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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第九章】天使輪廻篇
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【第九章】天使輪廻篇Ⅲーcircleー

「!? フローフル!!」


 プロテアはビルの屋上に蒼が倒れている所を見つけた。

 人は蒼以外にはいなかった。

 蒼は無惨に殺されていた。身体全身を切り刻まれていた上に首を切断されていた。


「プロテア!」

「え!? これって…」


 屍と美浪が駆けつけたが時既に遅しである。

 屍と美浪は同様を隠せなかった。

 それもその筈、蒼が無惨に惨殺されていたのだから。


「何で…こんな…」

「おい…嘘だろ…時神!」

「もう無理よ…死んでる…」


 美浪と屍が動揺する中、プロテアはどこかに去ろうとしていた。


「おい…どこに行くんだよ?」

「フローフルは必ず助け出すわ…この命に代えても…」

「何をするつもりですか?」

「あなた達に言っても無意味よ。どうせ、()()()んだから」

「何を…」


 プロテアはそう言ってどこかに消えて行った。


「まさか…あいつが時神を?」

「それは違うと思います。…でも、蒼が何者かに狙われていた事は…知っていたみたいでしたけど…」


 そう、プロテアの口振りからして殺したのはプロテアでは恐らく無い。

 だが、少なくともプロテアはこうなる事を予測していた。


「訳…分かんねぇよ…」


 屍達にはどうする事も出来なかった。

 屍達に人を生き返らせる事など出来る筈も無い。

 慧留の時間塑行も死んでる者には効果が無い。

 完全に詰みだ。


「どうすれば…」


 美浪と屍は突然の出来事に思考が追い付いていなかった。

 だが、死というのは常に突然訪れるモノだ。

 受け入れるしか…無いのだ。


「とにかく…時神を殺した奴を必ず見つけ出す…敵討ちだ」

「一人では駄目です。皆で…」

「ああ、分かってるよ。時神をこうもあっさり殺すような奴だ。俺一人じゃ無理だ」


 屍は蒼を殺した人物がかなりのやり手である事は分かっていた。

 一対一に拘る必要は無い。

 親友を殺された落とし前は相手にはつけて貰わなければならない。


「俺は…絶対に時神を殺した奴を潰す…!」

「はい…」


 屍は殺意を剥き出しにしながらそう言い、美浪も静かに返事を返した。







ー抜け出せない…


 プロテアは焦っていた。

 現在プロテアはどこかのビルにいた。夜空を照らす月光がプロテアを照らしていた。

 ()()()()()()…蒼を助ける事が出来なかった。

 これで蒼が殺されたのは三回目だ。現在は十月二日。

 一週間前、蒼は何者かに殺された。

 プロテアは【審判時神(イラ・ハカム)】の力で時を渡り、蒼が殺される前の時間に戻り、蒼が殺されるのを未然に防いでいた。

 一度回避すれば何とかなるとプロテアは踏んでいたのだがその考えは甘かった様だ。

 恐らく、三回とも蒼を殺した人物は同じ人物だ。

 しかし、プロテアは蒼の攻撃を未然に防いではいるのだが、犯人の姿は未だに見れていない。

 プロテアが蒼の死を防いだ瞬間にどこかに消えてしまうのだ。

 このままでは埒が空かない。

 プロテアの【審判時神(イラ・ハカム)】は何度でもやり直しが出来る…しかし、時間を渡る事は霊力以上に精神力を多く消費してしまう。

 何度もこの様な状態が続けばプロテアの精神が崩壊してしまう。

 更に厄介なのは蒼達にこの事実を伝える事が出来ない事だ。

 プロテアは蒼や一夜に自分の事を伝えようとした事がある。

 しかし、蒼達に伝えようとすると()()がそれを邪魔する。

 まるで声帯を潰される様な感覚に襲われるのだ。

 これにより、蒼達に自分が何度も何度も過去に戻ってやり直している事を教える事が出来ない。


「敵の能力も分からない…味方もいない…私一人で何とかするしか…」


 過去の記憶を覚えているのは世界でプロテア一人だけだ。

 プロテアが…何とかするしかない。

 このどうしようもない絶望をどうにかして乗り越えなければならない。


「歴史を…絶対に変えてみせる…絶対に…」


 歴史改変…それは時の流れを背く違法の業…

 だが、プロテアは世界を敵に回してでも蒼を助け出そうとしている。

 プロテアは蒼に救われた。蒼のお陰で今のプロテアが在る。

 何を犠牲にしても必ず助け出す。

 だが、歴史には…時の流れには修正力があると言われている。

 仮に過去を渡って一時的に過去を改変してもどこかしらで再び同じような事が起こる…というモノだ。

 今回のが正にそうだろう。

 蒼は一週間前に殺された。それが今、三回繰り返されている。

 これは歴史の修正力が働いているからとも言える。


「抜け道は必ずある…私は…諦めない…!」


「成る程ね…君はそうしてフローフル君の死を阻止していた訳だ」


「!?」


 プロテアの目の前にピエロ衣装を着た男がいた。この男はプロテアにとって見覚えがある人物であった。

 どこから現れたのか何も無い空間からいきなり現れた。

 神混髏奇(こうまるく)…プロテアにとっては因縁の相手でもある。

 この男はイシュガルドの内乱を引き起こした人物であり、プロテアの家族を奪った張本人だ。


「神混…髏奇…!」

「待ちたまえよ。僕は君と争う為にここに来た訳じゃあ無い( ´,_ゝ`)君と少し話をしようと思ってね。というか、今の君では僕には勝てないよ。君、相当疲れてるよね?」


 髏奇の言う通りだ。

 プロテアは度重なる時間塑行により、精神が磨耗していた。


「私を殺すなら…今よ…フローフルは…あなたにとっては邪魔なんでしょ?」

「確かに…フローフル君は僕にとって始末したい所だ…けど、今はとても面白い事になっている…しばらくは静観しようと思っている。君の心が壊れるのか…それとも歴史改変に成功するか…とてもとても…興味深い(*´ω`*)」

「あなたは…改変前の記憶を保持してる…という事かしら?」

「ああ、その通りだよ。まぁ、改変前の記憶を保持してるのは君と僕くらいだろうね。ま、違和感を感じてる者は何人かいるみたいだけど(*´∀`)」


 驚く事にこの男は改変前の記憶をプロテアと同様に保持していた。

 プロテアは世界を改変している張本人だ。記憶があるのはある意味当然だろう。

 しかし、髏奇は違う。本来ならプロテア以外に改変前の記憶を保持してる筈が無いのだ。

 考えられる事はいくつかあるが…考えられるとしたら…


「あなたは…時を司る能力を持ってる」


 そう、プロテアが辿り着いた答えだ。

 時を司る能力を持ってるのならば髏奇が改変前の記憶を保持してるのも頷ける。


「う~ん、間違ってはいない?かな?でもその理屈だとフローフルも記憶を持ってないとおかしいよね?」

「………」


 そう、正にそれだ。

 時を司る能力を持っている者が記憶を保持しているのであれば蒼達も記憶がある筈だ。

 髏奇だけが改変前の記憶を保持しているのは辻褄が合わない。


「まぁ、全く間違ってはいない…という意味だよ。もう一つヒントを与えるならば僕は記憶を()()()()()()()()()()()()。知ってるだけ」

「どう…いう…」

「はい!この話はお~わり!次は僕が質問をする番」


 髏奇は無理矢理話を切った。


「君は何故…そこまでフローフル君を助けようと?命を張ってまで成さねばならない事なのかな?(^_^;)」


 髏奇はそれが知りたい所であった。

 髏奇はプロテアがここまでする理由が分からなかった。

 何故蒼をここまで助けようとするのか?それが疑問で堪らない。


「あなたに答えて何になるの?」

「何も無いよ?けど、単純に興味があるのSA☆」

「ふざけた奴ね…」

「それはどうも(*´∀`)」

「因みに答えなければどうなるのかしら?」

「それは…御想像にお任せしよう…」


 髏奇は霊圧を迸らせていた。

 プロテアは素直に答えた方がいいと判断した。


「私がフローフルに助けられたからよ。今度は…私の番よ」

「使命感?」

「そんなんじゃないわ。助けたいから助ける…それだけよ」

「人間は時として理解に苦しむね~(゜ロ゜)何でそこまで他人の為に必死になるのさ?」

「さぁね…それは私にも分からないわ…こっちが教えて欲しい位よ」


 髏奇は眼を点にしながらそう言った。


「そう言うあなたは…何で戦争や混沌を好むのよ?」

「面白いからだよ?人は愚かだ…そんな人々が感情を剥き出しにしながら殺し合う…その様が見ていてとても楽しいんだよ…そして、それを遠くから傍観するのも楽しいね。まぁ、君達に分かりやすく言うとスポーツ観戦を見るのって楽しいよね?それと同じ」

「分からないわね…」


 髏奇の言葉はプロテアにとって意味が分からなかった。

 髏奇は戦争とスポーツを同じ様に考えている…そう言う事だろう。

 髏奇は相当に倫理観が破綻している。正気の沙汰では無い。


「だろうねぇ…理解して貰おうとも思わない…けどね、これから僕はすんごい事をしようと思ってるのさ」

「どういう事?」

「君が無事に今回の件を切り抜ける事が出来れば…分かるさ。まぁ、今の君は相当ヤバイ状態だから過去改変ももう限界に近いだろうから無理かもだけど…ああ、これは僕のせめてもの親切心だよ。耳をかっぽじって聞くといい」

「?」

()()()()()()()()よ。目に見えてる敵が全てじゃない。それじゃ!」


 髏奇はいつの間にか姿を消した。

 髏奇の言葉の意味は最初から最後まで分からなかった。

 敵は一人じゃない…これのどこがヒントなのか分からない。

 そもそも今回の敵は一人も見えていない。

 髏奇の妄言だろうか?いや、何となくだが、妄言では無いような気がした。

 だからと言ってあの様な男の言葉を信用する程、プロテアも単純では無い。

 話し半分にしておいた方が無難だろう。

 それよりも、今はどうやって蒼を助け出すか…それに掛かっている。

 髏奇が言った通り、プロテアはもう…限界に近い。

 そう何度も時を渡る事は出来ないだろう。


 それでも何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も…


「あっ…」


 プロテアは正気に戻った。

 破滅のイメージが思い浮かぶようになっていた。


「ふっ…まだ三回しか過去を渡っていないのに…私の心は弱いわね…」


 プロテアは自嘲する様にそう言った。

 しかし、決してそんな事は無い。

 時を渡り、何度も改変に失敗する…これは精神的にかなりのダメージとなる。

 たった三回でも精神的に消耗するには十分な回数だろう。

 おまけにまだ、敵の全貌すら掴めていないのだ。

 焦りも混じり、更に精神が磨耗していく。

 おまけに味方は誰もいないという状況だ。

 並の人間なら今のこの状況でも精神崩壊を起こしているだろう。


「フローフル…あなた…絶対に…助け出す…」







「どうして…どうしてよ!何で…殺せない!」


 金髪の女性が壁を殴り付けていた。

 今、彼女は夜の公園にいた。

 女性は時神蒼を殺す為にこの十二支連合帝国へとやって来た。

 そして、殺す算段を進め、確実に殺している筈だった。

 しかし、事ある事に邪魔が入る。あるいは失敗している。

 蒼の部屋に進入して寝ている状態で襲った。

 しかし、そこに銀髪の女性が介入し、退かざるを得なかった。

 二度目は遠くから矢を放ち、心臓を射ぬこうとしたが矢が突然何かにぶつかり方向がブレ、蒼には命中しなかった。

 三度目も同様に矢を飛ばして攻撃した。今度は障害物や邪魔が無い何も無い場所で攻撃をした。

 だが、その時も蒼はタイミングよく、誰かに呼ばれたのか命中する筈の矢が命中せず暗殺は失敗した。

 何故こうも暗殺に失敗しているのか理解出来ない。


「偶然…いいえ!そんな偶然があってなるモノか!私の暗殺を阻止しようとしている者がいる?」


 そう考えるのが自然だろう。

 何者かが彼女の暗殺を邪魔をしている。

 恐らく、一番最初に暗殺をしようとした時に邪魔をしたあの女だ。

 あの女はどうやって知らないが蒼が狙われているという事を知っていた。


「やれやれ…てこずってるみたいだネ」


 現れたのは黒い服に怪しげな仮面を被っている男であった。

 彼の名はドーラー。あくまでも本名では無く、コードネームだ。


「ドーラー…何の様なの?」

「いやいや…てこずってる様だから協力しようと思ってネ」

「必要無いわ!時神蒼は私が殺す!」

「ああ、時神蒼を殺すのは君の好きにすればいい。けどネ、分かっているだろう?このままでは埒が空かない。そうだろう?」


 確かにドーラーの言う通りだ。

 このままではいつまで経っても時神蒼を殺せはしない。

 ならば、ドーラーに露払いをさせた方がいいだろう。


「そうね…あなたには露払いを頼もうかしら。けど…時神蒼には絶対に手を出さないで頂戴。もし手を出したら…」

「分かっているネ。ミーも丁度…十二支連合帝国に…いや…四大帝国に…様があるからネ。君に協力するのはそのついでだネ」


 ドーラーはそう言った。

 彼の考えている事はさっぱり分からない。

 だが、協力してくれるのであればそれを利用しない手は無い。


「ならばいいわ」

「ああ、君の復讐…叶うといいね…ーーーーー」


 ドーラーの最後の方の声が聞き取れなかった。


「ええ…彼を殺すのが私の願い…そして…あの人の願い」

「ふふふ…いいね、その愛憎劇…僕を震え上がらせてくれる…」


 ドーラーは人が憎しみ合う、愛から生まれる憎しみ…そう言った愛憎劇が非常に好きなのだ。

 お互いに潰し合う…己の信念…守りたいモノの為に戦う…そう言った人間は実に動かしやすい。

 そして何より…見ていて楽しい。


「悪趣味ね…」

「何とでも…これが私なのですからネ…」


 ドーラーはケタケタ嗤った。

 プラネット・サーカスは狂った快楽主義の者が多く存在する。

 ドーラーもその内の一人だ。

 だがー


「ピエロよりは…これでもマシだと思うんだがネ」

「そのピエロとか言う奴の事は私は知らない」

「そうだったネ…君がもし生き残る事が出来たら紹介するとするかネ」

「まるで私はこれから死ぬ…みたいな言い方ね」

「無くは無いだろう?ま、精々頑張るネ…」


 ドーラーは軽い感じでそう言った。

 どうもドーラーの喋り方が彼女にとって不快で仕方無かった。

 何を考えているか全く読めない…君の悪い話だ。


「言われるまでも無いわ。あなたこそ…足を引っ張らないでよ」

「勿論さ…出来る限り…ミーも協力するネ。これから…どぉんな愛憎劇(ドラマ)が始まるか…ミーは楽しみで仕方無いネ」


 ドーラーは嗤いながらどこかへ消えていった。

 協力すると言った以上、協力はするのだろうが彼女はあまり信用していなかった。


「私が…殺す…!必ず…」






To be continued

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