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敵兵団、殲滅

 あぶない!!


 リンゴとグリコの叫びは双子にとってとてもゆっくり聞こえたことだろう。

 敵を見ることもなく2人は左右に分かれる。そのまま、ノコノコは流れるような動きでサーベルの背を3人の敵の腹に次々と打ち込む。まるで踊っているようであり、力む様子もなかった。


「くっ!」


 しかし、兵士たちは双子がいたところから2mほど離れた位置まで戻されていた。不意打ちしたのは兵士の方だが、まさかの攻撃に対応できなかった悔しさが込み上げる。しかし、そんなことを考えている間に左側からの殺気をとらえた。


(イザナ)え…宵寝(ヨイネ)!」


 太陽を背にロングコートをはためかせ、大きな鎌を振り上げた影がある。兵士たちは幻想的なその光景に目をとられ、鎌が頭上を通過した瞬間、糸の切れた操り人形のように倒れてしまった。


「ミルクもノコノコも…強い…。」


 双子は汗ひとつかかずに戻ってくる。そんな様子にリンゴとグリコだけでなく、敵軍も動揺しているようだった。


「えっ、ミルクってそんな鎌持ってたの??」


 ミルクの身長よりも大きな鎌をみてグリコが問う。


「えっ、これ?折りたたみ式なんだよ。」


 笑顔で鎌を折りたたんでいくが、手のひらに収まるくらいまで小さくなるって…。


「小さくなりすぎだから!」


 あははは〜と戦場に似つかわしくない笑いが沸き起こる。

 デコポンがゴーレムを通じて敵将の言葉を伝えてくれた。


「遠慮はいらない、全力で行けって言ってるよ。」


 緊張感のないデコポンの言葉を聞き、リンゴとグリコは敵軍に目を向ける。砂煙をあげてなかなかの大軍が押し寄せて来た。


「うーん、ざっと200人ってとこかな?私も頑張らなくちゃ。」


 パルルが手を地面につけて呪文を唱える。


「土より産まれし鉱物たちよ。今ここに命を持って我を守護せよ。土の戦神(ケレオス)


 パルルによって描かれた魔法陣から強そうな銀色の鎧が現れた。


「なんだ、あれ!?」


 目の辺りに光が宿ると鎧はゆっくり立ち上がり、驚きの声をあげたグリコの方へ向いた。


「ケレオスだよ。ケレオス、あいつらを蹴散らしてきて。」


 パルルは元気よく敵兵団を指し示す。ケレオスは図体に合わない俊敏な動きで走り出した。


「あれ、土から作ったんだよな?1人で突っ込ませて大丈夫なのか?」


「もっちろん!ケレオスは錬金術で作った鎧戦士だよ。錬金術は材質変化を行うことができるの。だから、ケレオスは素材は土だけど材質は鋼だよ。そこら辺の兵士なら全然平気。」


 しかし、錬金術にも限度があるらしく、なんでもできるわけではない。詳しいことはパルルも勉強中だそうだ。


「あー、でもケレオスだけじゃ多勢に無勢だよね。ミルクたちも行ってきてくれる?」


「デコポンは行かねぇのかよ!」


 デコポンの指示にグリコが突っ込む。

 しかし、デコポンは僧侶なので戦いには向かないらしい。グリコたちが危険になった時の救助・治療と突破された後の防壁となることがデコポンの役目なのだ。

 ミルクとノコノコは笑顔で行ってきますと走り出した。


「私たちはどうしたらいい?」


 リンゴがデコポンに聞くとパルルが答えてくれた。


「ケレオスたちがほとんど片付けてくれると思うんだけど、それらをかわしてここに向かってくる人たちの相手かな。あいつが来てくれればいいんだけど…。」


 あいつとは誰なのかはわからないが、早速何人かこぼれ落ちてきたようだ。

 ケレオスの巨大な斧や双子の踊るような攻撃から逃れ、今度こそ町へ入ろうとやってくる。


「うう、やれるかな〜。」

「なんとかなる…と思う。」


 リンゴとグリコは少し緊張気味に武器を構える。

 別のところではデコポンやパルルも魔法や短刀で敵を捌いている。

 2人も負けてはいられない。


「"火炎弾(アグニショット)"」

「行くぜ!」


 リンゴの火の玉は敵に見事命中。グリコも敵の1人にまっすぐ斬りかかった。

 しかし、


「なんだ、こいつら。そんなに強くないな。」

「遊びはここまでだ。少し休むといい。」


 兵士のグリコとリンゴに襲いかかる。


「くっ!させるか!」


 グリコはリンゴを背中に庇い3人の兵士の剣を同時に受ける。

 なんとか均衡を保とうとするが、数の暴力に負け、じわりじわりと押されてしまう。


「このままじゃ…。」


 助けを呼ぼうにもミルクたちは遥か前方でさらに多くの敵を相手にしている。また、デコポンやパルルも少し離れたところで敵を相手にしており、手が離せる様子ではなかった。


「グリコ!」


 リンゴの叫びと同時に、3対1の競り合いに負けてしまったグリコが片膝をついた。その時!


「ぐわっ!」


 グリコたちにトドメを刺そうとする敵は何者かによる狙撃を受けた。グリコたちが顔を上げた時にはすでに気を失って地についていた。


「危なかったな。大丈夫か?」

「グリコ、リンゴ!大丈夫?!あー、コマチ!来るのが遅い!!」


 やっと敵を蹴散らし、パルルがやってくる。コマチと呼ばれた人は帽子をさらに目深に被り言う。


「ヒーローは遅れてくるものさ。」


「どうせ、二度寝してただけでしょ!」


「いってぇー。」


 コマチの決め台詞をパルルは平手で一刀両断する。それにより帽子が落とされ、コマチの顔があらわになった。


「ったく、パルルは攻撃的だな。ほら、前から敵だぞ。」


「わかってるわよ!もう〜。」


 コマチと呼ばれる赤髪の男は手にしている2丁の銃でパルルを援護する。

 コマチの出現により、敵兵の数は確実に少なくなっていった。

 呆気にとられているうちにミルクたちの方は片付いたようだ。


「これで、ラストだな。」


 コマチの打った銃が最後の兵士を打ち抜き、モナクスドムスを攻めようとしていた兵団は大将を残して全滅してしまった。

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