第5話 炸裂! アーティファクト!
お待たせ致しました。
後編(?)です。
「ダルーマァアアア! シーシセッツダァアアアアン!」
ペドフィローダーが不穏な単語を叫びながら、ナタを構えて向かってくる。
アーティファクトで倒すにしても、まずはどんなのがあるかを確かめないと。
早速、俺はアーティファクト一覧を呼び出す。
現状で俺が保有しているアーティファクトは……。
【テンタクル・ツール・デバイス】
タイプ:アクティブ
指先から工具付きの触手を召喚する。
用途に応じて選択可能。
発生させた工具は、使用者が任意で解除する。
【オービタル・アイアンボール】
タイプ:アクティブ
使用者の周囲に鉄球を一つ召喚する。
鉄球の制御は使用者と付人のどちらでも可能。
どうやら、倒したレヴノイドの能力をコピーしたものらしい。
青い人型ロボットとかピンクの球状生命体とか、そういうイメージかな?
それにしても、微妙に使い道に困るのしか無いのが悲しい。
元の持ち主に比べて劣化している感は否めないし。
でも、もう距離を詰められてる。
時間が無い!
「ええい、このアーティファクトだ!」
俺は、オービタル・アイアンボールを選ぶ。
すると、俺の目の前に魔方陣が描かれた。
そこから鉄球が、ぬっと現れる。
……よし、じゃあ投げようか。
鋼の身体の全力投球。
鉄球が、ペドフィローダーの腹に命中する!
そしてその場で鉄球は浮遊しながら、俺の操縦で何度も腹を殴打する。
「リョナァ……ハラパァアアン……!」
「うう、なんかきもちよさそうにしてます……」
「業が、深すぎる!」
陵辱大好きなら、普通はサディストだから痛みを感じて悦ぶなんておかしいじゃないか!
いや、ペドフィローダーは明らかにおかしい奴だけど。
YES妄想、NO実行だよ!
幸い、ペドフィローダーは鉄球の打撃を受けたまま、その場を動こうとしない。
やるなら、今しかない!
俺は次に、テンタクル・ツール・デバイスを呼び出す。
それぞれの指から、触手が一本ずつ生えてくる。
先端には工具。
じゃあこれをロケットパンチで飛ばして、と。
背中に回り込ませて、触手のカメラを起動する。
残りの触手に装着された工具で、ボルトを外していく。
「オォ……オフッ……オォンッ……」
……お願いだから喘がないで欲しい。
背中を覆っていた板金が外れた。
俺はそれを、もう片方の腕を遠隔操作して掴む。
本当は投げ捨てたいけど、それやると里に被害が出るし。
行方不明になった里の子供達がどこにいるかわからないんだから、迂闊な事はすべきじゃない。
確実に、とどめを刺すべきだ。
工具を全てドリルに変更。
内部メカが丸出しになっているペドフィローダーの背中から、ロケットパンチを突き入れる。
そのまま、内部メカを掻き乱す。
「ワ、ワ、ワイタァアアアアア!」
最後に、俺のロケットパンチは腹部を貫通。
そこに俺は、目からビームを放つ。
穴の開いたペドフィローダーは、そのまま霧散していった。
『男に陵辱されるとか誰得だよ……』
気持ちはわかるけど、君が陵辱しようとした人達も同じような事を考えていたと思う。
というか、その巨体でどうやって陵辱しようと思ったのか……。
いつものウィンドウが表示される。
“アーティファクトを取得”
三回目ともなると、もうお決まりだ。
ガントゥレントを倒しても表示されなかったという事は、量産型みたいなのは能力が手に入らないのかな。
さて、今回のアーティファクトは?
【インモラル・トーチャー】
タイプ:パッシブ
本体内部に亜空間を構築し、任意のタイミングで指先から転送用魔方陣を射出できるようになる。
取り込んだ相手には、指定した内容の拷問を行える。
「……ねえ、これってさ」
「里の子供達が危ないですっ!」
もし亜空間に囚われていたとしたら、大変な事になる!
里の周りにバリアが張られたけれど、それはこれからの話。
既に起きていた事を、無かった事にするわけじゃない!
なるべく足下に気を付けながら、俺は慎重に歩いて里の方角へと向かった。
里では、エルフの兵士っぽい人達が弓を構えて歓迎してくれた。
ヒュンヒュンと一斉に放たれる矢は、俺の装甲に弾かれる。
エルフ達はそれを見て、顔を青ざめさせた。
どう考えても敵と思われてる!
「待って! 俺は君達を傷付けるつもりは無いんだ! さっきの緑色のは俺が倒した!」
俺は腰を落として、耳を澄ませる。
ロボだから耳なんて無いけど、こういうのは気持ちだ。
聞いているという姿勢が大事なんだ。
「ふん! 信用できるか!」
一番偉いっぽいエルフが、前に出て来て叫ぶ。
参ったな。
聞く耳持たないって雰囲気だ。
「わたしに任せて下さい」
「何かするの?」
「こうします」
俺のコックピットハッチが開け放たれる。
なるほど、中に人が居るよというアピールか!
確かにそれなら、信用されるのかな?
俺は、矢が飛んできた場合に備えて片手をスタンバイ。
表に出た瞬間に射貫かれたら、それは悲劇だ。
「わたしはこのヴァルハリオンの付人、エールズ・ルミナスフィーレ!
亡国ミロントリスの、最後の生存者です!」
「証を見せろ」
エールズ王女が、出入り口の壁をコツコツと叩く。
「降ろして頂いても?」
「わかった」
エールズ王女を手の平に載せて、ゆっくりと降ろす。
もちろん、俺はもう片方の手で防御をしている。
何をされるかわからないし。
エールズ王女は族長の所まで歩いて行くと、首に掛けてあったペンダントを外した。
「証は、ここに」
族長はペンダントを手にとって眺め、しばらくして王女に返した。
「なるほど。確かに王族だ」
「国が滅びようとも、その意志までは滅びません。
昔と変わらず、あなたがたとは良き友人で在り続けましょう」
「……疑ってすまなかった。
聖鉄の力に頼ったのは本意ではないが、この里を危機から救った事、感謝する」
なんだかわからないけど、信用してもらえたみたいだ。
「良いのです。子供達は、ご無事ですか?」
「ああ。結界が消滅したので、我が里の者達が救出した」
「結界……」
ちょっと嫌な予感がする。
「ねえ、無事なのは命だけじゃなくて、その……」
「ん?」
「その子達、変な事までされてなかった?」
「あ、ああ。大丈夫だ」
良かった。
ペドフィローダーの言葉通り、陵辱なんてされていたら大変だった。
こうして、里の平和は守られた!