【第一章】十二支連合帝国篇Ⅺ-始まりと終わりー
時神蒼と天草屍二人の戦いは続く…果たして勝つのはどちらか!?
十二支連合帝国篇もクライマックスへ!!
天草屍は大妖怪、酒呑童子の子どもとして生まれた。
早くも妖怪としての才能に目覚め、錬金術としての才覚もあった。
当時の彼は誰に対しても優しい子供であり、人望もかなりあった。
魔族の間でも彼の事は持ちきりになっており、皆から羨望と期待の眼差しが向けられていた。嫉妬の眼差しも勿論あったが、屍にとってあまりたいしたことではなかった。
しかし、悲劇は突然訪れた。天草屍の力を恐れた十二支連合帝国は天草屍抹殺を企てた。そして、天草屍抹殺の為に魔道警察を千人程送り込んだ。
そして、死闘の末、屍の両親は死亡、屍は逃亡中に海に落ちてそのまま死亡したという形で警察は作戦を終了した。
しかし、天草屍は生きていた。海によって流された屍は運よく海岸に流れ着いたのだ。流れ着いた場所は十二支南島。当時は拡張工事が終わったばかりの頃であり、今から十三年前の事である。
しばらくは島で半年ほど島の中にあった人工で作られたた森で暮らしていた。
屍は両親の死を目の当たりにしていた。父は上半身と下半身を真っ二つに切り裂かれ、母は両目をくり抜かれ、頭を割られていた。
屍は両親の死がトラウマとなっており、それが原因で屍は人間に対して、過剰までに憎むようになったのだ。
屍が、人間の殺し方が惨たらしいのは子供の頃のトラウマが原因であることが大きい。
屍はそのすぐ後、錬金術で木材を船に錬金し、十二支連合帝国本島に上陸し、各地を放浪していた。色々な場所を放浪するたびに屍は絶望した。
どこもかしこも人間が頂点の世界。魔族は奴隷や道具にされ、果てには差別や迫害の対象にされ、理由もないのに殺されている魔族すらいた。
屍はこの頃から人間に対する感情が憎しみや復讐心だけでは済まなくなっていた。屍は仲間を集めることにした。
大きな組織を作り、国に抗う道を選んだのだ。
屍が薊と出会ったのは屍がそう考えた数日後の事であった。
「今日はこのホテルに泊まるか…」
屍は京都のホテルで一泊していた。身分証については錬金術で偽装をしていた。
「まったく…錬金術様様だな…」
屍はそう呟いた。実際、これまで屍は錬金術がなければ危ない場面が多くあった。身分証もそうであるし、船を錬金しなければ十二支連合帝国本島にもいけなかったし、上げると切りがない。
「ちょっと外に出るか…」
屍はそう言ってホテルを出た。
夜の景色が綺麗だった。屍はホテルの周辺を歩いていた。そんな時、気になる人影が見つかった。
「何だ?あれは…」
屍が向かうとそこには一人の少女が三人程の男たちにタコ殴りにされていた。
「ははは!こいつ、眼が蛇みてぇだな!気持ち悪いんだよ妖怪が!」
「死ね!死ねよおお!」
「せめて、俺たち人間様の役に立って見せろよ!おい…ここら辺でいい水商売の場所を知ってんだ…お前が働いて金を俺によこせ!」
男たちがそう言っていると屍は一人の大人を殴り飛ばした。
「ぐふぇお!」
「何だてめぇは!」
一人の男が聞いてくるが屍は錬金術でナイフを作り、一人の男を刺し殺した。
「ぐふあ!」
「てめぇ!」
殴り飛ばされた男が立ち上がり、二人がかりで襲ってきたが、屍はナイフで片方の男の眼を突き刺し、そのまま頭を掻き切った。
その後、屍はもう片方の男の口にナイフを入れ、口と舌を切り裂き、殺した。
「あ…」
断末魔を上げて残りの男も倒れた。
「あなた…は…?」
少女が聞いてくる。すると屍は答えた。
「天草屍だ。大丈夫か?」
屍が聞くと少女は首を縦に振った。
「名前は?」
屍が問いかける。
「蛇姫薊です」
薊はそう答えた。
「家までは大丈夫か?送ることも出来るけど…」
屍がそう言うと薊は首を横に振った。
「いいえ…私の家族はもう…いないんです…人間に…殺されたから…」
薊がそう言うと屍は人間に対して激しい怒りを覚えた。
「なら、俺のとこに止まりな。ほら、行くぞ」
そう言って、屍は薊をホテルに連れて行った。
薊をホテルに連れて行った屍はあの後、自分の過去と今、やろうとしていることを話していた。先程の死体は屍の錬金術で跡形もなく処理した。
「人間に復讐する組織…ですか?」
「ああ、俺は今、仲間を集めてる。国を敵に回すんだ…どれだけ人がいても正直足りない」
屍はそう言い放った。実際、一国家を相手にするとなると人数がどれだけいても足りない。一人など論外だ。
「私で…大丈夫なのでしょうか?」
「なぁ、敬語で話されると落ち着かないんだけど…後、俺今年で八歳だし…多分君の方が年上だよ?」
屍がそう言うと薊は敬語口調を止めた。
「ほんとだ…あたし今年で九歳…歳が私が一つ上ね…なのに…あなたは…強いわね…」
薊はそう言った。
「そんなこと…ねぇよ…あっ!そうだ…組織を作るんだったら組織名がいるな。名前…何にするか…」
屍がそう言っていると屍は何か思いついたように手を置いた。
「「アザミの花」…うん!それがいいな!」
屍がそう言うと薊が微妙そうな顔をした。
「私の名前から…取ったの?」
「駄目か?いいと思うんだけどな~」
屍が言うと薊が再び質問をした。
「何で…「アザミの花」なの?」
「アザミの花言葉って確か「復讐」と「安心」だろ?俺たちの作った組織がこの国に勝利して復讐を成し遂げた後、魔族が皆安心して暮らせる場所になればいいと思って…後、最初の仲間の名前が薊だからな!」
屍はそう言って薊に手を差し伸べた。
「俺には…君が必要だ…俺と一緒に魔族が平和に暮らせる世界を作ろう!」
屍がそう言うと薊は嬉しそうな顔をし、屍の手を取った。
薊は嬉しかったのだ。自分そのものをだれかに必要とされた事が…
「アザミの花」が組織された瞬間だった。
その後、赤島英明を仲間に加え、兎咬審矢、御登狂を仲間に引き入れ、その他大勢の仲間を引き入れた後、その二年後、「アザミの花」がテロを起こした。
しかし、そのテロは鎮圧され、再び機会を伺っていた。
そして、その十年後、「ある人物」が『聖天十二神器』の場所と奪取に協力した。そして、隠し場所であった法隆寺を侵攻し、神器の力を得た。
「俺は…負けられない…負けられねぇんだよ…!魔族が安心に暮らせる世界を作るまでは!」
屍は再び立ち上がった。しかし、霊力と体力の消耗がかなり激しく、もう、神器も錬金術も使用はできないだろう。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
蒼も同様だった。【第二解放】は既に解けており、天使も今は普通の刀と変わらなかった。
蒼は屍を見て、「つくづく自分と似ている」と思った。そう、蒼と屍は似た者同士なのだ。
蒼は屍を見て思った。もしかしたら、自分も屍のようになっていたのかもしれないと。
「俺もお前と同じだ…俺も仲間の為に戦ってるんだよ!俺の仲間にも…世界に差別や迫害を失くしたいって願ってる奴がいる。俺は…俺だってそうだ!差別や迫害が無い世界を望んでる!そんな世界を望んでいるのはお前だけじゃないんだよ!」
蒼は叫んだ。蒼は屍を「助けたい」と思った。自分に似ていたからだと思ったからなのかもしれない。
「俺は!絶対に負けん!」
屍は刀に戻った神器を手に取り、蒼に向かっていった。
蒼は刀を二刀構え、屍と刃を交えた。そして、刃を交えるたびに互いの記憶が交錯する。蒼は屍の、屍は蒼の記憶を断片的に見ていた。
蒼と屍はお互い距離をとり、再び構えた。次の一撃で勝敗が決まる。
「…どうやら俺たちは…似た者同士らしいな…」
屍がそう言う。そして、蒼が言葉を返した。
「そうだな…これで…終わりだ」
蒼と屍はお互い近づき剣を振るった。そしてー
屍の身体から血が噴き出し、倒れようとしていた。
「なぁ、蒼…俺の最初で最後の頼み…聞いてくれるか?」
屍がそう言うと蒼は「ああ」と答えた。
「あいつだけは…薊だけは…逃がしてくれ…頼む…」
屍がそう言うと蒼は「ああ」と答えた。そして、屍は倒れた。
「アザミの花」のリーダー、天草屍を蒼は倒した。
その後、生徒会一行と佐藤が蒼の元に駆け付けた。慧留は蒼の傷を治した。その後、蒼は一夜にこっそりと薊の回収を頼み、屍と他の十二神将は魔道警察に逮捕された。
佐藤は薊については眼を瞑ると言ってくれた。
しかし、魔道警察の被害は甚大であった。三万人もの魔道警察官が殉職したのだ。佐藤以外ほぼ全滅だった。
さらに、天草屍の策略により、蛇姫薊を介して、魔道警察が四大帝国が定めた魔族条約を多数違反していることを十二支連合帝国の人民には勿論、世界にも広まってしまった。
屍が薊を逃がして欲しいといった理由がこれだったのだろう。まぁ、屍の性格上、それだけでは無いように蒼は思えた。
佐藤はこれについて蒼たちに何かをクレームを言うのかと思ったがそうではなかったようだ。
むしろ、逆で、佐藤は魔道警察の今の現状に頭を抱えていた。警察とは名ばかりで今の魔道警察の約半数が不正な犯罪行為をしていると言う。
特に何も犯罪を犯していない魔族を殺す警察官が相次いでいたのだ。
そのことを告発してくれた彼らにはむしろ感謝していると佐藤は言っていた。
十二支連合帝国政府もかなりの条約違反をしていることが疑われており、他の四大帝国により、捜査が進められていた。
十二支連合帝国は魔族に対して過剰な迫害をしている国のため自国にはそこまで影響は出なかったがUSWや神聖ローマ大連邦帝国、そして、ヘレトーア帝国は十二支連合帝国の魔族に対する迫害を許さなかった。
十二支連合帝国以外の四大帝国の上層部は魔族と共生を目指す方針で事を進めていた。しかし、十二支連合帝国が条約違反が他国に露呈したため、他の三国は十二支連合帝国を取り締まる形で動いていた。
蛇姫薊は苗木日和に住むことになった。美浪の隣の部屋で暮らすことになった。
「………」
薊は家の中で沈黙していた。
「薊ちゃん!何か話してーな」
美浪が薊に話を振ってくる
「理解できないわ…前までは敵同士だったのよ…なのに何で…」
「今はもう敵や無いよ」
薊が疑問を口にすると美浪はそう答えた。
「よー、薊!調子はどうだ?」
蒼が薊の家にいきなり押しかけてきた。
「蒼君…女の子の家にいきなり入るなんて…デリカシー無いよ」
美浪は顔を赤らめながらそう言った。
「ああ…わりー。ちょっと大丈夫か気になってな…」
蒼はバツが悪そうにそう言った。
「日本政府は混乱してるわね…いい気味」
薊が嘲笑うようにそう言った。薊が十二支連合帝国が魔族条約を多く違反していることを広めたことによって、十二支連合帝国政府はかなり混乱していた。
それだけならまだしも興味本位で調べた魔族や国民によって多数の証拠が発見され、十二支連合帝国政府は頭を抱えていたのだ。
「…この件について、四大帝国会議をこの十二支連合帝国でするそうだ」
蒼はそう告げた。十二支連合帝国政府や魔道警察が犯した悪行は数知れず、国内だけで収まりがつかない状態になったため、四大帝国会議がこの国で開かれることになった。
四大帝国会議とは、十二支連合帝国、ヘレトーア帝国、USW、神聖ローマ大連邦帝国の四大帝国の四国が開かれる会議である。
本来は年に一度開かれる会議なのだが今回は特例で数日後に開かれることになった。
「この国が腐りきっていたのは事実よ…間違いなく政府は罪に問われるわ…」
薊はそう言った。
「まぁ、屍たちは無罪にはならなくてもこの国の事を考えると国も奴らの罪を軽くせざる負えないだろ…」
蒼は淡々とそう言った。
「疑問に思ったんだけど…何であなたは屍の要求を呑んだの?」
「別に…理由なんてねぇよ…気まぐれだ」
薊が蒼に問い詰めると蒼は素っ気なく答えた。
「まぁ、いいや…俺はもう帰る…じゃあな」
蒼はすぐに薊の部屋を出て行った。
一夜は疑問に思っていた。何故、一宮高校生徒会は国の機密情報を見ることが出来るのかを…
「何か裏がある…これは…僕の勘だがそんな気がする」
一夜は今、生徒会室で機密情報の閲覧をしていた。機密情報の閲覧には会長と副会長の同行が必要なため、遥と澪も一緒にいた。
「まぁ、機密情報って言っても皆余り調べようとはしないけどね…」
「何故だい?」
一夜は遥にそのことを尋ねた。国の機密情報など欲しがる人間はいくらでもいる。その特権を何故、今までの生徒会は利用しなかったのか…
「過去に何人か調べた人がいたのよ…けど、権限を使った人は例外なく行方不明になってるのよ…あたしも勧誘の時はそのことをダシにすることはあるんだけど…生徒会に入ったら情報を調べさせないように進めていたの…」
遥がそう言うと一夜は益々きな臭いと感じ始めた。すると、一夜は妙な物件を見つけた。
「何だこれは…ロックがかかっている。だが、この程度のロックなら簡単に破れるね」
そう言って一夜がロックを解いた。その瞬間、一夜と遥、澪は凍り付いた。
「なっ…これは…そういうことか…だから…」
一夜はそんな声を上げた。
「なるほど…閲覧した人たちが例外なく行方不明になってる理由はこれを見てしまったからね。でも、これが本当ならマジで笑えないわ…」
遥は青ざめながらそう言った。
「う~ん。これは…流石にあたしたちじゃ対処しきれないね~。「あの人たち」にも協力してもらわないと…利害は一致してるし、協力してくれるでしょ」
澪はそう言った。
「澪にしては珍しいわね。こういう面倒ごと、かなり嫌うはずなのに…」
「いや、だって…このままだとあたしたちみんなやられちゃうし…」
遥が驚いたように言うと澪は冷静に答えた。
「まぁ、知ってしまった以上、奴らを野放しには出来ないね…もし、この情報が正しいのならば…奴らは四大帝国会議で動くはずだ」
一夜はそう言ってさらに言葉を続けた。
「はぁ…一難去ってまた一難とはまさにこのことだね…」
一夜は右手を頭に置いてそう言ったのだった。
蒼はベランダで夜空を眺めていた。そして、「アザミの花」の事を思い出していた。そして、屍との決戦の時を。
屍と戦って、蒼は断片的にだが、屍の過去が見えた。蒼は強敵と戦うと時々相手の過去が断片的に見える時がある。もしかしたら、これは蒼に限った事では無いのかもしれない。
相手が強ければ強いほどそれは色濃く映し出される。蒼は今回、屍の過去がかなりはっきり映し出されており、覚えていた。
「あれ?蒼じゃん。こんなところで何やってるの?」
隣の部屋のベランダから慧留が話しかけてきた。
「ああ…ちょっとな…気分転換。長い戦いが終わったからな…」
蒼がそう言うと慧留は訝し気に蒼を見つめた。
「何かあったの?」
「分かるのか?」
「何となくね…今の蒼、ちょっと元気ないし…」
慧留は蒼の事を心配そうに見つめた。そして、蒼は今考えていたことを全て話した。
「………そっか…天草屍がそんなことを…」
慧留は複雑そうな顔をした。
「ああ」
蒼は短くそう答えた。
「もし、もっと速くに私たちと出会っていたなら…天草屍たちはまた、違った人生を歩んでたのかな?」
慧留はそう呟いた。
「そんなの…分かんねよ。けど、あいつらにはあいつらなりの正義や信念があって、その一心で戦ってたんだろ…俺はそんなあいつらをどうも放っておけなかったんだよ。屍の要求に答えたのもそれが理由かな?勿論、あいつらがやった罪は肯定されるべきじゃないし、むしろ、裁かれるべきだと思う。けど、今の十二支連合帝国はあいつらを裁く資格はねぇ…」
「うん。私もそう思う…ひどいよ…この国は…こんな…」
慧留は悲しそうな顔でそう言った。
慧留は悲しい気持ちになった。慧留の周りの人間たちは慧留に優しかった。だからこそ、今のこの国の政治の現状を知って慧留はショックを隠せなかったのだ。
「何で…分かろうとしてくれないの?手を取り合えば気持ちを伝えることは出来るのに…」
慧留はそう言った。
「確かに…話せばわかる奴が大半だ…けどな、中には話しても分からない奴がいる。そういう奴がいるからこうなってんだよ…それだけじゃない、みんなそれぞれ事情があって、そのせいで分かり合えないことだってある。だから、共生ってのはとんでもなく難しいんだ」
蒼は淡々とそう告げた。
「それでも…私は可能性を捨てたくないよ…」
「…なら、お前はその道を進み続けろ。俺は諦めちまったけど…お前なら…それが出来るかもしれない…だから、俺はお前を助けるよ…友達…だから…」
蒼が言い終えた後、慧留が突然笑い出した。
「ふふっ…」
「何だよ…なんか変なこと言ったか、俺?」
「蒼らしくない言葉だったから…でも、ありがと」
蒼が慧留に問いかけると慧留は笑顔でそう答えた。
蒼は始めこそ納得いかない表情をしていたがすぐに表情を緩め、「ああ」とだけ返した。
「じゃあ、おやすみ、蒼」
「ああ、お休み」
二人はそれぞれの部屋に戻っていった。
蒼たちはさらなる戦いに巻き込まれることになる。これはまだ、序章に過ぎない。
十二支連合帝国篇 ーTHE END-
ようやく、十二支連合帝国篇が終わりました。はい、やっと、一篇が終わりました。まだまだ、話は続きます。
屍たちはみんなそれぞれ思う所があって反乱を起こしたのです。最後まで見てくださった方々なら分かると思いますが、屍たちは再登場します。お楽しみに!!
それではまたお会いしましょう!




