表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/26

第19話 荒野疾走! デュラハトック!!

 長らくお待たせいたしました。

 なお、荒野行動とは何ら関係ないです。


 俺達は温泉で休息をとった後、王国の紋章のある空中要塞が通ったという目撃証言を元に、西へと進んだ。

 この辺りは寒さもだいぶ和らいできたけど、草木はない。


「見渡す限り荒野だ。せめて空でも飛べたら、もう少し楽だったのにね」

「ええ。そうですよね……なにせ、手に入れたアーティファクトは……」

「うん……」


 ヒワイバーンを倒して手に入れたアーティファクトは、飛行能力じゃなかった。

 腐ってもワイバーンの名を冠しているなら飛行能力が良かった。


 けれど。

 着せ替えセットと盗撮カメラだけだった。

 ……着せ替えセットと、盗撮カメラだけだったのだ。


 セットの内容は、セーラー服とかブルマ体操服とか、ナース服にミニスカポリス……あと学校指定水着とか。

 多分、生前の友人に言ったら『昭和のコスプレイメクラかよ』とツッコミが入るだろう。

 もちろんエールズもレキリアも、何に使う服かをまったく理解できなかった。

 つまりこのアーティファクトは、戦いにおいて何の役にも立たない。


「……地獄でもう一回爆散してくれないかな、あの淫獣」

「同感です」


 その時、背後から猛烈な風圧を感じた。



 ブオォオオオオン!!

 ドゥルドゥドゥドゥドゥ!!

 ゴォオオオオオ!!


 そんな爆音を轟かせて荒野を走る巨大なトラック。

 サイズのデータを見るに、どうにも30メートル級のロボットが運転しているようだ。

 かなりの大きさじゃないか……。


 “転生禍門デュラハトック”


 えーっと……?

 トラックで、転生……?

 まさか、轢き殺して、何かに転生させるのか!?


 なんてむごい真似を!!

 許さないぞ!!



「オ前モ転生者ニシテヤローカー!!」


 う、うわあ……。

 安直だけど恐ろしいセリフだ。


「勇者様……“転生者”とは何なのでしょうか?」

「うーん、上手く言えないなあ」


 俺自身が転生者だけど、どこまで説明したらいいのかな?

 いきなり違う世界について話しても、たぶん訳がわからないと思う……。


「おお、そうだ。レキリアは? なにか知ってる?」

「いやぁ~ウチに振らないでよ。天才でもわからないことくらいあるからね?」

「ごめん」


 そうだよね。

 俺だって同じ立場だったら返答に困った。


「オ前モ転生者ニシテヤローカー!!」


 とにかく、早く片付けないと。

 あれは積極的に殺そうとしている。

 放っておけば被害が増えるのは確実だ!


「止まれ、そこのトラック!」


 ブルルンッ、ドドドドドッ!!


「オ前モ転生者ニシテヤローカー!!」


 うわあ、突っ込んでくる!?

 くっ――これで受け止めてやる!!


 バルムンクを、パースがかって構える!!



 ゴアァアアアンッ



 あ、すごい、めっちゃ手が痺れる……というか、跳ね飛ばされた!

 いくらショック吸収機構がコックピットにあるとはいえ、心配だ。


「エールズ、レキリア! 無事かい!?」

「わ、わたしは、何とか……」

「ウチも……なんなんだアイツ」


 そう。

 単純に硬い!

 攻撃方法こそただの突進でしかないけど、装甲が硬いせいでとにかく強い。


 しかも、何度も突進してくる。

 突進して、Uターンして、そしてまた突進を繰り返す。

 猛スピードだ。一息つく暇もない。


「この、くらえ!!」


 ビビビ――プシュウッ!

 相変わらず、目からビームは弾かれる。

 最近、対策済みのレヴノイドが多くてさすがに心細くなってきたなあ。


 次はロケットパンチ!

 鉄球を握りしめた、喧嘩殺法バージョンだ。


 けれど。


「オ前モ転生者ニシテヤローカー!!」


 ギャギャギャ――バギッンッ


 見事なドリフト走行で防御されてしまった。

 手強いな……!


 じゃあ、フォールダウン・フォース!!


「オ前モ転生者ニシテヤローカー……」


 上手く行ったかな?


「オ前モ……転生者ニシテヤローカー!!」


 くそ、駄目だ!

 テンタクル・ツール・デバイスでどうにか分解を……!


「オ前モ転生者ニシテヤローカー!!」


 バキィイイイインッ


「弾かれたぁー!!」


 オービタル・アイアンボールを運転席に――


「オ前モ!」

「手を伸縮させて掴んだッ!?」


 ヴォォン!!


「転生者ニシテヤローカー!!」

「渾身の力で投げ返してきたー!?」


 ヒュンッ――ボッ


「な、ナイスキャッチ……俺……」

「ちょっと勇者君、顔面キャッチのどこがナイスなんだよ」

「正直、思わず自爆したくなるくらい痛い……」


 あ。


「ポータブルバキュームを運転席に発生させられないかな?」

「よし、ウチが発生場所を狙ってみる……今だ!」

「それ!」


 運転席に作ったぞ!

 何か中身的なアレを吸い出せば、動きが……止ま……止ま……止まれよ!!


 もーう!

 止まらない!!


「フホホホホホホ!! オ前モ転生者ニシテヤローカー!!」


 くそっ、笑い声がムカつく!

 そんなに転生させたいのか! 俺はもう結構だし、エールズとレキリアは転生させないぞ!


 転生……転生……?

 前世……。

 ん、待てよ?


「ちょっと着せ替えセットの箱を出してもらってもいいかな? 着替えまではしなくていいから」

「え? 着なくていいんですか?」

「お姫様、どんだけ身体張ってるんだよ……」


 ちょっと想像したけど、元の持ち主がアレだからね?


「大丈夫。俺がつまんでしまえばただの布切れだ」


 コックピットを開けて、つまんで、掲げた!


「見ろ! デュラハトック! 違う世界に転生すれば、こういう衣装を二度と見られなくなるんだぞ!

 裁縫のスキルを持った転生者なんてそうそういない筈から、正確に再現できなくなる! それでもいいのか!」


「――!!」


 よし、動揺している。

 しょうもないけれど、動揺している。

 冷静に、冷静に……ひらめいた!


「ウールーサーイ!! オ前モ転生者ニシテヤローカー!!」


 よし、今だ!

 横軸が駄目なら、縦軸……立体的に戦う、すなわちジャンプ!!

 飛び乗った!


「レキリア!! テンタクル・ツール・デバイスでホイールを分解してやろう!」

「オーケー、得意分野だ!」

「オ前モ転生者ニシテヤローカー!!」


 暴れるなよ……慎重に触手を伸ばして……よし、辿り着いた!


 アレとかソレとかをネジネジして……ポイッ。


「ホイールを失えばただのスクラップだ!」


 更に、上から体重を調整して、横転させる。


 ゴロン、ゴロン、ゴアシャァアアアアン!!


 横転した巨大トラックが、砂地に大きな轍を作る。

 トドメだ、バルムンク!!

 運転席に突き立てる!!



 ――と、思ったら。


「オレ!! 転生者ァー!!」


 なんだよ、その叫び声……じゃなかった!!

 運転席がジェット噴射で射出され、空中に発生した赤黒い魔法陣のゲートに取り込まれた!


「くそ、よりにもよって、一番野放しにしちゃヤバそうなやつを仕留め損ねた……!」

「気を落とさないでください。きっと、あれだけの性能を持つレヴノイドなら、なにか重要な拠点を守っている可能性があります。

 それにしても、頭のないレヴノイド……あれもかつての故郷で見覚えが……」


 なら、絶対に次は倒さないといけないね。


「探そう」

「ええ」


 決意を新たに、俺達は荒野を進む。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ