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ぞんび少女は話を聞かない。

「なんですか、いきなり外に連れ出して。」


少女…御幸は突然 立派なドレスを着せられて、たいそう不機嫌なようだった。

顔には出てないが、なんとなく分かる。


「ああ、折角だから行きつけのバーに連れて行こうと思ってな。」

「てっきり監禁されるのかと思いました。」

そう言うと、紅蓮は悪戯を仕掛ける子供のようにニヤリと笑った。


「その内、すぐに監禁されたくなる。なんてったって犯罪者が集う裏バーだからな。」


「…………ふーん。」

「えっちょっ反応薄いな?! もうちょっと不安げな素振りを見せてくれると

嬉シインダケドナア~?」

「だからいったじゃないですか、私は何事にも動じないのです。」



※諦めました。



そのバーというのは案外近くて、マンションからちょっと歩いたビルの地下にあった。

看板を見て首を傾げる。


「【BLACK-RABBIT】ですか…なんか……アレですね。」

「それ以上は言わないでやってくれ。俺もついさっきの事を思い出す。」

「厨二くs」

「それ以上は言わないでやってくれ。」

念のため二回言った。


「さて、少女よ。」

「御幸です。」

「どこもそうだが、このバーには当たり前にルールってモンがある。

これを守らないと……最悪、刺されるぞ。」

「私は別に平気ですけど。」

「お前はどちらかというと兵器だよ……あと、アンデットだって事は絶対言うなよ。

ナニに利用されるか」


これだけは素直にコクンと頷く。この子は他より数段(さと)い。

紅蓮は少しだけ微笑むと、立ち上がってドアノブに手を掛けた。


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


【ルールその1:他の客とは話さない。

        向こうから話しかけてきた場合は例外である。】


「………出だしから色々矛盾してますが。」

「うっせー。ルールなんてそんなモンなんだよ。ほら、行くぞ。」

細い階段を下りて二つ目の扉を開ける。

大理石のようにすべすべした真っ赤な床と、真っ黒なカウンターが目に優しくない。


(やっぱりスゴク見られてますね…子供は珍しいという事ですか。

向こうに明らかに人じゃないモノがいますが話しかけませんよ。話しかけない

話しかけな……)


「よっお前ら!久しぶりだな!」

「ルールはどこへ飛ばしたんですか紅蓮さん。」

そのツッコミの声は悲しいかな、悪党達の声にかき消されてしまった。


「紅蓮!そのオジョーチャンはどうしたんだよ?もしかしてロリコンに

目覚めたのか?!」

がっしりとした体格の、瞼に傷跡の残った男性が親しく話しかけてくる。

「違ーよ、こいつは人質。目の前でナニが起きても動じないって性格だからな、

俺好みに調教してやろうと思って」

「エッ何言ってるんですかロリコンですか変態ですか調教師なんですか?」

「な?怯まないだろ?」

そう言うと悪党達もドッと笑った。



【ルールその2:必ず飲み物は注文すること。】


「よっッマスター。」

「お久しぶりです紅蓮さん。いつものですか?」

「ああ。っと御幸は……」

「オレンジジュースでいいです。マスターさんは普通の人なのですか?」


単刀直入。

御幸は遠慮という言葉を知らない。


「ははっ随分と可愛い子ですね。普通の人と聞かれると答えにくいのですが…まあ、

優男だと思ったら大間違いだぞっていう策略ですけど♪」

「案の定。やっぱりそうなんですね……」

「おっと勘がいいですね。まあ此処にいればバレますか。」


アルビノのマスターはケラケラと無邪気に笑う。

でも笑っているのは顔だけで、目は獣のようにギラギラと輝いているのは御幸

でも分かった。



「……あと店内での犯罪行為はしない、揉め事は起こさない、だな。」

「悪党バーのくせに法律はちゃんと守るんですね。」

「まあそうでもしないと店内でもふつーにコロシをする奴らもいるからなー。」

「…………。」


色々アヤシイ犯罪者達にほっぺを引っ張られ、未成年なのに酒を差し出され、

クスリなんかも勧められた。可愛がってる事は分かるがやっぱりちょっとオカシイ。


「紅蓮さん紅蓮さん。」

「あ?何だよ。」

ようやく周りの悪党も去って五分、クイクイと御幸が裾を引っ張る。

「皆さん子供だから珍しいみたいな目で見てますが、あの子も子供ですよね?」


一人、カウンターの隅に座っている少女の背中を指す。

フードをすっぽり被っていて顔を分からないが明らかに御幸より年上くらいだ。


「ああ……あいつも犯罪者だよ。“ウイルス”って通り名で、毒殺が主だ。」

そこまで言って思い出したように続ける。

「此処は基本仲は良いが、あいつは話しかけるなよ。毒でも盛られたら………」

「はじめましてウイルスさん。」

「聞けっ!」


ピョコピョコと紅蓮のもとを離れて隣の空いている席に座る。

ウイルスという名の少女は大層驚いたようで、大きく目を見開いていた。


「君、なんで僕に____ガスマスク付けてるなんて異常だとか思わないの?」

顔全体を覆い隠すガスマスクに手をやる。

どうやら常識人のようだ、と御幸はそっちに安堵した。


「別に…どうせ殺人鬼を狩る殺人鬼なんかもいて、そいつらは標的(ターゲット)と同じ

手段を使って殺したりするから付けてるって感じでしょう?」

「…………君、一体何者?」

いぶかしげな声に「君じゃなくて御幸です。」と答えた。


「何者と言われても、此処はそういう人達が多いんじゃないですか。」

「いや…でも御幸は一般の人でしょ?」

「家がちょっとワケアリなんです。」


まだ何か言いたげだが、それを遮って御幸がこう提案した。

「同い年だし、いちいちウイルスさんって言うのもアレなので“イルス”って呼んで

良いですか?」

「通り名を略しちゃうの?!」



犯罪者達にとって通り名は勲章であり、どんなに長くともしっかりと称えるのが

常識だった。

____でも残念、そもそも死という常識を覆した御幸にはそんな世界の常識なんて

通じない。



「あ、そうだ。会った早々ちょっとお願い事しても良いですか?」

「ん?なに依頼事?」

「いえ、本当にちょっとした“お願い事”です。」

コショコショと耳打ちすると、イルスの目がまた見開かれていった。


「_____君、本当に何者なの?」


席を立った御幸はくるりと振り返って無表情のままこう言った。



「ころし屋さんの人質で、そこら辺にいるただの動じない少女です。」



ちなみに「お前は兵器だよ…」っていうのは『平気』って変換しようとしたら

『兵器』って出てきて「ほう」と思ったので使いました。

日本語ッテ ムズカシイナァ~(棒)

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