隠された真実
それからなんだかんだで色々あり、カノンは王宮(現在はメル魔王占拠中)で介抱されていた。
「カノンさん、お気づきですか?」
応急処置などの世話をしてくれたのは黒髪のツインテールの女の子、ジャスミンだ。
「ジャスミンさん、色々ありがとうございます。大丈夫です。」
レオたちが立ち去ってからまだ3時間ほどしか経っていないが、もはや足取りは掴めていないらしい。発見は難しいとのことだ。
「カノンさん、着ていた服が乾いたのでここに置いておきます。メル様より、準備が出来次第話があるから来てほしいそうです。私、ここで待機していますので、着替え終わりましたらお声かけください。」
言われた通りカノンは服を着替え、ジャスミンの案内で応接間へと出向く。ふと、外を見ると辺りは真っ暗だった。
「現在は真夜中ですからね。もう3〜4時間したら日が昇ってくるでしょう。」
カノンがレッドホース家から連れ出されて随分経つ。みんなが心配して騒ぎになっているのではないか。
木製の豪華な扉を開けると赤い絨毯がよく映える玉座の間に着いた。玉座には我が物顔でメルが腰掛けている。
「あっ、カノン。体の方はもう大丈夫なの?」
大丈夫かと聞かれてもカノンの怪我自体は軽い打ち身程度なので大したことない。
「うん、それよりもメルは大丈夫?」
あの時、メルは自力で立つのがやっとなほどだった。カノンよりも重症だったはずだ。
「大丈夫、大丈夫。ちょっと無理しすぎただけだから。」
とメルは笑い飛ばすが、ジャスミンにとっては大丈夫じゃなかったらしい。
「大丈夫な訳ないじゃないですか!夜の魔力が補充できない環境で2ヶ月近くも過ごしていたんですよ!私だってまだ2週間ですが、かなり辛かったんですからね!それに加えて、あの魔力の放出!倒れて当然です!」
あー、わかった、わかったとメルは受け流し、話題を変える。
「カノン。あなたは私たちが思っていた以上に重要人物みたいね。たくさんの説明を受けてもらうことになるわ。」
本当は話すつもりなかったんだけどねとメルは付け加える。
「メル様。ハットリ様と連絡がつきました。」
兵士が持ってきた水晶玉をジャスミンが受け取り、メルに手渡す。兵士は敬礼して退出していった。
メルは水晶に向って二言三言話した後、ハットリがしたように画面を大きくして映し出す。
「ハットリ王。夜分遅くに申し訳ない。緊急事態なの。」
幾分か寝癖が目立つが、昼間と変わらぬ姿のハットリが映る。隣にはジッピー、奥にはリンゴとグリコも控えていた。
「カノン!カノン!良かった〜。無事だった〜。」
「カノン!黙って居なくなるんじゃねーよ!心配したんだぞ!」
泣いて喜ぶリンゴと怒りをあらわにするグリコを見てカノンは不覚にも安堵してしまう。
「心配してくれて、ありがとう。ごめんね。」
感動の対面を邪魔したくはなかったのだろうが、ハットリは申し訳なさそうにゴホンと咳払いをする。
「あー、それで、メル殿。緊急事態と聞いたのですが。」
メルは頷き、話を進める。
「えぇ。今、問題となっている結界破壊の首謀者と思われる2人、初代両国王ダン・デイレオ及びエイクオンが私とカノンのところに接触を図ってきました。
その時に首謀者の2人の目的が発覚。同時にここにいるカノンが昼の初代国王ダン・デイレオの娘であることが判明。
以上を踏まえて、今後の対策を早急にとる必要があると思い連絡した次第です。」
ハットリは深刻そうな顔をし、リンゴとグリコは理解できないという表情を見せる。
「えっ、メル。私のお父さんダンディ・レオって名乗ったんだよ。初代国王様ではないんじゃない?」
「あー、それはね。ちょっと色々と事情があってね…。」
「まずは初代国王達の話からしないといけないみたいっすね。」
メルとハットリは少々浮かない顔で頷きあう。
「なんか話しにくいことみたいだな。」
グリコが言うとハットリは目を伏せ答える。
「いや、この話は、実はっすね…。国王に就任した時に聞いたことなんですよ。俺もまだ信じられないことなんすよね〜。」
「というか、えっ?初代国王が接触を図ってきたって、会ったってこと?えっ、生きてるの!?」
混乱するリンゴにメルもハットリも困った顔をする。それに畳み掛けるようにジャスミンとジッピーが強めの語尾で質問を重ねる。
「メル様、エイクオン様はともかく、ダン・ディレオ様といえば昼の国の勇者なのではないですか?」
「ハットリ様、初代両国王の力を借りる為に2人を探しているのだと解釈していたのですが、まだ何か隠し事があるのですか?」
どうやら腹心の部下である彼女らにも知らされていないことがあるようだ。
メルは1つゆっくりため息をついて話し始めた。
「長い話になるわ。覚悟して聞きなさい。」
メル「まぁ、その前に夜も遅いしひと休みしてからね 笑」
グリコ「えっ!今話してくれんじゃねぇのかよ!」
メル「だって、私もカノンも戦ったばかりで疲れてるし。」
ジャスミン「そうですね。夜更かしは美容の敵です。すぐに寝室を用意いたします。」
カノン「えっ、えっ?」
メル「あっ、ちょうどいいからハットリ王達、こちらへいらっしゃい。水晶玉で話すの大変だし。」
ハットリ「いや、メル殿にとっちゃ朝飯前じゃないですか!…あっ!」
リンゴ「…切れちゃった。」
開いた口が塞がらないハットリたちをジッピーが華麗なる鞭さばきで馬車に詰め込んで送り出したのであった。