第22話:新たなる力! 合体、スーパー・ヴァルハリオン!!
「もはや絶体絶命であろう!! クカカカカカ、たーのしー!」
人質を何とかして解放しないと……!
こんな人でなしに! 負ける訳にはいかない!
あれ?
またガシャドゥークのコックピットが開いた!?
「勇者様! わたしの事はもう、良いのです! コックピットを破壊して下さい!
どうにか、メリーさんとハリーさんを、背部装備へと退避させました。時間を稼ぐ為にも、今ここで破壊して下さい!」
「ええい、小娘が! 余計な真似をするでないわ! 背中のアーティファクトは吾輩の管理下にある! 無駄ぞ! おとなしく乗っておれ!」
ああ、コックピットが閉ざされる!
く……何とか、指を!
「一緒に頑張ろ。勇者君」
レキリア……そうだね。
俺、頑張るよ。
頑張って、コックピットをこじ開ける!!
「聞いてくれ、エールズ!!」
こじ開ける……!!
頭をガシガシと殴られても!
目からビームで顔を焼かれても!
あと、スネをさんざん蹴られても!
俺は、エールズも助ける!
「俺のいた世界でも、元々が残酷な使い方だった道具は沢山あった!! 他にも、処刑人が医学を発展させたり!! 安楽死の方法を探したり!! 人から忌み嫌われたとしても、やり方次第なんだ!!」
助ける!!!!
「どんな生まれ方でも構わない……俺は、俺の願いは、悲しみと絶望から人を救い出す事だ!!
そこに例外なんて無い! エールズ、君もなんだ! 俺は君も助けたい……誰かが犠牲にならなきゃいけないなら、俺が犠牲になる!!」
「いけません、勇者様! あなたがいなくなれば、わたしは誰に託せば良いのですか!」
まったく、不器用すぎるぞ、エールズ。
そして俺。わざと言ったんだ。俺が犠牲になるって言葉は、わざとだ!!
「平和になった世の中を、いつか一番初めに見せてあげたい……! その相手が、エールズ! 君なんだ!!
俺は逃げないぞ……エールズ、君の命も、君の心も、俺は絶対に諦めない!! だから、また一緒に戦おう!」
――
――――
「勇者様……!」
パァアアアアアアッ――
急にガシャドゥークのコックピットからまばゆい光が放たれ、少ししてからガシャドゥークの本体から翼……飛行機のようなものがガパッと外れた。
「ぬおおッ!? なんだ!? 吾輩のアーティファクトが……剥がれた、だと!?」
ヒュウウウウンッ……轟音を立てて、空を飛び回る。
暗い色の外装がパラパラと剥がれていき、やがて金色の光を纏う。
そして俺の背中に――
「合体!! スーパー……ヴァルハリオン!!!!!!」
ブッピガァン!!
口元を覆っていた鋼のマスクが弾け飛ぶ。
俺の生の叫びが、よりクリアな音声で響き渡る。
う~ん! 呼吸がしやすいって、素晴らしいね!
「グオオオオ、眩しいィイイイ!?」
どうだ! エールズは、自分の居場所を奪い返したぞ!!
「おかえり、エールズ」
「無事に戻ってきたね」
広くなったコックピット。
座席に座り、エールズは涙を拭う。
「ご心配、おかけしました」
「いいんだ。これからもよろしくね」
それと……。
「君達も、よろしくね」
コックピットに新しく加わった二人にもご挨拶を。
「私達、あんたらを利用しようとしたニャ……どうして助けようとしたニャ?」
「君達が、あいつに利用されていたからだ」
「ニャ……恩返ししなきゃだニャ。こうみえて私達、義理堅いんだニャ」
「頑張るミャ!」
よし、それなら。
「応援してもらっても、いいかな?」
現状、他に振れる仕事が無いし。
「お安い御用だニャ! ふれ! ふれ! ヴァルハリオン!」
「ありがとう、元気出た!」
エールズ、どうしたの?
そんな険しい顔をして。
「わたしにも応援させて下さい」
ちゅ。
「……」
コンソールに、口づけ……かな?
これは、これは……ドキドキする!
「よし、勢い余ってやらかさないように頑張る!!」
「おのれえェエエエエ! 吾輩を差し置いてイチャイチャしくさって! 亡国の姫を奪って寝取って鬱展開にしてやろうと思っておったのに! 斯くなる上は!!」
ガシャドゥークの大剣が極光を纏って振るわれる。
だが――!!
ブォオオオオオオン!!
フォシャァァアァァァァァ!!
翼を手に入れた俺なら、回避を可能とする!
ギュウウウンン!!
ギュウウウンン!!
上空を旋回しながら、目からビームであちこちに砂煙を発生させる。
「もう使いこなしたというのか! おのれェ!」
「まだ使いこなしてはいない!!」
向きを変える。上空へ。
「エールズ! 推力全開で!」
「はい!」
太陽を背に、バルムンクを頭上に掲げる。
「反転だ!」
「はい、行きます!」
喰らえ!
必殺ぅううううゥウウウウウ!!
「――高々度急降下ァ、スーパー兜割りィイイイ!!」
「なん、だとォオオオオオ!!」
炎を纏ったバルムンクに、急降下の重量を乗せて。
「「「「「「行っけェエエエエエエエエエエエッ!!!!!!!!」」」」」」
ヂョインヂョインヂョイン!
ギュイイイイィギギギギギギギギッ!!
ッ――ドォオオオオオオオン!!!
「グオォオオオオオオオオ!!!!!! 吾輩が、真っ二つにィイイイ!!」
縦方向に両断されたガシャドゥーク。
崩れ行くそれを背に、俺はバルムンクを一振りして排熱。
「……来世こそは清く正しく生きろよ、ガシャドゥーク」
「認めぬ、認められぬゥウウウウウ!!」
赤黒い火花を大量に散らして、ガシャドゥークは爆発四散した。
驚異は過ぎ去り……そして辺りには虹色の聖域が形作られた。
『だがせめて、見届けてやろうぞ! 貴公がやがて壁に手を埋め、絶望に血の涙を流す末路を! その日まで、吾輩は貴公と共に在り続けよう! アーティファクトとして! クカカカカカ……ワハハハハハッ!!』
“アーティファクトを取得”
「君の呪詛、確かに受け取ったよ。けれど……もうこれ以上、呪わせはしない」
エールズも、この世界も。
この世界に暮らすあらゆる命も。
俺自身すらも……君に呪わせはしない。
パワーアップとマスク割れは、喋る巨大ロボットの鉄板ですよね。




