魔界の王様
場面が大きく変わり、夜の世界が舞台になってます。
ここは魔王城。
魔界と聞くと闇にのまれた暗いイメージになってしまうが、人間界と同じく昼も夜もある。城も大きくはないが、人間界と同じような普通の城である。
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メープル、ボブ、アイルー、ジャスミン、キナコヘ
しばらく留守にします。城の運営や管理はメープルに、軍の管理や統率はボブに任せます。
あとはよろしく!
魔王より
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メープル、ボブ、アイルー、ジャスミン、キナコは魔王の一番の側近たちである。5人は会議室のような一室に集まっていた。
「こんなものが魔王さまの部屋にありました…。」
腰くらいまである黒髪をツインテールにしているジャスミンが持ってきたのは1通の手紙、いや紙切れだった。
「魔王さま… 今、魔界が大変なこの時に…。」
手紙を読んでブラウンのポニーテールが逆立つくらいに怒りをあらわにするメープルを城の天然癒しキャラ、キナコがなだめる。
「まぁまぁ、魔王さまのことですから、ただ遊んでるだけではないと思いますよ〜。」
魔王さまは昔から城を抜け出したり、イタズラしたりすることが多いが、実は意味のある行動だったということが多々あった。
「しかし、魔王さまがいないと知れば魔族を抑えるのが難しくなる。」
重たい鎧に身を包んだアイルーは頭を抱え、難しい顔をした。
魔界と人間界は5000年前に交わされた不可侵条約の時に結界により分けられたが、それを良しとしない一部の魔族が人間界へ無理やり行こうとする。無断で人間界へ入ったものは討伐されてしまっても仕方ないのだが。
アイルーは結界の警護及び修繕の総指揮を任されている。少しでも人間界に行く魔族を抑えようとしているのだ。
「これ以上結界を壊されると修繕が追いつかなくなる。魔王さまがいないことを悟られるわけには行かないな。」
魔王さまが脱走するのは初めてではないのだが、5人の中で一番長く勤めているボブも今回は困り顔だ。
魔王さまは1人で国ひとつ落とせるくらいの力を持っていることは魔界中の人が知っている。事実、軍の猛者たち100人を相手に1人で勝ってしまったことがあるのだ。
「私たちは見た目あちらの人間と変わりませんし、違うとすれば夜属性の魔力で成長が遅く、長生きなことくらいです〜。魔王さまは強いですから、万が一、人間界に行ってても殺されはしませんよ〜。」
などとキナコは言うが、人間界に行っていたら条約のこととか戦闘で民間人を巻き込んでないかなど厄介ごとがたくさんある。しかし、魔王さまなら人間界に人知れず紛れ込むくらい造作もないことだと知る部下たちは口を開けずにいた。
夜属性の魔法は静止の魔法と呼ばれているが、魔界ではもうひとつ別の名で呼ばれることがある。
"退化の力"
夜属性の魔法は動きを止めたり、緩やかにすることが主な力だ。その魔力が人体にも影響を及ぼしているようで、魔界の者たちの平均寿命は約1000年。現在の最高年齢は2037歳である。
しかし、この魔力は行き過ぎると退化することがある。その一環が獣人化や獣化である。この症状は魔法を使うかどうかに関わらず、魔界に属するものなら誰にでも起こりうる。側近たちの中ではキナコの頭に犬の耳が、アイルーには猿の尻尾が出ている。獣人化するとその獣に特化した能力が身につくが、完全に獣になってしまうと言葉や知性が失われる場合がある諸刃の剣である。ほとんどの場合、一部の獣人化で収まるので能力を活かし、生活に溶け込んでいる。しかし、獣化を恐れる一部の魔族たちが魔界から逃げだそうと結界を壊していくので問題となっているのだ。
さらに、獣人化したものが人間界に行くと、活動性の魔法による影響なのか、急激に獣化してしまう例があると報告が出ている。人間界で急激に獣化した場合、凶暴性を強く示し、人だった面影も残らず暴れるようになるという。
全ての獣人がそのような獣になるわけではないのだが、研究が進んでいない以上、むやみに人間界に行くべきではないというのが魔界の方針となっている。
「魔王さまに任された以上、やるべきことはやらねばならないな。」
長く重い沈黙を破ったボブはやれやれと軍への指示を出す。
「アイルー、国軍の一部隊を預ける。これまで以上に結界の警護の強化を行え。絶対に結界は壊さないように。魔王さまがまだ魔界にいるならば結界から外に出さないように。
それから、軍の中でも獣人化があらわれてなく、なるべく若い人材を選んで魔王さまへの使いとして人間界に出そう。」
異議はないようだ。その若者たちが魔王さまを見つけられるとは思っていないが、他に策がない。
「キナコ、城内及び魔王さまと縁のあるものにあの人が何をしでかそうと動き出したのか探りを入れなさい。
ジャスミンは獣人化を抑える薬の処方の申請をお願い。人間界に行くものたちに持たせてあげましょう。」
メープルも冷静に指示を出す。魔王さまが見つかるまでの間、この5人で切り盛りするしかない。
「くれぐれも魔王さまが留守であることは勘付かれないように。」
読んでくださりありがとうございます!!
まだまだ続きますので次回もお楽しみに(⌒▽⌒)
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