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夢から醒めて…

「ここは…。」


 目を覚ましたクッパはゆっくりと上体を起こす。セブンとペンペンはクッパが目を覚ましたことに喜び抱きついた。


「俺は、一体どうしたんだ…。何か夢でも見ていたみたいだ。」


 クッパの言葉がここまでだったらカノンたちも改めて自己紹介をして、ここで起こったことを話し、状況を整理するという王道パターンに進めただろう。しかし、そうはならなかった。


「セブン、ペンペン、心配かけたな。またもう一人の俺が現れていたのか…。あいつは恐ろしい闇の力を秘めているからな…。2人とも怪我はなかったか?」


 カノンたち3人は目が点になり、言葉を失ってしまった。反対にセブンとペンペンは目をキラキラさせてこう言った。


「いつものアニキに戻ったー!」

「私たちは大丈夫だったよ!アニキこそ大丈夫?ご飯持ってくる?」


 カノンたちを置いてはしゃぐ彼らを見てカノンはつぶやく。


「まぁ、一件落着…かな?」


 リンゴも苦笑いながら、ちょっと心配そうに言う。


「本当に魔具は壊したよね?あれが素なのかな?」


 そんな中、グリコだけ、ちょっと待てと口を開いた。


「おいおい、危険なアクセサリーつけていて記憶がないのはわかるけど、もう一人のあいつって誰だよ!いつものアニキって、普段からこんな感じなの!?それに、闇の力どころかお前ら魔法使えんのかよ!それから…。」


 グリコうるさいとカノンに叩かれる。グリコの勢いに怯えた子どもたちはリンゴが慰めていた。


「セブン、ペンペン、ごめんね。クッパも大丈夫?」


 リンゴの慰めに3人が落ち着いた頃を見計らい、カノンは自分たちがここに来た目的を話し始めた。


「君たちがユースティティア盗賊団であっているのかな?私たちは盗まれたお金を返してもらうのと君たちに盗賊をやめることを説得するために来たんだよ。」


 その言葉を聞いて、セブンがバッと立ち上がる。


「盗まれる方が悪いんだ!俺たちが稼いだお金は返さないぞ!」


 ペンペンもクッパの手を握ったままカノンたちをキッと睨みつける。


「盗賊をやめて、どうやって生きていけと言うの?私たちから住む場所を奪っただけでなく、生きる手段も奪うって言うの?」


 事情を知らないカノンたちには返す言葉が見つからない。そして、ペンペンの頭にポンと手を乗せ、クッパが立ち上がった。


「ちょうどいい。俺と一緒にいたらお前たちまで闇に引き込まれてしまう。お前たちはこの人たちに付いて行きなさい。俺とはここでさよならだ。」


 嫌だよアニキ!と2人はクッパにしがみつく。だがしかし、


「ちょっと待てー!俺たちに付いてくるのはお前もだクッパ!3人とも警察に突き出してやる!」


 ちょっと、グリコ!リンゴがグリコをいさめようとしたが、それを振り切り、グリコは言葉を続ける。


「俺より年下のくせに勝手に闇に引き込まれるんじゃねぇ!盗賊をやめて生きていけないというなら俺が生きられる道を示してやる。俺の力でお前らに光の道を歩ませてやるよ!」


 そして、クッパに近づき、こう言った。


「お前のもう一人の人格が出てきても大丈夫だ。いつだって俺が止めてやるよ。だからこんなところに閉じこもってないで、一緒に来い。」

「ア、アニキ〜。」


 クッパは泣きながらグリコにしがみつく。


「ついに、俺は真の勇者に出会えたのか。しかも、教えた覚えのない俺の名前まで知っている。アニキは本物のサイコメトリー…いや、テレパスの使い手なんですね!一生ついて行きます!」


 もちろん、グリコは超能力者ではないし、名前を知っているのはクッパが名乗ったからである。クッパはアクセサリーを壊される前のの記憶がないので、名乗った覚えもないだろうし、名前を聞いた覚えもないのだから、不思議に思うのも無理はない。

 そんな情景を冷ややかな目でカノンとリンゴは見ていた。当然、グリコは超能力のことを否定すると思っていた。


「ハハハハハ!俺の能力については秘密だ。知りたければどこまでも付いて来い!」


 とかなんとか…。さすがに調子に乗ったグリコに少し引いたのかペンペンもカノンたちとともに一歩下がって見ていた。


「クッパアニキが付いて行くなら俺もバカアニキ…グリコ兄に付いてく!」


 とセブンもグリコを崇拝し始めたようだ。グリコ兄と呼ばれる前に聞こえた言葉は無視するとして、グリコはクッパとセブンから向けられる尊敬の目によくわからない決めポーズで応えていた。

 馬鹿騒ぎしている奴らは放っておき、カノン、リンゴ、ペンペンは夕飯を作って食べることにした。外は夜も深まっているだろうということで、一泊してから6人でノーステラに向かうことになった。



 そういえば…とカノンが思い出したようにペンペンに質問する。


「外で大きな鳥に襲われてたけど、何かあったの?」


 ペンペンは少し考えて、あぁと納得する。


「アルバトロスのことですか。あいつら私たちの持ってた金貨袋取ろうとしてきたんですよ。それで、私たちが砂とか石とか投げて反撃したら怒って仲間呼んじゃって…。囲まれちゃいました。」


 最後の方えへって可愛く言っているが、自業自得としか言いようがない。それから、その金貨袋はリンゴたちのものでペンペンたちのものではない。もう何から突っ込んでいいのやら…。


「ペンペンたちはどれくらい戦えるの?」


 見た感じ特に武器は装備してないし、魔法が使えるようにも見えない。リンゴの口から出た素朴な疑問だった。


「クッパアニキに力を分けてもらったからアルバトロスの軍団なんか一瞬で片付けられますよ。だけど、アニキから力の使用を許可されてないから普段は使えないんですけどね。」


 あー、そうなんだ…とカノンとリンゴは呆れた顔をする。その目線の先には未だに厨二族の妄想を発揮しているクッパとグリコ、セブンがいた。


「この子たちにまともな道を歩ませてあげたいね…。」


 そう静かにつぶやき、カノンとリンゴは全員を就寝させた。

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