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第23話:邪悪なる出現! ネクロゴス!


 空が飛べるようになってからは、行動範囲がかなり広がった。

 新しい仲間のメリーとハリーは身体能力が高いから、俺が入れないところ――たとえば小さい洞窟や、俺が踏み込むと環境破壊になってしまう森林地帯なんかでは大活躍だった。


 ……ただ、結構な割合でドジを踏むのが何とも。


「やっちまったニャ……」

「捕まっちゃったミャ、助けて欲しいミャ……」



 でも!

 あるとき倒したレヴノイドから得られた【スーパー・センサー】なるアーティファクトのお陰で、レヴノイドを探して倒すのがかなり楽になった。


 こっちから倒しに行けるという事はつまり、今までは現れてから対処するという形だったのが、攻勢に回れるという事だ。


 しかもガシャドゥークのアーティファクト【レーヴァテイン】は、レヴノイドと戦うのに特化している。



 つまり!

 効率が段違いに上がる!!




「こんな台風の中で強制労働なんてさせない!! 行くぞおおおおお!! 横転地獄車放り投げスペシャル!!!」


『蓄えなんて無かった……配達者よ、俺のために死ねぇぃ!! そして俺は死んだ』


 雨天注文アメノヒノゴゴノオバケ、撃破!!




「ノックスの十戒は破らせないぞ!! 喰らえ、ライヘンバッハの滝落とし!!!」


『ロボで探偵モノやるの、やっぱり無理があったよね……』


 推理崩壊ブットビアーティ、撃破!!




「これ以上は呼ばせないぞ!」


『電波が、届かないだと!?』


 無限召喚ヨンダルフォン、撃破!!




「仕える相手を間違えるな!」


『くっ、無念!! だが……ネクロゴス様の住まう世界樹は、必ず貴様らを制圧してくださるだろう!!』


 忠臣騎士ドロブネライダー、撃破!!



 そんなこんなで、レヴノイドは確実に数を減らしていったし、聖域が増えたお陰で、耐性持ちが出て来る前に片付く事が大半だった。


 けれど、あの時の女幹部はなかなか現れなかった。

 それに……ドロブネライダーの言っていた“世界樹”だって。


「エールズ、解る?」

「いいえ。わたしも文献で知るだけです。なにぶん世界樹は、伝説上の存在ですから……」

「そうだよね……」


 お手上げだな。


「なんでウチには訊かないんだよ?」

「じゃあレキリアは何か知ってる?」

「いや、な~んも」

「訊いた意味」


 テヘペロするんじゃない!



 だけど。

 突然、空が曇って、雷鳴が轟く。


 ピカァゴロゴロゴロ、ドシャーン……


 真っ黒な雲の中心から、おどろおどろしい、何かどす黒い塊のようなものが降りてきた。

 それは空中に浮かぶ島だった。


 島の中心地には、メカメカしい巨大な目玉が鎮座していた。

 グリグリ動いて、俺達を捕捉する。


 ずっと、別の次元から見ていたのだろうか……?



『やあ、ヴァルハリオン。僕の側近から話は聞いてるよ』


 ――!!

 目玉が、喋った……!!

 嫌な感じの合成加工ボイスが、何とも不気味さを際立たせる。


『こういうタイミングでこういう演出。まぁ、鉄板だろうね』

「お前は、まさか……」

『はじめまして。僕の名前については……その身体なら分析できるだろ? やってみなよ』


 フォーカスする。

 ――“死霊皇帝ネクロゴス”

 恐るべき黒幕の名が、そこにはあった。


『そうとも。僕がネクロゴス。このオルグレム世界にレヴノイドが降り立ったのは、僕の仕業というわけさ』

「もう、お前の好きにはさせないぞ、ネクロゴス!!」

『それを決めるのは君じゃなくて僕だ。悪いけど、これからも好き勝手にやらせてもらうよ』

「この……!!」


 俺がバルムンクを構えると、目の前でゲートが開く。


『出てこい』

「は。仰せのままに」


 聞き覚えのある声と共に出てきたのは、悪の女幹部っぽい格好の人だった。


「君も、こんな奴にいいようにされてちゃ駄目だ!」


 女幹部は首を振る。


「そんな事はない。私はネクロゴス様に全てを捧げた付人つきびと……どうせ一度はくたばった命だ。朽ちかけた魂なんぞに未練など無い」

「一体、何が君にそうさせた……?」

「いいだろう。どうせ本日限りで貴様も終わりなのだからな。冥土の土産に教えてやる」


 赤黒い光の球体に包まれ、そこに黒い装甲がガチガチと組み立てられていく。

 俺よりも一回りか二回りほど大きい巨大ロボが、そこにはいた。


 天使の羽を刺々しく禍々しくしたような、機械の翼……鴉のような頭。

 長い腕、細い胴体、ネジ曲がった脚。


 ……通信が入る。


「私はエプカ・イェルドリン・オルグレム」


 オルグレム!? この世界の名前を冠しているのか!?


「かつてこの世界を見守っていた賢者達“世界樹”の末裔だ」

「なッ……」

「そして、賢者の血族の、最後の一人でもあったそうだ」

「ミャッ」「「「なんだって!?」」」「ニャンだって!?」


 思わず俺達も動きが止まる。

 明かされるそれが本当のことなのかは解らないけれど……どちらにしたって、それが倒すのをやめる理由にはならない……気を強く持とう、俺!


「王国の聖鉄による支配体制は盤石であったかのように見えたが、資源は枯渇しかかっていた。そこで、他国から奪う大義名分が必要だったのだ」

「大義名分って……」


 異形の巨大ロボは右手の指を、チッチッと左右に動かす。


「敵だよ。こと、世界樹の要石に封じられていた魔物達は、それについてまさに適任だった。あとはその制御をする技術だけ。

 とはいえ、大昔の魔物だからな。私達を殺してでも得られた魔物は、その場で暴れるだけだったし、解き放ったところで想定していたほどの効力は発揮できなかった。

 私達は拠点ごと次元の狭間に封じられ、あとは朽ちてゆくだけ……未来のために研究していたあらゆるものが、貴様らの原始的なおままごとの為に台無しになった」


 なんということだ。言葉が出ない。


『ま、そういうワケ。僕はね、この世界を再利用したかった。他の世界で救われなかった、報われなかったまま死にゆく人達に、居場所を与えてあげたかった。彼女の絶望は、その旗印にぴったりだったのさ』


 いや、此処にいるな……言葉を尽くしてでも対抗しなくちゃいけない、明確な敵は!!


「お前自身は、どうなんだ?」


 俺は訊いた。


『僕自身はただの一般人さ。ちょっとばかりパワーと行動力が段違いなだけの、ね。まぁ! 訳あってこんな姿なんだけど! あははは!!』



 最後の戦いが――


『さぁ、エプカ。終わらせてごらん』

「は、仰せのままに! 死は万物の序章なり!」


 ――幕を開けようとしていた。



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