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王都到着!

 王都は本当に賑やかだった。

 市場での客引き、値引き、競り合い。メインストリートでのサーカス、楽曲団、曲芸師。ぼーっとしていたらすぐにはぐれてしまいそうなほど人でいっぱいだった。

 そんな王都の木陰でグリコとリンゴは休んでいた。


「もうぜってー、ジャンの運転には乗らねー!」

「うぅ、まだ揺れてる気がする…。」


「リンゴー、グリコー、飲み物買ってきたよー。大丈夫?」


 カノンは手にしていた冷たい飲み物を2人に渡し、リンゴの隣に座る。

 カノンたちはジャンのバイクに運ばれ、王都に着いたのだが、グリコとリンゴが車酔いで潰れてしまったためにここで休憩しているのだ。


「カノン、ジャンさんはー?」


「お仕事してくるって言ってたよー。」


「はぁ?あの人仕事あんの?マジで?!」


「グリコ、さすがにそれは失礼だと思う。」


 たった2日間の運転でジャンはグリコに随分嫌われたらしい。カノンが突っ込んでしまうくらいに。


「それよりさ~、それよりさ~♪」


「なに?また無駄遣いしたの?」


「グリコ、冷たい!」


 実際、飲み物を買う分しかお金を渡さなかったのであり得ないとわかっているのだが。


「うーん?それで、どうしたの?」


 助け舟なのかなんなのか、ふわふわと力なくリンゴは尋ねる。


「うん、あのね!こんなの見つけてきたの!」


 カノンの手にあったのは1枚のチラシだった。


「武闘大会?」


「うん!それでね、これみて…かわいいでしょ!」


 カノンは元気よく指し示す。長い垂れ耳の白くて丸い動物が載っている。


「何それ?食いもん?」


「違うよ、クニクルスだよ!」


 カノンの言う通り動物の下には"クニクルス"と書いてあった。


 クニクルス

 もともと野生のラビラットをペットとして改良したもの。立ち耳や垂れ耳など様々ではあるが、長い耳を特徴としている。

 一般家庭用がほとんどであるが、最近は獣使いでなくとも扱える冒険者用ペットの開発も行われている。


「これ、ほしい!」


 ねだるような、期待するようなキラキラした目でカノンは2人を見つめる。

 チラシを受け取り、よく読んだグリコとリンゴは目を疑った。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~

  ギルド連合主催毎年恒例イベント

  "武闘大会"


  〈今年もあの英雄が帰ってくる!〉

  英雄を打ち負かし、新たな栄光を

  手にするのは誰だ!


  今大会の優勝賞品は王立研究学会が

  総力を挙げて改良したお助けペット

  "クニクルス"!

  かわいくて、賢いクニクルスを手に

  入れて冒険を楽にしよう!

  準優勝以下の賞品も王室が大奮発!

  参加するだけでも役立つ品ゲット!

  参加者は今すぐギルド連合へ(^o^)


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~



「カノン、これちゃんと読んだ?その…優勝商品!?」


「お前…優勝できると思ってるのかよ…。」


 そんな2人の様子を見てしょんぼりしながらカノンは言う。


「でも…参加登録してきちゃった…。」


「……そうなんだ。ん?えっ?」


 驚いて聞き返すグリコにカノンは説明する。

 新しい町に着くたびに冒険者はギルド連合に報告に行かなければならない。今回はグリコとリンゴが車酔いで倒れていたのでカノン1人で行っていたのだ。カノンが迷子にならないよう、グリコとリンゴはギルド連合の目の前で休んでいたのだが。


「ギルドでそのチラシ見てクニクルスほしいって言ったら大会出ますかって聞かれて、お願いしますって言ってきたの。

 2人の会員証もあったから2人のもお願いしてきちゃった…。参加費はギルドに預けてるお金からって…。」


「そんなんだ~。……はぁ!?」


 リンゴの驚きの声に一瞬通りの人の視線が集まる。カノンたちを少々いたたまれない気持ちにさせたまま、日常に戻っていく。


「そういうのって、本人がいないと出来ないんじゃないの?えっ、それに参加費??」


「2人がギルドの目の前で休んでたから、あの2人ですって言ったら了解ですって言ってたよ。参加費は1人銀1枚だったから大丈夫かな~って…。」


 ギルド連合の前で休んでいたのが裏目に出たようだ。ギルドに預けてるお金ならカノンにも自由に使えるし。

 なんだか他にも突っ込むところはありそうだが、あいにくグリコもリンゴもそんな元気はない。

 面白そうだし、お金払っちゃったみたいだし、まぁいっかと言うことで3人は大会に出場することになったのだ。


「カノン、その大会っていつから?」


 カノンはもう1度チラシを見て苦笑いする。


「えーっと…明日からかな?」


 優勝とかは諦めつつ、ジャンが戻ってくるまで武闘大会について話し合っていた。



 カノンたちが出場を決めた武闘大会は王都で行われるイベントのうち、最も賑やかなイベントである。ギルド連合が主催し、王家がバックアップするので参加者も参加賞品も豪華である。その豪華賞品を狙い、新米冒険者からベテラン冒険者まで様々な手練れが参加する。

 また、武闘大会は出場するだけで名前を売るチャンスである。指名依頼を狙って参加する冒険者や今後の路銀稼ぎのために旅芸人たちも参加しているので、参加者は毎年とても多く、予選から本戦まで1週間かけての大イベントであった。


「なんとか間に合ったぜ。今年はどんなバトルが待っているんだろうな~」


 期待に胸を膨らませる左頬に3本の傷を持つ男。


「優勝したら女の子にお酌してもらえるかな~」


 周囲の注目を集めながらのんびり歩く貴族のような身なりの青い騎士。


「王家が持ってるとは思っていたが、武闘大会の賞品として出してくるとは…」


 鋭い目で獲物を狙うようにチラシを見つめる者。


「なんか面白そうだな~。見つかってもなんとかなりそうだし出てみようかな~」


 興味本位で受付に向かう者。


 それぞれの思いを胸に集う武闘大会。今年も大騒ぎなイベントとなりそうである。

グリコ「武闘大会か…。出場するなら優勝目指すしかないな。」

カノン「クニクルスヽ(*'▽'*)ノ」

グリコ「負けねぇーぞ!」

カノン「私だって!」

リンゴ「そもそも、うちら予選さえも通過できるのかな…。」

グリコ&カノン「(´・ω・`)」

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