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ぞんび少女は勘が良い(?)

「ころし屋さん。貴方、私の父をころす気でしょう。」











「_____は?」

昼。

仕事から紅蓮が戻ってきたのを確認し、御幸はテレビを消した。

仁王立ちして腕を組む。

どうやらお出迎えのようだ。


と思ったら、このセリフである。


「いやいやいやいや待て待て待て待て」

「どうしたのですか?待っても話は進みませんよ。」

「今のは返事しなくてもいいやつだよ!てかお前、俺が疲れて帰ってきたのにそれは

無いだろ!せめて冗談の一つや二つ挟んで、俺を和ませてからにしろよ!」

「ふむ。」


珍しく紅蓮の要望に応えようとしたのか、少し考えてから人差し指をたてた。

「あっ!空ニ麒麟ガ飛ンデルー(棒)」

「分かった話を聞こう。」

紅蓮は反省した。いや反正した。



「で?俺がお前の父さんをころすか、って話だったな。」

床の上にあぐらをかいてからそう言うと、御幸もコクリと頷く。


「あったりめぇだよ。これも仕事だからな。」


御幸(コイツ)には冗談も嘘も通じない。そう分かっていたから、あえて紅蓮は白状した。

「だから何だ?お前が俺を止めるのか?試してもいいが絶対無理だと思うぞ。」

「いえ、」

正座して御幸は首を横に振る。



「むしろ、協力しようと思いまして。」



「はっ…はあああああああああああああっ?!」

思わず立ち上がった。


「えっあっ、え?! そこは止めろよ!お父さんなんだろ?!」

「それは血縁だとそうなるだけで、私にとってはただの豚野郎です。」

「せめて人間に例えてやれ!」

こんなにツッコまれても、御幸はいっさい表情を変えぬまま紅蓮を見た。




「ころし屋さん、私、父にお母さんをころされたんです。」




「………え?」

悲しんでる風でもない御幸に、不器用な紅蓮はどう声をかけていいか分からない。



『目の前で母親が殺されても全く動じませんでした。』



「他の方はどう見えてるか知りませんが、いいお母さんだったんです。厳しいけれど優しくて、

どうしようもないくらいの心配性で。私がいじめにあった時も私以上にそれを

どうにかしようと努力していて。帰ってきたら、毎日抱きしめて、『お前は私の自慢の娘だ』

って何度も何度も言ってくれたんです。」


なのに、突然。


「家に着いた途端、お母さんの悲鳴が聞こえて、髪の毛を振り乱してこちらへ逃げて

きました。その後を父が薄く笑いながらおいかけていて、『あ、』って思ったんです。

それで丁度ころし屋さんが私をころした時みたいに、刺しました。」


『御幸、もうコイツは、お前には必要ない。』



全てを話し終えてすっきりした様子の御幸は、訝しげに紅蓮を見上げる。

「で、紅蓮さん。貴方ころし屋のくせになんで泣いてるんです?」

「うぇえ…っ」

「その泣き方、吐くんですか?」


ゴシゴシとコートの袖で拭うと、「俺そういうの駄目なんだよ~」と涙目で言った。

「仕事の時には無慈悲になれるからいいものの、テレビとかでやる被害者の両親が

泣きながらインタビューを受けるシーン?もうあれ、ハンカチ無しじゃ見れねえ!

だから俺が犯人の事件がニュースに上げられたら速攻でテレビ消す。」

「ふむ。」

リモコンを取り、テレビを付ける。


『本当、あの子はなんにも悪い事はしてなかったんです!なのになんで…』

「うわああああああああやめろよおおおおおおおおおおっ!」

「あ~れ~リモコンが勝手に宙に……」


紅蓮より小さいくせに、器用にくぐり抜けリモコンを死守する。

こういう時だけ冗談が言えるのが御幸だ。


    *


「という訳で、協力人のイルスです。」

「ど、どうも……」

さきいかが欲しいと言われたので出掛けたら、毒殺者が入り込みました。


「え、えと……?」

「協力人の【ウイルス】です。」

聞こえなかったようなので正式な通り名でもう一度。

「おじゃましています。」

イルスはペコリ。


「私がアンデットだって事も伝えました。」

「おまっ……!」

「あ、大丈夫です。変な事に利用しようなんて思ってないし、まだ信じて無いので」


信じられないなら毒を飲んでやると本人に言われたのだが、イルスにとって

御幸は初めて出来た同世代の友達なので例えアンデットでも殺したくはないらしい。


「という訳で、ころし屋さん、キャモン☆」

「刺せと?」

向こうからこんなテンションで言われると全く殺意が湧かないなーと思う紅蓮であった。



「で、何で今呼んだんだよ。」

「作戦会議です。早くあの豚野郎を駆除してしまいましょう。」

「御幸……」


本来なら一番ショックを受けるであろう娘が、一番ノリノリで●しに行く。

イルスにはちょっと想定外の行動みたいだ。


「あ~…家への侵入はたやすいだろうな、御幸がいるし。」

「嫌です。あんな家、帰りたくありません。」

「………た、ターゲットとの接触もまあ出来るだろうね!みゆk 」

「嫌です。あんな豚野郎と話したくありません。」

「お前ホントに殺る気あるんだよな?」



………多分、簡単にはころせない。この三人だと。



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