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Monster・child 餃子定食、ニンニク抜き  作者: 茶山 紅
序章 怪物・怪事件対策課 餃子定食、ニンニク抜き
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序章 怪物・怪事件対策課 餃子定食、ニンニク抜き

 序章 怪物・怪事件対策課 餃子定食、ニンニク抜き


 怪物モンスターの存在を信じるか? 五年前にそんな事を真顔で言えば、寝言は寝て言え。と、一言で切って捨てられていただろう。竜、悪魔、天使、妖怪やおばけに化け物。そう言った存在は空想の産物であり、テレビや本の中にしか存在しないものだった。

 だが、それは五年前に突如として変わったのだ。

 五年前に現れた異変によって世界は大きく変わった。

 竜や吸血鬼に鬼、幽霊と言った人では無いもの。それら、怪物は突如としてこの世界にまるで最初から存在していたと言う風に現れたのだ。

 世界は当然ながら混乱したのだが……。人類と言うのは思っていたよりも柔軟だったらしい。とはいうものの、そう言った連中曰く、何百年も前。……まだ魔女やら魔法やらが信じられていた時代は、自分たちは人間と共に暮らしていた。

 だが、ある事情からそれらが干渉できない時期があったらしい。

 星の並びや天体の動きなどで数百億年に一時的に起きていたらしい。

 だが、人間たちに認識で居ないだけでそれらは人間の世界を見て感じて聞いて知って居た。だから、俺たちが心配するよりもあっさりと理知的に文化的に俺たちに会わせて接触して俺たちの友として生きていこうと近づいて来たのだ。

 それも外見が仰々しく物語りで悪役として描かれる者達ではなく味方として現れる。エルフや妖精に天使と言った連中が近づいて来た。

 そのため、わりとあっさりと彼等は人間社会に溶け込んでいった。

 そして人間たちも彼等を受け入れて新しい世界は生まれた。

 ……と、言うのが最近の学校で習う表向きの歴史だ。

 けれど、人間というのはそれほど柔軟でもなければ一枚岩でもなければ相手……怪物と正式に明証された存在達も一枚岩ではなかった。

 そう言った者達が起きる騒動と言うのはよく起きる。河童が子供と相撲を取って人間の子供の尻こ玉を抜き取った。と、言う江戸時代の昔話のような事件。他にも妖精の子供が人間たちを気に入って長い時間、返さなかった誘拐未遂事件。淫魔による強姦事件。人食い種族による人間食肉事件と言った笑える事件から凶悪事件もある。

 かといって怪物だけが事件を引き起こすわけではない。人間の子供が喧嘩をして妖精の羽根をむしろ取った。小人の家を壊したと言う事件。他にも、人魚の肉を食べると不老不死になると言う話から起きる人魚の誘拐事件。金持ちが怪物達を剥製にして飾っている殺人事件と言うふうにこちらも笑える事件から凶悪事件と数々ある。

 つまり、人間も怪物もどっこいどっこいなのだ。

 さて、その変化で困っているのは警察もそうだ。

 何しろ、今まで起きていた捜査方法の常識や概念をひっくり返すのだ。壁をすり抜けたり小さな排水溝から出入りできる怪物、死んだら泡や灰になる種族。可と思えば首が切り落とされても生きて居たり……。文字どおり怪事件が数多に起きるのだ。

 しかも、時にその事件は凶悪で警察の仕事ではなく軍隊の仕事のような結果に終わる事すらあるのだ。五年かけて警察はそれ専門の課を作る事を決めたのだった。

 さて自己紹介が遅くなった。俺の名前は、海津薫と言う。薫と言う女のような名前だが、大半の人間は俺の顔を見て、お前が薫なんて名前は詐欺だよな。と、言うほど男らしい顔をしている。……けして不細工ではないと主張しておく。

 職業は警察官で巡査部長。……部長とついているが下から二番目の階級だ。とは言え二十七才と言う年齢なので相応だと主張したい。

 さて、長々と現在の世界事情について独白していたのは理由がある。

 怪物が現れた事によって作った怪物関係の難事件を解決する課。通称怪事件課に俺は配属する事になったのである。これからの未来ある成長する可能性のある課と言えば、そうだが実際の所は厄介な事件が回れる場所であり、未来があるかも知れないけれど厄介な仕事で潰れる可能性もある課。しかも、役目は上司のお守り役なのだから……。

 栄転とではなく左遷だと俺は思っている。


 俺はため息をつきながら、新しい部署へと足を踏み入れると……。

「あ。海津さん。おはよう。丁度、良いから朝ご飯を買ってきてちょうだい。

 お肉少なめで野菜たっぷりのヘルシーでお米じゃなくてパン系列が良いな。あと、飲み物のは果物ジュース。ただし、柑橘系の果物は却下。デザートはいらない。なるべく早く、買ってきてちょうだい」

 俺の直属の上司の一人、彩花警部補がそう言ってパソコンから顔を上げずに言う。

「彩花! てめえ、せめて人に者を頼む時はこっちを向いて頼め!」

 と、俺はそう言って曲がりなりにも上司である彩花を持ち上げる。

 上司に対する反応ではないが、なにしろこの上司はいろいろと特例なのだ。

 俺の上司の片割れである仁賀じんか彩花。警察になってまだ一ヶ月にも満たない。それでありながら、俺より階級が上の警部補だ。特殊なのはそれだけではない。

 彩花の年齢は、俺よりも十以上も年下の十六才。背丈は実年齢相応なので、俺は持ち上げる事が可能なのだ。まあ、さすがに片手で持ち上げる事は出来ないが……。

 年齢相応ではないのは、胸の大きさぐらいだろう。……念のために言うなら、俺はロリコンではないし、十六才の少女に欲情したりしない。たしかに胸の大きな子は興味があるが……。そこは重要ではないだろう。

 この彩花が十六才と言う年齢で警察の警部補になれたのは、その頭脳が買われてだ。わずか十才の時にハーバード大学を卒業した希代の天才。その間に発見した数式や論文などの特許だけで世界長者番付の一人に数えられている始末だ。そんな少女が警察と言う公務員になったのは、その優秀な頭脳を国民を守るために使いたいから……。と、言う崇高な理由ではなく、怪物関係の事件に興味を抱いたからだ。

 天才と呼ばれる彼女は五年前まで世界に退屈していた。だが、怪物が現れて彼女は怪物関係の事件を退屈しのぎと知的探求心を満足するために首を突っ込んだ。そして、数多の事件を解決した功績から警察にスカウトされたのだ。彩花に言わせれば、警察官は怪物事件を堂々と好きなだけ調査できると言う立場を手に入れるための手段に過ぎないのだろう。ちなみに、興味を抱かなければ行動しない引きこもりのため警察署内に住んでいる。

「ほれ。どうせ、そう言うだろうと思って買ってきておいたよ」

 俺はそう言って朝食を渡す。コンビニで買った野菜サンドとリンゴジュース。それと、春雨のサラダを袋に入れたまま渡す。ついでに領収書もきちんと渡す。

「……さすがに、十五回も繰り返せば好みに前もって用意するようになるのね」

 と、朝食を食べずにパソコンに打つ。除いて見れば、海津薫の調教記録と書いてある。

「調教とはなんだ? 調教とは! つか、買ってきて貰ったらせめてお礼を言え」

「海津さんの仕事はあたしと黒羽くんの面倒を見る事でしょう」

「俺の仕事は、お前らガキが現場の警察に捜査ができるように交渉したり、子供だからと信じられない場合の表だった捜査。そして、車の運転。そう言った子供のお前らの補佐であって、断じてお前の朝ご飯を用意したりする使用人じゃねえ!」

 曲がりなりにも上司だが、俺は堂々とため口で怒鳴る。

 俺も大人だ。年下の上司と言うのは腹が立つがだからといって敬語で話すのが必要と言う理屈だって解っている。だが、本来ならば高校に通っているような相手なのだ。

 そして、二人の上司の許可で俺はどうどうとため口を使っている。ついでに、上司だからと甘やかしているとこの二人が将来的に駄目になる。と、言う判断の元で独断的に説教などをしていると言う訳だ。これが原因でさらに左遷させられたとしたらそれまでだ。

 解雇になったらいっそ、探偵にでもなってやる! と、本気で思っているが今のところ、解雇も左遷もさせられていない。いや、左遷はすでにされているのかもしれない。

 なにしろ、俺の今のところの職場と言うのは、朝に海津の朝食を勝ってくる。そして、書類仕事と言った雑用、他の事件で怪物関係のがないのかを調べてるだけなのだ。そう思っていると、

「おはよーさん。彩花。海津さん」

 と、俺のもう一人の上司である黒井黒羽がやって来たのだった。


「おはようございます。と、言えとまではいわないがな。おはようと言え。おはよーさんとは間違っているとは言わないが、正しくないぞ!」

 と、俺はもう一人の上司、黒井黒羽にそう言う。

 黒井黒羽。彩花と同じく警部補であり、十六才だ。ただし、彩花と違って少年と言う所と別に天才児ではない。実際に、高校を行きながら警察官をしている。ただし、学校に通っているわけではなく通信講座で高校卒業資格を得ようとしている。

 その要望はこれまた異様だ。背は高校生にしては高く細身。肌は病的なまでに色白で、警察官だと言うのにスーツや制服ではなく、フード付きコートを羽織っている。

 まあ、軽い日光アレルギーなので直射日光を避けているだけなのだが……。

 頭脳は普通の黒羽だがある事情から彼も警察としてやっている。

 彩花と黒羽、この二人が日本警察が増えて行き困難極まり無く厄介な怪物関係の難事件を解決するための最終手段だ。ただし、十六才で一年も警察官としての経験もない二人では、警察という組織で活動が困難になる可能性がある。

 と、言う理由で俺が保護者役に決められたのだ。そう言われたときは、思わず辞職しようかと真剣に考えたものだ。

「しかし、退屈だなー」

 パソコンを立ち上げて、勉強を始める黒羽。

「退屈だなんて、他の課の連中に聞かれて見ろ。殺されるぞ」

「そう簡単に殺されるかよ。俺が」

 俺の言葉に黒羽はそう言って肩をすくめる。そりゃ、たしかにお前はそう簡単に死なないだろうが……。

「そう言う問題じゃないだろ。人間関係を円滑にしようと思わないのか?」

「人間関係の素人なもんでね」

「なんだ? その素人って!」

 俺はそう怒鳴る中で、

「どうやら、その退屈な日々は終わったみたいよ。

 まったく、思っていたよりも事件が起きなくて退屈していたわ。何のために警察なんて面倒な役職を受け入れたのかと思っていたわ」

 と、彩花が言いながら椅子から立ち上がる。

「上層部から事件調査の要請よ」

 本来ならば警視とかもっと責任者が居るのだろうが、うちの部署は三人。部署限定ならトップは警部補と言うイレギュラーなのは、この二人の上司という責任ある役職を拒否した人間が多いからだと言う噂がある。そのため、本来ならば天上の上層部が事件調査の要請を出す。あるいは、こちらから事件を見つけて首を突っ込むと言うのが仕事の内容となって居る。おかげで、この数ヶ月の間、俺は窓際の花の生けていない花瓶のような仕事をしていない状態だった。これでは税金泥棒と貶されても文句は言えない始末だった。

 ようやっと仕事らしい仕事が出来る。だが、それと同時にこの二人の保護者として本格的に他の警察官と顔を合わせなければならないのだ。

 俺はきりきりと胃が痛むのを感じる。

 ……この部署に飛ばされて三日もたたずに購入した胃薬をまた買おう。

 そう思う中で、

「それじゃ、行くわよ」

 と、彩花が行って扉まで歩いて……、

「疲れた。おんぶ」

「せめて車までたどり着く体力をつけろ!」

 恐ろしいほど体力のない彩花に俺は思わず怒鳴ったのだった。

 だが、廊下でついに力尽きた彩花を俺は渋々背負う羽目になったのであった。……俺は警察官になったわけであって、介護士や保育士になったわけではないのだが……。

 そう思いながら、俺は車にたどり着いたのだった。


 俺がパトカーに乗ろうとしたら、

「そっちじゃなくて、あっち」

 と、指さしたのは一台の車だった。シンプルな黒光りする格好いい車。

「おい。勝手に……」

「あれはあたしが自分のお金で購入したのよ。

 安い車に長時間、乗っていると疲れるじゃない」

 このクソガキ……。と、俺は思う。

「運転するのはお前じゃないだろ」

「あたしの体力の無さをなめないでちょうだい。自慢にならないけれど、体力は高齢の老人に勝てるぐらいの体力よ!」

「本当に自慢にならないな」

 俺はそう言う中で彩花が出した鍵でドアを開けて彩花をおろす。

 そして運転席に向かってはドアを開けて、俺は絶句した。

 車に詳しくないがこれが高級車だと言う事がわかった。成金趣味ではないが、上等な布に座ってみれば座り心地はメチャクチャ良い。しかも、後ろを見てみれば小さな冷蔵庫にテレビまでついている。

 これはパトカーではなく高級車だ。

「お前、なんの車だ?」

「あたしが性能などを計算して作らせた特注品」

 目眩を覚えて俺は卒倒しかけた。

「大丈夫よ。すでにあんたの名義で保険にも入っているから」

「いつの間に!」

 俺は叫びながらとりあえず運転を始める。

「で、住所は?」

「すでにカーナビに目的地は記入していたわ」

 いつの間に……。

 俺はそう思いながらカーナビの指示に従って目的地に向かう。

 車を運転しながら俺は尋ねる。

「それで、どんな事件なんだ?」

「誘拐事件よ。ただし、予告密室誘拐事件でまだ誘拐されてないけれどね」

「なんだ。死んでないのか」

 彩花の答えに黒羽が退屈そうに言う。

「事件の凶悪化を願うな!」

「良いじゃないか。俺は流血沙汰が好きなんだよ」

「警察官の自覚はないのか!?」

 黒羽の言葉に俺は叫ぶ。

「まだ、警察官になって一ヶ月もたっていないからな~」

「安心して、誘拐と言われて居るけれど殺人に発展する可能性もあるから」

 黒羽の言葉に彩花が言うが、

「だから、警察官として言葉に気をつけろ!

 せめて、捜査に参加した時はそんな事を言うなよ!」

 俺はそう断言する。

「そもそも、今回がこの部署の初の捜査なんだぞ。

 他の部署から俺たちは左遷先だの役立たずだと言われて居るんだぞ。そのくせ、予算だけはたっぷり貰っていて良い目で見られていないんだ! 俺たちが捜査に参加するのも上層部の命令だとしても、不愉快に思っている奴はいるんだぞ」

「その程度、解っているわよ。海津さんより頭は良いんだから」

「頭が良い悪いじゃなくて常識の問題だ」

 俺はそう言いながら目的地へとたどり着いたのだった。


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