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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第九章】天使輪廻篇
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【第九章】天使輪廻篇Ⅶーroute jー

 慟哭、慟哭、慟哭、慟哭、慟哭、慟哭、慟哭、慟哭、慟哭、慟哭、慟哭、慟哭、慟哭、慟哭、慟哭、慟哭、慟哭、慟哭、慟哭、慟哭。

 叫び叫び叫び叫び叫び叫び叫び叫び叫び叫び叫び叫び叫び叫び叫び叫び叫び叫び叫び叫び叫び叫び叫び叫び叫び叫び叫び叫び叫び。

 悲鳴、虚ろ、空虚、地獄、煉獄、恐怖、悲しみ、哀しみ、憎しみ…

 そんな感情が渦巻いていた。

 渦巻き過ぎて訳が分からなかった。

 頭の中で色々と浮かび上がってくるのだ。

 あらゆる人々の絶叫。崩壊していく民家。

 燃え上がる街。

 全てが破壊された。

 何も残らなかった。

 恐らく、戦争によって全て焼き付くされてしまったのだろう。

 だが、それが何なのかは全く分からない。

 とにかく頭の中がぐちゃぐちゃになっているのだ。


「何や?これ??」


 小さな少女は自分の身体を見た。

 左手足は吹き飛ばされており、右目も潰れていた。

 更に身体の所々に風穴が空いており、そこから血が吹き出していた。

 間違いなく、このままだと確実に死ぬ。

 と言うより、もう手遅れだ。確実に助からない。

 どうしてこんな事になったのか…


 ー分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない。


 記憶が混濁する、乱れる、意識を保てない。

 そんな滅茶苦茶な状態の中、少女は自分に近付いて来る男に気が付いた。

 その男は花柄の和服を着ており、右半分の髪が黒髪、左半分が白髪が特徴的であった。

 更に瞳は紫色の三白眼であり、かなり不気味な雰囲気を醸し出していた。

 少女を見て、男はクスクス嗤った。


「ーーーーーーーーーーーーーーーー」


 男が何かを言っていた。

 しかし、少女は聞き取れなかった。

 やがて男は儚げな顔をした。

 まるでこの世界を憂いでいる様な…そんな表情であった。


「ーーーーーーーーーーーーーーーー」


 男が少女に対して何か話していた。

 しかし、少女にその言葉が聞き取れる筈も無く、少女の意識が遠退いていく。

 何も見えなくなる。

 何も感じなくなる。

 何も

 何

 な


「今日は君のーーーー」


 最後にそんな言葉が聞こえた気がしたが少女の意識は完全に失った。






「はぁ!」


 蒼は金髪の女性に攻撃を仕掛けた。

 しかし、金髪の女性は攻撃を弓で防いだ。


「これで…終わりよ!」


 金髪の女性がそう言うと蒼の刀が粉々に砕けた。


「な!?」


 蒼は距離を取り、霊呪法を放とうとした。


「【氷魔連刀(ひょうまれんじん)】!」


 しかし、蒼の霊呪法は発動しなかった。


「どうなってる!?」

「こうなってるのよ。自分の身体、見てみなさい」


 金髪の女性がそう言うと蒼は自身の左胸を見た。

 すると、金色の矢が突き刺さっていた。


「な!?いつの間に…」

()()()()()。私の力が発動するとその矢は発動する」

「どういう…事だ…」

「その光の矢はあなたの霊力を消す矢よ。その矢を受ければ霊力を失う」


 心臓は霊力の源泉だ。

 その心臓をやられると霊力が遮断される。

 しかし、蒼は確かに心臓を貫かれてはいるが、痛みは全く感じなかった。

 蒼は金色の矢を引き抜き、傷口を凍らせた。


「無駄よ。あなたの霊力は完全に失った…私の矢の力でね」

「何だと…」

「矢の力は残留する…私は矢の力を自在に操る事が出来るわ。こんな風にね」


 金髪の女性がそう言って左手を上げると蒼は金髪の女性に引き寄せられた。

 そして、女性は光の槍を出現させ、蒼の脇腹を貫いた。


「がっ!?」


 蒼は脇腹に刺さった槍を引き抜き、距離を取った。

 ここは逃げるしか無い。霊力が全く使えない状態で勝つのは不可能だ。


「逃がさないわ」


 金髪の女性はそう言って蒼の目の前に回り込んだ。


「!?」

「ごめんなさいね。そう長くは時間を掛けられない…一瞬で終わらせる」


 金髪の女性がそう言って弓で蒼の身体を切り裂いた。


「がっ!?」


 更に金髪の女性は弓から光の矢を放ち蒼を壁に叩き付けた。


 ーこの感覚はー


 そう、蒼はこの状況に覚えがある。

 夢と同じだ。

 夢の中でもこんな感じで蒼は殺された。

 縁起でも無い話だが、これは正夢なのかも知れなかった。


「がはっ!?」


 蒼は急所を三ヶ所貫かれていた。

 更に四肢も矢で貫かれ、最早動けるような状態では無かった。


「くそ…」


 蒼はこの状況を打破する方法を考えていた。

 出し抜く?話をして時間を稼ぐ?いや、そんなものは無意味だ。

 この状況で話をして時間を稼ぐなど無理な話だ。

 四肢を矢で貫かれ、身動きすら取れない。

 逃げるのも不可能、霊力を奪われ、話す力も残っていなかった。

 金髪の女性は蒼にどんどん近付いて来る。

 このままでは殺される。

 蒼は夢の内容が走馬灯の様に甦った。

 最初は蒼の部屋から突然侵入して来て、不意打ちで蒼の身体をめったうちに切り裂かれた。

 二回目は突然心臓に矢が突き刺さり、どこかのビルに連れられた瞬間に両目を潰されそのまま殺された。

 三回目は夜一人で散歩している時に不意打ちで何も無い場所から矢を飛ばした後、首を跳ねられ殺された。

 四回目は、五回目は、六回目は、七回目は、八回目は九回目は…いずれもそうだ、同じような感じで蒼は殺されていた。

 今回で何回目だろう。軽く数十回は越えていた。

 いずれも共通する点があった。

 それは蒼はいつの間にか心臓に矢が貫かれていて霊力を奪われた状態で殺されている。

 更に夢に出てきた女性は今、蒼を殺そうとしている女性と同一人物だ。

 蒼は戦闘中、警戒していた。

 なのに気が付いたら自身の心臓に矢が貫かれており、霊力を奪われていた。

 死にかけの状態になって夢の内容を思い出すだなんてタイミングが悪いにも程がある。

 だからと言ってこの状況になる前に思い出した所でどうしようも無いが。

 自分の死ぬ感覚が鮮明に甦っていた。

 蒼はある一つの疑念を抱いた。

 いや、元から抱いていた疑念だが、今になってその疑念が強くなった。

 その疑念とは無論、蒼の何度も見た夢だ。この夢は実は本当に起こった夢では無いのではないか?

 そして、金髪の女性は言った。あの女に感謝するべきだと。

 あの女とは誰なのか?

 蒼は考える。思い浮かんだのはやはり慧留とプロテアだ。

 二人の内、どちらかが蒼を助けていたという事になる。

 そう言えば、ここ最近、プロテアの様子がおかしかった。

 プロテアが何らかの方法で蒼を助けていたと考えるのが妥当だろう。

 ならばどうやって…そう考えていく内に蒼は一つの疑念を答えに辿り着いた。


「そうか…そう言う…事かよ…」


 蒼はか細い声でそう呟いた。

 プロテアは過去や未来に移動する能力がある。

 その力を使って歴史改変を繰り返していたのだ。

 つまり、蒼が見たのは夢では無かった。

 だが、殺されてしまっては意味が無い。

 恐らく、歴史改変をまたされてしまえば蒼の記憶も再び失う事になる。

 それでは結局同じ事の繰り返しだ。

 ならば一つ、疑問が残る。

 なぜ、プロテアはその事を蒼や他の仲間に言わないのか。

 考えられる事は一つだ。何らかの理由で言えない…と考えるのが妥当だろう。

 プロテアはたった一人で運命と戦っていたのだ。

 蒼を助ける為に。

 何回も何回も同じ様な事を繰り返していたのだ。


 ーくそ…何で俺は…気が付いてやれなかったんだ…


 何故、プロテアがここまで必死になって、一人でも蒼を助けようとしているのか、蒼には分からない。

 だが、プロテアはたった一人で今も戦い続けている。

 ならば…蒼も最後まで足掻くまでだ。


「ぬおおおおおおおおおおお!!!!」


 蒼は身体を動かし、四肢に刺さっていた矢を強引に引き剥がした。


「!?」


 そして、蒼は這いずりながら金髪の女性から離れていった。


「俺…は……死な…ない…死んで…溜まるか…」


 蒼はそう言いながら金髪の女性から逃げた。

 その瞬間ー


「フローフル!!」


 声が聞こえた。

 声の主はプロテアであった。


「ちぃ!」


 金髪の女性は舌打ちをした。

 プロテアは金髪の女性に剣を突き立てた。


「あなたね…フローフルを狙っていたのは…あなた…何者?」

「さぁ…私は誰なのだろうな…まぁいい。奴はあと数分で死ぬ。もう助からない。私はここで引かせて貰うわ」


 そう言って金髪の女性はどこかへ消えてしまった。


「フローフル!」


 プロテアは倒れていた蒼の元へと駆け寄った。

 蒼は身体中に風穴が空いており、血を流しすぎている。

 更に全身を切り刻まれている。

 彼を助け出すのは絶望的だった。


「フローフル…今すぐに…」

「プロ…テア…もう…いい。無理を…するな…」

「何を言ってるのよ!あなたは…必ず助け出す!」

「お前…何回も過去に行って…その度に…」

「!? 気付いてたの?」

「気づいたのは今…悪かったな…俺なんかの為に…」

「何かじゃ…無いわ…」

「?」

「私にとってあなたはなんかじゃない!あなたは私の…!」


 プロテアは涙を流した。

 何度も何度も…プロテアは蒼を助けようとして失敗した。

 そして…今回も…


「そうか…ありがとう…」


 蒼はそう言って意識を失った。

 完全に死んでいた。

 身体が灰化しながら赤い炎を上げていた。

 天使は死ぬと赤い炎を上げながら灰化消滅する。

 遺体すら残せず死んで行く…天使はある意味、悲しい存在である。

 プロテアはまた…蒼を助け出す事が出来なかった。

 もう、何度目だろう。

 数を最早数えていない。

 プロテアの精神も限界に近付いていた。

 だが…今回は収穫があった。

 蒼を殺した人物の顔は覚えた。

 次は…逃しはしない。

 今度こそ…今度こそ…


「【審判時神(イラ・ハカム)】!」


 世界の時間がゆっくりになっていく。

 そして、自身の時間が加速する。

 時間の加速と減速により、時間を超越し、過去や未来へ渡る。

 それこそ、プロテアのアルカナ、【審判時神(イラ・ハカム)】の力だ。

 プロテアがこの力を与えられた事には必ず意味がある。

 プロテアはそう信じた。

 諦める訳には行かない。諦めてしまえば、これまでの事が全て無駄になってしまう。

 何度失敗しても何度も何度も繰り返す事になっても、必ず一筋の光を掴んでみせる。


「【時間を超越する者(マシャー・ワクター)】」


 プロテアはその場から姿を消した。







To be continued

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