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もうひとつの戦闘

 このモナクスドムスでの出来事としてもうひとつの語らなければならないことがある。


 カノンたちが激しい(?)バトルを繰り広げる中、教会の裏口に向かう10人ほどの兵士の集団がいた。

 集団であるにもかかわらず、音もなく進む様子は只者ではないことを示していた。


「ノワルーナだ開けてくれ。」


 裏口にたどり着くと集団の1人がそっと戸を叩く。すると、ゆっくり扉が開き、


「グワッ!」


 扉から入ろうとした男が弾き飛ばされた。何が起きたかはわからないが、殺気立ち、各々武器を構える。そんな彼らの前にゆったりとフードを被り、長いローブを纏った小柄な者が現れた。

足元には修道士が2人倒れている。


「お主、何者だ!」


「名乗るほどの者じゃない。なんのために来た?目的次第ではここを通すわけにはいかないよ。」


少女のような声でローブの者は話す。男たちはその者を敵と判断したようだ。

1人が剣を抜き、ローブの者に斬りかかる。

その者はまるで受け止めるかのように片手を出す。


「なっ…にっ…!」


剣はローブの者にまで届かなかった。その者の手から握りこぶしひとつ分離れたところで止まる。引き戻そうとしてもビクともしない。

その者がまるでボールでも投げるように男を集団の中に投げ飛ばした。

さらに殺気立つ兵士たちは、みな剣を抜き、その者に斬りかかる。


「待て!早まるな!」


リーダーと思われる男が止めようと声を上げたが、時はすでに遅く、9人の兵士の剣がローブの者に向かっていく。


眠れ(ドムミーレ)


 少女のような声で発せられた魔法は9人の兵士を地面に倒していく。残された1人兵士は絶望に目を見開いて周りを見渡した。


「何をしたのだ…。いったい何者なのだ…。」


 残された兵士が震える声で尋ねる。そこに、一陣の風が吹き、フードがとれ、素顔が現れた。


「なっ、あなた様は…。」


「他の者は眠らせただけだ。命まで取るつもりはない。

しかし、お前がこの集団の長だろう。私の顔がわかるとはそういうことだと捉えていいんだな。何故ここにいる?」


「そ、それは…」


 その者はフードを被りなおし、一歩、また一歩と兵士に近づく。すると、兵士は急に圧力で潰されたかのようにその場に跪き、頭を垂れた。フードの者はその頭に手を乗せる。


「正直に話せ。目的はなんだ。」


 大きなプレッシャーのせいなのか、それとも何か魔法を使ったのか、震える兵士の口は真実だけを告げてしまっていた。


「運命の子"カノン・ハルモニア"を…抹殺せよとの命を受け…ここに参りました。」


 その言葉にフードの者は目を細め言った。


「やはり、そうか…。命令したのが誰かは聞かないが、彼女をここで死なせるわけにはいかない。これまでも魔物や罠で葬ろうとしたようだが、この私がいる限り、運命の星を散らさせはしない。」


兵士は返事をしない。伏せられた顔からは表情を見ることはできなかった。


「これからもカノンを狙うのであれば私が相手しよう。そう伝えるといい。」


 魔法を使ったのだろうか。兵士はその場にゆっくりと倒れる。

 そこへもう一度風がフードを吹き飛ばした。


「まったく、これじゃフードを被る意味ないじゃない。このローブ、気に入っているんだけどなぁ。」


 呆れながらフードを睨みつける占い少女・メルは呟いた。メルはひとつ大きくため息をつくと教会から離れるように歩いていく。

 ふと、立ち止まり振り返った。


「カノン、運命の日はまだまだ先なんだから、こんなところで死なないでよ。」


 砂ぼこりとともに風が吹くと、そこにはメルの姿も倒れた兵士たちの姿もなかった。

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