侵入
動揺、焦燥、驚愕…
そんな視線を背中で受け止めながら結界をくぐり抜けていく。
(目立たないようにしようって決めていたのに。)
そう思いながらメルは顔をあげる。上には青い空、下は整った街並み。しかし、足元の王宮には黒い雲。さらに目前には飛んでくる人…
「えっ、人??」
かわす暇はない。メルはとっさに防御力上昇魔法を纏い、衝撃に備える。
「グフッ…」
「ウギュ…」
双方短い呻き声を上げ、黒い雲の中へと落下して行った。
「イッター…。ここどこ〜?」
バッジにより転移魔法を発動したカノンたちは王都の上空を飛び越えてきた。
「何かにぶつかったような衝撃があったんだけど…」
頭を押さえ辺りを見渡すと…
「何だ、これ…。魔王城とか…??」
黒い雲、紫の空、頭上を飛び交う黒いガーゴイルたち
まるで絵に描いたような怪しい王宮が目の前に建っていた。
「それより、君たち。そこをどいてくれないかな。」
「それから、何故上空を飛んで来たのか教えてほしいところね。」
カノンたちの下敷きになるようにウィローが、一歩離れて呆れてるような怒ってるような顔をしているメルが立っていた。
3人は慌てて謝りながらウィローから降り、2人に状況を説明した。
「……。はぁ!?1人分の転移魔法を3人で使おうとした?!重力オーバーで空間転移出来るわけないじゃない!」
「むしろ、メルくんにぶつからなければあのクリスタルコロシアムにぶつかってたことになるのか。カノンちゃんたち、幸運と言うべきかなんと言うべきか…。」
ウィローの言葉でやっとことの重大さを認識したのか3人の顔がサーっと青くなる。
「クリスタルってやっぱり丸太より痛いかな…。」
「ぶつかってたら怪我程度じゃ済まないかもね…。」
「てか、俺らなんで今怪我してないんだ?」
グリコの質問に首を捻るカノンたちを横目にメルとウィローは話を進める。
「ウィローさん、ここは王宮ですよね?何があったんですか?」
「私にもわからないんだ。ただ、門をくぐるまではいつもの王宮と変わらなかったんだが、王宮の敷居をまたいだ途端こうなって…」
ビービービー!
ウィローの話途中で耳に痛い警告音が流れる。それと同時にカノンたちの背後から人影が向かってきた。
「侵入者発見!こっちだ!」
その様子を冷静に見てメルはフードを被りなおす。
「見つかったみたいね。」
「えぇ〜!早く逃げなきゃ!」
一方のカノンは慌てて立ち上がる。
ひとまず、カノンたちは追っ手から逃げるために走り出した。
「ウィローさん、王宮には詳しいのですか?」
「まぁ、一応貴族として出入りさせてもらってるからね。」
「では、正面入り口でも裏口でも良いので中に入れるところまで案内してください。」
わかったとウィローは先陣切って走り出す。
パシュッ
「えっ、え〜!あいつら銃を持ち出しやがった!」
乱射される銃に当たらないことを祈りながら走る。ウィローが指し示した先に小さな扉が見えた。
しかし、目の前からも敵が現れる。
「しまった!囲まれた!」
扉まで走れば10秒もかからないだろうが、無理に突っ切れば怪我人が出るだろう。
「仕方ないなぁ。後ろは私が引き受けるから、前をどうにかして扉まで行くんだよ。」
メルはカノンたちに背を向け魔力を集める。
「どうにかって、メルは大丈夫なの?」
カノンが質問してる間にも敵は近づいてくる。その様子を見てメルは振り向かずに言い放った。
「人の心配より自分の心配をした方がいいよ。中は敵だらけの可能性が高いし。それを突破してこうなった元凶を叩かなきゃならないんだから。」
こうなった元凶?
そう質問しようとして口を開きかけた時、後ろから腕を引かれる。
「カノン、早く行くぞ!」
「メル、また後でね。」
いち早く状況を理解したグリコとリンゴはそれぞれの武器を取り走り出す。
グリコに手を引かれ扉に向き直ったカノンも、まずは目の前の敵に集中すべく、剣を取った。
グリコ「転移魔法に重量オーバーとかあったんだな…」
リンゴ「そうだね〜。重たい人ほど魔力が必要ってことになるね〜。」
カノン「ってことは!軽ければ私でも簡単に転移魔法使える…!?」
リンゴ「カノンは転移魔法使えるようになりたいの?」
カノン「もちろん!だって、そうしたら旅してても毎日チャコやポプラに会いに行けるし(≧∇≦)」
グリコ「いや、それもう旅じゃねーし!」
リンゴ(移動距離が長くなるとそれだけ魔力必要になるけど…。)
メル(行き先をコントロールするの大変だから結構難易度高い魔法なんだけど…。)
リンゴ&メル(夢壊したら可哀想だから、言わないでおこうかな…)