥクス)』のメンバーである為、その存在は知っていた。


「一夜…」


 しかし、プロテアは少し助けるか迷った。

 プロテアにとって蒼を助ける事が最優先だし、もしかしたらこれは罠かもしれなかった。

 プロテアは迷った。そんな時ー


「あなたにとって時神蒼とは何?」


 プロテアはそんなアルビレーヌの問いに耳を傾けた。

 一夜は不適な笑みを浮かべながら答えた。


「そんなの答え一つだよ…僕達は…友達だからだ」

「それだけ?」

「ああ、そうさ。蒼は僕に新たな世界を見せてくれた…蒼がいたから…今の僕は在る」


 そうだ。プロテアも同じだ。

 蒼がいたから…今のプロテアはある。

 蒼が…今まで創って来たのだ。


「………」


 プロテアは一夜の言葉を聞き、一つの決断を下した。


「【時空神速(ワクター・サタリア)】」





 プロテアはアルビレーヌの大鎌を弾いた。


「プロテア…」

「大丈夫?一夜?」

「ああ、大丈夫だ。礼を言うよ。どうやら、君は本物の様だね」

「あなた…やっぱり気付いていたのね」

「君もその様だね」


 一夜とプロテアはお互いの状況を確認した。


「プロテア…君の事は分かっている。一人でずっと蒼を助けてくれていた…それについても礼を言いたい」

「あなた…どうしてそれを…?」

「話は後だよ!僕を狙っているのはアルビレーヌだけじゃない!ルバートの偽物もいずれここを嗅ぎ付けてくる!その前にアルビレーヌを倒さないと詰みだ!」

「成る程ね…そう言う事なら速く決着を着けないとね」


 プロテアは剣を構えた。


「まさか…あなたが苗木一夜を助けるとはね…プロテア・イシュガルド…」

「人は変わるのよ。それに…私が一夜を助けたのは私の気まぐれよ」

「よく言うわね!」


 アルビレーヌがプロテアに攻撃を仕掛けた。

 大鎌と剣がぶつかり合う。

 プロテアとアルビレーヌの力は今のところほぼ互角の様だ。


「【時空減衰(ワクトレイン)】!」

「!?」


 アルビレーヌの身体の動きが鈍くなった。

 否、厳密にはアルビレーヌの時間の流れがゆっくりになっていたのだ。

 プロテアはその隙にアルビレーヌの身体を連続で切り裂いた。


「ぐっ!?」

「【鉄連鎖針(ハディード・トゥルバ)】!」


 プロテアは剣を地面に突き刺し、地面に無数の鉄の針を発生させた。

 アルビレーヌはプロテアの鉄の針をまともに受けた。


「がはっ!?」


 アルビレーヌは血塗れになりながらも何とか鉄の針から抜け出した。


「流石ね…こうも簡単に抜け出せるなんて…偽物でも『七魔王(セブン・ドゥクス)』といったところかしら?」

「それはどうも…プロテア・イシュガルド…ここにいる二人を殺せば時神蒼殺害を止める者は誰もいなくなるわね」

「やっぱり…あなたを作り出した者が、フローフルを殺害しようとしてるのね」

「いいえ、それは違うわね。ああ、言うほど違わないか…」

「どう言うこと?」

「私達の主はあくまで手伝いをしてるだけよ。本当に時神蒼を殺そうとしている者は別にいる…という事よ」


 つまり、あの金髪の女以外に別に敵がいる…という事だ。

 予想はしていたがやはり厄介な事になっていた。

 仮に蒼の死を回避できた所で原因を絶たねば意味がない。

 現に、そのせいでプロテアは何度も蒼を助ける事が出来なかったのだから。


「あなたの能力は時間の加速と減速だったわね。そして…時を越える事も出来る…成る程分かったわよ。あなたがどうやって時神蒼の死を回避していたのかを」

「………」

「あなたは加速と減速を同時に使う事で時間を越える事が出来、過去と未来を往き来出来る…話には聞いていたけど本当の様ね。そして、その力で何度も何度も歴史改変をしていた」


 アルビレーヌはプロテアの能力を看破してみせた。

 一夜はこれは不味いと思った。

 プロテアのやっていた事がバレてしまった。

 つまり、プロテアにも本格的に敵に狙われてしまう事を意味する。


「ああ、いい事を教えて上げるわ。私達コピーは本人と意識が繋がっているわ。つまり、私達の主にはこの事は既に伝わっているわ」

「「!?」」


 ーそうか…それで僕に対する対応が速かったのか!?


「あなた達は例え私を倒せたとしても次々とあなたたちに刺客が向けられるでしょうね」

「確かに…それをやられると厄介ね。なら…そうなる前にあなたを操ってる本体を見つけ出す!」

「出来るかしらね?あなたたちに!」


 そう、これはどちらが速く見つけ出すかの勝負だ。

 一夜とプロテアは自分達が殺される前に偽物を造っている本体を見つけ出さなくてはならない。

 一夜とプロテアが見つけ出すか、それとも向こうがそれよりも速く一夜とプロテアを殺すか。

 その勝負にになるだろう。


「さぁ…命懸けのデスゲームだね…」


 一夜はそう呟いた。






To be continued

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