第21話 奪われる希望！ ガシャドゥークの逆襲！
「年内2回あれば奇跡」と我慢させてしまうのはしのびないので、突っ走ります。
「やあああああ！！」
スカッ……
「何事だ！？」
……上にいるのか！
飛んでる、だと！？
「新たなる追加兵装“天狗の翼”を、篤と味わうが良いぞ」
「くそ！ やっぱり飾りじゃなかったのか……そっちだけ飛行能力持ちとは卑怯だぞ！
しかも天狗と銘打っていながら、まるっきりコウモリの翼じゃないか！」
だいたい、単色塗りみたいなコウモリの翼って、某スーパーロボットと丸かぶりだよ。
胸からビームとかパイルダーオンしそうにないだけ、まだマシかな……。
「往けい、デュラハトック！！」
「オ前モ転生者ニシテヤローカー！！」
上からは、ガシャドゥークの目からビーム！！
地上ではデュラハトックのトラック突進！！
絶体絶命だなんて――そんなわけあるか！！
トラックを掴む……投げる！
ポイポイポイポイポイポイポイポイポイポイポイポイポイポイ！！
ボッバキッズゴゴッカァンッグワシャァ！！
「ぐぬぬ……おのれヴァルハリオン！ 吾輩と同型とはいえ、貴公は旧式ではないか！」
「何が旧式だ！ このバッタモン！ 聖鉄とレヴノイドは違う！」
「違うと言い切れるかな？」
「レヴノイドは基本、人様に迷惑を掛けているじゃないか！ 世界を荒らして回っている！」
「それは聖鉄とて同じよ。王国の所業、吾輩は伝聞で知る限りではあるが……それでも随分と爪痕を残していたようだな？」
バカ、お前、バカー！！
そういうの出してくるなよ！
エールズが悲しむだろ！！
コックピット内のカメラを確認しよう……大丈夫？ エールズ？
「そう、ですよね……王国のしてきたことは……武力による強引な制圧……」
「エールズ！ 耳を傾けちゃ駄目だ！ あいつの言葉は、悪しざまに拡大解釈したイメージだ！
直接、見てもいない、被害にも遭っていない……いや、あいつは寧ろ、加害者側だ！」
言うなれば、いじめの加害者が教育問題について高説を垂れるようなものだ……！
ズシーン……バキィ！
敵ながら見事な連携をなんとかいなしながら、俺はエールズの説得を試みる。
「それでも、勇者様も聞いたでしょう！？ あの村で！
わたしが直接したことではなくとも、わたしは王国の姫です！ ならば、生き残っているわたしがその責任を負うべきです！」
「それは……！」
それは呪いだよ！ とは……言えなかった。
なんとなく、その言葉は俺自身を否定してしまうような気がしたからだ。
「あー、姫様？」
「なんでしょうか、レキリアさん」
「どうしても、そいつを放り投げちゃ駄目かな？ 今は今だ。ガシャドゥークを倒すことに集中しないと」
「はい……」
ちくしょう、俺がしっかりしていなくてどうする！
もっと、ちゃんとしようね、俺！！
「オ前モ転生者ニシテヤローカー！！」
ええい、煩わしいぞ！
ポータブルバキュームでトラックを吸い込んでやる！！
「オ、オ、オ前モ転生者ニシテヤローカー！？ オォ！？」
「我輩を忘れてもらっては困るな！！」
出たな、上から目線ビーム！
「できればしばらく忘れさせて欲しい！」
対抗して、こっちもビーム！！
ズビャアアアアアンッ
「オ前モ転生者ニシテヤローカー！！」
突進してきた……それならチャンス！
本体をガシッと掴んで、ビームの盾にする！！
「何とッ！？」
「オ前モ転生者ニシテヤローカァアアアアアアッ！！」
ボヒュッ、グッジュ……――ドォオオオオオオオオオオオンッ！！
よし、溶けた。
『転生者なんて全部クソだ！ みんな地獄に落ちろ……！！』
君も、とんでもない闇を抱えていたんだね……。
けれど、だからといって轢き殺すのは駄目だからね。
「残るはお前だけだぞ、ガシャドゥーク！」
「クカカカカカッ！ そこまでだ、貴公！」
「どこまでだ！？」
すると、ガシャドゥークは得意げに自分自身のコックピットの追加装甲を開いた。
「そう、此処までよ」
え……？
「た、助けてニャ！！」
「なんで、この子達が……！」
そう。メリーとハリーがコックピットの中に捕らわれていた。
背中合わせに縛られて、これじゃあ本当にただの人質じゃないか！
「前任の付人は別の業務が忙しくなったそうでな。吾輩のコックピットが無人のままというのも、些か物悲しいというものよ。
そこに、ちょうど良く逃亡中の此奴等を見つけたゆえ、引きずり込んでやったわ！
元は吾輩の街の民！ どう使おうと吾輩の勝手である！ クカカカカカッ！！」
「卑劣な……！」
なんという俺様主義！
生きてるんだぞ！？
「卑劣なのは、この街の長よ！ 周辺の街にレヴノイドを誘導し、上手くパワーバランスを操っておった！」
な、なんだって……！？
「そして報復に、今度はそやつらからレヴノイドを差し向けられ、窮地に陥っておったのがこの街よ！
吾輩が一蹴し、平和を取り戻してやった！ クカカカカカッ」
ガギィンッ！！
「その見返りに手に入れたのが権力と、その翼か！！」
「然様！！ アーティファクトがあれば、吾輩も貴公に遅れを取りはせぬわ！！ ヴァルハリオン！ 権力はいいぞ！」
ガバァアアンッ！！
「くうっ！」
「トラック生成！！ ハアアアッ！！」
ゴシカァン！！
「ぐあああ！！」
「どうした？ ヴァルハリオン！！ 貴公も人質を前にしては形無しよな！！ クカカカカカッ」
ゴァン、ボコン、ズギャーン！！
「くそ……！」
反撃できない！
「冥土の土産に教えてやるぞ。といっても、あの女の受け売りだがな。レヴノイドが他の世界の死霊を基に作られたものだということは知っての通りだろう」
……それは、わかってる。
「もとよりレヴノイドも聖鉄も、古くは一つであったのだ」
「……」
「貴公の付人は、それを知らぬとでも？ いいや、知っておる筈だぞ」
エールズが？
それを知りながらも、俺を？
「……そんな筈は、ありません」
「吾輩と貴公のヴァルハリオンはよく似ているだろう。それが何よりの証拠よ。
クカカ！ 元は同じであったのだ。ただ人間側が己に都合の良い形に削り取り！ 愚かにも“聖鉄”などと勝手に呼んでいただけのこと！
全ては死者の魂を入れ物に封じ込め使役する復屍鬼機という儀式により始まったという事実から、目を背けてな！！」
「――！」
エールズ、聞いちゃ駄目だ。
「エールズ。人も、道具もね、使い方次第なんだ。良い人であれば善人という呼び名が付くし、悪い人であれば悪人と呼ばれるように！ だから、起源がどうあったって構わないじゃないか！」
「黙れよ、貴公！ 吾輩の名前を忘れていた恨み――は、とりあえず置いとくとして！
死霊帝国ネクロゴスと同じ手を使うという事が何を意味するか、王族育ちであれば知っておろう？」
ガギンッ――ガパァッ！！
嫌な音を立てて、コックピットハッチが引き剥がされる。
「し、しまったッ！！」
そしてガシャドゥークは俺を押し倒し、両目を光らせる。
「もはや貴公の命は風前の灯！ さあ、亡国の王女よ。そちらの聖鉄鍛冶と獣共の命が惜しくば、吾輩の付人となるが良い」
「……はい」
だ、駄目だ！
何か、手立ては無いのか！？
「かつて棺の山を封じ込めた血族の末裔というだけのことはある。歴史は勉強しておくものだなあ？
こうやって相手をいびり倒す時、手応えが違うからなあ、クカカカカカ！」
ああ……エールズが、俺のコックピットから居なくなる……
「いよいよ終わりだな、ヴァルハリオン！ よくぞ今日まで耐えきった！
敬意を評して吾輩が貴公を墓標そのものに変えてくれよう！ クカカカカカッ！」
苦難からのアレはもう鉄板かもしれませんが、敢えて詳細なネタバレをするというのも野暮というものでしょう。
ロボアニメのように熱く……次回へ、つづく！！！！！！！
