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目的と謎

「…敵将が来るよ。」


 デコポンの言葉に一同は表情を引き締める。

 7対1で負けるなんて思ってもいないが、大将を討ち取ればここの戦いは終わるのだ。ほどよい緊張感が張り詰める。


「紳士、淑女諸君、見事なものだ。あの大軍をたった7人で全滅させてしまうのだから。私はアギル・レメディオスだ。君たちを讃え、我らの目的を話そうではないか。」


 声の届くところまで来た敵将・アギルは武器は手放していないが、力を抜いてそう言った。

 グリコたちは誰一人口を開かずアギルの言葉を待った。


「君たちがここにいるということは奴の計画が漏れたということなのだろう。」


 その言葉にデコポンたちGクラスの面々は武器に力を込める。カノンの話によれば、彼らの狙いは大司教様の命なのだ。

 そんなデコポンたちの様子をアギルは鼻で笑い続ける。


「安心しろ。お前たちの大司教などに興味はない。我々の目的は世界の統一だ。それを担う運命の星を見つけるためにこの拠点が必要なのだ。」


「…世界の統一?…運命の星?」


 聞きなれない言葉をリンゴが繰り返す。それはこの場にいる全員が思っている疑問だった。

 その言葉に答えるべく、アギルは片方の口角を上げる。


「この世界には昼と夜がある。この2つを統合するのだ。運命の星とは……ガハッ!」


「喋りすぎだ。レメディオス将軍。」


「…っな!」


 話し途中のアギルの胸に手が突き出していた。その手が下がると、アギルは穴のあいた胸を抑え、両膝をついた。

 背後から小柄だが冷たく圧倒的なプレッシャーを纏った青年が姿を現わす。


「ビスケス様…。」


「ここにはもう用がない。騒ぎを起こしてすまなかったな。」


 ビスケスと呼ばれた男はそう言うと踵を返し、姿を消してしまった。


「消えた…?」


「それよりもあの男!」


 不可解な出来事に戸惑い、目を合わせていたメンバーを置いておき、パルルはアギルに駆けつけた。


「傷が大きい…。でも、まだ生きてるよ!」


 その言葉を聞いてデコポンも駆けつける。


「助けるの?ここを攻めにいた人なのに?」


「いろいろ知ってるみたいだからな。内通者についても証言してもらいたい。」


 リンゴの問いかけにコマチが答えたが、デコポンが訂正する。


「連絡は通信魔法だったみたいだし、知らないとシラを切られる可能性もあるから証拠にはならないかな。」


 ミルクが付け加える。


「でも、確かに気になること言っていたから、その続きは聞きたいよね。」


「そんなことより、人命救助!!」


 パルルに急かされ、デコポンはアギルの側に膝をつく。


「痛みで暴れるかもしれないから手足を押さえていて。」


 何が起こるかわかっているコマチはアギルの両腕を押さえ、戸惑うグリコも言われるままに両足を押さえた。さらにパルルが錬金術で作った留め具を装着させる。そして、デコポンの詠唱が始まった。


「母なる女神の慈愛を持って汝に眠る治癒力を引き出さん。サナーレ(強制治癒)!」


「グッ!グワァー!」


 デコポンの魔法による光の粒がアギルの傷口に集まる。すると同時にアギルが耳をつんざくような悲鳴をあげ、暴れ始めた。

 コマチとグリコは力一杯アギルを抑え込む。


「なっ、なに?!何が起きてるの?」


「治癒魔法は傷を負った本人の治癒能力を高めて傷口を塞ぐものなの。どんな大怪我でも治せるけれど、魔法の力で無理に再生しようとするから体に激痛が走るの。」


 耳を塞いで隠れるノコノコを背中で庇いながらミルクが説明した。


「傷が小さければこんなに辛くはないの…。大きくなればなるほど怪我した人の負担は大きくなる…。痛みのショックで命を落とす場合も…。」


 ノコノコもミルクの後ろから解説を加えた。

 アギルの声はすでに音にもなっていない。辛い顔でうつむき固まる女子たちと必死の形相で敵将を囲む男子たち。

 時はゆっくり流れていった。

 そして、アギルのついに傷口に集まった光はみるみる小さくなっていった。この時にはアギルは気を失い、目を閉じていた。


「デコポン、おつかれ!」


 汗を拭い、コマチはデコポンの肩を叩く。アギルの傷口はどこにあったかわからないくらい綺麗に塞がっていた。

 ショック死という事態にはならなかったようだ。


「で、この人どうするの?それから周りに転がってる雑魚たちもだけど。」


 ほっとした表情でパルルが聞く。周りに倒れている人たちもこのままにしておくのは問題だろう。


「一応、敵だし、情報ほしいから捕縛して連れて行くかな。でも、全員はいらないよね。」


 デコポンが立ち上がりながら言うと、ノコノコがわかったよ〜と言ってミルクとともに走っていく。

 一番近くにいた兵士に声をかけた。


「兵隊さん、兵隊さん、大丈夫?」

「兵隊さん、目を覚ましてるのはわかってるのよ。起きなさい。」


 ふわっとしたノコノコの言葉というより、鋭さのあるミルクの言葉に反応したようだ。兵士は俊敏な動きで正座をする。


「兵隊さん、隊長さんは捕まえたから、みんな帰っていいよ。」


 ノコノコは兵士の前にしゃがみ視線を合わせながら話す。


「全員帰っちゃったら情報もらえないでしょ!2〜3人は置いてってね。」


 立ったまま兵士を見下ろすようにミルクが言う。

 それぞれの言葉に兵士は「はいっ」と緊張気味に返事していた。

 返事を聞き、ノコノコは立ち上がる。


「もう、攻めてきちゃダメだよ〜。次は手加減できないから。」

「次に攻めてきたら、命持って帰れると思わないことね。」


 息ぴったりの双子の手にはそれぞれの武器の柄が握られている。双子が発する謎の威圧に兵士は慌てて周りの兵士を起こし始めた。


「あの双子すごいね〜。」

「敵に回したくないタイプだよな。」


 リンゴとグリコの感想は的を射ているようで、デコポンたちは苦笑いで返事をした。

 ミルクとノコノコが適当に引っ張ってきた兵士2人と隊長アギルを連れて、一同は教会に戻ることにした。

グリコ「あれ?俺、全然活躍してない?!」


リンゴ「"いや、よく考えたら主人公たちってちゃんとした教育受けてないから弱いんだよね〜"って作者が言ってたよ。」


グリコ「つまり、俺らは…弱いってこと?」


リンゴ「そうなるよね〜。ほら、次の話の邪魔になるから退場、退場。」

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