【第九章】天使輪廻篇Ⅰーroute Aー
蒼達の過去を聞き、再び平穏を取り戻した様に見えた。
しかし、プロテアは一人で過酷な戦いを強いられる事となる。
時神蒼は自身の部屋で倒れていた。
身体全身に刃物が突き刺さり、倒れていた。
派手に何かが起こったわけでは無い。
敵は既に去っており、蒼の部屋は血だまりのみが残っていた。
「何よ…これ!?」
プロテアはそう言って、蒼の部屋にやって来た。
嫌な予感がすると考え、蒼の部屋にやって来たが既に蒼は襲撃を受けていた。
プロテアは蒼の元へ駆け寄ったが蒼は既に死んでいた。
「そんな…どうして…」
プロテアは目の前が真っ暗になる感覚に襲われた。
蒼がもう…この世にいない…そう考えるだけで再びプロテアの世界の色が失われる感覚に襲われた。
プロテアはこの状況をどうにかしようとばかり考えていた。
蒼を生き返らせる方法を考えた。
しかし、誰かを蘇らせる術を使える者はプロテアの知り合いにはいなかった。自身もそんな術は使えない。
ならば…どうすれば…
そして…熟考に熟考を重ね、プロテアはこの最悪の事態を打開する手段を思い付いた。
「あなたは…助け出す!絶対に!」
プロテアはそう胸に誓ったのであった。
「うああ!!!」
悲鳴を上げながら時神蒼は眼を覚ました。
蒼は黒色の短めの髪に蒼色の瞳が特徴の青年だ。
現在は九月二五日だ。
蒼は自分の髪や眼の色がよく変わるなと思っていたがあまり気にしない事にした。
それよりも、今日は嫌な夢を見た。
自分が殺される夢だ。
しかし、夢というのはひどく曖昧なモノだ。
蒼は自分が殺された夢を見た事は覚えているのだがそれがどの様なモノだったのかまでは覚えていない。
「それにしても…自分が死ぬ夢なんて縁起が悪すぎるな…」
蒼はそう言って外へ出ていった。
外へ出ていくと黒髪黒目の少女と銀髪赤目の少女がいた。慧留とプロテアである。
「おはよう、蒼!」
「ああ、おはよう…慧留…プロテアも…」
慧留が蒼に挨拶をすると蒼は慧留とプロテアに返事を返した。
何故だろう。プロテアは妙に疲れている様子であった。
「プロテア?」
「え?あっ…いたのね…フローフル」
「ああ、どうした?今日はやけに元気が無いな?何かあったのか?」
「いいえ、そんな事は無いわ。気のせいよ」
やはり蒼はプロテアの様子がおかしいと感じていた。
だが、蒼達はそのまま大学へと向かっていった。
夏休みが終わり、季節は秋になっていた。
そう、大学は今、二学期に突入していたのだ。
プロテアも中途入学という形で大学へ入る事になっていた。
蒼達が通っている日比野大学は中途入学の制度があり、プロテアはそれを通過したのだ。
プロテアはそこまで頭が悪い訳では無く、むしろ明晰な方である。
ただし、プロテアは一年生という扱いの為、大学では慧留や蒼の方が上の学年である。
プロテアの年齢は本人によると数えていないらしく大体六十近くとの事である。
蒼が二十歳で慧留が二十一歳である辺り、相当年齢に差がある。
それでもプロテアは蒼達と同世代と変わらない容姿をしていた。
プロテアは一応、人間である。だが、イシュガルドと呼ばれるヘレトーアの一族であり、この一族は普通の人間より歳を取る速度が遅いらしく、プロテアの若々しい見た目はそれによるモノだ。
「ようやく、いつも通りに戻れるのか…」
蒼は気だるそうにそう言った。
確かにここまで色々あったのでそう言わざるを得なかった。
最近色々な事件が立て続けに起き過ぎた。
USWの四大神の事件、イシュガルド、ヘレトーア戦争、パルテミシア十二神の一人に喧嘩を売られるなど半年もしない内にこれらの事件に巻き込まれている。
巻き込まれ体質にも程があるというモノだ。
「よぉ!フローフル!」
「遅かったわね」
大学の目の前に赤髪赤目の青年と薄紫のお下げのツインテールと瞳が特徴の少女がいた。
インベルとアポロだ。彼等は蒼の昔の友人であり、神聖ローマから蒼の監視という名目でこの大学に潜入していた。
但し、プロテアと違い、中途入学はしておらず、あくまで潜入しているだけだ。
「いいのかよ?そんな堂々としてて…」
「別にパッと見分かんねぇだろ?」
「そう言う事よ」
蒼の指摘に二人は開き直った様にそう言った。
二人の自由振りに蒼は呆れた。
「お前らこんな所で何やってんだよ?」
紺色の髪で片眼が隠れた紺色の瞳を持つ青年が話し掛けて来た。
彼は天草屍、蒼達の仲間だ。
「屍か」
「何だそのつまんなそうな顔は」
「別にそんなんじゃねーよ」
蒼は屍と口論になりかけたが講義の時間が迫っている事を思い出した。
「おい、時間がヤバイんだ。俺は先に行くぞ」
蒼はさっさと大学内に入っていった。
「はぁ…はぁ…」
プロテアは非常に疲れた顔をしていた。
汗もビッショリかいており、とてもまともには見えなかった。
プロテアは校舎をフラフラと歩いていた。
そんな時、アッシュブロンドと三白眼と眼鏡が特徴の青年がやって来た。
彼は苗木一夜、プロテア達が住んでいる苗木日和の経営者であり、蒼が最も信頼している人物の一人だ。
「プロテア?どうしたんだい?かなり体調が悪そうだ」
「何でも無いわ」
プロテアは一夜から去ろうとするが足がもたつき、膝をついてしまった。
「全然大丈夫じゃなさそうだね。保健室に連れて行くよ」
一夜がプロテアを担ごうとするがプロテアは一夜の手を叩いた。
「いた!?」
「触らないで…私は……!」
プロテアは一夜に自分の事を話そうとした。
しかし、口が動かない、動かせない。やはり、一夜でもダメなのか。
「? 何だい?」
「何でも無いわ」
プロテアはさっさと一夜の前に去っていった。
一夜はプロテアの様子がおかしい事に気が付いていた。
プロテアは恐らく何かを隠している。
いや、今、プロテアは明らかに何かを言おうとしていた。
言えなかった…と考えるのが自然だろう。
こうなったら一夜は試してみる事にした。
「僕の能力…どこまでやれるかな?」
「無限ループとは恐ろしいね」
神混髏奇がそう呟いた。
黄色の髪に赤と黄のオッドアイと頬に付いている涙のペイントが特徴的な男だ。
彼は四大帝国とは別の国にいた。
何もこの世界は四大帝国だけしか無い訳ではない。
勿論、四大帝国以外にも小国は存在する。
四大帝国は比較的平和な国であるがその他の小国はそうはいかない。
強者がいれば弱者がいる。富豪がいれば貧民もいる。
四大帝国以外の小国は四大帝国により、資源がむしりとられている…というのが現状だ。
一応、四大帝国でも小国の対策は行われているのだがそれが上手くいっていない。
小国は基本的に貧民しかおらず、食料の奪い合い、物の奪い合いが当たり前の様に起こっているのが現状だ。
殺し合いや奪い合いそれらが当たり前の様に毎日起こっている。
退屈を嫌う髏奇にとってここは暇潰しには丁度いい場所という訳だ。
「ここは小国の一つ、大韓連邦…十二支連合帝国に隣接している国だ」
髏奇は独り言の様にそう言った。
そう、この国は大韓連邦と呼ばれている国で十二支連合帝国に隣接している国だ。
辺りは煙に包まれており、常に放射能が放たれている。
普通の人間がこんな場所に入ればたちまち死に至るだろう。
この国ではかつての十二支連合帝国とは真逆で魔族が人間を奴隷にしていた。
何故、この様な上下関係になっているのかというと、人に、放射能を防ぐ手だてが無く、魔族に頼るしか無いからだ。
逆に魔族は放射能に耐性がある者が殆どであり、そういった事情で上下関係が形成されていた。
そもそも、この国に何故放射能が垂れ流されているのかと言うと二百年前の天使大戦でここの人間達は魔族を核兵器で倒そうと無数の核を作り、そして実験を繰り返していた。
それにより、この国は放射能に汚染され、更には魔族の大半に放射能が聞かず、この国の人類は完全に魔族に支配されていた。
要するに先人達の自業自得により、こうなったのだ。
因みに、放射能は魔族にはあまり効果は無かったが核自体は絶大な効果があり、多くの魔族達が核により葬られた。
しかし、核を使う度に放射能が発生するのでその放射能により、人類が全滅するのが目に見えていた。
一応、魔族達は人間に放射能避けの商品を売っているがあくまでギリギリ死なないように済むようにしか設計されておらずその上、値段が高いので奪い合いまで発生する始末だ。
また、この国は十二支連合帝国の土地では無い。隣にある中国は十二支連合帝国の領地だが、大韓連邦は十二支連合帝国に敵対している。
「さて…君に会うのは何年振りかな?『ドーラー』?」
「ああ、そうだネ。『ピエロ』」
二人は互いのコードネームで呼びあっていた。
ドーラーは髏奇と同じプラネット・サーカスのメンバーであり、幹部格である『童話人』の一人だ。
彼は黒い服に怪しげな仮面を被っており、顔がよく分からなかった。
そして、隣にはもう一人の人影があった。
「君もここにいたのか?『テレサ』」
「ええ、ええ。ここは居心地が良いですからね」
彼女もドーラー同様、不気味な仮面を被っていた。
テレサもドーラーと髏奇同様、『童話人』の一人だ。
「随分と楽しそうな顔をしていますわね、ピエロ。何か面白い事でもおありでして?」
「まぁね、君達にも僕の遊びに…いや、『童話人』全員に付き合って貰おうかな」
「また随分と大胆な行動にでるんだネ。いいのかネ?『オーディン』の許可無しに…」
「オーディンの許可なんて必要無いんだよ~( ̄ー ̄)僕らの基本理念に従ってさえいればオーディンも許してくれるSA☆」
髏奇は笑顔でそう言った。
オーディンとはこのプラネット・サーカスを作った支配者の名だ。
しかし、彼を見た者は組織でも誰一人いない。
いや、唯一、髏奇だけがオーディンと会った事がある。
「まぁ、いいですわ。ワタクシはオーディン様の名の元に…そして…オーディン様の教えを広めれればそれで…」
「相変わらず君はオーディンに対して狂信的なまでに信仰してるんだね~」
「勿論ですわ。ワタクシがここにいるのはあの方のお蔭…だからこそ、オーディン様の教えを広め!そして、人々を救うの…デス!!」
テレサが眼を見開きながらそう言った。
凄まじいまでの信仰心である。
これ程までに狂信的な信仰をしている者もそうはいないだろう。
「そういう訳だから君達、僕に付いて来てはくれないかな?( ´,_ゝ`)」
「ワタクシはあくまでオーディン様の信徒。あなたには従いませんわ。ワタクシはオーディン様の教えを広めるのに忙しいのですわ」
「うぇ~(;o;)そりゃ無いよー( TДT)」
「ミーも忙しいのだネ。今は君にキョウリョク出来ないネ」
「ドーラーまで酷い~(-.-)」
「ワタクシ達以外にもアテはあるでしょう?まずはそこを当たりなさいな」
「(°Д°)分かったよ。他を当たる」
髏奇はかなりショックな顔をしていた。
髏奇がこの様な顔をするのは非常に珍しいので本当にショックだったのだろう。
「因みに…最近面白い事が起こったと言ったネ?何だい?それは??」
「断ると言っておいてそれは聞くんだな」
「まぁ、興味はあるしネ?それに時間が空いたら協力するネ」
「分かったよ、じゃあ、教えとく」
髏奇はこれから始まる『面白い事』とやらについて話し出した。
「成る程ネ…じゃあ、本格的にこの世界を混沌へと変えるつもりなんだネ?」
「それは素晴らしいですわ…ですけど…何故今ですの?」
「今が一番いいタイミングだからだよ。えっへん!」
髏奇はどや顔をしながらそう言った。
「いずれ、プラネット・サーカス全体を動かす事になる」
「そうかネ。なら、その時まで、死なない様にネ」
「何で君が言うのさ。それは僕の台詞だよぅ(-.-)」
「ワタクシはもう行きますわ。忙しいのですの」
テレサがさっさと去っていった。
冷たい奴だと髏奇は思った。
「ミーも行くよ、じゃあね」
「あっ!?お待ちよ!!!( TДT)」
髏奇はしょんぼりしながら一人立ち尽くしていた。
「あんまりだ…あんまりだ~( ̄ー ̄)うわーん!」
髏奇は奇声を上げた。
すると、髏奇の周囲に魔族達が集まってきた。
狼の様な顔をしている者、犬の顔をしている者、とにかく獣人達が多く集まっていた。
「何だい?君達は?」
「てめぇ…変な声上げて騒いでんじゃねーよ!!!気持ち悪いんだよ舐めてんのか!?ああ!?」
獣人が髏奇の胸ぐらを掴んだ。
「別に舐めて無いよー。そんな事より離しなよ」
「ああ!?ふざけんなこの下手物が!!!」
「はぁ~( ̄ー ̄)。しょうがないなぁ~」
髏奇がそう言った瞬間、髏奇の胸ぐらを掴んでいた巨大な手が突如として消えた。
そして、切り口から大量の血が吹き出した。
「うわああああああ!!!手が…俺の手がああああああ!!!」
「何だ!?何の能力だ!?」
「うああああ…」
突然の出来事に獣人達が怯えていた。
それもそうだ、突然自分の腕が消えれば動揺もするだろう。
「君達は僕の機嫌を損ねた…死になよ」
髏奇がそう言って腕を横に薙いだ。
すると、獣人達の上半身が消え去った。
下半身だけ残った獣人達は下半身を痙攣させながら倒れた。
切り口からは大量の血が吹き出していた。
「君達の悲鳴は汚そうだ…上半身だけ消したよ」
髏奇はそう言って伸びをした。
所詮は雑魚…取るに足らない相手だった。
「そう言えば…昨日…世界に『何か』が起こったんだよな~。自分で何言ってんだってなるけど…」
そう、髏奇はこの世界の異変を感じ取っていた。
どこで何が起こったのかは分からない、だが、確かに…感じたのだ。
「ふふふ…まだまだこの世界という名のオモチャ箱は僕を楽しませてくれそうだ…」
髏奇はそう言っていつまでも面白おかしく嗤っていた。
To be continued
【第九章】天使輪廻篇スタートです。これは最終章の序章的な立ち位置でかなり重要な話となります。
そして、今回は所謂ループモノです。何度も何度もプロテアはやり直す事になるんですがこれからどうなるのでしょう?ハテハテ。
それでは、またお会いしましょう!




