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洞窟の中で

少し書き方を変えてみました。

以前のものと今回のものでどちらが読みやすいか教えていただけると嬉しいですm(_ _)m

「あの2人はここに入っていったのかな?」


 カノンはゆっくり確かめるように尋ねる。念のため、周辺に隠れられそうなところや抜け道がないか確認してみたが、それらしいものは何もない。防壁と山がぶつかるところは登っているならすぐ見つけられるだろうし、山に沿って逃げたのなら後ろのカノンたちにも姿が見えたはずだ。


「やっぱり、ここみたいだね。」


 洞窟を前にリンゴは言う。手のひらに火の玉を出し、中に入る準備をする。

 洞窟は地下に向かって緩やかな下り坂になっているようだ。

 カノンたちは灯りを持っているリンゴを先頭にカノン、グリコの順で中に入った。

 洞窟の中はひんやりしており、時折水滴が落ちる音がする。子どもならゆったり通れる大きさの道だが、大人なら屈みながらでなければ頭をぶつけてしまうだろう。

 しばらく歩いて少し開けたところに出た。


「行き止まり…?」


 リンゴが辺りを照らしながら言う。円形の広場のようなところで、子ども3人が横並びで立てるくらいのスペースはあるが、それ以上の先はないようだ。


「いや、そんなことない。きっと隠し扉があるんだ!」


 グリコが少し興奮気味に壁を調べながら言う。まさか〜と呆れながらカノンたちは目を合わせる。


 ガクン!


 足元に近い出っ張った石にグリコが手をかけた時、レバーのように石が動いた。すると、壁の一部が上方に吸い込まれていき、新たな通路が生まれた。

 呆気にとられてるカノンとリンゴを気にせず、よしっとガッツポーズしたグリコは前に進んでいった。


「ちょっとグリコ、待ってよ〜。」


 カノンとリンゴは慌ててグリコの後を追う。通路は今までと同じように子どもだからこそ通れる大きさだ。しかし、下り坂ではなく平らな道になっている。意気揚々と歩くグリコにカノンとリンゴは信じられないといった顔で付いていった。そしてまた同じように少し開けた行き止まりに辿り着いた。


『合言葉は?』


 壁に白い紙が貼ってある。リンゴの持つ灯りでそれを読んだカノンが首をひねった。


「合言葉??」


 なにそれとみんなで顔を見合わせる。ひとまずいろいろ唱えてみようということになった。


「開けーごま!」


 リンゴが唱える。何も変化はない。


「洞窟を開ける合言葉はこれしかないと思ったんだけどなぁ。」


 リンゴが言う。じゃあ、今度は私が行くとカノンが前に出た。


「オープン・ザ・ドア!」


 1秒経って、3秒経って、10秒経った。何も変化はない。


「ぬーん。もう思いつかないよ〜。」


 カノンの言葉にリンゴも同調する。2人は諦めて帰ろうかと言い出した。


「何言ってんだよ。合言葉くらいたくさんあるだろ。」


 目を輝かせながらグリコが言う。

 例えば?とリンゴが聞くと、グリコが行き止まりに向かって言葉を放つ。


「古より聳えし堅固たる扉の番人よ

 今古代の盟約に基づき選ばれしものに道を与えん」


「何それ?」


 リンゴが冷たい目でグリコを見る。全く気にせずカノンとリンゴに向かって胸を張りグリコは言う。


「かっこいいだろ。今考えた。」


 そんな得意げにドヤ顔で言うグリコの背中で壁がガラガラと音を立てて上方に吸い込まれていく。


「えっ、ウソ…。開いた…。」


 カノンが驚きの表情で声を絞り出す。ますます得意げになったグリコが新たに現れた通路に目を向けると、天井から張り紙がぶら下っているのが見えた。


『合言葉は"かっこいい"だ!』


「そっちかよ!!」


 グリコの背後ではやれやれとリンゴが首を振っている。カノンも偶然って怖いな〜と生暖かい目で見ていた。

 そんなこんなでカノン一行はさらに奥に進むことにした。

 先ほどの合言葉で疲れたのか少しうなだれたグリコは後ろにつき、カノンとリンゴは次は何があるんだろうね〜と笑いながら歩いた。そして、また少し広い空間に出た。

 そこには普通のドアと呼び鈴が付いていた。



 一方、カノンたちを振り切ったセブンとペンペンは滑り台を滑り降り、明るく暖かい空間に降り立った。


「ふっ、今日も激しい戦いだった…。」


 セブンが左手を顔に当て、憂いを帯びた雰囲気で言うと、


「戦いなんてなかったじゃん。」


 と冷静にペンペンが突っ込みを入れる。

 2人はカノンたちが入っていった洞窟の隣、長い草に隠された落とし穴のような狭い穴から入ったのだ。その穴はらせん状の滑り台になっており、2人が暮らしている家に繋がっている。


「「ただいまー。」」


 兎にも角にも家に着いたら挨拶しよう。


「おかえり。」


 少し低い、けれども子どもの声が返ってくる。


「外界は疲れただろう。この封印さえなければ我が輩も共に行くのだが…。」


 顔の前で手を組み、机に向かう少年が仰々しく語る。


「大丈夫だよ、アニキ!アニキのかけてくれた強力な呪術によって今日もバッチリさ!」


 セブンが親指を立てて無邪気に笑う。


「呪術ってアニキもセブンも今は魔法使えないじゃん。」


 今日、持ち帰ってきた金貨袋や装備品などを金庫の中に運びながらペンペンが冷静に突っ込む。


「それよりね、アニキ。今日、変な奴らに会ったよ。この金貨袋を持ってた奴らなんだけど、妙に強い奴らだった。でも、洞窟の入り口辺りで撒いてきたよ。」


 ペンペンが報告し、セブンも補足した。


「うん、俺らがアルバトロスと戦っていたところに入り込んできて、あっという間に追い払ったんだ。あいつらいなくたって俺らだけでも追い払えたけどね。あいつらバカだったから撒いてきたよ。」


 それを聞いた少年は体勢を変えないまま言った。


「そうか、ご苦労だった。洞窟の扉を開けられるとは思っていないが、我が輩が千里眼で確認してみよう。」


 少年はゆったりと立ち上がり両手を左目に添えた。


「おおおおお…。はっ!しまった!封印の力に邪魔されて千里眼が発動しない!」


 そんなアニキの様子にセブンは慌てる。


「アニキ、無理しちゃダメだよ!封印が解けたら町が吹き飛ぶって言ったのはアニキじゃないか!あいつらならバカでアホでバカだから絶対来ないよ!」


 対象的に落ち着いているペンペンは台所から声をかける。


「あまり興奮すると力が暴走しちゃいますよ。もし来てもアニキから力を分けてもらった私とセブンで追い払いますって。」


 そんな3人の談笑を遮るように玄関の呼び鈴がなった。

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