作戦会議
「よし、カノン。何があったか、順番に話そうか。」
グリコの言葉から始まったカノンの報告会。リンゴやデコポンの適切な質問やグリコとカイトの卓越な仕切りによってとてもスムーズに進んだ。
「…よし、これで全部だね。これを要約すると…。」
みんな眠たい目をこすりながらリンゴの言葉を待つ。もうそろそろ日が昇る頃だった。
「カノンは小太りの神官、多分アルノルド司祭によってあの部屋に閉じ込められた。その司祭は魔法通信機か何かで会話しており、口封じのためだったと思われる。部屋の扉には結界を張られ、カノン自身には喉縛りの呪をかけられた。
部屋を抜け出そうと考えた結果、窓から上の階に行こうとして、足を滑らせ、転落。偶然中庭に行った私たちに助けられた。」
グリコたちが中庭に向かったのは偶然だ。もしも、中庭に行かなかったらと考えるとカノン以外の4人はため息をついた。
続きはデコポンが引き受ける。
「ここからが特に重要なんだけど、カノンちゃんが聞いた話は大司教様を襲うために計画された最終確認の連絡と考えられ、閉じ込められた日から2日後の朝礼の時に実行されるとのこと。
さらに、何人かの修道士に何かを持たせたと言っていることから、修道士の中に協力者がいると考えられる。」
「確かにアルノルド司祭って言ったらバカ息子の一派の代表格だよな。それもあって、修道士の嫌われ者の1人のはずだろ?進んで協力してるやつなんていないと思うけど…。」
カイトが口を挟む。これにはデコポンも同意見のようだ。
「だけど、俺らで探している時、カノンは壁に剣を打ちつけたりして音を出していたんだろ?誰もそこを通らないとか音を聞いてないなんてあり得ないんじゃないか?」
グリコが言うことはもっともである。
「うん、だから何かしらの精神操作や本人たちが気づかない間に利用されているんじゃないかと思う。無意識下で操る方法もないわけではないから…。」
自己申告もできないのであれば、協力者を見つけるのは難しいだろう。
「アルノルド司祭を捕まえに行こうぜ。それではっきりする。」
カイトが立ち上がり、歩き出そうとすると、
「アルノルド司祭が首謀者だという確証はないよ。」
デコポンの言葉にカイトは足を止める。デコポンはさらに続けた。
「この時間だったらまだ寝ているだろうし、無理に起こしたらこの教会から追い出されるのはカイトの方だよ。」
じゃあ、どうするんだとカイトは席に戻る。デコポンは窓の外を見ながら言った。
「大司教様に命を狙われていることを伝えたところで、あの人笑って流しそうだし…。朝礼まであと2時間か…。」
窓から外を見ると一番高い塔に1から12の数字が書かれた大きな円盤と長さの違う2つの棒が付いているのが見える。長い棒は12、短い棒は6と書かれた方向を指していた。
「あと、1時間もしたらみんな起きるよな。とりあえず、大司教の爺様には伝えるとして、襲ってくる敵は外で待ち構えているよなぁ。」
大きなため息をつきながらカイトは言う。内部の協力者のあぶり出しと外敵からの防衛は同時進行になりそうだ。
5人は2組に分かれてそれぞれ行動することにした。
一方は大司教様護衛組。カイト・カノン。
もう一方は外敵防衛組。デコポン・グリコ・リンゴ組。
「こら、デコポン!なんで俺がじじいの護衛なんだよ!外で戦う方がいい!」
「知らない人いっぱいのところやだよ〜。リンゴ、代わろう?」
と言った反対意見もあったが、
「カイトは朝礼の出席数が少ないから。それに、魔法より剣の方が人の多いところでも使えるだろう?」
「今回のことに加担している人の顔はカノンしか知らないんだよ。カノンは朝礼に参加しなさい。」
と言うデコポンとリンゴの意見で組み分けは確定した。
外敵襲来まで…あと1時間40分。