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Monster・child 餃子定食、ニンニク抜き  作者: 茶山 紅
捜査ファイル2 怪盗コルボーの予告状 日本料理を西洋仕立てで
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捜査ファイル2 怪盗コルボーの予告状 日本料理を西洋仕立てで(4)


 捜査ファイル2 怪盗コルボーの予告状 日本料理を西洋仕立てで(4)


「で、何をすれば良いんだ?」

「お前は、会議中に何を聞いていたんだ?」

 黒羽の言葉に俺は頭を抱えた。

「だって、会議なんて面倒だったんだぜ」

 と、黒羽が肩をすくめて言う。まあ、たしかに高校生にしてみれば大人の作戦会議と言うのは、退屈なのだろうが……。

「せめて、重要なところだけは聞いておけ」

「海津さんと彩花が聞いてくれているだけで充分だろ」

 と、黒羽が言う。

「お前な。警察なら曲がりなりにも話をちゃんと聞いておけ」

「へいへい。それで、どう言う内容だったんだ?」

 まったく反省の様子も見えない黒羽に俺はため息をつく。幸いなのは、あの油木警部補が居ない事だろう。油木警部補はある仕事を言われて居る。

 これでいたら、またも嫌味を言われまくっていただろう。

 まあ、警部補と言う立場の人物としても自分と同い年の息子や娘ほどの年の人物なんて面白く無いだろうが……。

「盗みの場所は、桜ヶ丘家だ。盗む品は虹水晶薔薇レインボー・クリスタル・ローズと言う品だ」

 そう俺が説明すれば、彩花がパソコンにその虹水晶薔薇と言う品を見せる。

 作戦会議の時も見たが、たしかに高価な品だ。

 薔薇の花ビラは七色の色合いが綺麗に混じり合っている。そして、透けるように透明で光に当たってキラキラと輝いている。鉱物で出来ているはずなのに、それは薄く本物の花びらのように薄い。さらに、その美術品としての価値は途方もなく高い価値だろう。

「どこで手に入れたんだ?」

「それが……」

 黒羽の言葉に彩花が考え込むように言う中で、

「ふん。自称、天才たちか」

 と、油木が訪れた。自称天才って……、あいつらは一度として自分の事を天才だと名乗った事はないのだが……。そんな事を言ったところで、目の前の油木警部補が素直に受け入れるとは思えない。

「今回はちゃんとしたお店で買った品で、調べてもお前らが見つけ出した人物とは無関係だった。つまり、お前達が見つけたのは何ら関係のない情報だった。

 つまり、お前達のは見当違いだったという事だ」

 そう。今回はあの四つの名前とまったく無関係だったのだ。

 その言葉に、

「まあ。とにかく、コルボーを捕まえる方法を考えるだけですよ」

 と、彩花は静かに言えば、

「ふん。負け惜しみを」

 と、鼻で笑う油木警部補。

 そのネクタイがどす黒い紫と赤と青のマーブル模様と悪趣味だ。虹水晶薔薇と言う綺麗な品を見ていたために、余計に趣味が悪く感じられる。ネクタイピンも趣味が悪い。

「せいぜい、現場で足を引っ張らないで欲しいな」

 それだけ言うと油木警部補は勝ち誇ったように言う。

「何か言いたい事はないのか?」

「いえ。なにも……」

 言っても無駄だろうな。と、言う感じで彩花は言ったのだが、それにまったく気づいて居ない様子の油木警部補だった。


 桜ヶ丘と言うのは、ここ最近になって名を馳せている財閥の当主の家だ。

 当主は財閥をどんどんと大きくしており、息子は政治家を目指している。その息子の奥さんは旧華族の家柄。

 金も地位も身分もあると言う腹が立つほど、なんでもある。しがない公務員にすぎない人物としたら胸中で油木警部補ではなくても嫉妬してしまうほどだ。

 もちろん、俺は大人だから皮肉なんて言わないけれどな!

「まあ、警備のほうはきちんとしていますが……。善良な一般市民としては、警察の手も借りたいんですよ」

「ありがとうございます。それで、問題の虹水晶薔薇レインボー・クリスタル・ローズはどこですか?」

 と、当主の桜ヶ丘厳三郎の言葉に乙木警部はそう言って尋ねる。

 桜ヶ丘厳三郎。ここ数年で落ちぶれたかけた財閥を一気に盛り返したと言う人物だ。しかし、どうして当主なのに厳三郎なのだろうか? 大抵、当主と言えば長男だ。長男に三と言う数字がつく名前をつけるだろうか? 三男ならともかく……。

 そう思っている中で、厳三郎は俺たちを見る。

「おや? そちらの子供たちは? お父さんの職場見学ですか?」

「あ、彼等は」

「いいえ。親戚の兄の職場の見学です」

 俺が事情を説明しようとすると、彩花はそう言ってにっこりと笑みを浮かべて言う。

 俺は驚いた。……彩花が笑ったことにだ。

 もちろん、普段もごくまれだが笑う事がある。だが、それは不敵な笑みでふふふ。と、言う感じの笑みだ。

 だが今回、浮かべたのはにっこりと言う笑みだ。

 だが、それはまるで仮面のように俺には感じられた。つまり、笑顔と言う良くできた仮面を顔に貼り付けていると言う印象だ。

「学校の課題で身近な人の仕事と言うのを見に来たんです。

 そしたら、こんな事になってすごいじゃないですか。本物の怪盗なんてあたし、一度出良いから見て見たかったの」

「そうかい。けれど、お兄ちゃんたちの邪魔はしちゃいけないよ」

「大丈夫よ。ね。お兄ちゃん」

 と、彩花がそう言って俺を引っ張って見る。

 そして口だけが動く。

 わかっているだろうな。と、…… 。

「大丈夫ですよ。

 まあ、兄馬鹿と言われるかも知れませんが、出来の良い妹たちなので」

 頭の出来は良いが人間性に問題があると言う事をよく知っておきながらよく言えたな。と、俺は自分で自分にそうツッコミを入れてしまう。

 さて、なんで上司が俺の妹と言う立ち位置で紹介されたかというと……。

「はあ? 警察だと内緒にする?」

 作戦会議が終わった瞬間に、彩花はそう言い出したのだ。

「念のためよ。子供だと言う事で相手の油断を誘う。けれど、警察だと言ったら警戒されるわ。なら、課題かなにかで無理を言ってついて来た子供と言うふうにしたほうが良いわ。

 前回は守るだけだったけれど、今回は攻めるしね。

 それに、前回よりもけっこう複雑そうだからね。罠の一つも用意しておかないと……。

 それに、コルボーよりも気になることがあるのよ」

 そう言って笑みを浮かべる彩花は、厳三郎に向けて見せた笑みとは違う心からの笑みだった。ただし、それは可愛らしいと評するよりも大胆不敵な微笑と言う感じだった。

「と、いうわけで兄役をお願いね」

 嫌なら父親よ。と、言われて俺に拒否権は無かったのだった。


 とりあえず、予告にあった品物を見る。

 月並みな表現だが写真でも綺麗だったが、実物はもっと綺麗だった。日の光を浴びて、キラキラと輝くのはまるで水によって生まれた虹のように輝いている。

「すごいですね。これ、本当に鉱物なんですか?」

「ええ。素晴らしいでしょう」

 と、乙木警部の言葉に厳三郎は胸を張って言う。

 別に厳三郎氏を綺麗と言ったわけではない。むしろ、五十代を過ぎた白髪のおじ様で良く言えば、厳つい男らしい人物。正直に言えば、強面でヘタなチンピラよりも怖そうな人物で、綺麗と言う言葉とは縁遠い人物だ。

 場所は日の当たる温室の中央だった。虹水晶薔薇が置いてあるのは中央で周囲が池になっていて、中央の小島に虹水晶薔薇が鉢に生えているように置いてある。

「なんで、温室の中なんですか?」

 と、彩花が周囲を見渡しながら言う。

「温室って、植物を育てるためのお部屋でしょう?

 なのに、どうして鉱物を置くの? これは確かに薔薇なんて言われて居るけれど、本当の薔薇じゃないんでしょ?」

 と、彩花は子供らしいしゃべり方をするが当然の疑問だ。これに関しては、俺も抱いていた疑問だ。そもそも、鉱物をおく場所としては温室はあまり向いていない。

 俺はそう思いながら周囲を見渡す。安い温室のようなビニールハウスではなく、ガラス張りの部屋で周囲には植物の薔薇を中心に多種多様な草花が生えている。

 温室の中にある庭園としては、中々に立派なものだろう。だが、貴重な美術品を保管するのには向いていないような気がする。

「そもそも、宝石と言うのは管理に気を配る必要があるはずですし……」

「そうなのか?」

 彩花の言葉に黒羽が驚いたように言う。

「宝石とか水晶って……高いけれど、言ってしまえば石だろ」

「そりゃ、そうだけれどね。……些細な衝撃で割れやすい石だってあるし、真珠に至っては手に着いた油脂でくすんで輝きが失われてしまう。

 水分を多少は必要としていたりするし、意外と管理に気をつかうのよ」

 と、彩花があきれたように言う。

「世界一、硬いダイヤモンドだって一点に衝撃を加えると真っ二つに割れるわ」

 ダイヤモンドを燃料にした炎。もったいないも極みに達する炎だ。

「なるほど、お嬢さんは随分と詳しいですな」

「だって、宝石って綺麗なんだもん」

 厳三郎の言葉に彩花はにっこりと子供らしい演技の笑顔を浮かべる。……人間関係を円滑に気付く事が出来ないと思っていたが、ああいう作り笑いが出来るのか……。と、俺は少しだけ驚く。とは言え、そんな作り笑顔が出来ると言うのは、あまり望ましくないのだが……。

「あの鉱物は最近になって見つかった新種でしてね。おそらく怪物関係の代物ではないのかと言われております。日の光を浴びなければ、輝きを失ってしまうためにこうして温室に置いてるんです」

 にっこりと厳三郎が言えば、

「ですが、ここでは盗まれやすいのでは?」

 と、俺は尋ねる。すると、

「その心配はありませんよ。ね。父さん」

 と、言う言葉と共に現れたのは一人の青年だった。年の頃なら、俺と同年代ぐらいろう。ただし、爽やかな印象で薔薇を中心とした温室によく似合うまるで絵本に出てくる王子様のような印象の美青年。

 嫌味なやつだ。と、俺はそう思ったのだった。


 金持ち、地位あり、美人妻あり、美形の野郎。これだけ揃った男が居たら、嫉妬するのは男として当然の権利だと思う。まあ、もちろん嫉妬するからと言って、嫌がらせをするわけではない。そんなのは、子供のやることだ。だが、意味もなく腹を立てるのは許して欲しいと俺は思う。

 背は長身で細身、顔はアイドルにでもなれそうなほど整っている。

「このバラ園は見た目はたしかに優美ですが、その実際には警備が厳しいんです」

「あの……失礼ですが、あなたは?」

 俺はそう言ってイケメン王子様野郎に尋ねると、

「ああ。すみません。名乗るのが送れました。

 桜ヶ丘高次と申します」

 桜ヶ丘高次。その名前なら、向かう途中に聞いた。たしか、厳三郎と言う人物の息子だ。俺はじっとみて思う。きっと厳三郎の奥さんはさぞかし美人だったに違いない。

 だが、心なしか目が冷たいという印象を与えるのは、美形に対するやっかみだろうか?

「そして、これが妻の」

和水なごみと申します」

 そう言って来たのは、薔薇庭園に似合わなう美人だった。艶やかな黒髪をまとめ上げた美人だ。漆黒の髪に地のように赤い唇と白い肌とおとぎ話に出てくる白雪姫の美人要素だ。

 物静かで控えめな印象を与える女性だ。

 俺の中で高次に対するムカつきがさらに割増しになる。

 だが、それは重要ではないだろう。

「それで、警備が厳しいとはどう言う意味でしょうか?」

 と、俺が尋ねると、

「まずこの温室は前もって登録している人間以外が居なければ、入れないようにしています。また、このガラスは最新式の防弾ガラスです。

 有名な天才少女が作ったそうですよ」

 その天才少女はそばに居ますよ。と、俺は危ういところで口に出しそうになった。

「さらにあの池は一見すると、観賞用ですがあの池の中に足を踏み入れれば、警備用に怪魚に襲われます」

 その言葉に、俺は池の中を見ると牙の鋭い赤ん坊ほどの大きさをした怪魚がいる。

 怪魚とは、怪物が現れるようになって現れた生物だ。知性は動物なみなので、怪物ではなく動物と言う扱いだ。魚のような外見だが、意外と性質は犬に近い。

 水の中でしか生活出来ないが、海水でも淡水でも活動可能。

 さらに訓練すれば、警備に使えると言う事で主に人魚族と言った水中を生活圏内にしている怪物達が自衛変わりに飼育しているらしい。

 もちろん、人間もそれを利用しており貴重な水中資源を守っている。

 たとえば、希少な珊瑚の密漁に対する警備。あるいは、希少な水中動物の保護だ。

 しかし、こう言う使い方もあったわけか……。と、俺は密かに納得する。 

警備用の犬ではバラ園の中では匂いが強く犬にとってはあまり痛くない場所だろう。それに、警備用の犬と言うのはこの美観を損ねる。だが、池の中に怪魚がいる状態ならば別だ。怪魚は水中の中にいるだけなので、見た目は違和感を与えない。

「他にもバラ園の中に、監視カメラを設置しています。

 さらに、たとえ池を飛び越えたとしてもあの小島に足を触れると熱感知、重量センサーに感知されて……」

 そう言うと、同時に高次が懐から一枚の硬貨を放り投げる。

 もったいない! あれは十円、五円でもなければましては一円でもなかった。あれは間違いなく百円だった。百円を粗末にするものは、百円で泣くんだぞ。と、俺は思う中で小島に落ちるコイン。その瞬間に、がしゃんと音を立てて鋼鉄製の折りが池から出て来て、小島を覆い隠す。

 どうやら、こう言う警備システムらしかった。


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