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フェアレーターノアール  作者: たい焼き
【第一章】十二支連合帝国篇
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【第一章】動き出した時間

 あらゆる空想上の生物が混在するようになった世界。その世界を流浪の旅をしている少年がいた。

 少年の名は時神蒼ときがみあお。彼は旅の途中、一人の少女と出会った。

 その出会いからすべてが始まった。

 あらゆる生物が混在するこの世界。今からおよそ千年前、空想上の生き物が跋扈するようになった。魔物、妖怪、幽霊、聖獣など、様々な生物が混在するようになった。

 当初の人間はそれらの生物たちに為すすべなく敗れ去っていった。約七〇億人いた人類だが今となっては六億人まで激減した。

 しかし、今現在はそれらの魔族たちを押しのけ人類が頂点に君臨している。なぜなのか?

 人類がこの世界に再び頂点に君臨した要因は主に二つだ。一つ目にして最大の要因はやはり叡智だ。人は強大な敵が目の前に現れた時、その叡智の力によってそれらを退けてきた。

 そして二つ目は霊呪法と呼ばれる特殊な術だ。この霊呪法は人間が五〇〇年前魔族と対抗するために身に着けた力で今生きている人々は大体この力が使える。

 霊呪法とは簡単に言えばその名の通り霊力を使う術であり、第一番から第九九九番まで術が存在する。この術を全て使える人間はごく稀でこれら全ての霊呪法を扱えるものは五人に満たないと言われている。

 この二つの力によって人類は再び地球の頂点に君臨したのだ。人類が頂点に君臨したのは今から二〇〇年ほど前。ここから少し、歴史を振り返る。

 この千年間で起きた大きな戦争は四回ある。

 一つ目の大戦争は千年前に起こった、『混沌戦争』だ。この戦争はあらゆる魔族が誕生した戦争であり、人類は魔族の未知の力により、多くの命を奪われた。

 この戦争で生き残った人間は一億人ほどと言われ、生き残った人々のほとんどは魔族に奴隷にされていた。

 しかし、奴隷にならなかった数千人の人間たちが五〇〇年前に霊呪法を体得し、それらの力を行使するようになった。そして、人類の反撃はここから始まったのだ。

 人間はそれから間もなく魔族の力を使役し始めた。人間の叡智の賜物である。そして、二度目の大戦争が始まった。それが『ヒューマニックリベリオン』と呼ばれる戦争であり、この戦争により、人類は一定の地位を獲得できた。

 しかし、一定の地位は獲得できたものの戦争自体に勝利したわけではない。

 かつてこの時代で頂点に君臨していたのは三種族おり、天使、悪魔、神の三種おり、これらの種族を『三大皇族』と呼ばれ、この『三大皇族』の連合軍が人類を蹂躙したのだ。

 しかし、『三大皇族』は人類がたった五〇〇年でここまでの力を見せつけたことに興味を持ち、人類を絶滅させなかった。それが、後に自分たちの首を絞めることになることも知らずに…

 そして、それから三〇〇年後…つまり今から二〇〇年前に人類が頂点に立つ戦争が起きた。『天使大戦』と呼ばれるその戦争は人類は圧倒的な力で『三大皇族』を蹂躙した。

 人類は『三大皇族』の力すらも手に入れてしまったのだ。

 戦争終結後、世界は四分割されたが、実質世界を手中に収めたのは人類である。

 その後は『三大皇族』が降伏するという形で世界は平和になった。

 しかし、平和になったというのは「人間にとって」の話である。その実態は人間にとっての都合のいい世界に成り代わり、一部の魔族は迫害の対象にされている。

 さらに、『三大皇族』はあらゆる魔族の中でも特異な力を持っているため、人間同士の戦争の兵器として使われることすらあった。

 そして、人間は魔族の力を利用して人間同士で大規模な戦争を起こした。それが、『第三次世界大戦』と呼ばれる戦争だ。

 この戦争により多くの人類、魔族が死に絶えた。この戦争で生き残った魔族の総数は千年前の四分の一にも満たないと言われている。

 この戦争が起こったのは今からおよそ五〇年前の事である。

 この戦争が終結したのは、人間たちが起こした戦争に『三大皇族』が中心に反旗を翻し、自国同士で潰し合いになり、これを収めるために人々は戦争を途中で中止した。そして、人々は魔族と共存する道を選び、『三大皇族』もそれに同意した。

 そして、領土は四つに分割されることになった。しかし、結局「人間にとって都合がいい世界」であることには変わりなく魔族は相変わらず迫害の対象であった。


          ーこの物語は人間と魔族が跋扈する世界を描いた物語であるー


 少年が目を開けた。そこには多くの緑があった。少年が欠伸を漏らした。

「さてっと。行くか!」

 少年が気合を入れるように呟き歩き出した。

 少年の名は時神蒼ときがみあお。さすらいの旅人だ。少年の身長は大体一七〇センチくらいだろうか。

見た目は枯れた感じの見た目をしており、髪の色は白と黒が混ざった感じの色であり、三白眼であり、瞳の色は右目がサファイアのような青色、左目が真珠のような薄ピンク色のオッドアイ。服は黒ずくめであり、刀らしきものを二刀腰に下げている。

 蒼が今いる場所は「十二支連合帝国」、この世界の四大帝国の一つである。かつては「日本」と呼ばれた国らしい。

この国は主に外国との輸入が盛んに行われており、アジア圏を領土としている島国である。さらに、独自の古風な文化を残しながらも近代的な文化も発展している独特な国である。

 この世界は他に三つの超巨大帝国が存在する。まず一つ目の超巨大帝国が「USW」。

 「USW」とはユナイテッドステイツオブザワールドと呼ばれる国であり、かつては「アメリカ」と呼ばれていたようだ。

 この国は機械の生産や兵器の開発が盛んに行われており、兵力だけなら世界でもトップクラスである。色々な人種の人間がいるのも特徴である。

 領土は北アメリカ、南アメリカも領土としている。

 二つ目の超巨大帝国は「ヘレトーア帝国」かつては「オーストラリア」と呼ばれていたようだ。ここは南国であり、自然がそのまま残っている場所が多いのが特徴であり、オセアニア全域と南極大陸を領土としている。

 南極はかつてはどこの国の領土としなかったらしいが、今は「ヘレトーア帝国」の領地である。

 三つ目の超巨大帝国が「神聖ローマ連邦大帝国」だ。かつては「ギリシャ」と呼ばれる国であったらしい。

 この国は魔術の研究が盛んに行われており、軍事力だけなら、「USW」と並ぶとさえ言われている。

 そして、四つ目は「十二支連合帝国」である。蒼はこの国で放浪の旅をしていた。

「それにしても変わった国だな。俺が住んでいた国とは全然違う…」

 蒼がそう呟きながら歩いていると、「やめて!」と言う叫び声が聞こえた。蒼は声のする場所へ向かった。


「やめて!やめてよ!」

 少女が泣きながら懇願する。

「うるせーよ!魔族の分際が人間様に逆らえると思うな!」

 一人の男がそう言うと少女を踏みつける。どうやら集団で一人の魔族に迫害を行っているようだ。

「へへっ。どうする?こいつ売り捌くか?見た目は結構イケるし」

 もう一人の男がそう言ってくる。

「そうだな…結構金になるかも」

 三人目の男がそう言う。するとー

「何が金になるって?俺にも…」

 一人の少年が現れた。

「教えてくれよ?」

「何だ?てめぇは?見たところ俺たちと同じ人間みたいだが…」

 男がそう言うと、蒼は男の質問を無視して逆に質問をし返した。

「俺のことはどうでもいんだよ…ここで何してたんだ?」

 男は蒼の対応にイラつきながらも答えた。

「こいつは魔族だ。人間の奴隷にされるだけのな!だから、こいつを売り捌いて金にすんだよ!どうだ?お前も一緒に…」

「くだらね…お前らみたいなゴミ共と一緒にすんな」

 蒼は淡々と答えた。

「何だとてめぇ!ふざけてんじゃあねーぞ!このクソガキがぁ!!」

 男たちは激昂した。

「弱い奴ほどよく吠える…」

 蒼は薄ら笑いを浮かべながらそう言い放った。

 すると男たちは手首を動かしながら呪文を唱えた。

「「「霊呪法第三五番【龍激鎗りゅうげきそう】!」」」

 男たちがそう言うと霊力の槍が無数に飛び出した。しかし、蒼はそれらの攻撃を淡々と躱した。

「どこ狙ってんだ、ばぁか」

 蒼が相手を挑発すると男たちは更に怒りのフラストレーションが溜まっていっていた。

「調子に乗るなよ!クソガキが!」

「ぶっ殺す!」

「死ね!」

 男たちがそう言うと次の霊呪法を唱えた。

「うちひしれ!点在する雷鳴よ!霊呪法第六六番【雷激砲らいげきほう】!」

「燃え盛れ、怒りの炎の跳動よ、燃え上がれ、不死の炎よ!霊呪法第八八番【炎風獄竜えんぷうごくりゅう】!」

「荒れ狂う風よ、裂き切れ!烈風のごとく!霊呪法第七二番【連空障れんくうしょう】!」

 それぞれが別々の霊呪法を唱えて青に襲い掛かる。

「霊呪法第二一四番【虚神きょじん】」

 蒼は霊呪法を唱えると、蒼の周りから巨大な盾が出現し三方向からの霊呪法を防いだ。

「なっ!」「嘘だろ…」「俺たちの渾身の一撃を…」

 男たちはひどく狼狽えていた。

「おいおい、完全詠唱の霊呪法三発がこの程度かよ…」

 蒼が呆れたようにそう言い放った。

「霊呪法一番【衝乱しょうらん】!」

 一人の男が霊呪法を放った。

「霊呪法第六四番【瞬天歩しゅんてんぽ】」

 しかし、蒼が霊呪法を唱えると蒼はそれを淡々と躱した。

「高速移動の霊呪法だと!?」

 男がそう言い放った。

「霊呪法第二四五番【氷魔蓮刃ひょうまれんじん】」

 蒼が霊呪法を唱えた瞬間地面から無数の氷の刃が飛び出し男たちを切り裂いた。

「がっ!」「ぐほっ!」「ぐげぇ!」

 男たちはうめき声をあげ倒れた。

「う…そ…だろ…詠唱破棄で…この威力…だと…」

 そう言って男たちは倒れた。


「大丈夫か?」

 蒼は倒れてる少女に手を貸し起き上がらせた。

「はい…大丈夫…です」

 少女がそう言う。少女の見た目は長い黒髪に白いワンピースを着ており、真珠のような肌の色をしていた。

瞳はやや釣り目ぎみであり、瞳の色は黒色である。見た目は高圧的な印象に見えるが、先ほどの流れを見る限りそういう訳でも無さそうだ。

 蒼は何かに気づいたように少女に質問した。

「お前…天使か?」

 少女が驚いたような顔をしたがすぐに頷いた。

「はい、私は…天使です」

 蒼は更に質問を続けた。

「名前は?どこの天使の眷属だ?」

 少女は一瞬戸惑ったがすぐに蒼の質問に答えた。

「私は月影慧留つきかげえる。【黒時皇帝ザフキエル】の眷属です」

 それを聞いた瞬間蒼は驚愕の表情を浮かべた。別に天使がこの国にいることは何も珍しいことではない。

しかし、この慧留という少女の眷属が問題だ。【黒時皇帝ザフキエル】は天使の中でも最上級の熾天使とされており、天使の序列第三位である。熾天使は全て「神聖ローマ連邦大帝国」が握っており、国外に出すなどまずありえない話である。

特に【黒時皇帝】は天使の序列第三位であり、その眷属を国外に放逐するとは考えられない。だとすると…

「お前…神聖ローマから逃げて来たな」

 蒼がそう指摘するといきなり慧留は土下座をした。

「お願いします!お願いします!このことは絶対に言わないでくださいお願いします!何でもしますからあああ!!」

 慧留がそう言うと蒼はすぐに静止した。

「落ち着けって!別に言わねーよ、お前のことは。その…俺もお前と同じで国から逃げて今は流浪の旅をしてるわけだし…」

 蒼はそう言うと慧留は驚いたような顔をした。

「あなたもそうなんですか?お名前は?どこの国の人なんですか?」

 慧留は蒼に質問をした。

「俺は時神蒼。出身はお前と同じだよ」

 蒼が答えると慧留が安心したような顔をした。

「私と同じ国出身なんですか~。良かった。でも、あれ?あなた人間ですよね?人間は基本国の行ききは自由のはずですよね?なのに逃げて来たっていうのは?」

 慧留が疑問を蒼に告げると蒼は答えようとした。

「それは俺がー」

 そう言いかけた瞬間突然二人に霊呪法が放たれた。

「何!?どうなってるの?」

 慧留がそう言うと蒼は霊呪法が放たれたであろう方向に向いた。そこにいたのは先ほど倒した男たちだった。しかもさっきよりも数が多く二,三〇人はいる。さっき倒して気絶した男たちはしばらくして、目が覚めた後に逃亡したのだ。まさか、仲間を引き連れてくるとは…

「お前は…俺の手下に手を出したみたいじゃあないか?ええ?」

 大将らしき人物がそう言ってきた。

「そうです!親方!こいつがやったんです!」

 先ほど倒された男の一人がそう言ってきた。

「でさ、お前ら何しに来たの?てか、お前ら何者?さすがに人数多すぎでしょ?何かの組織?」

 蒼が問いかける。

「俺たちは大和組だ!ここらへんじゃちょいと有名な悪よ」

 大将がそう答えた。

「ふ~~ん。要はただのチンピラ集団か。今時恥ずかしくねーの?てか、全身黒タイツって…だっせぇ…ぷぷっ…お前ら時代遅れだな~www」

 蒼がおちょくるように言ってくる。慧留が「さすがにまずいですよ~」と小声で言った。

「舐めてんのかてめぇは!!」

 大将が切れた。

「ザコほどよく吠えるんだぜ、大将さんよ。それにもとはと言えばお前らがこいつに対してひどいことしてたからだろ?」

 蒼が異議を唱えると、大将はこう言ってきた。

「はっ!天使ごとき…奴隷にするなりした方がいいんだよ!魔族なんざ人類の奴隷なんだよ!!てめぇも人間なら俺様たちに手ぇ貸しやがれ!このくそったれが!!」

「はぁ?お前らみたいなセンスクソダサで尚且つ低俗な人間に従えだぁ?笑い話にもならねぇよ…帰ってミルク呑んで寝てろよ虫共が」

 蒼がそう言うと大将が業を煮やしたようだ。

「もういい!こいつら二人まとめて皆殺しだ!」

 そう言って青と慧留に襲い掛かってきた。

「慧留、下がってろ。霊呪法第二四五番【氷魔蓮刃】」

 蒼が霊呪法を唱えると地面から氷の刃が飛び出した。

「「ぐわあああああああ!!」」

 団員たちが一斉にやられていく。

「なるほど。二百番台の霊呪法を唱えられるのか…こいつぁ厄介だな。なら!これを使うしかないなぁ」

 大将がそう言うと鋸のような物を取り出した。その鋸から神気があふれていた。

「!それは…神器か!?」

 蒼が驚愕の顔をした。

「ふははははは!!その通り!喰らえ!!」

 大将が鋸を振り回した瞬間、神気が刃となって襲ってきた。

「っ!霊呪法第六四番【瞬天歩】!」

 蒼は神気の刃を躱し、慧留も一瞬で避難させた。

「大丈夫か?慧留」

「私は…大丈夫です。それよりあれは…神器…ですよね?」

 蒼が慧留の安否を確認した後、慧留が蒼に問いただした。

「ああ。間違いない。あれは神器だ。しかし、どうなってる?神器はこの国でも持ってる人間がかなり制限されてるはずだぞ?なのに何であんなチンピラ大将があんなもん持ってんだ?」

 神器とはこの国、「十二支連合帝国が独自で開発した武器」であり、四大帝国である理由でもある。

神器は神や妖怪と言った、霊的存在を使役する武器で、さらに自然エネルギーも吸収し、行使することができる。この国の最大の武器なのだ。

「神器は強力な武器だが、使い方を誤ると神器の意思に飲み込まれる恐れがある。だから、使用できるのは強力な霊媒を持った人間だけのはずだ」

 そう、神器とは言わば「生きた武器」だ。特に、神や幽霊は思念の力が強い存在とされており、これらの意思に飲み込まれた人間は後を絶たない。

「とにかく、速く止めないとな…じゃないと手遅れになる」

 蒼が焦るようにそう言った。

「ははははははははははははははははははは!消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ!!!!消えろロロロロロロロロロロロロロ…」

 大将の様子が変わり始めた。そして、神気の色が透明からドス黒い色に変わっていった。

「大将!何を!?がっ!」

「うわああああああああああああああああ!」

「ぐげぇ!!」

 大将は見方を切り刻み始めた。もう、正気を保っていない。

「うわっ、やっべーな。速くしねーと!」

 蒼がそう言った後、霊呪法を唱えた。

「天下を治めし騒嵐の王、天啓、地啓、海をも御する、風の動きは右手、水の動きは左手、心臓を持って嵐を支配する!霊呪法第三七八番【嵐凱昂衝らんがいこうしょう】!!」

 次の瞬間、強大な水と風で出来たトルネードが発生し周囲を吹き飛ばした。

「うわああああああ!!」「竜巻だあああ!」「助けてええええ!」「がああああああ!!」

 しかし、大将の神器の力で【嵐凱昂衝】を切り裂いた。

 大将の身体は神器の副作用と【嵐凱昂衝】によってボロボロになっていたが、まったく止まる気配が無い。これ以上戦えば大将の身体が壊れてしまうだろう。他の団員は大将以外気絶していた。

「三百番台の霊呪法を使っても駄目か…これ以上強い霊呪法使ったらアイツの身体がぶっ壊れるな…」

 蒼が考える中、慧留は蒼を見つめていた。

「すごい…蒼はこんなに強いんだ…」

「よし!やっぱりこれを使うしかないな!」

 蒼が決断すると右手で腰から刀を一刀抜いた。その刀は不思議な刀であった。刀の色が透明なのである。

「さぁ、行くぜ。凍て尽くせ【氷水天王ザドキエル】」

 次の瞬間、世界が凍った。大将の身体はもちろん、気絶していた団員も凍り付いていた。

「ふぅ~~~。一段落」

 蒼が刀を鞘に納め座り込んだ。

「久々に【第一解放アインスエンゲル】使ったからな~。疲れちまった」

「どういうことですか?その武器…天使?」

 慧留が驚愕の表情を浮かべた。

「そういや、言ってなかったな。言おうとしたところで邪魔が入っちまったからな。俺は天使と人間の間に生まれた半人間だ。だから、霊呪法と天使の力を両方使える。要は二つの力を兼ね備えたハイブリッドだ。そして、俺は神聖ローマ連邦大帝国の第四王子時神蒼、守護天使は【氷水天王ザドキエル】。俺は王子だから守護天使の力を使えるんだよ」

 蒼が自分の出身地を話すと慧留は驚愕の表情を浮かべた。

「なっ!あなたが二年前に失踪した第四王子様ですか!?驚きです…」

「なぁ、なんつーか、多分俺とお前歳あんま変わんないと思うから敬語使わなくてもいいぞ…」

 蒼が言うと慧留が年齢を聞いてくる。

「じゃあ、蒼の歳はいくつなんですか?」

「十七」

「えっ?嘘?私の方が一つ年上…」

 慧留が若干引きつったように言った。

「へ~。そうなのか。ならなおさら敬語使わなくていいじゃん」

 蒼がそう言うが慧留はすぐに反論した。

「とは言え、第四王子にそんな…」

「つっても、お前俺より年上なんだろ?別にいいよ。敬語使われる方が落ち着かねぇ。ここでは身分もクソもねーよ」

 蒼が気軽にそう言う。

「…分かった。よろしくね、蒼」

 慧留がそう言うと蒼も笑顔で挨拶した。

「ああ、よろしく、慧留」

「でも、王子なのにその口の悪さどうにかならないの?」

 慧留が蒼の口の悪さ指摘した。

「うるせーよ。ところでお前、これからどうするんだ?」

 蒼が疑問に思い慧留に問いかけた。

「私…行くところが無い…です」

 慧留が歯切りが悪くそう言った。

「なら、俺と一緒に行くか。もうちょっとで目的地に着くし」

 蒼がそう言った。すると、慧留は驚いた表情をした。

「え?いいの?私、特にお金も持ってないよ?足手まといになるだけだと思うけど…」

 慧留がそう言う。

「【黒時皇帝ザフキエル】の眷属をこのまま野放しにしてる方が危ないし、俺といた方がお前にとっても俺にとっても色々都合がいい。それになにより、お前を放っておくわけにはいけない気がしてな。」

 蒼がそう言うと慧留は「本当にいいの?」と聞いてきた。蒼はすぐに「もちろん」と答えた。

 慧留は蒼について行くことを決意した。



「ねぇ、どのぐらいで目的地に着くの?」

 慧留が聞いてきた。

「もうそろそろだ」

 蒼がそう言う。あれこれ十時間以上歩き続けていたのだ。

「ここまで来るのに俺は二年かかった。十時間歩くくらいそんなに疲れねぇよ」

 蒼が皮肉を言う。

「別に歩くのがしんどいとかそんなんじゃないよ。けど、近いって言ったから1時間以内で着くものかと思ってたから…」

 慧留がそう言うと蒼が黙り込んだ。

「…悪かったな」

 蒼は一人ごとのように呟いた。

「ところでさぁ、蒼は空を飛ばないの?」

 慧留が蒼に質問してきた。

「俺の翼は隻翼なんだ。飛行能力は低い。飛べないことはないけどな」

 蒼は淡々と答えた。

「半人間だから翼が片方しかないの?」

「そうかもな」

 慧留の質問に蒼はこれまた淡々と答えた。

「着いたぞ。ここが目的地だ」

「ここって、東京…だよね?」

 蒼がそう告げると慧留が驚いた表情を浮かべ、蒼に問いかけた。

「そうだ。そこそこ詳しいんだな」

 蒼が関心関心と言わんばかりにそう言った。

「もしかして蒼、私の事バカにしてる?」

 慧留が怪訝そうに聞く。

「そんなことないない」

 蒼が適当に答える。

「それで…これからどうするの?」

 慧留が聞いてくる。

「ある人物に会う。そこで偽の国籍を作る。そして、しばらくはこの町で身を隠す」

 蒼が淡々と説明をする。

「そっ、そんなことができるの!?」

 慧留が信じられないと言いたげに蒼に聞いてきた。

「出来るよ…あいつなら。行くぞ」

「まっ、待ってよ!蒼!」

 二人は再び歩き出した。


「待っていたよ、蒼君」

「久しぶりだな。一夜」

 蒼と慧留は東京のとある一軒家に来ていた。そして、今、一夜という人物に会っていた。

「蒼、この人は?」

「初めまして。月影慧留さん。私は苗木一夜なえきいちやといいます。さぁ、二人とも、中に入って」

 苗木一夜本人がそう言って自己紹介をし、自分の家に二人を入れた。

「何で私のことを?」

 慧留が疑問に今度は蒼が答えた。

「さっき教えた。電話で」

「そゆこと。さぁ、ここが僕の家だよ」

 一夜はそう答えた。

 一夜の部屋は一言で言うなら殺風景であった。パソコンがなぜか三台ほどあるだけで他は雑誌や小道具など最低限のものしか無い。

「手続きは終わったか?一夜」

 蒼が聞いてくる。

「ああ、もうとっくに済ませているよ。慧留さんの分もね」

 一夜はそう答えた。

 この苗木一夜と言う男、どうも掴み所が無い人物であるようだった。

髪の色はアッシュブロンドであり、目は蒼と同じく三白眼であるが瞳の色はブラウンである。ついでに眼鏡をかけてる。蒼とは違う枯れたイメージを持たせる男であった。身長は蒼より少し高いくらいか。だが、慧留は蒼と一夜の関係の方が気になっていた。

「えっと、蒼と一夜さんはどういう関係なんですか?」

 慧留が問いかける。

「ああ、敬語はいらないよ。僕と君、同い年だし」

 一夜が淡々とそう告げた。

「そうなんですか?」

「うん。っと僕と蒼の関係だよね?う~ん。ここで話すべきなのかな~。まぁ、僕と蒼は蒼が日本に来ることがたびたびあって、そこで知り合ったんだよ。その時から蒼には無茶な要求ばかりされてねぇ」

 慧留が驚いていると一夜は簡単に自分と蒼の関係を説明した。

「ちなみにだけど、時神蒼って名前は彼の日本における名前だよ。本名はフローフル・ローマカイザー。君も月影慧留って名前、偽名なんだろ?」

「はい、本名はエル・マクガゥエインです。本名を明かすわけにはいかないから偽名を作ったの。多分蒼もそうなだよね?」

 慧留がそう答えると蒼は首肯した。

「国は君の偽名を把握しているかい?」

 一夜が聞いてきた。

「ううん、恐らくしていないと思う」

 慧留が答えた。

「なら、安心だ。っと、本題に入るよ。君たち二人はこれから、学園生活を送ってもらいます」

 一夜がそう言うと二人は驚愕の表情を浮かべた。

「はぁ!?聞いてねーぞそんな事!!どういうことだよ一夜ぁ!!!」

 蒼が怒鳴り散らすように言った。

「だって、言って無かったもん。ちょっとしたサプラーイズだよ、蒼。それに君は学生生活なんてしたことが無いんだろ?いい経験になるんじゃないか?」

 一夜が淡々と口にする。

「いやいやいやいやいやいや!!マズいだろ!!いつこの場所も危なくなるか分かんねーんだぞ!?それを呑気に学生生活って…」

 蒼が抗議するが慧留は楽しみそうな顔をしていた。

「一夜さんが大丈夫って言うなら大丈夫なんじゃないかな?なんせ蒼が信頼するほどだしね!それに…学生生活…ちょっと楽しみだなぁ。私も学生生活したこと無いから…少し憧れちゃう…」

 慧留がそう言うと一夜がニヤッと笑い「じゃ決定だね」と言った。

「実際、君たちを普通の学生として溶け込ませた方が遥かに安全なんだ。僕も状況を把握しやすいし。それに、僕もまだ君たちと同世代だからねぇ。君たちを学校に引き入れるのが楽しみなのさ」

 一夜が蒼を説得するようにそう言い放った。

「…分かった。もうどうにでもなれだ。で?どこの学校なんだ?」

 蒼が納得し、詳細を一夜に聞いた。

「学校は東京都立一宮高等学校。都内屈指のエリート校だよ」

 一夜は蒼の質問に答えた。

「なるほどね…まぁ、これからは「普通の学生」としてやっていくわけだ」

 蒼が不満げに答えた。

「いいじゃん、いいじゃん!楽しそう!」

 慧留は楽し気に答えた。一夜もなんだか楽しそうだ。

「勘弁してくれ…」

 蒼は空を見上げながらそう呟いた。



「これは…」

 魔道警察官が先ほど蒼たちが激闘を繰り広げていた、場所にいた。驚くのも無理はない。なんせ辺り一面が銀世界になっていたのだから。

「佐藤刑事!こいつ…神器を所持しています!」

 警官がそう言ってきた。

「何だと?」

 もう一人の警官、佐藤が神器を持った男の方へと向かった。

「確かに神器だが…これは恐らく失敗作だな。一体誰がこんな…」

 佐藤は驚きを隠せずにいた。

「こいつらは全員確保。神器を不正な手口で手に入れた可能性が高い。取り調べを行う」

 佐藤は訝し気な顔をしていた。

「一体…何が起こっているというんだ?」

 そう言って佐藤は空を眺めていた。


To Be continued

 フェアレーターノアール。読んでいただけたでしょうか?内容は…ぶっちゃけ痛いです(笑)

 自分は結構中二テイストな作品が好きなのでこのような作品を書かせてもらいました。

 まだまだ、続きます。どれくらい続くかは未定ですが前作の「エデンの鳥かご」よりは確実に長くなります。と言うか、第一章の時点で「エデンの鳥かご」より長くなります。今のままだと。

 前作に出てきたキャラは十人に満たなかったですが今回は結構キャラが出てきます。現時点で三十人くらい考えてます。覚えられるかな…

 相変わらず行き当たりばったりですのでそこは温かい目で見てください…

 それではまたお会いしましょう!

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