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第13話 出現! 雑動怪巨兵!

 ファンの皆様、長らくお待たせいたしました。

 どうにか勘を取り戻してまいりました。


 名残惜しかったけどお別れを済ませ、俺達は南の島々を後にした。

 居心地はいいかもしれないけれど、ずっといる訳にはいかない。

 それは、エールズが一番よく知っている。


「ちょっと待った、あれは何だろう」


 ズームして遠くを見れば、そこにはゴミの山がまるで塔のように積み上げられていた。

 ただ積み上げただけじゃできないような形をしている……?

 あれは、何だ……!?


「ほぼ確実に、います(・・・)ね」

「だろうね」

「ああいう悪趣味なオブジェ作る奴は大抵ろくなもんじゃないよねぇ」



 ホバリングで速度を上げて接近してみる。

 あれ、意外と遠い……?

 距離の表示をオンにしてみると、どうやらゴミの山はかなり大きく、遠いようだ。


 よくもあんなに大きな……どこから集めたんだろう?

 それとも、元からあったのかな?


 なんてとりとめのない事を考えていたら、いきなり足元のゴミが盛り上がって飛び散った。


「うわ!?」


 き、汚い!

 と思ったけど、全部これ産廃ばかりだ!


 そして土煙から現れたのは……


「ヒャハァー! オイラの名前は、ちらっしー! よろしくらっしー!」


 ……!?


「いや! アウトでしょ、それは!」


 “雑動怪巨兵ちらっしー”


 安直とかそれ以前に、アウトだよ!


 微妙に灰色っぽい眼球に雑な塗りで明後日の方角を向いた黒目、テンション高すぎな笑顔!

 そして怪しすぎる挙動!

 どう見ても何から何まで全部アウトです、本当にありがとうございました。


「オイラ思うんだけど更新が滞った挙句、安易なパロディに頼ったらそれって作品として終わってるんじゃないからっし!」


 よし!

 何の話かわからないぞ!


「何を言ってるのか皆目見当付かないけど、なんかこの世界を丸ごと否定したような気がするから倒していいよね?」

「そんな意味不明な理由で命のやり取りをするとか、今時ディストピア作品でもそんな事しないらっしー!」

「ところで、このゴミの山は? 君の仕業じゃないのか?」


 しばらく固まるちらっしー。

 そして、いきなり上半身を前後にグネグネし始めた。


「WRYAAAAAA! そこに気づくとはお前まさか天才らっしー!?」

「いや名前見れば解るじゃん……」


 とか言っている間にドロップキックが飛んできた。

 俺は、横に跳んで避ける。


「ヒャッハー! ……もっと捻れよお前ェー。ヴァルハリオンとか安直な名前しやがってよォー」


 いきなり素に戻った!?

 この前のフライングデッドマン号といい、テンションの落差を芸風にするのやめてもらっていいかな!?


「オォ!? 反応に困ってるらっしー!? お前の貧困な発想じゃそこまでが限界らっしー!」

「明らかにパクリなデザインのやつが何を言うのか」


 ここでコックピットに座る二人が、不安げな表情をする。

 いや、さっきからちょくちょくこんな顔をする。

 特に敵のレヴノイドのデザインについて言及した時に。


「あの、勇者様。先程から何の話をされているのか、内容がよく解らなくて……」

「ウチもちょっと、専門外の話だから……」


 ごめんね。

 そもそも転生者って事を話すべきか迷ったままだ。

 けれど、でも、いつかは言わないと解っているけど……今は、その勇気がない。


「そのうち伝える――よ!」


 だから今は、ロケットパンチ!

 大抵、考え無しに放っても通用しない。

 これは牽制だ。


「ヒャーッ!」


 上半身をグルグルとひねって、ちらっしーは避ける。


 百裂ロケットパンチ!


 動きをちょっと封じられれば問題ない。

 その間に、この縦横無尽に飛び回るのを倒す方法を探さないと。

 俺はホバリングで移動しているから、産廃に足を取られるなんて事はないけれど……。


 ちらっしーは、しまいには踊り始めた。

 装甲の素材とかどうしてるんだろう。


「どんどん散らかすらっしー!」


 ……ポンポンと粗大ごみが宙を舞う。

 もしかしなくても、あまり時間掛けちゃいけないな。

 ここは先手必勝!


「目からビーム!」


 そして――薙ぎ払う!


「リンボーダンスで回避余裕でしたらっしー!」


 くそ、当たらないか!


「エールズ、レキリア。ちょっと知恵を貸して欲しい!」

「はい、勇者様。何なりと!」

「あれの動き、どうにかして止められないかな?」

「それは、えーと……」


 今までにないタイプだからなあ……どうしようかな。

 流石のエールズも、ノウハウのない相手では対処法が思い浮かばないようだった。


「そういえばフライングデッドマン号のアーティファクトは何だろう?」


【ウルトラロングレンジボイス】

 タイプ:アクティブ

 よく響く声にて。

 よく響くよう歌いたまえ。

 よく響く音にて。

 よく響くよう叫びたまえ。


「……」


 あー、これはちょっと。

 あまり役には立たないかな?


「ウチ、思ったんだけどさ。ガシャドゥークと戦った時に使った鉄球なんてどう? アレをアレしてみよう!」

「その手がありましたか!」


 ちょっと待って。

 エールズだけで合点しないで欲しい。


「俺にも解るように言って欲しい」

「あいつはゴミを散らかしながら踊るという能力みたいだから、そこに混ぜてみれば、虚を突いて攻撃できるかも、ってこと! どーよ、この天才的発想!」

「ありがとう! あとで梨の山盛りを買ってあげよう!」


 ゴミの山に、しれっと鉄球を混ぜる。

 撹拌されるそれを悟られないように、あくまで自然に、地面のゴミ山から浮いたかのように……。


「ほらほらどうするらっしー!? 防戦一方で手のうちようが無いみたいらっしー!」


 どうするもなにも、ぶつけるよ。

 鉄球を。


「ヒャッハー! そろそろトドメだらっしー! ゴミ汁、ブ――」


 ――ゴツン!


「……」


 柔らかいせいかな。

 結構めり込んだみたいだ。

 ちらっしーはビクビクと痙攣しながら、うつ伏せに倒れ伏した。


『怠惰の海に溺れ、ゴミに埋もれて死ぬがいい……!』


“アーティファクトを取得”



 淡い光が広がって、辺りを覆っていく。

 聖域だ。


 いかに聖域といえども、異物だったゴミを浄化するだけの力は無いみたいだ。


 けれど、何かが動かされた衝撃だろうか。

 ゴミの山が崩れて、そこから建物の壁が見えた。

 ここも、かつては街があったようだ。

 遠くのゴミタワーも崩壊した。

 あの辺りには、何があるのかな?


「よし。先を急ごう」

「ええ」

「そうだね! ついでに、ウルトラロングレンジボイスのアーティファクトをカスタマイズしよっかな」


 そういえば、アーティファクト改造は久しぶりな気がする。

 インスタント・リビングルームの時から、それきりだ。


「どんなカスタムを?」

「ふっふーん! 聞いて驚け……長距離通信装置だ!」

「いいねえ!」


 確かに、それがあれば便利だ。


「ついでに、今回のアーティファクトも確認してみよう」


【ダストシュート】

 タイプ:アクティブ

 読んで字のごとくゴミ箱を任意の空間に発生させる。

 ゴミの種類によって方式は変わるが、基本的にリサイクルが可能。

 なお投入時は、パネルにて処理の是非を問われる。


「……整理整頓は確かに大事だね」


 前向きに考えよう。



 ふ○っしー人気、すっかり落ち着いてきてしまいましたね。

 栄枯盛衰、もののあはれ、ですね……

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